農林水産省は、土地改良法(昭和24年法律第195号)に基づき、国営土地改良事業の一環として、ダム、頭首工(注)等の基幹的な農業水利施設の新設及び整備後の更新、改修等(以下「更新等」という。)を、各地方農政局等又は各地方農政局管内の調査管理事務所等(以下「農政局等」という。)において実施している。そして、ダム、頭首工等の管理施設等の建物やこれらを統括管理する中央管理所(以下、これらを「管理施設」という。)には、運転操作と状態監視を遠隔で行うために、操作設備、監視操作制御設備等(以下、これらを合わせて「操作・監視設備」という。)が設置されており、ダム及び頭首工の管理施設が大地震動により倒壊等すれば、そこに設置されている操作・監視設備及び水管理制御システム(以下、これらを合わせて「重要設備」という。)が機能しないことにより水害による二次災害が発生するおそれがある。しかし、管理施設の耐震クラスが重要設備の耐震クラスよりも低いため、大地震動後において重要設備の機能が確保できなくなるおそれがある事態及び重要設備の新設、更新等に当たり、既存の管理施設の耐震性能が重要設備の耐震クラスと対応しているか確認していなかったなどの事態が見受けられた。
したがって、農林水産大臣に対して令和元年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査等を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、2年5月に地方農政局等に対して通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 農政局等に対して、ダム及び頭首工の管理施設に必要とされる耐震性能について、耐震設計上の取扱いを明確にして周知するとともに、耐震クラスが重要設備の耐震クラスと整合していなかったり、耐震性能を確認していなかったりしていた管理施設については、耐震診断により耐震性能を確認した上でその結果に応じて耐震改修等を行うこととして、重要設備の耐震クラスに応じた耐震性能の確保に向けた計画を策定させるなどした。
イ 農政局等に対して、重要設備の新設、更新等に当たっては、今後、既存の管理施設については耐震性能を確認し、重要設備と管理施設との耐震クラスについて整合を図るなどして、大地震動後における重要設備の機能を確保することの重要性を周知徹底した。