厚生労働省は、医療費の適正な審査と迅速な支払を行うことなどを目的として、国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)に対して診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)の内容の審査(以下「レセプト審査」という。)の充実改善に係る経費等を対象として、また、公益社団法人国民健康保険中央会(以下「国保中央会」という。)に対して国保総合システムの運用に係る経費等を対象として、国民健康保険団体連合会等補助金をそれぞれ交付している。レセプト審査に当たっては、コンピュータを利用したチェック(以下「コンピュータチェック」という。)等が適切かつ効率的、効果的に実施されることが重要となっている。しかし、国保連合会の誤認等やレセプトの情報を電子的に記録したもの(以下「電子レセプト」という。)の入力方法及びチェック項目の内容に起因する事情により、コンピュータチェックが省略されていて、査定される可能性がある電子レセプトについて十分なレセプト審査が実施されていないこと、独自の審査方針により特定のチェック項目について疑義を提示しない取扱いとしていることなどにより、国保総合システムにおけるコンピュータチェックを活用したレセプト審査が適切かつ効率的、効果的に実施されていない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣に対して平成31年3月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 31年3月に、国民健康保険中央会定期総会において、国保総合システムで提供されているチェック項目の整理及び内容の精緻化に取り組むよう、国保中央会に対して指導等を行い、今後も各種会議等において同様の指導等を行うこととした。
イ 令和2年度の診療報酬の改定に併せて、記載要領等において、傷病名のコード化の推進等の取組を行うとともに、医療機関にコード化された傷病名の使用を促すために、コード化されていない傷病名の割合が基準値未満の場合等に入院基本料等の加算を増点する診療報酬の見直しを行った。また、2年3月に地方厚生局等に通知を発して、記載要領等に従って電子レセプトを作成することの重要性について、医療機関に対して周知徹底させた。
ウ ア及びイにより国保総合システムの利便性の向上を図るための取組を実施した上で、国保中央会に整理及び精緻化されたチェック項目を共通的に採用することができる機能を同システムに付加させた。そして、2年4月に、同機能を使用するよう、国保中央会から全ての国保連合会に対して周知徹底させた。
エ 2年9月に、国保連合会が行っているレセプト審査の実態を把握して、チェック項目について、独自の審査方針による取扱いが行われていた事態が解消されていることを確認していた。そして、国保中央会から定期的に全ての国保連合会のチェック項目の採用状況に関するデータの提出を受けてレセプト審査の実態を把握することとするとともに、今後、同様の事態が判明した場合には、都道府県を通じて算定基準等に沿って適切に処理されるよう、国保連合会に対して指導等を行うこととした。