厚生労働省は、「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」(平成元年法律第64号)等に基づき、都道府県に設置する地域医療介護総合確保基金(以下「確保基金」という。)等の造成に必要な経費について、医療介護提供体制改革推進交付金等を交付している。そして、都道府県は、地域の医療情報連携ネットワーク(以下「地域医療ネット」という。)の整備等の事業に係る経費を確保基金等から取り崩し、事業主体に対して助成するなどしている(以下、確保基金から取り崩して助成したものを「確保基金助成金」という。)。しかし、事業主体がシステムの動作確認等を十分に行っていなかったことから、地域医療ネットが利用可能な状態となっていない事態、地域医療ネットの参加医療機関等及び参加患者が皆無となっていて、システムが全く利用されていないなどの事態、並びに都道県において、事業主体に対して、地域医療ネットの参加医療機関等の数及び参加患者の数の目標等を申告させるなどしていなかったり、地域医療ネットの運用状況等を十分に把握しておらず全く利用されていないなどの状況が継続している事業主体に対して十分な指導等を行っていなかったりしている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣に対して令和元年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、2年3月までに次のような処置を講じていた。
ア 利用可能な状態となっていなかった1システムについて、確保基金助成金を交付した都道府県に対して、利用可能な状態となっているか確認するとともに、利用が開始されない場合には、確保基金助成金の返還等の手続を行わせるよう助言した。そして、当該都道府県は、上記の助言を受けて、当該システムの利用が開始されていることを確認した。
イ 都道府県に通知を発したり、都道府県の担当者を対象とした会議を開催したりするなどして、都道府県に対して、システムの仕様の検討を十分行ったり、システムの構築時には仕様に沿った動作が可能となっているか十分に確認を行ったりするよう事業主体に指導を行うとともに、地域医療ネットを整備した後の運用状況等を把握し、利用可能な状態となっていない事態があった場合には、事業主体に指導を行うよう周知した。
ウ イの通知、会議等により、都道府県に対して、確保基金助成金の交付申請の際に、参加医療機関等の数及び参加患者の数の目標並びにこれらの目標の達成が見込まれる根拠及び目標を達成するための取組方針等を事業主体に申告させて、これに基づき審査するなどするよう助言した。
エ イの通知、会議等により、都道府県に対して、地域医療ネットを整備した後の運用状況等を把握した結果、全く利用されていないなどの事態があった場合には、事態を改善するために事業主体に対して指導等を行うよう助言した。