独立行政法人日本学術振興会(以下「振興会」という。)は、国から交付される補助金等を財源として、独立行政法人日本学術振興会法(平成14年法律第159号)等に基づき、学術の振興を図るため、研究者、研究機関等の学術の研究に関し、必要な助成等を行っている。
振興会が交付する補助金のうち、科学研究費補助金の補助対象経費については、研究に使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入費等の補助事業の遂行に必要な経費等となっている。
また、振興会が交付する補助金のうち、最先端研究開発戦略的強化費補助金(最先端研究基盤事業)の補助対象経費については、研究設備の購入及び据付調整・附帯工事のための経費である設備整備費等となっており、その目的以外の用途に使用してはならないこととなっている。
本院は、合規性等の観点から、補助事業が適切に実施されているか、交付された補助金が補助金の交付要綱等に従って適正に管理されているかなどに着眼して、振興会、振興会が補助金を交付している国立大学法人京都大学(以下「京都大学」という。)及び京都大学に所属する研究代表者である霊長研教員A(注)において、補助金の実績報告書、契約書、仕様書、納品書等の関係書類によるなどして会計実地検査を行った。
その結果、京都大学、霊長研教員A、計2事業主体が科学研究費補助金及び最先端研究開発戦略的強化費補助金の交付を受けて実施した事業において、補助金が過大に交付されていて、これらに係る国庫補助金471,967,556円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、霊長研教員Aにおいて、補助金の原資は税金等であるにもかかわらず、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が著しく欠けていたこと、京都大学において、研究設備の内容を十分把握しないまま契約を締結したり、研究用物品の納品検査等を十分に行わなかったりしたこと、振興会において、研究機関等に対して補助金の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。
これを補助金別に掲げると次のとおりである。