国土交通省は、住宅・建築物の耐震性の向上を図るために、住宅・建築物安全ストック形成事業等として、耐震診断、耐震改修、建替え等を行う民間事業者等に対して補助金を交付する地方公共団体等に対して、社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金等(以下「交付金等」という。)を交付している。建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号。以下「耐震改修促進法」という。)によれば、所管行政庁(注)は、耐震診断及び耐震改修の適確な実施を確保するために、既存耐震不適格建築物の所有者に対し指導及び助言をすることができるとされている。また、国土交通省は、「建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針」の中で、所管行政庁は、既存耐震不適格建築物の所有者に対して、耐震改修促進法に基づく指導及び助言を実施するよう努めるべきであるとしている。しかし、交付金等の交付を受けて耐震診断を行い耐震性が不十分と判定された要安全確認計画記載建築物、要緊急安全確認大規模建築物及び特定既存耐震不適格建築物(以下、これらを合わせて「耐震診断義務付け対象建築物等」という。)を含む既存耐震不適格建築物について、耐震改修が未実施であることを所管行政庁が把握しているにもかかわらずその所有者に対して指導及び助言を行っていなかった事態及び所管行政庁が耐震改修の実施状況を把握していなかった事態が見受けられた。
したがって、国土交通大臣に対して令和元年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。
本院は、国土交通本省から関係資料の提出を受けるなどして、その後の処置状況について検査した。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 元年11月に都道府県に対して通知を発して、交付金等の交付を受けて耐震診断を行った結果、耐震性が不十分と判定された耐震診断義務付け対象建築物等を含む既存耐震不適格建築物について、耐震改修の実施状況を定期的に把握した上で、耐震改修が行われていない場合は、その所有者に対して指導及び助言を積極的に行うよう周知するとともに、都道府県を通じて管内所管行政庁に対して同通知の内容を周知した。
イ 所管行政庁による指導及び助言の実施の有無を定期的に把握し、指導及び助言が行われていない場合には、その理由等を聴取するなどした上で、所管行政庁に対して技術的助言を行うこととした。そして、2年1月に都道府県に対して、所管行政庁による指導及び助言の実施状況等に関する調査を実施して、指導及び助言が行われていない場合の理由等を聴取し、その理由等を踏まえて指導及び助言が実施されるよう対応策を整理した上で、同年5月に都道府県に対して技術的助言として通知を発するとともに、都道府県を通じて管内所管行政庁に対して同通知の内容を周知した。