日本銀行は、平成25年1月に、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い、持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくとの認識に立って、消費者物価の前年比上昇率で2%とする「物価安定の目標」を導入し、物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために、同年4月に量的・質的金融緩和を導入した。さらに、28年1月には、マイナス金利付き量的・質的金融緩和(以下「マイナス金利政策」という。)の導入を決定したほか、同年9月には、「「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証」を行った上で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の導入を決定した。
25年4月の量的・質的金融緩和の導入以降、市場における長期金利の代表的な指標である10年国債の市場金利は、同月には一時0.4%台まで低下し、さらに、28年1月のマイナス金利政策の導入決定後の同年2月には0%を下回ってマイナスの水準となるなど、近年、低金利の状況が続いている。
「法人企業統計」(財務省作成)によると、25年度から30年度までの間の各年度末における民間企業(全産業)の借入金及び社債発行の残高は増加している。また、「貸出先別貸出金」(日本銀行作成)によると、個人に対する資金貸付けの大半を占める住宅資金の貸付残高は増加している。
そして、「全国銀行財務諸表分析」(一般社団法人全国銀行協会作成)によると、25年度以降の銀行(国内業務部門)に係る貸付金利回りは、25年3月の1.49%から31年3月の0.99%へと0.50ポイントの減少となっているのに対して、預金債券等原価(預金債券等利回り及び経費率(人件費、物件費等の経費の額を預金債券等の残高で除して求めた率)を合算したもの)は、同1.04%から同0.78%へと0.26ポイントの減少となっていて、貸付金利回りの下げ幅が預金債券等原価の下げ幅を上回っている。この結果、貸付金利回りから預金債券等原価を差し引いた預貸金利ざやは、0.45%から0.21%へと半分以下に縮小している。このような中、銀行の当期純利益は、25年度の3.3兆円から30年度の2.2兆円へと34.8%減少している。
国は、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事業であって国が自ら主体となって直接に実施する必要のないものなどについては、国が設立する法人に当該事業を実施させている。これらの法人が実施する事業には、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの、一定の採算性があって企業的経営による方がより効率的に継続して実施できるもの、民間の主体でも実施が可能なものなど様々なものがあり、これらの法人の組織形態も、特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人等様々となっている。
そして、国は、これらの法人が行う事業の公共性・公益性に着目して、的確な事業の遂行及び経営基盤の安定を図るために必要な場合には、法人に対して出資を行っている。国が資本金の2分の1以上を出資している法人(以下「政府出資法人」という。)は、日本銀行法(平成9年法律第89号)に基づき、我が国の中央銀行として銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うなどの業務を行っており、量的・質的金融緩和を導入した主体である日本銀行を除くと、31年3月末現在で、特殊法人、認可法人等(清算中のものなど7法人を除く。以下「特殊法人等」という。)が31法人、独立行政法人が83法人、国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下「国立大学法人等」という。)が90法人の計204法人となっている(以下、特殊法人等の設立の根拠となる法律、各独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定めた法律並びに国立大学法人等の目的及び業務の範囲等を定めた国立大学法人法(平成15年法律第112号)を合わせて「設置根拠法」という。)。
上記のとおり、国は、政府出資法人が行う事業の公共性・公益性に着目して、的確な事業の遂行及び経営基盤の安定を図るために必要な場合には、法人に対して出資を行っており、特定の事業の実施及び経営基盤の強化のために必要があると認めるときは、追加出資も行っている(以下、国からの出資を「政府出資金」という。)。また、国は、設置根拠法等により、法人が行う業務の財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する額を交付できることなどとなっている。
そして、多くの政府出資法人は、国から、政府出資金のほか、補助金、補給金、交付金(運営費交付金を含む。)等(以下、これらを合わせて「補助金等」という。)の交付、低利、無利子等の有利な条件による資金の貸付け、債務保証等の多様な財政支援を受けている。
政府出資法人の借入金及び債券発行(以下「借入金等」という。)による資金調達の権限は、設置根拠法等において定められており、その範囲は、法人によってそれぞれ異なっている。
前記政府出資法人204法人のうち、30事業年度(注1)末(以下、事業年度を「年度」という。)の貸借対照表において借入金等の残高が計上されている法人は102法人あり、この102法人の借入金等の残高は計141兆8217億余円となっている。そして、このうち借入金等の残高が1兆円以上となっている法人は、特殊法人等が5法人、独立行政法人が8法人の計13法人(注2)であり、この13法人の借入金等の残高は計133兆1847億余円となっていて、政府出資法人全体の借入金等の残高の93.9%を占めている。なお、国立大学法人等には、借入金等の残高が1兆円以上となっている法人はない。
設置根拠法等によれば、政府出資法人は、法人が管理している基金、準備金、目的積立金、政府からの寄託金等(以下「基金等」という。)に係る資金や業務上の余裕金について、現金として保有するほか、銀行へ預金したり、有価証券を取得したりなどして運用することができることなどとされている。また、政府出資法人の中には、設置根拠法等により、法人の目的を達成するための業務として、法人の保有する資金を民間企業や個人等に対して貸し付けているものがある。
前記政府出資法人204法人の30年度末の現金及び預金、有価証券(金銭信託を含み、関係会社株式等を除く。以下同じ。)並びに貸付金(関係会社長期貸付金等を除く。以下同じ。)(以下、これらを合わせて「有価証券等」という。)の残高は計322兆1798億余円となっている。そして、このうち有価証券等の残高が3000億円以上となっている法人は、特殊法人等が10法人、独立行政法人が14法人の計24法人(注3)であり、この24法人の有価証券等の残高は計317兆1382億余円となっていて、政府出資法人全体の有価証券等の残高の98.4%を占めている。なお、国立大学法人等には、有価証券等の残高が3000億円以上となっている法人はない。
本院は、低金利の状況下における政府出資法人の業務及び財務の状況について、これまでにも検査を実施し、その結果を検査報告に掲記するなどしている。
このうち、31年4月に、会計検査院法第30条の2の規定に基づき、衆議院議長、参議院議長及び内閣総理大臣に対して報告した「年金特別会計及び年金積立金管理運用独立行政法人で管理運用する年金積立金の状況等について」では、マイナス金利政策の導入等による影響として、年金積立金管理運用独立行政法人が保有している国債の時価評価額が増加していることなどを記述している。
また、平成28年度決算検査報告に掲記した「独立行政法人住宅金融支援機構に対して3補助金として交付された資金について、その管理方法を金銭の信託による運用のみに限定しないこととするよう交付要綱を改正することにより、日銀当座預金残高に係るマイナス金利相当分の費用負担を軽減できるよう改善させたもの」では、国土交通省から補助金として交付された資金について、同省が交付要綱によりその管理方法を金銭の信託による運用のみに限定していたことにより、日本銀行当座預金残高に係るマイナス金利相当分の費用が補助金として交付された資金から取り崩されていたことなどを同省の項に掲記している。
前記のとおり、25年4月の量的・質的金融緩和の導入以降、市場における長期金利の代表的な指標である10年国債の市場金利は、同月には一時0.4%台まで低下し、さらに、28年1月のマイナス金利政策の導入決定後の同年2月には0%を下回ってマイナスの水準となるなど、近年、低金利の状況が続いている。
そして、前記のとおり、近年の低金利の状況下において、民間企業や個人の借入金残高等は増加している。一方で、銀行の当期純利益は減少している。
このように、近年の低金利の状況下において、民間企業等の資金調達や資金運用の環境に変化が見られる中、政府出資法人における資金調達や資金運用の状況にも変化が生じていることが想定される。また、このような状況の変化は、各法人の設置根拠法に基づき法人の目的を達成するために行っている法人の業務の状況や、当該業務を実施する上での基盤となる法人の財務の状況、更にはこれに対する国の財政支援の状況等にも影響を及ぼしていることが考えられる。
そこで、本院は、近年の低金利の状況下における政府出資法人の業務及び財務の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。
ア 政府出資法人における資金調達及び資金運用の状況はどのようになっているか。
イ 低金利により政府出資法人の業務及び財務にどのような影響が生じているか。
ウ 政府出資法人の資金調達及び資金運用に対する国の財政支援の状況はどのようになっているか。
エ 将来の金利の変動に対する政府出資法人の対応等の状況はどのようになっているか。
前記政府出資法人204法人のうち、30年度末において借入金等の残高が1兆円以上又は有価証券等の残高が3000億円以上である26法人(注4)(前記同年度末の借入金等の残高が1兆円以上の13法人及び有価証券等の残高が3000億円以上の24法人の純計)を対象として(以下、検査の対象とした上記の法人を「検査対象法人」という。)、量的・質的金融緩和の導入以降の25年度から30年度までの間の状況について、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき各法人から提出された財務諸表等のほか、近年の低金利の状況下における各法人の業務及び財務の状況に係る調書等の提出を求めて、これらを分析するとともに、検査対象法人26法人及びこれらの所管府省庁のうち3省(注5)において会計実地検査を行った。
(以下、各検査対象法人の名称中、「株式会社」及び「独立行政法人」は記載を省略した。)
検査対象法人の借入金等による資金調達の権限は、前記のとおり、設置根拠法等において定められており、その範囲は、法人によってそれぞれ異なっている。
多くの検査対象法人は、長期借入金の借入れ及び債券発行(以下「長期借入金の借入れ等」という。)をすることができることとなっている。そして、長期借入金の借入れ等により調達した資金の使途をみると、インフラ整備、貸付け又は出資となっているものが大半となっている。
検査対象法人の資金運用の権限は、前記のとおり、設置根拠法等において定められており、その範囲は、法人によってそれぞれ異なっている。そして、各法人は、法人が行う業務に応じて、資金を現金として保有するほか、銀行への預金や有価証券の取得、資金の貸付けを含む資金運用をしている。
銀行への預金、国債、地方債並びに元本の償還及び利息の支払について政府が保証する債券(以下「政府保証債」といい、国債及び地方債と合わせて「国債等」という。)の取得等の一般に安全資産と言われている資産(以下「いわゆる安全資産」という。)による資金運用は、法人が行う業務の内容を問わず、全ての検査対象法人ができることとなっている。
一方、一部の検査対象法人は、法人の本来の業務として、いわゆる安全資産以外の資産(リスク性資産)によっても金銭信託による資金運用をしており、信託会社等と投資一任契約(注6)を締結するなどして、株式や外国債券等による資金運用をしていたり、法人の業務として資金を貸し付けたりなどしている。
前記のとおり、検査対象法人の多くは、借入金等による資金調達をしていて、法人によって、主としてインフラ整備に充てたり、貸付けに係る業務の財源に充てたりなどしている。また、検査対象法人は、その保有する資金を、銀行への預金、国債等の取得等のいわゆる安全資産によって運用しているほか、一部の法人は、法人が行う業務に応じて、株式等によっても運用していたり、資金を貸し付けたりなどしている。
そして、検査対象法人が行う業務は法人によって様々であるが、各法人が行う業務内容と各法人の資金調達及び資金運用の権限の範囲を照らし合わせると、検査対象法人をおおむね次のように業務類型により分類することができる(複数の政府出資法人が統合されるなどして設立された検査対象法人のように、同一の法人に異なる類型の業務が併存する場合には、勘定単位で区分するなどしている。)。
① 法人の業務として資金の貸付けをしている検査対象法人は、おおむね貸付けの財源に充てるために長期借入金の借入れ等により多額の資金調達をしており、多額の資金を貸付金として運用している(以下、このような検査対象法人を「融資法人」という。)。
(注7)
計14法人
② 法人の業務として被保険者等から納付された保険料等を財源とした多額の資金(政府からの寄託金を含む。以下同じ。)を長期的な観点(中長期的な観点を含む。以下同じ。)から運用している検査対象法人は、投資一任契約等により、国内債券のほか株式や外国債券等によっても資金運用をしている(以下、このような検査対象法人を「長期運用法人」という。)。
(注8)
計4法人
③ 法人の業務としてインフラ整備をしている検査対象法人は、おおむねインフラ整備の財源に充てるために長期借入金の借入れ等により多額の資金調達をしており、業務上の余裕金等を運用している(以下、このような検査対象法人を「インフラ法人」という。)。
(注9)
計3法人
④ ①から③までのいずれにも該当しない検査対象法人(以下「その他法人」という。)
(注10)
計12法人
(以下、検査対象法人名については、各業務類型に分類した法人名で記述している。)
検査対象法人のうち、25年度から30年度までの間に借入金等による資金調達をしているのは22法人(複数の業務類型に該当する法人を業務類型ごとに別法人として数えると延べ24法人)であり、残る4法人(同延べ9法人)はこの間に借入金等による資金調達をしていない。そして、上記22法人の借入金等の残高(以下「借入金等残高」という。)は、25年度末の計148兆3160億余円から30年度末の計135兆8813億余円へと年々減少している。
また、検査対象法人は、借入金等による資金調達に係る費用として、支払利息、債券発行諸費等の費用(以下「資金調達費用」という。)を計上している。25年度から30年度までの間の各年度末の借入金等残高に対する各年度の資金調達費用の額の割合(以下「資金調達利回り」という。)は、多くの法人において低下傾向で推移している。
融資法人は、いずれも、原則として、公益性が高いものの民間金融機関のみでは適切な対応を行うことが困難な分野について、民間金融機関を補完する位置付けで、各法人の設置根拠法に基づく法人の業務として、民間企業や個人等に対して資金を貸し付けている。そして、当該貸付けなどの財源に充てるために、多額の資金調達をしている。融資法人の資金調達利回りは、27年度以降上昇している国際協力銀行及び25年度以降の資金調達利回りが0.0%となっている中小企業基盤整備機構(一般勘定等)を除いて、いずれも25年度から30年度までにかけて低下傾向で推移している。
長期運用法人は、いずれも、25年度から30年度までの間に借入金の借入れ等による資金調達をしていない。
インフラ法人は、いずれも、インフラ整備等の財源に充てるために、多額の資金調達をしている。インフラ法人の資金調達利回りは、いずれも25年度から30年度にかけて年々低下している。
その他法人は、法人によって多様な業務を行っている。その他法人のうち、全ての年度末において借入金等残高のある4法人の資金調達利回りは、いずれも低下傾向で推移している。
検査対象法人は、いずれも、その保有する資金を銀行へ預金するなどして運用している。そして、検査対象法人26法人の有価証券等の残高(以下「有価証券等残高」という。)は、25年度末の計304兆2923億余円から30年度末の計317兆2821億余円へと増加している。
また、検査対象法人は、その保有する資金を銀行へ預金するなどして運用した結果として、利息・配当金収入、売買益等の実現収益を得ているほか、資産の時価評価による評価益等を計上している(以下、実現収益と評価益等を合わせて「資金運用収益」という。)。25年度から30年度までの間の各年度末の有価証券等残高に対する各年度の資金運用収益の額(以下「資金運用収益額」という。)の割合(以下「資金運用利回り」という。)は、長期運用法人においては、いずれも年度によって大きく変動している。他の業務類型の法人においては、融資法人の一部を除いて25年度から30年度にかけて、いずれも低下傾向で推移している。
融資法人の資金運用利回りは、国際協力銀行、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(助成勘定等)及び郵便貯金・簡易生命保険管理機構の3法人においては25年度から30年度にかけて上昇傾向となっているが、それ以外の11法人においては低下傾向で推移している。
長期運用法人の資金運用利回りは、いずれも年度によって大きく変動している。そして、29年度は4法人とも前年度よりも上昇し、30年度は4法人とも前年度よりも低下しているが、28年度以前の各年度については、法人によって前年度よりも上昇しているものもあれば低下しているものもある。
インフラ法人の資金運用利回りは、いずれも25年度から28年度までにかけて低下し、その後横ばいで推移している。そして、その水準は、25年度においても0.03%から0.22%までと融資法人及び長期運用法人に比べておおむね低い水準となっていて、28年度以降はいずれの法人においても0.10%以下と更に低くなっている。
その他法人の資金運用利回りは、法人によって差違があるものの、25年度から30年度までの間の推移をみると、ほとんどの法人で低下傾向にある。
融資法人のうち、現在は新規の貸付けが終了するなどしていて主に資金の回収等の管理業務のみに係る経理を行うなどしている7法人の11勘定(注11)を除いた、新規の貸付けをしている26勘定(注11)に係る13法人の資金の貸付けについて、25年度から30年度までの間における各年度末の貸付金残高の推移をみると、減少している法人もあれば、増加している法人もある。なお、令和2年度第1次補正予算及び令和2年度第2次補正予算においては、日本政策金融公庫等に対して、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月閣議決定)を踏まえた中小・小規模事業者や中堅企業・大企業の資金繰り対策に係る貸付け等に必要な資金として、計49兆余円の財政投融資計画の追加が行われている。
このように、新規の貸付けをしている融資法人の中には、近年の低金利の状況下において、融資法人に対する民間企業や個人等の資金需要が変化し、法人が行う貸付金残高に変化が生じているものが見受けられた。
前記のとおり、銀行においては、近年の低金利の状況下において、貸付金利回りの下げ幅が預金債券等原価の下げ幅を上回っており、預貸金利ざやが縮小している。
前記新規の貸付けをしている13法人のうち比較可能な経費率を把握できない4法人(注12)を除く9法人について、銀行における預金債券等利回りに代えて融資法人に係る資金調達利回りに、法人の経費率を加えて預金債券等原価を算出し、これにより法人の預貸金利ざやを算定すると、沖縄振興開発金融公庫、日本政策金融公庫(融資等業務勘定)及び日本政策投資銀行の預貸金利ざやは、25年度から30年度にかけておおむね縮小傾向で推移している。また、日本私立学校振興・共済事業団(助成勘定)及び住宅金融支援機構の預貸金利ざやは、ゼロに近い水準でおおむね横ばいで推移している。
一方、国際協力機構、福祉医療機構及び日本学生支援機構の3法人の預貸金利ざやは、25年度から30年度までの間を通じていずれもマイナスの水準となっている。このうち福祉医療機構及び日本学生支援機構は、法人の業務を実施するのに必要な経費をおおむね国の補助金等によって賄っており、その貸付金利回りは、おおむね資金調達利回りの水準と等しくなるなどしている。
このように、新規の貸付けをしている融資法人の中には、近年の低金利の状況下において、預貸金利ざやがおおむねゼロに近い水準で横ばいとなっていたりマイナスの水準で推移したりしている法人が見受けられた。
長期運用法人は、長期的、中長期的又は中期的に確保すべき資金の運用利回りがそれぞれ主務大臣から示されるなどしている(以下、この長期的、中長期的又は中期的に確保すべき資金の運用利回りを「目標利回り」という。)。また、長期運用法人は、法令により、資金運用に当たっての基本的な方針等(以下「運用の基本方針」という。)を作成しなければならないことなどとなっている。そして、長期運用法人は、いずれも、運用の基本方針において、目標利回りを最低限のリスクで確保することなどを目標として設定している(以下、この目標を「運用の目標」という。)。
また、運用の基本方針においては、いずれの法人も、その運用する資金に係る資産の構成に関する事項を定めることとなっている。各法人は、運用の目標の下、国内債券のほか株式や外国債券等によっても資金運用をしており、それぞれの運用資産に係る期待収益率や想定される標準偏差に基づき、長期的な観点からの資産構成割合(以下「基本ポートフォリオ」という。)を定めている。
基本ポートフォリオの期待収益率のばらつき具合である標準偏差は、長期運用法人に係る25年度から30年度までの間において、日本私立学校振興・共済事業団(厚生年金勘定等)及び年金積立金管理運用が国内債券の構成割合を減らして国内外の株式の構成割合を増やすように基本ポートフォリオを変更した中で、日本私立学校振興・共済事業団(厚生年金勘定等)においては25年度の3.97%から30年度の9.29%へ、年金積立金管理運用においては同5.55%から同12.52%へと、それぞれ大きくなっていて、期待された収益を大きく上回る収益が得られる可能性がある一方で、運用の状況によっては、期待された収益を大きく下回る収益しか得られなくなったり、損失を生じたりするおそれも高まっている。
長期運用法人の実際の利回りは、25年度から30年度までの間においては、単年度でみると、各法人とも目標利回りを上回った年度もあれば目標利回りを下回りマイナスとなった年度もあるなど、ばらつきのある状況となっている。また、複数年度でみると、いずれも目標利回りを上回っている。
インフラ法人のうち、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(建設勘定等)は、28年度以降、事業量が増加傾向にある。
また、インフラ法人のうち、都市再生機構及び日本高速道路保有・債務返済機構は、インフラの整備に加え、それぞれ前身となる旧都市基盤整備公団等及び旧日本道路公団等から承継した債務を含む長期借入金の借入れ等の有利子負債(都市再生機構)及び債務残高(日本高速道路保有・債務返済機構)(以下、これらを総称して「債務残高等」という。)を削減することが法人として求められている。両法人の債務残高等の推移をみると、いずれも減少傾向となっている。
その他法人が行う資金運用の中には、基金等に係る資金を運用し、当該基金等から得られる資金運用収益を、法令により、法人が行う特定の事業に要する費用の一部又は全部に充てることとしているもの(以下「運用益型基金等」という。)が、3法人において4基金等(注13)ある。そして、25年度から30年度までの間における上記の3法人に係る4基金等の資金運用収益額は、いずれも年々減少していた。このような状況下において、上記の3法人は、基金等に係る資金運用収益額の減少分について、法人内部の積立金を取り崩したり、資金運用収益額を確保するために従前は購入していなかった社債等を新たに購入したり、事業の重点化・効率化を図るなどして事業内容を見直したりなどしていた。
前記のとおり、国は、特定の事業の実施等のために必要があると認めるときは、検査対象法人に対して追加出資を行っている。25年度から30年度までの間における検査対象法人に対する国の追加出資の額は、16法人に対する計3兆5694億余円であり、このうち2兆8954億余円が金銭による追加出資となっている。そして、検査対象法人の中には、国からの追加出資について、無利子の資金調達と捉えることができる法人が見受けられた。
25年度から30年度までの間の各年度末における検査対象法人の借入金等残高のうち、借入先が国であったり、借入金等に国の債務保証が付されたりしているものは、法人全体の借入金等残高の3分の2を占めている。
また、マイナス金利政策が導入決定された28年1月以降に公募により発行された政府保証債の中には、公募入札の結果を受けて、発行差金が償還までの支払利息の合計額を上回り、発行時の利回りがマイナスとなるものが生じている。そして、このような検査対象法人に有利な条件で発行された政府保証債の発行差金は、償還までの支払利息の合計額58億1780万余円を76億1189万余円上回る134億2970万円となっていた。
国の政策的配慮から融資法人が行う無利子による貸付けにおいて、法人は、法人の資金調達に係る費用を賄うために、国から利子補給金の交付を受けるなどしている(以下、このような無利子による貸付けに対する利子補給金を「無利子貸付補給金」という。)。そして、近年の低金利の状況下において、法人の資金調達利回りが低下して法人の資金調達に係る費用が減少していることなどから、当該費用を補う無利子貸付補給金の交付額は、全体では年々減少している。
前記のとおり、3法人に係る4基金等の資金運用収益額が減少している中で、当該3法人は、事業を実施するために法人内部の積立金を取り崩したり、事業内容を見直したりして対応するなどしている。そして、この中には、運用益型基金等から生ずる資金運用収益額だけでは事業を実施するのに必要な財源を確保することが困難となったことから、事業を実施するための財源として、新たに国から補助金等の交付を受けることとしていたものが1法人において1基金等見受けられた。
一般に、政府出資法人は、リスクの発生の防止やリスクが発生した場合の損失の最小化等を図るために、リスク管理規程等を定めるなどして損失の発生その他法人の設置根拠法に定められている法人の目的を持続的かつ安定的に達成することを阻害する可能性のある要因等をリスクとして洗い出し、それが業務運営に与える影響を分析及び評価して、影響の重要度等に応じた当該リスクへの適切な対応を執るなどしてリスク管理を行っている。そして、将来の金利の変動により、法人に損失が生じたり、法人の目的を達成できなくなったりするリスク(以下「金利リスク」という。)についても、当該リスク管理の枠組みにおいて管理するなどしている。
融資法人においては、資金運用と資金調達の条件等にかい離が生ずる結果、そのときの金利状況によっては、法人に損失が生ずることがある。
そこで、資金運用と資金調達の条件等のかい離等に起因する金利リスクについて、融資法人における30年度の対応状況をみると、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(助成勘定等)及び郵便貯金・簡易生命保険管理機構を除く12法人は、いずれも金利リスクを負っており、リスク管理規程等に基づき、金利リスクを何らかの対応を執る必要のあるリスクであるなどとして管理しており、金利の変動による法人の損失を低減するなどのために、ALM(注14)において計測する指標等を定め、計測した指標を定期的に分析するなどしていた。
ALMにおいて計測する指標は、法人により様々となっているが、8法人は、デュレーション・ギャップ(注15)を計測する指標の一つとしていた。デュレーション・ギャップは、資産と負債の平均残存期間の差で、一般に、デュレーション・ギャップが大きいほど、金利リスクを有することになる。上記8法人のうち、沖縄振興開発金融公庫の30年度末のデュレーション・ギャップは1.6年となっていた。同公庫は、デュレーション・ギャップについて、その推移を経年でみて評価しており、これまで、財政融資資金からの借入金について借入期間を貸付期間の構成に合わせる取組を行ってきたとしているものの、現在の資産と負債の構成にはデュレーション・ギャップが存在すると認識していて、縮小を図る必要があるとしている。
ALMを行っている法人のうち4法人は、金利リスクへの対応として、一定の想定元本について取引の当事者間で変動金利と固定金利の支払義務等を相互に交換する取引である金利スワップ取引を行っている。
このうち、住宅金融支援機構は、証券化支援業務において、住宅ローンに係る融資金利の決定から原資となる資金に係る調達金利の決定までの期間の金利変動による期間損益の変動リスク(パイプラインリスク)に対応するために、金利スワップ取引を行っている。急激な金利変動が生ずるなどした場合には、上記の金利スワップ取引に関して通常想定される範囲の損失を超える異常な損失(以下「異常損失」という。)が同機構に生ずるおそれがある。そこで、同機構には、その運用益で異常損失に対応するための金利変動準備基金が、政府出資金を財源として設置されており、その額は25年度から30年度までの間を通して344億円となっている。
同機構は、金利スワップ取引の実行には一定の費用を要することを踏まえて、26年3月に、量的・質的金融緩和により近年の金利水準が低位安定している中で今後急激に金利が変動する可能性は低く、また、その場合に発生する損失も限定的であると見込まれるとの認識の下、26年度以降は金利スワップ取引を休止することとしていた。そして、実際の26年度以降の金利水準は低位安定して推移しており、同機構に新たに異常損失が計上されていない。このため、金利変動準備基金で対応する必要のある異常損失は、25年度以前の金利スワップ取引に関して発生した損失に係る分のみとなっていて、その額は、当該金利スワップ取引の契約期間の満了等に伴って、25年度の1億2505万余円から令和元年度の1671万余円へと大きく減少している。
このような状況下において、異常損失に対応するための金利変動準備基金を同機構に設置する必要性は、従前に比べて低下していた。
長期運用法人においては、将来の金利の変動による影響に加えて、金利の変動等による為替や株価等の変動の影響を受けて、期待された収益を確保できないおそれがある。そこで、金利リスクを含めた、様々な市場の要因によって保有する資産の価値が変動するリスク(以下「市場リスク」という。)について、長期運用法人における平成30年度末の対応状況をみると、いずれの法人においても、VaR(注16)、推定トラッキングエラー(注17)等の指標を計測したり、ストレステスト(注18)を実施したりなどしており、法人におけるリスク管理の一つとして市場リスクを管理している。
年金積立金管理運用及び勤労者退職金共済機構(一般の中小企業退職金共済事業等勘定等)における経年の状況をみると、年金積立金管理運用のVaRは、25年6月及び26年10月に、国内外の株式の構成割合を増やすなどの基本ポートフォリオの変更を行うなどする中、25年度から28年度まで年々増加している。一方、勤労者退職金共済機構(一般の中小企業退職金共済事業等勘定等)は、29年2月に、外国株式の構成割合を減らして国内債券の割合を増やすなどの基本ポートフォリオの変更を行っている中で、28年度以降のVaRは、27年度以前に比べて減少している。
インフラ法人が調達した資金については、整備等したインフラ資産から得られる利用料収入等により償還することになるが、当該利用料収入等により長期借入金の借入れ等の全てを償還するまでには長期間を要することから、長期借入金の借入れ等を全て償還する前に当該資金の償還期限が到来した場合には、当該長期借入金の借入れ等を借り換えることになる。そして、仮に借換えの際に市場金利が上昇していた場合には、借換えに係る資金調達費用が増加することになり、法人に損失が生じたり、法人の資金繰りが悪化したりなどするおそれがある。
そこで、将来の借換えに対する金利リスクについて、インフラ法人における対応状況をみると、都市再生機構及び日本高速道路保有・債務返済機構は、金利リスクを低減するために、借換えを含む新たな資金調達をするに当たり、償還までの期間が相対的に長い長期借入金の借入れ等を増やすなどの対応を執っていた。なお、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(建設勘定等)は、基本的には同機構が建設した鉄道施設を使用する鉄道事業者に金利リスクが転嫁される仕組みとなっていて、金利リスクを負っていないとしているものの、実質的に金利リスクを負うことになる鉄道事業者からの要望を受けて、同様に償還までの期間が相対的に長い長期借入金の借入れ等を増やすなどしていた。
その他法人の資金調達は、法人によって様々となっている。そこで、25年度から30年度までの間の全ての年度末において借入金等残高のある預金保険機構、原子力損害賠償・廃炉等支援機構、農畜産業振興機構及び石油天然ガス・金属鉱物資源機構の4法人における資金調達に係る金利リスクへの対応状況をみると、各法人は、借入金等の償還年限を平準化するなどしていた。
また、その他法人はいずれも有価証券等を保有している。そこで、資金運用に係る金利リスクについて、その他法人における対応状況をみると、日本中央競馬会を除く11法人は、将来の金利上昇時には低金利の状況下において取得した債券に含み損が生ずるおそれがあるとして、保有する債券の時価を定期的にモニタリングするなどしていた。なお、日本中央競馬会は、同会の業務内容等に照らし、資金運用収益を確保する必要性が乏しい中、法人の全収入に占める資金運用収益の割合が極めて小さく、これにより損失が生じたとしても法人の事業運営に大きな影響を及ぼすおそれはないとしていた。
多くの検査対象法人は、長期借入金の借入れ等をすることができることとなっている。そして、長期借入金の借入れ等により調達した資金の使途をみると、インフラ整備、貸付け又は出資となっているものが大半となっている。
また、銀行への預金、国債等の取得等のいわゆる安全資産による資金運用は全ての検査対象法人ができることとなっている。一方、一部の法人は、株式や外国債券等による資金運用をしていたり、資金を貸し付けたりなどしている。
融資法人のうち国際協力銀行及び中小企業基盤整備機構(一般勘定等)を除いた12法人の資金調達利回りは、いずれも25年度から30年度までにかけて低下傾向で推移している。
長期運用法人は、いずれも、25年度から30年度までの間に借入金等による資金調達をしていない。
インフラ法人の資金調達利回りは、いずれも25年度から30年度にかけて年々低下している。
その他法人のうち、全ての年度末において借入金等残高のある4法人の資金調達利回りは、いずれも低下傾向で推移している。
融資法人の資金運用利回りは、国際協力銀行、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(助成勘定等)及び郵便貯金・簡易生命保険管理機構の3法人においては25年度から30年度にかけて上昇傾向となっているが、それ以外の11法人においては低下傾向で推移している。
長期運用法人の資金運用利回りは、いずれも年度によって大きく変動している。
インフラ法人の資金運用利回りは、いずれも25年度から28年度にかけて低下し、その後横ばいで推移している。
その他法人の資金運用利回りは、ほとんどの法人で低下傾向にある。
新規の貸付けをしている融資法人の中には、近年の低金利の状況下において、融資法人に対する民間企業や個人等の資金需要が変化し、法人が行う貸付金残高に変化が生じているものが見受けられた。また、預貸金利ざやがおおむねゼロに近い水準で横ばいとなっていたりマイナスの水準で推移したりしている法人が見受けられた。
長期運用法人のうち、日本私立学校振興・共済事業団(厚生年金勘定等)の標準偏差は25年度の3.97%から30年度の9.29%へ、年金積立金管理運用の標準偏差は同5.55%から同12.52%へと、それぞれ大きくなっている。長期運用法人の実際の利回りは、25年度から30年度までの間においては、単年度でみると、各法人とも目標利回りを上回った年度もあれば目標利回りを下回りマイナスとなった年度もあるなど、ばらつきのある状況となっている。また、複数年度でみると、いずれも目標利回りを上回っている。
インフラ法人のうち1法人は、28年度以降、事業量が増加傾向にある。また、インフラ法人のうち、インフラの整備に加え、債務残高等を削減することが法人として求められている2法人の債務残高等の推移をみると、いずれも減少傾向となっている。
その他法人が行う資金運用の中には、運用益型基金等が3法人において4基金等ある。そして、25年度から30年度までの間における当該4基金等の資金運用収益額は、いずれも年々減少していた。
検査対象法人の中には、国からの追加出資について、無利子の資金調達と捉えることができる法人が見受けられた。
また、マイナス金利政策が導入決定された28年1月以降に公募により発行された政府保証債の中には、公募入札の結果を受けて、発行差金が償還までの支払利息の合計額を上回り、発行時の利回りがマイナスとなるものが生じている。
近年の低金利の状況下において、法人の資金調達に係る費用が減少していることなどから、当該費用を補う無利子貸付補給金の交付額は、全体では年々減少している。
運用益型基金等を設置している法人の中には、運用益型基金等から生ずる資金運用収益額だけでは事業を実施するのに必要な財源を確保することが困難となったことから、事業を実施するための財源として、新たに国から補助金等の交付を受けることとしていたものが1法人において1基金等見受けられた。
融資法人において、資金運用と資金調達の条件等のかい離等に起因する金利リスクについて、融資法人における30年度の対応状況をみると、12法人は、いずれも金利リスクを負っており、金利リスクを何らかの対応を執る必要のあるリスクであるなどとして管理しており、金利の変動による法人の損失を低減するなどのために、ALMにおいて計測する指標等を定め、計測した指標を定期的に分析するなどしていた。ALMにおいてデュレーション・ギャップを計測している8法人のうち、沖縄振興開発金融公庫は、これまで、財政融資資金からの借入金について借入期間を貸付期間の構成に合わせる取組を行ってきたとしているものの、現在の資産と負債の構成にはデュレーション・ギャップが存在すると認識していて、縮小を図る必要があるとしている。
また、ALMを行っている法人のうち4法人は、金利リスクへの対応として金利スワップ取引を行っている。このうち、住宅金融支援機構は、パイプラインリスクに対応するために金利スワップ取引を行っている。そして、同機構には、その運用益で金利スワップ取引に係る異常損失に対応するための金利変動準備基金が、政府出資金を財源として設置されているが、金利水準が低位安定している中で今後急激に金利が変動する可能性は低いと見込まれるなどとして、26年度以降は金利スワップ取引を休止することとしていた。そして、実際の26年度以降の金利水準は低位安定して推移しており、同機構に新たに異常損失が計上されていない。このため、金利変動準備基金を同機構に設置する必要性は、従前に比べて低下していた。
長期運用法人においては、いずれの法人においても、VaR等の指標を計測するなどして市場リスクを管理している。このうち、年金積立金管理運用のVaRは25年度から28年度まで年々増加している。
インフラ法人のうち2法人は、金利リスクを低減するために、償還までの期間が相対的に長い長期借入金の借入れ等を増やすなどの対応を執っていた。
その他法人のうち、25年度から30年度までの間の全ての年度末において借入金等残高のある4法人における資金調達に係る金利リスクへの対応状況をみると、各法人は、借入金等の償還年限を平準化するなどしていた。また、資金運用に係る金利リスクについては、11法人が保有する債券の時価を定期的にモニタリングするなどしていた。
25年4月の量的・質的金融緩和の導入以降、10年国債の市場金利は0.4%台まで低下し、さらに、28年1月のマイナス金利政策の導入決定後の同年2月にはマイナスの水準となるなど、近年、低金利の状況が続いている。
このような状況下において、多くの検査対象法人における資金調達利回りは低下し、長期運用法人を除く多くの検査対象法人における資金運用利回りも低下している。
そして、検査対象法人の中には、近年の低金利の状況下において資金運用収益額が減少して、新たに国の財政支援を受けることになったものなどが見受けられている。また、検査対象法人の実施する業務に対する民間企業や個人等の資金需要が変化しているなどの状況も見受けられている。さらに、今般の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を踏まえた資金繰り対策に係る貸付け等に必要な資金として、法人に対して計49兆余円の財政投融資計画の追加が行われている。
このような中にあって、検査対象法人は、設置根拠法等に基づく法人の目的を達成するために業務を行っていく必要がある。
したがって、検査対象法人において、将来にわたって持続的かつ安定的に業務を行っていけるよう、次の点に留意する必要がある。また、国土交通省においても、次のイの点に留意する必要がある。
本院としては、今後の金利の動向等も踏まえつつ、政府出資法人の業務及び財務の状況について、今後とも多角的な観点から引き続き注視していくこととする。