厚生労働省は、業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生の予防に資するため、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)等に基づき、事業主が労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づき労働者に対して行った健康診断等のうち直近のもの(一次健康診断)において、血圧検査、血液検査等の厚生労働省令で定める検査を受けた労働者がいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに、当該労働者に対して二次健康診断等給付を行っており、二次健康診断(以下「二次健診」という。)及び特定保健指導(以下、両者を合わせて「二次健診等」という。)を行った医療機関又は労災病院等に対して二次健診等に要した費用(以下「健診費用」という。)を支払っている。労災保険二次健康診断等給付担当規程(以下「給付規程」という。)によれば、健診費用については、二次健診で行われた検査項目の組合せ及び特定保健指導の実施の有無に応じて給付規程に定められた健診費用単価(以下「健診費用単価」という。)により算定して支払うこととされており、健診費用単価は、検査の費用及び特定保健指導の費用から構成されている。しかし、厚生労働本省は、健診費用単価の設定に当たり、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成20年以降は「診療報酬の算定方法」)の別表第一医科診療報酬点数表(以下「健保点数表」という。)に定められた点数に基づいて算出した検査の費用の額より高い額を算定したり、「労災診療費算定基準について」(以下「算定基準」という。)及び健保点数表の改定を踏まえて検査の費用の額の見直しを行っていなかったり、実施していない検査等に係る費用の額を算定したり、特定保健指導の具体的な実施基準が策定されておらず特定保健指導の費用の額について具体的な算定根拠がないまま算定したりなどしている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、給付規程を改定するなどして、健診費用単価について、健保点数表に定められた点数に基づいて検査の費用の額を算定したり、算定基準及び健保点数表の改定を踏まえて検査の費用の額の見直しを行ったり、実施していない検査等に係る費用の額を算定しないこととしたり、特定保健指導の具体的な実施内容、実施方法、実施時間の目安等を定めた実施基準を策定して、当該実施基準等に基づいて特定保健指導の費用の額の見直しを行ったりなどするよう、厚生労働大臣に対して令和元年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、2年6月に給付規程を改正するなどして、健診費用単価について、健保点数表に定められた点数に基づいて検査の費用の額を算定したり、算定基準及び健保点数表の改定を踏まえて検査の費用の額の見直しを行ったり、実施していない検査等に係る費用の額を算定しないこととしたりなどして改定し、同年8月以降の二次健診受診分から適用する処置を講じていた。また、上記給付規程の改正において、給付規程の別添として特定保健指導の具体的な実施内容、実施方法、実施時間の目安等を定めた実施基準を策定して、当該実施基準等に基づいて特定保健指導の費用の額を見直す処置を講じていた。