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  • 令和元年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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  • 平成30年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(1) 多面的機能支払交付金事業における長寿命化交付金交付額の算定について


平成30年度決算検査報告参照

1 本院が要求した適宜の処置及び求めた是正改善の処置

農林水産省は、農業・農村の有する国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成等の多面的機能の維持・発揮を図るための共同活動に取り組む組織(以下「対象組織」という。)に対して、多面的機能支払交付金(以下「交付金」という。)を交付している。多面的機能支払交付金実施要綱(以下「要綱」という。)等によれば、対象組織は施設の長寿命化のための補修等の活動等を行うに当たって、市町村長から事業計画の認定を受け、当該認定の内容に変更が生じた場合は、変更に係る認定(以下「変更認定」という。)を受けることとされている。長寿命化のための補修等の活動に対する交付金(以下「長寿命化交付金」という。)の交付上限額(以下「交付上限額」という。)は、対象組織が事業計画書に位置付けた農用地(以下「対象農用地」という。)の面積に10a当たりの単価を乗じて得た金額(以下「面積算定額」という。)となっており、当該単価は地目等に応じて定められている。ただし、平成28年度に要綱等が改正され、対象農用地を200ha以上有するなどの要件に該当せず、かつ、施設の補修等の活動を構成員が自ら実施しない対象組織は、減額した単価を用いて面積算定額を算定することとされた。また、交付上限額は、上記に加えて面積算定額と対象組織の保全管理区域内の農業集落数に200万円を乗じて得た金額とのいずれか低い金額とされた(以下、上記の算定方法による交付上限額を「改正後の交付上限額」という。)。しかし、農林水産省において、28年度の要綱等の改正に当たり、改正後の交付上限額の適用対象に28年度以降に変更認定を受けた場合等も含まれることを必ずしも明示しておらず、適用対象に係る改正内容についての周知が十分でなかったことなどにより、28年度以降に変更認定等を受けた対象組織において、長寿命化交付金の交付額が改正後の交付上限額に基づいて算定されていない事態が見受けられた。

したがって、農林水産省において、長寿命化交付金が過大に交付されていた対象組織に対して、多面的機能支払交付金事業の継続的な実施に留意しつつ、府県を通じて過大に交付された国庫交付金の返還等を求める措置を講ずるとともに、都道府県、市町村及び対象組織に対して、改正後の交付上限額の適用対象に28年度以降に変更認定を受けた場合等も含まれることを明示するなどして、28年度の要綱等の改正内容の趣旨を周知徹底した上で、市町村に対して、長寿命化交付金交付額の算定に係る審査を的確に行うことを都道府県を通じて指導するよう、農林水産大臣に対して令和元年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。

2 当局が講じた処置

本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、元年11月に地方農政局等に対して通知を発するなどして、多面的機能支払交付金事業の継続的な実施に留意して、2年度以降の長寿命化交付金における相殺交付も可能とする仕組みを導入した上で、長寿命化交付金が過大に交付されていた対象組織に対して、府県を通じて過大に交付された国庫交付金の返還等を求める処置を講じていた。また、同省は、上記の通知において、都道府県、市町村及び対象組織に対して、改正後の交付上限額の適用対象に平成28年度以降に変更認定を受けた場合等も含まれることを明示するなどして、28年度の要綱等の改正内容の趣旨を周知徹底した上で、市町村に対して、長寿命化交付金交付額の算定に係る審査を的確に行うことを都道府県を通じて指導する処置を講じていた。