環境省は、浄化槽の設置を行う個人等に対して費用を助成する浄化槽設置整備事業を実施する市町村に対して、循環型社会形成推進交付金又は地方創生汚水処理施設整備推進交付金(以下、これらを合わせて「交付金」という。)を交付している。交付金の交付額は、浄化槽の能力の区分及び人槽(注)ごとに環境省が定めた基準額(以下「基準額」という。)と、浄化槽の設置者に対して市町村が助成するために必要とする経費とを比較するなどして算定することとなっている。環境省は、基準額の設定に当たり、浄化槽を、その能力に応じて、通常の浄化槽、窒素又はリンを除去する能力を有する浄化槽(以下「高度処理型」という。)等に区分し、浄化槽の本体価格及び設置工事費(以下、これらを合わせて「設置工事費」という。)の実態調査(以下「実態調査」という。)のデータを基にして、能力の区分及び人槽ごとに浄化槽1基当たりの平均的な設置工事費(以下「平均工事費」という。)を算出している。そして、平均工事費を基に決定した標準工事費により基準額を算定している。しかし、設置基数に占める割合が多い高度処理型の5人槽及び7人槽の平均工事費が、現在の基準額の基となる平成10年度の平均工事費と比較して減少傾向にあり、長期間にわたり10年度当時の平均工事費と開差が生じたままとなっているのに、標準工事費及び基準額(以下「標準工事費等」という。)を改定しないまま交付金が交付されている事態が見受けられた。
したがって、環境省において、浄化槽設置整備事業の実施に当たり、実態調査の結果を適切に反映させた標準工事費等を算定できるよう基準額の改定に関する基準を定めるとともに、実態調査の結果を適切に反映させて標準工事費等の改定を行うよう、環境大臣に対して令和元年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、環境本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、環境省は、本院指摘の趣旨に沿い、2年8月に浄化槽設置整備事業において実態調査の結果を適切に反映させた標準工事費等を算定できるよう基準額の改定に関する基準を定めるとともに、同月に元年度の実態調査の結果を適切に反映させて標準工事費等を改定して、3年度予算に係る浄化槽設置整備事業から改定した標準工事費等を適用することとする処置を講じていた。