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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 令和元年12月|

待機児童解消、子どもの貧困対策等の子ども・子育て支援施策に関する会計検査の結果について


第1 検査の背景及び実施状況

1 検査の要請の内容

会計検査院は、平成30年6月18日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月19日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一)検査の対象

内閣府、文部科学省、厚生労働省

(二)検査の内容

子ども・子育て支援施策に関する次の各事項

  1. ① 子ども・子育て支援施策の実施状況及び予算の執行状況
  2. ② 子ども・子育て支援施策に係る主要施策による効果の発現状況

2 子ども・子育て支援施策の概要等

(1) 子ども・子育て支援法等の概要

厚生労働省(13年1月5日以前は厚生省)が2年に公表した人口動態統計において、我が国の元年における合計特殊出生率(注1)が1.57と過去最低(当時)であったことなどを契機として、我が国における出生率の低下や少子化が大きな社会問題として認識されるようになった。そして、15年7月には、少子化に的確に対処するための施策を総合的に推進するために、「少子化社会対策基本法」(平成15年法律第133号)が制定され、政府は、同法に基づき、16年6月に、少子化に対処するための施策の指針として、少子化社会対策大綱を閣議決定した。その後、27年3月に閣議決定された現在の少子化社会対策大綱では、子育て支援施策の一層の充実等が重点課題となっている。

子育て支援施策の充実等については、近年、子育て家庭における育児の孤立化や負担感の増大、保育所等の利用の申込みを行っているものの利用できないなどの児童(以下「待機児童」という。後掲(2)イ(ア)参照)の発生等が深刻な社会問題となっていることから、これらの諸問題に対応するために、24年8月に「子ども・子育て支援法」(平成24年法律第65号。以下「支援法」という。)、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律」(平成24年法律第66号)及び「子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成24年法律第67号)、いわゆる「子ども・子育て関連3法」が制定され、27年4月に全面施行された。国及び地方公共団体は、支援法等に基づき、地域の実情に応じた子育て支援や、仕事と子育ての両立支援等を推進していくこととなった。

また、貧困の状況にある子どもの増加も社会問題となっていることから、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るために、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的として、25年6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(平成25年法律第64号。以下「貧困対策法」という。)が制定され、26年1月に施行された。政府は、貧困対策法に基づき、同年8月に「子供の貧困対策に関する大綱」(以下「貧困対策大綱」という。)を閣議決定し、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するなどとしている。

(注1)
合計特殊出生率  15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したものであり、一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとした場合の子どもの数に相当するもの

(2) 子ども・子育て支援施策の概要

前記の参議院からの検査要請について、30年6月18日の参議院決算委員会において検査の内容として示された「待機児童解消、子どもの貧困対策等の子ども・子育て支援施策」は多岐にわたっている。そこで、会計検査院において、支援法等に基づく子ども・子育て支援新制度(以下「支援制度」という。)及び子どもの貧困対策に係る主な施策に関して内閣府が公表している30年度の予算関係資料等に基づき、内閣府、文部科学省及び厚生労働省(以下「3府省」という。)が所管する子ども・子育て関係の主な施策のうち、待機児童の解消に係る施策(以下「待機児童解消施策」という。)及び子どもの貧困対策に係る施策について分類して整理すると、図表0-1のとおりとなる。

図表0-1 3府省が所管する子ども・子育て関係の主な施策等

内閣府

区分 主な施策 主な交付金等
待機児童解消施策 子どものための教育・保育給付等 子どものための教育・保育給付交付金(認定こども園、幼稚園及び保育所への共通の給付等)
子どものための教育・保育給付費補助金(認定こども園等への移行を希望する認可外保育施設に対する財政支援等)
地域子ども・子育て支援事業 子ども・子育て支援交付金(一時預かり事業等)
企業主導型保育事業 仕事・子育て両立支援事業費補助金
子どもの貧困対策に係る施策 生活の支援  
  地域子ども・子育て支援事業 子ども・子育て支援交付金(乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業等)
沖縄子供の貧困緊急対策事業 沖縄子供の貧困緊急対策事業費補助金
地域における施策推進への支援(調査研究・施策の推進体制等)  
  子供の未来応援地域ネットワーク形成支援事業 地域子供の未来応援交付金

文部科学省

区分 主な施策 主な交付金等
子どもの貧困対策に係る施策 教育の支援  
  スクールソーシャルワーカー・スクールカウンセラーの配置拡充 教育支援体制整備事業費補助金
地域未来塾による学習支援の充実 学校・家庭・地域連携協力推進事業費補助金
幼稚園就園奨励費補助 幼稚園就園奨励費補助金
要保護児童生徒に対する就学援助 要保護児童生徒援助費補助金

厚生労働省

区分 主な施策 主な交付金等
待機児童解消施策 保育所等の整備支援 保育所等整備交付金等
改修による保育所等の設置支援 保育対策総合支援事業費補助金(小規模保育改修費等に係る事業等)
賃貸方式による小規模保育等の推進 保育対策総合支援事業費補助金(都市部における保育所等への賃借料支援事業等)
多様な保育の充実 保育対策総合支援事業費補助金等(保育利用支援事業等)
保育人材確保のための総合的な対策 保育対策総合支援事業費補助金等(保育士・保育所支援センター設置運営事業等)
安心かつ安全な保育の実施への支援 保育対策総合支援事業費補助金等(保育所等の事故防止の取組強化事業等)
子どもの貧困対策に係る施策 教育の支援  
  生活困窮世帯等の子どもへの学習支援 生活困窮者就労準備支援事業費等補助金
生活保護制度による教育扶助 生活扶助費等負担金等
生活の支援  
  生活困窮者家計相談支援事業 生活困窮者就労準備支援事業費等補助金等
子どもの生活・学習支援事業 母子家庭等対策総合支援事業費国庫補助金
社会的養護自立支援事業、児童相談所の相談機能強化等 児童福祉事業対策費等補助金等
保護者に対する就労の支援  
  ひとり親家庭の親に対する就業支援 母子家庭等対策総合支援事業費国庫補助金、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)等
生活困窮者及び生活保護受給者に対する就労支援 生活扶助費等負担金等
経済的支援  
  児童扶養手当の支給 児童扶養手当給付費負担金等
母子父子寡婦福祉資金の貸付 母子父子寡婦福祉貸付金
  • 注(1) 内閣府「平成30年度における子ども・子育て支援新制度に関する予算案の状況について」(平成30年1月公表)、「子供の貧困対策に関する主な施策について(平成30年度政府予算)」(平成30年5月子供の貧困対策に関する有識者会議(第6回)資料)等に基づき作成
  • 注(2) 各施策の内容、予算規模等を勘案し、平成30年度に実施されている主な施策のみを掲げており、子ども・子育て関係の主な施策であるものの29年度以前に実施されていたもの、30年度の予算額が少額であるものなどについては本図表に含めていない。
  • 注(3) 「待機児童解消施策」と「子どもの貧困対策に係る施策」の両方に関連する施策もあるが、便宜上、より関連性が強いと考えられる方に分類している。

3府省が所管する待機児童解消施策としては、内閣府所管では、支援制度に係る「子どものための教育・保育給付等」(後掲第2の1(2)ア等参照)、「企業主導型保育事業」(後掲第2の1(2)ウ及び第2の2(1)ウ参照)等があり、これらの施策を実施するために子どものための教育・保育給付交付金(29年度以前は子どものための教育・保育給付費国庫負担金。以下同じ。)、仕事・子育て両立支援事業費補助金等が交付されている。そして、厚生労働省所管では、「保育所等の整備支援」等の保育施設等の整備に関する施策(以下「保育施設等整備施策」という。後掲第2の1(2)ア及び第2の2(1)ア参照)や「保育人材確保のための総合的な対策」等の保育士等の確保に関する施策(以下「保育士等確保施策」という。後掲第2の1(2)イ及び第2の2(1)イ参照)があり、これらの施策を実施するために保育所等整備交付金、保育対策総合支援事業費補助金等が交付されている。

また、子どもの貧困対策に係る施策について、内閣府等は、その範囲が明確に定まっていないとしている。そして、子どもの貧困対策のみを目的として実施されている施策は少数であり、様々な施策の一部に子どもの貧困対策に関連する取組等が含まれている場合が多いとしているが、貧困対策大綱に基づくなどして子どもの貧困対策に係る主な施策を分類すると、教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援等に大別される(後掲第2の1(2)オ及び第2の2(3)参照)。

さらに、子ども・子育て関係の主な施策の中には、児童手当法(昭和46年法律第73号)に基づく児童手当や、幼稚園の施設整備に対する財政支援等、各施策の主な目的等に鑑みて、待機児童解消施策及び子どもの貧困対策に係る施策以外に分類される施策(以下「その他の施策」という。)も多数ある(後掲第2の1図表1-1-1参照)。その他の施策のうち、支援法に基づく施策としては、地域の実情に応じた子育て支援を実施するための地域子ども・子育て支援事業における主要な事業である内閣府及び厚生労働省所管の放課後児童健全育成事業、地域子育て支援拠点事業(後掲第2の1(2)エ及び第2の2(2)参照)等があり、これらの施策を実施するために子ども・子育て支援交付金が交付されている。

以上の整理を踏まえて、本報告では、3府省が実施する待機児童解消施策及び子どもの貧困対策に係る主な施策を中心としつつ、その他の施策として、支援法に基づく施策であり、その予算額が多額に上っている放課後児童健全育成事業、地域子育て支援拠点事業等を含めて、前記の「待機児童解消、子どもの貧困対策等の子ども・子育て支援施策」として取り扱うこととする。

支援制度並びに子ども・子育て支援施策のうち待機児童解消施策、放課後児童健全育成事業、地域子育て支援拠点事業及び子どもの貧困対策に係る施策の概要は次のとおりである。

ア 支援制度の概要
(ア) 支援制度の実施体制

支援法は、子ども及び子どもを養育している者に必要な支援等を行い、もって一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与することを目的としており、この目的を達成するために、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」(平成18年法律第77号。以下「認定こども園法」という。)に基づき設置等される認定こども園、幼稚園、保育所等に対する共通の財政支援や、地域の実情に応じた子育て支援、仕事と子育ての両立支援等の支援制度が実施されている。

支援法等では、支援法に基づく事務の企画立案から執行までを内閣府が一元的に所掌することとなったため、27年度に内閣府に「子ども・子育て本部」が設置され、支援制度の一元的な実施体制が整備されることとなった。また、認定こども園制度等については、学校教育法(昭和22年法律第26号)及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)の体系との整合性を確保する観点から、内閣府が文部科学省及び厚生労働省と連携しながら事務を実施することとなった。そして、児童手当法に基づく児童手当の支給、認定こども園、幼稚園及び保育所(以下、これらを合わせて「教育・保育施設」という。)への共通の給付(以下「施設型給付」という。)、地域子ども・子育て支援事業に係る交付金の交付等の支援法に基づく事務は内閣府子ども・子育て本部が、保育所、地域子ども・子育て支援事業等に係る基準の制定及び指導監督、保育士に関する事項等の児童福祉法に基づく事務は厚生労働省が、幼稚園に係る基準の制定及び指導監督等の学校教育法等に基づく事務は文部科学省が、それぞれ実施し、認定こども園法に基づく事務は3府省が連携しながら実施している(図表0-2参照)。

図表0-2 3府省による支援制度の実施体制(概念図)

図表0-2 3府省による支援制度の実施体制(概念図) 画像

(イ) 国及び地方公共団体の役割

児童福祉法によれば、国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負うこととされている。そして、市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、児童及び妊産婦の福祉に関して、必要な実情の把握に努め、必要な情報の提供等を行わなければならないこととされ、都道府県は、市町村の業務の実施に関して、市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供等を行うとともに、各市町村の区域を超えた広域的な見地から実情の把握に努めなければならないこととされている。また、国は、市町村及び都道府県の業務が適正かつ円滑に行われるよう、児童が適切に養育される体制の確保に関する施策、市町村及び都道府県に対する助言、情報の提供等を行わなければならないこととされている。

また、支援法等によれば、市町村は、児童手当の支給、施設型給付、地域子ども・子育て支援事業等の実施主体となり、地域における幼児教育・保育及び子育て支援についての需要を把握するための調査を実施し、その需要に対する子ども・子育て支援の提供体制の確保等を内容とする27年度から5か年の事業計画(以下「子ども・子育て支援事業計画」という。)を策定することとされ、都道府県は、「都道府県子ども・子育て支援事業支援計画」を作成したり、市町村に対する必要な助言及び適切な援助を行ったりすることとされている。また、国は、市町村及び都道府県と相互に連携を図りながら、子ども・子育て支援の提供体制の確保に関する施策その他の必要な各般の措置を講ずることとされている。

(ウ) 支援制度による主な施策の概要

支援制度による主な施策の概要は図表0-3のとおりとなっており、主に「認定こども園、保育所、小規模保育等に対する共通の財政支援」「地域の実情に応じた子育て支援」及び「仕事と子育ての両立支援」の三つの施策で構成されている。このうち「認定こども園、保育所、小規模保育等に対する共通の財政支援」に係る事業は、子どものための教育・保育給付交付金により市町村が実施しているものである。

 「地域の実情に応じた子育て支援」に係る事業は、保育が必要な子どものいる家庭だけでなく、全ての子育て家庭を対象に地域の需要に応じた多様な子育て支援を充実させるために、子ども・子育て支援交付金により市町村が実施しているものであり、乳幼児及びその保護者を対象とした地域子育て支援拠点事業、小学校就学児童を対象とした放課後児童健全育成事業等の事業がある。

また、「仕事と子育ての両立支援」に係る事業として掲げられている企業主導型保育事業は、多様な就労形態に対応した保育サービスの拡大等を図るとともに、待機児童の解消を図ることを目的として、仕事・子育て両立支援事業費補助金により内閣府が実施しているものである。

図表0-3 支援制度による主な施策の概要(概念図)

図表0-3 支援制度による主な施策の概要(概念図) 画像

これらのうち、「認定こども園、保育所、小規模保育等に対する共通の財政支援」の概要は、次のaからcまでのとおりである。

a 財政支援の内容

児童福祉法等によれば、市町村は、保護者の労働又は疾病等の事由により、その監護すべき満1歳に満たない者(以下「乳児」という。)、満1歳から小学校就学の始期に達するまでの者(以下「幼児」という。)その他の児童について保育を必要とする場合において、当該児童を保育所において保育しなければならないことなどとされている。

そして、保育所等の教育・保育施設が行う教育・保育に要する人件費、事業費、管理費等の費用に対する共通の財政支援として施設型給付が実施されており、市町村は、支援法第65条第1項第1号の規定等に基づき、教育・保育施設に係る施設型給付費等の支給に要する費用を支弁することとなっている。なお、私立保育所については、支援法附則第6条第1項の規定に基づき、施設型給付ではなく、支援制度の施行前と同様に、市町村が保育所の運営主体に対して、保育に要する費用を委託費として支払うこととなっている。

さらに、児童福祉法では、5人以下の子どもを保育する「家庭的保育事業」、6人以上19人以下の子どもを保育する「小規模保育事業」、居宅において保育を行う「居宅訪問型保育事業」及び事業主が設置する施設等で保育を行う「事業所内保育事業」の4事業(以下、これらの4事業を「地域型保育事業」という。)が、同法上の事業として定められている。そして、地域型保育事業による保育(以下「地域型保育」という。)に要する人件費、事業費、管理費等の費用に対する財政支援として「地域型保育給付」が実施されており、市町村は、支援法第65条第1項第2号の規定に基づき、地域型保育に係る地域型保育給付費の支給に要する費用を支弁することとなっている(以下、施設型給付、地域型保育給付等を合わせて「子どものための教育・保育給付」という。)。

支援法第27条第1項及び第29条第1項の規定によれば、市町村は、教育・保育施設又は地域型保育を行う事業者ごとに、施設型給付費の支給に係る施設又は地域型保育給付費の支給に係る事業者としての確認を行い、施設型給付費又は地域型保育給付費を支給することとされている(以下、市町村が上記の確認を行う教育・保育施設を「特定教育・保育施設」、地域型保育を行う事業者を「特定地域型保育事業者」といい、特定教育・保育施設により行われる教育・保育を「特定教育・保育」という。)。

b 財政支援の対象者

支援法等によれば、子どものための教育・保育給付を受けようとする保護者は、市町村に対して、子どものための教育・保育給付を受ける資格を有すること及び次の①から③までの小学校就学の始期に達するまでの者(以下「小学校就学前子ども」という。)の区分についての認定を申請し、その認定を受けなければならないこととされている。

  • ① 満3歳以上の小学校就学前子ども(②に該当するものを除く。)
  • ② 満3歳以上の小学校就学前子どもであって、保護者の労働又は疾病その他の事由により家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの
  • ③ 満3歳未満の小学校就学前子どもであって、②に規定する事由により家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの

そして、②に規定する事由としては、保護者の昼間労働、昼間以外の労働、妊娠・出産、疾病・傷害、求職活動等が該当するとされている。

前記の申請を受けた市町村は、小学校就学前子どもの区分の認定と合わせて、1月間において子どものための教育・保育給付費を支給する保育の量(以下「保育必要量」という。)の認定を行うことなどとなっている(以下、市町村が行う小学校就学前子どもの区分及び保育必要量の認定を「支給認定」という。)。そして、市町村は、支給認定に係る子ども(以下「支給認定子ども」という。)について、保護者からの保育所等の利用の申込みを受けて利用調整を行い、利用可能な特定教育・保育施設又は特定地域型保育事業者のあっせんなどを行うほか、特定教育・保育施設又は特定地域型保育事業者に対して、その子どもが利用できるよう要請を行うこととなっている。

c 国、都道府県等の費用負担

市町村が支弁する費用のうち、都道府県及び市町村以外の者が設置する特定教育・保育施設に係る施設型給付費等の支給に要する費用から利用者負担額を控除した額の2分の1については国が、4分の1については都道府県が、それぞれ負担することなどとなっている。そして、内閣府は、国の負担分として子どものための教育・保育給付交付金を市町村に対して交付している。

内閣府によると、私立保育所等に支給する上記の施設型給付費等に係る国、都道府県及び市町村の負担額と保護者による負担額とを合わせた保育等に要する費用の総額(全年齢の児童の計)は、30年度当初予算ベースで計2兆5710億余円(うち国の負担額計8977億余円)となっている。

イ 待機児童解消施策の概要

待機児童解消施策により解消を図る必要がある待機児童の状況、保育所等の整備支援等を通じた保育施設等整備施策の概要、保育士等確保施策の概要及び企業主導型保育事業の概要は次のとおりである。

(ア) 待機児童の状況

a 待機児童数の把握

厚生労働省は、児童福祉法に基づき都道府県知事の認可を受けるなどした保育所(以下「認可保育所」という。)等の利用申込児童数(以下「申込児童数」という。)、認可保育所等の利用児童数(以下「利用児童数」という。)、待機児童数等を把握するために、毎年度、全国の市町村を対象として、「保育所等利用待機児童数調査」(以下「待機児童数調査」という。)を実施している。待機児童数調査においては、図表0-4の方法により待機児童数を把握することなどとなっている。そして、保育の必要性が認定され、特定教育・保育施設(認定こども園の幼稚園機能部分及び幼稚園を除く。)又は特定地域型保育事業の利用の申込みがされているが、利用していない児童数から、②、③、④及び⑤により待機児童数に含めないこととされた児童数を除くなどした児童数が待機児童数となる。

図表0-4 待機児童数の把握方法の概要(平成30年度)

調査日時点において、保育の必要性が認定され、特定教育・保育施設(認定こども園の幼稚園機能部分及び幼稚園を除く。)又は特定地域型保育事業の利用の申込みがされているが、利用していない児童を待機児童として把握すること
 
保護者が求職活動中の場合については、待機児童数に含めること。ただし、求職活動中であることを事由とした申込みについては、調査日時点において求職活動を行っておらず、保育の必要性が認められない状況にあることの確認ができる場合には、待機児童数に含めないこと
付近に認可保育所等がないなどやむを得ない事由により、認可保育所等以外の場で適切な保育を行うために実施している「地方公共団体が一定の施設等の基準に基づき運営費支援等を行っている単独保育施策」「一時預かり事業(幼稚園型)又は預かり保育の補助を受けている幼稚園」「企業主導型保育事業」等において保育されている児童については、待機児童数に含めないこと
他に利用可能な認可保育所等の情報の提供を行ったにもかかわらず、特定の認可保育所等を希望し、待機している場合には待機児童数に含めないこと
育児休業中の保護者については、認可保育所等に入所できたときに復職することを、保育所入所保留通知書発出後や調査日時点等において継続的に確認し、復職に関する確認ができる場合には、待機児童数に含めること。ただし、それが確認できない場合には、待機児童数に含めないこと
 
  • 待機児童数
  • ①により把握された児童数
  • ②、③、④及び⑤により待機児童数に含めないこととされた児童数

また、認可保育所等の利用の申込みを行ったものの利用できておらず、かつ、待機児童に含まれない児童を潜在的待機児童等として分類する地方公共団体等もあるが、厚生労働省は、潜在的待機児童に明確な定義はないとしている。会計検査院が確認したところ、上記の地方公共団体等が潜在的待機児童等に含めている児童の範囲は一律ではないものの、図表0-4の②、③、④及び⑤により待機児童に含めないこととされた児童を潜在的待機児童等としている場合が多くなっていた。本報告においては、③により待機児童に含めないこととされた児童については、認可保育所等ではないものの、国等により一定の支援が行われている保育施設等を利用しており、現に保育の提供を受けていることなどから「その他施設等利用児童」として整理し、残りの②、④及び⑤により待機児童に含めないこととされた児童を「潜在的待機児童」として整理することとする(潜在的待機児童及びその他施設等利用児童については、後掲第2の2(1)エ(ウ)参照)。

なお、待機児童数調査は、毎年度4月1日時点と10月1日時点の2回実施されているが、厚生労働省は、地方公共団体ごとに年度途中の認可保育所等の入所手続等が異なることから、10月1日時点の待機児童数は参考値であるとしている。

b 待機児童数の推移

厚生労働省は、毎年度、待機児童数調査で把握した待機児童数を公表しており、14年度から31年度までの各年度の4月1日時点の待機児童数等の推移は、図表0-5のとおりとなっている。これによれば、待機児童数は、15年度の26,383人を境に19年度には17,926人まで減少したものの、保育需要の増大等を受けて増加に転じ、22年度は26,275人となっている。23年度には25,556人となり減少に転じたものの、27年度から29年度までは再び増加している。そして、直近の31年度には16,772人となるなど減少傾向にあるものの、1 ・2歳児を中心として依然として待機児童の解消には至っていない状況となっている。

図表0-5 待機児童数等の推移(平成14年度~31年度)

図表0-5 待機児童数等の推移(平成14年度~31年度) 画像

(イ) 保育施設等整備施策の概要

a 待機児童解消加速化プランによる保育の受け皿の確保

図表0-5のとおり、24年度には、24,825人と多くの待機児童が発生していて、その後も保育需要は増加する見込みとなっており、保育施設等の整備が喫緊の課題となっていた。

そこで、政府は、待機児童解消のための取組を一層加速化させるために、25、26両年度で、保育需要の増加を踏まえた20万人分の保育の受け皿を確保するとともに、当時、全国的な保育需要がピークを迎えるとされた29年度末までに、潜在的な保育需要も含め、40万人分の保育の受け皿を確保することを目標とした待機児童解消加速化プラン(以下「加速化プラン」という。)を25年4月に策定し、公表している。

その後、政府は、27年11月に、女性の就業率が更に上昇することを念頭に、29年度末までに確保する保育の受け皿の目標を40万人分から50万人分へ上積みしている。

b 子育て安心プランによる保育の受け皿の確保

政府は、女性の就業率が更に上昇して、就業率の上昇に伴って小学校就学前子ども数に対する申込児童数の割合(以下「保育所等利用申込率」という。)も上昇することが見込まれたことから、30年度から34年度(令和4年度)末までの間に25歳から44歳までの女性の就業率が80%に達した場合にも対応できる32万人分の保育の受け皿を新たに整備することを目標とした「子育て安心プラン」を29年6月に策定し、公表している。

その後、政府は、29年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」において、上記の目標を前倒しして、32年度(令和2年度)末までに整備することとしている。

(ウ) 保育士等確保施策の概要

a 保育士の資格、登録等

児童福祉法第18条の4の規定によれば、保育士は、同法第18条の18第1項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいうこととされている。同法第18条の6の規定によれば、都道府県知事の指定する保育士を養成する学校その他の施設(以下「指定保育士養成施設」という。)を卒業した者と、保育士試験に合格した者が、保育士となる資格を有することとされている。同法第18条の18第1項の規定によれば、保育士となる資格を有する者が保育士となるには、保育士登録簿に、氏名、生年月日その他の厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならないこととされている。保育士登録簿は都道府県に備えられ、都道府県知事は、保育士の登録をしたときは、申請者に氏名、生年月日等の事項を記載した保育士登録証を交付することとなっている。

b 保育士の配置

児童福祉法第45条第1項及び第2項の規定によると、都道府県は、厚生労働省令で定める「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(昭和23年厚生省令第63号。以下「設備運営基準」という。)に従い、又は設備運営基準を参酌して児童福祉施設の設備及び運営について条例で基準を定めることとなっている。そして、設備運営基準第33条の規定によれば、保育所には、保育士等を置かなければならないこととされており、保育士の数は、乳児おおむね3人につき1人以上、満1歳以上満3歳に満たない幼児おおむね6人につき1人以上、満3歳以上満4歳に満たない幼児おおむね20人につき1人以上、満4歳以上の幼児おおむね30人につき1人以上とすることとされている。

c 保育士確保プランの概要

加速化プランの確実な実施のために、厚生労働省は、国全体で必要となる保育士の数を推計して、その推計に基づき必要となる保育士を確保できるように、国、都道府県、市町村等において人材育成、就業継続支援、再就職支援、働く職場の環境改善等の施策を強力に推進することを目的とした保育士確保プランを27年1月に策定し、公表している。

保育士確保プランによれば、加速化プランによる40万人分の保育の受け皿の拡大に伴って必要となる保育士の確保を図るための取組を推進し、29年度末までに国全体として46.3万人の保育士を確保することを目標として、新たに6.9万人の保育士を確保することとされている。そして、国全体で新たに確保が必要となる保育士の人数については、支援制度に基づき市町村が策定する子ども・子育て支援事業計画における保育サービス量の見込み、地域の実情、支援制度の施行後における更なる保育の質の拡充のための取組等を踏まえて推計している。

そして、保育士確保プランによれば、国全体として46.3万人の保育士を確保するために、既に加速化プランにより取り組んでいる各種施策の推進、保育士確保プランによる新たな取組の実施及び更なる検討による施策の強化を推し進めることとされている。また、保育士確保施策の更なる強化を図るために、有識者や関係団体等で構成する「保育士確保対策検討会」を設置し、保育士確保のための様々な方策等について検討を行うこととされている。

その後、27年11月に、加速化プランによる29年度末までの保育の受け皿の目標が40万人分から50万人分へ上積みされたことに伴い、厚生労働省は、新たに確保することが必要となる保育教諭や地域型保育事業の保育従事者等を含めた保育人材の人数を6.9万人から9万人へ上積みして、国全体で48.3万人の保育人材を確保することを目標としている。

d 保育士等の確保

厚生労働省の職業安定業務統計によると、保育士の有効求人数は25年1月で27,139人、26年1月で33,022人、27年1月で39,377人、28年1月で44,217人、29年1月で49,173人、30年1月で57,963人と年々増加していて、保育士の需要は増加している。

厚生労働省は、地域の実情に応じた多様な保育需要に対応するために、小規模保育の設置等による保育の受け皿の確保や保育の担い手となる保育人材の確保に必要な措置を総合的に講ずることにより、待機児童の解消を図るとともに、子どもを安心して育てることができる環境整備を行うことを目的として、保育対策総合支援事業費補助金を、別図表1に掲げる事業を対象として、事業に要する費用の一部を都道府県等の実施主体に交付している。

そして、保育士等確保施策として、都道府県等は、地域の実情に応じて、前記の人材育成、就業継続支援、再就職支援、働く職場の環境改善等の施策を推進するために、保育対策総合支援事業費補助金による事業を実施している。

e 保育士等の処遇改善

厚生労働省の調査によると、26年度における保育士の平均給与は約316万円(男性の場合約350万円、女性の場合約314万円)となっていて、全業種の平均給与約479万円(男性の場合約536万円、女性の場合約364万円)と比較して低い給与水準となっている。そして、厚生労働省が27年11月に実施した「保育士等確保対策検討会」の資料において引用されている東京都福祉保健局の25年度の「東京都保育士実態調査報告書」によると、保育士による現在の職場への改善希望のうち給与・賞与等の改善を希望する保育士の割合が最も高い結果となっている。この結果は30年度の同報告書においても同様となっているなど、給与・賞与等の改善は保育士等確保施策の中でも重要な施策の一つとなっている。そして、保育士等の賃金改善を図るために、施設型給付費等における処遇改善等加算が実施されており、その額の算定等については次のとおりとなっている。

(a) 施設型給付費等の額の算定

前記施設型給付費等の額は、小学校就学前子どもの区分、保育必要量、当該特定教育・保育施設の所在する地域等を勘案して算定される特定教育・保育に通常要する費用の額を勘案して、内閣総理大臣が定める基準により算定した費用の額(以下「公定価格」という。)から、政令で定める額を限度として支給認定を受けた保護者の属する世帯の所得の状況その他の事情を勘案して市町村が定める額を控除して得た額とすることなどとなっている。

公定価格の算定に関する基準は、「特定教育・保育、特別利用保育、特別利用教育、特定地域型保育、特別利用地域型保育、特定利用地域型保育及び特例保育に要する費用の額の算定に関する基準等」(平成27年内閣府告示第49号。以下「告示」という。)に定められており、具体的な算定方法等は、「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の改正に伴う実施上の留意事項について」(平成28年府子本第571号、28文科初第727号、雇児発0823第1号)に定められている。

そして、告示等によれば、公定価格は、支給認定子どもについて、基本部分、基本加算部分、加減調整部分、乗除調整部分及び特定加算部分を基に算出する額とされている。

(b) 処遇改善のための人件費の加算

前記のとおり、公定価格は告示等に定められているが、そのうち、保育士等の賃金改善を図るための処遇改善等加算の具体的な要件等は、「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」(平成27年府政共生第349号、26文科初第1463号、雇児発0331第10号。29年4月改正)及び「「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」の取扱いについて」(平成27年8月内閣府、文部科学省、厚生労働省事務連絡)(以下、これらを合わせて「処遇改善通知」という。)に定められている。処遇改善通知等によれば、教育・保育の提供に携わる人材の確保及び資質の向上を図り、質の高い教育・保育を安定的に供給していくために、長く働くことができる職場を構築することを目的として、27年度から基本加算部分として職員の平均経験年数や賃金改善・キャリアアップの取組に応じた人件費の加算(以下「処遇改善等加算 I 」という。)を、29年度から特定加算部分として技能・経験を積んだ職員に係る追加的な人件費の加算(以下「処遇改善等加算 II 」という。)をそれぞれ行うこととされている。そして、処遇改善等加算 I 及び処遇改善等加算 II に係る加算額は、職員の賃金改善に充てることなどとされている。

(エ) 企業主導型保育事業の概要

内閣府は、仕事と子育ての両立に資する子ども・子育て支援の提供体制の充実を図るために、28年度から仕事・子育て両立支援事業を実施している。同事業は、事業所内保育施設の設置・運営等に要する経費に対する補助を行う企業主導型保育事業と、ベビーシッター派遣サービス等に要する経費に対する補助を行う企業主導型ベビーシッター利用者支援事業から構成されている。このうち企業主導型保育事業の概要等は次のとおりとなっている。

a 企業主導型保育事業費補助金等の概要

内閣府は、支援法に基づき、多様な就労形態に対応する保育サービスの拡大を行い、待機児童の解消を図り、仕事と子育ての両立に資することを目的として、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第82条第1項に規定する事業主等(以下「一般事業主」という。)から徴収する拠出金を財源として、28年度に企業主導型保育事業費補助金を創設するとともに、「平成28年度企業主導型保育事業費補助金の国庫補助について」(平成28年府子本第442号)等(以下「企業主導型交付要綱等」という。)に基づき、同年度から企業主導型保育事業に対して助成を行う補助事業者に同補助金を交付している。

同事業は、待機児童の解消等の目的を達成するために、「平成28年度企業主導型保育事業等の実施について」(平成28年府子本第305号、雇児発0502第1号)等(以下「企業主導型実施要綱等」という。)に基づき、一般事業主に雇用されている従業員(以下「従業員」という。)等が監護する児童の保育を行うものである。企業主導型実施要綱等によれば、一般事業主等が同事業を行うために設置する保育施設(以下「企業主導型保育施設」という。)の定員について、利用定員は6人以上とし、従業員の監護する児童に係る定員(以下「従業員枠」という。)と、従業員枠以外の児童に係る定員(以下「地域枠」という。)との区分に応じて設定することとされている。地域枠は、従業員枠の対象とならない地域住民等が監護する児童のために設定されるものであり、原則として利用定員全体の50%以内とすることとされている。

b 企業主導型保育事業に係る助成

内閣府は、企業主導型保育事業費補助金の交付に当たり公募により選定した団体を補助事業者とすることなどとしており、28年度に公益財団法人児童育成協会(以下「児童育成協会」という。)を補助事業者として選定し、さらに、各年度の審査等を経て、29、30両年度も児童育成協会を補助事業者として、企業主導型交付要綱等に基づき同補助金を交付している。

児童育成協会は、企業主導型実施要綱等に基づき、同補助金を原資として、企業主導型保育事業を実施する一般事業主等に対して企業主導型保育施設の整備に要する費用(以下「整備費」という。)及び企業主導型保育施設における保育の実施に要する経費(以下「運営費」という。)の助成を行う企業主導型保育助成事業を実施している(以下、児童育成協会が同事業により整備費の助成を行うために交付する助成金を「整備費助成金」といい、運営費の助成を行うために交付する助成金を「運営費助成金」という。また、整備費助成金及び運営費助成金の交付を受けて企業主導型保育施設の整備及び保育を実施する一般事業主等を「事業実施者」という。)。

ウ 放課後児童健全育成事業及び地域子育て支援拠点事業の概要

前記のとおり、市町村は、保育が必要な子どものいる家庭だけでなく、全ての子育て家庭を対象に地域の需要に応じた多様な子育て支援を充実させるために、地域子ども・子育て支援事業として、放課後児童健全育成事業、地域子育て支援拠点事業等を実施することとなっている。そして、国は、地域子ども・子育て支援事業に要する経費に充てるために、市町村に対して子ども・子育て支援交付金を交付している。放課後児童健全育成事業及び地域子育て支援拠点事業の概要は次のとおりである。

(ア) 放課後児童健全育成事業の概要

放課後児童健全育成事業は、放課後児童クラブの運営等に関する事業であり、「「放課後児童健全育成事業」の実施について」(平成27年雇児発0521第8号)によれば、児童福祉法第6条の3第2項の規定及び「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(平成26年厚生労働省令第63号。以下「児童クラブ設備運営基準」という。)に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない、小学校に就学している児童に対して、授業の終了後等に小学校の余裕教室、児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、家庭、地域等との連携の下、発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能となるよう、当該児童の自主性、社会性及び創造性の向上、基本的な生活習慣の確立等を図り、その健全な育成を図るものとされている。

また、文部科学省及び厚生労働省は、共働き家庭等において、子どもの小学校入学後に仕事を辞めざるを得ない状況となる、いわゆる「小1の壁」を打破するとともに、次代を担う人材を育成するために、全ての就学児童が放課後等を安全・安心に過ごし、多様な体験・活動を行うことができるよう、26年7月に「放課後子ども総合プラン」(以下「放課後プラン」という。)を策定し、公表している。放課後プランでは、31年度(令和元年度)末までに放課後児童クラブ約30万人分を新たに整備(合計で約122万人分)することを目標としていたが、その後、政府は、29年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」において、上記の目標を前倒しして、30年度末までに整備することとした。

(イ) 地域子育て支援拠点事業の概要

地域子育て支援拠点事業は、「地域子育て支援拠点事業の実施について」(平成26年雇児発0529第18号。以下「拠点要綱」という。)によれば、乳幼児及びその保護者が相互の交流を行う場所(以下「支援拠点」という。)を開設して、子育てについての相談、情報の提供、助言その他の援助を行う事業であり、少子化や核家族化の進行、地域社会の変化等、子どもや子育てをめぐる環境が大きく変化する中で、家庭や地域における子育て機能の低下や子育て中の親の孤独感や不安感の増大等に対応するため、支援拠点の設置を推進することにより、地域の子育て支援機能の充実を図り、子育ての不安感等を緩和し、子どもの健やかな育ちを支援することを目的とするものであるとされている。そして、地域子育て支援拠点事業においては、基本事業として、①子育て親子の交流の場の提供と交流の促進、②子育て等に関する相談及び援助、③地域の子育て関連情報の提供、④月1回以上の子育て及び子育て支援に関する講習等を全て実施することとされている。

エ 子どもの貧困対策に係る施策の概要
(ア) 貧困対策法等の概要

子どもの貧困対策については、前記のとおり、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的として、25年6月に貧困対策法が制定され、26年1月に施行されている。

内閣府等によれば、貧困対策法が制定された背景には、我が国における子どもの貧困率(注2)は特にひとり親世帯において高い状況であったこと、また、子どもの高等学校等進学率も生活保護世帯において低い状況であったことなどがあるとされている。

(注2)
子どもの貧困率  等価可処分所得(世帯の可処分所得(収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取り収入)を世帯員数の平方根で除して得た一人一人の可処分所得)の中央値の半額(貧困線)に満たない18歳未満の者の、18歳未満の子どもの総数に対する割合

政府は、図表0-6のとおり、貧困対策法に基づき、子どもの貧困対策に関する重要事項について審議し、子どもの貧困対策の実施を推進するなどのために、内閣府に内閣総理大臣を会長とする子どもの貧困対策会議を設置している。また、内閣府特命担当大臣の下に子どもの貧困対策に関する検討会を設置し、同検討会での議論等を踏まえて、貧困対策法に基づき、26年8月に貧困対策大綱を閣議決定した。そして、貧困対策大綱において、貧困は子どもたちの生活や成長に様々な影響を及ぼすが、その責任は子どもたちにはなく、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また、貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、必要な環境整備と教育の機会均等を図る子どもの貧困対策は極めて重要であるとしている。

貧困対策法によれば、子どもの貧困対策は、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下に、関連分野における総合的な取組として行わなければならないとされている。そして、国は、支援策の円滑な実施のために、地方公共団体等と密接に連携して施策等に関する情報共有等を行っていくこととしている。また、貧困に至った要因は経済的な要因のみならず、子どもが育った家庭環境や社会的要因等が影響しているとされており、貧困対策大綱では、子どもの貧困対策に関する基本的な方針として、①我が国の将来を支える積極的な人材育成策として貧困対策に取り組むこと、②子どもに視点を置いて切れ目のない施策の実施等に配慮すること、③子どもの貧困の実態を適切に把握した上で施策を推進すること、④子どもの貧困に関する指標(以下「大綱指標」という。)を設定してその改善等に向けて取り組むことなどが掲げられている。

そして、都道府県は、貧困対策法に基づき、貧困対策大綱を勘案して、子どもの貧困対策についての計画(以下「貧困対策計画」という。)を定めるよう努めることとなっている。

図表0-6 子どもの貧困対策を総合的に推進するための取組(概念図)

図表0-6 子どもの貧困対策を総合的に推進するための取組(概念図) 画像

貧困対策大綱では、基本的な方針のほか、大綱指標及び指標の改善に向けた当面の重点施策を掲げて、子どもの貧困対策を総合的に推進していくこととしている。そして、大綱指標については、関係施策の実施状況やその効果等の検証・評価を行うとともに、必要に応じて子どもの貧困対策の見直しなどを行うため、「子供の貧困率」「生活保護世帯に属する子供の高等学校等進学率」等の25の大綱指標(以下「25指標」という。)が定められている(別図表2参照)。そして、厚生労働省は、国民生活基礎調査において3年ごとに実施している大規模調査の概況の公表時に子どもの貧困率等を公表している。

内閣府によると、大綱指標は、国全体の子どもの貧困の状況を把握するために定められた指標であり、子どもの貧困対策に関する検討会や貧困対策法制定時における子どもの貧困率等の数値目標に関する議論を経て、数値目標としては設定しないことになったものであるとしている。また、大綱指標は国全体の状況を把握するための指標として設定しているため、同府は、大綱指標について、そのまま地方公共団体の指標として設定するように求めるのではなく、地域における実情等を踏まえ、実態に即した子どもの貧困対策を実施していく上での参考とするよう求めている。なお、25指標の中には、例えば、「ひとり親家庭の子供の就園率(保育所・幼稚園)」のように、単一の指標のみでは子どもの貧困の状態が改善されているかなどを評価することが困難であるもの、「生活保護世帯に属する子供の高等学校等進学率」と「生活保護世帯に属する子供の就職率(中学校卒業後)」のように、一方の率の上昇がもう一方の率の低下につながるものなども含まれている。

そして、令和元年6月には、「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」(令和元年法律第41号)が制定され、同年9月に施行されている(以下、同法による貧困対策法の改正を「貧困対策法改正」という。)。

貧困対策法改正の主な内容は、①子どもの貧困対策は、子どもの貧困の背景に様々な社会的な要因があることを踏まえて推進されなければならないなどとされたこと、②貧困対策大綱に定める大綱指標として、「一人親世帯の貧困率」及び「生活保護世帯に属する子どもの大学等進学率」が新たに示されたこと、③貧困対策大綱において、子どもの貧困対策に関する施策についての検証、評価等に関する事項を定めることとされたこと、④市町村は、貧困対策大綱等を勘案して、貧困対策計画を策定するよう努めるものとされたことなどとなっている。

(イ) 貧困対策大綱の見直しの検討状況

貧困対策大綱については、社会経済情勢の変化、子どもの貧困に関する状況の変化、施策の実施状況や対策の効果等を踏まえて、おおむね5年を目途に見直しを検討することとなっている。

そして、貧困対策大綱に掲げられている施策の実施状況や対策の効果等の検証・評価を行い、子どもの貧困対策についての検討を行うための仕組みとして、「子供の貧困対策に関する有識者会議」の設置が平成27年8月に決定された。同会議の第1回会合(28年7月開催)においては、子どもの貧困の実態あるいは支援の状況、子どもの貧困対策の効果等、国内外の調査を幅広く収集し分析を行うとの方向性が示された。これらの議論を踏まえて、内閣府によって28年度に「子供の貧困に関する新たな指標の開発に向けた調査研究」が実施されるなどしており、指標について一層体系化すべく検証を行い、改めて現行の大綱指標を整理した上で、関係施策の実施状況やその効果等の検証・評価を行う上で必要となる指標の例等について検討が行われた。また、同会議の第3回会合(29年3月開催)においては、大綱指標の見直しに当たっての方向性について議論等が行われた。

そして、内閣府は、貧困対策法改正、上記の会議における議論等を踏まえて、貧困対策大綱の見直しを令和元年度中に行い、前記の「一人親世帯の貧困率」等を含む新たな大綱指標を定める予定であるとしている。

(ウ) 持続可能な開発目標における子どもの貧困対策の位置付け

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals。以下「SDGs」という。)は、平成27年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年(令和12年)までの開発目標であり、格差の問題、持続可能な消費や生産、気候変動対策等、先進国が自らの国内で取り組まなければならない課題を含む全ての国に適用される普遍的な目標である。SDGsは、持続可能な世界を実現するために相互に密接に関連した17の目標と169のターゲット等から構成されており、17の目標のうち「貧困をなくそう」は、「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」ことを目標として、2030年(令和12年)までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性及び子どもの割合を半減させることをターゲットに設定して取り組むこととなっている。

政府は、28年5月に持続可能な開発目標(SDGs)推進本部を立ち上げ、同年12月に「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」(以下「SDGs実施指針」という。)を決定している。SDGs実施指針では、SDGsの17の目標に対して八つの優先分野の下で具体的な施策を実施しており、子どもの貧困対策は上記優先分野の一つである「あらゆる人々の活躍の推進」の中に位置付けられている。そして、政府は、SDGs実施指針においても、貧困対策大綱に基づき、総合的に子どもの貧困対策を推進することとしている。

(エ) 子どもの貧困対策に係る施策

図表0-1及び図表0-6のとおり、3府省が所管する子どもの貧困対策に係る主な施策は、教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援等に分類されている。これらの主な施策の概要は次のaからeまでのとおりである。

a 教育の支援

貧困対策大綱によれば、家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子どもが質の高い教育を受け、能力・可能性を最大限伸ばしてそれぞれの夢に挑戦できるようにすることが、一人一人の豊かな人生の実現に加え、今後の我が国の成長・発展につながるなどとされている。教育の支援においては、学校をプラットフォームと位置付けて、学校を窓口とした福祉関連機関等との連携強化等を図ることとされている。そして、生活保護世帯の子どもを含む生活困窮世帯の子どもを対象に、生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)に基づき、学習支援事業を実施することなどとされている。

b 生活の支援

貧困対策大綱によれば、貧困の状況にある子どもは、社会的に孤立して必要な支援が受けられず、一層困難な状況に置かれてしまうことがあるとされている。生活の支援においては、このような社会的孤立に陥ることがないよう、相談事業の充実を図ることなどにより、子ども及びその保護者の対人関係の持ち方や社会参加の機会等にも配慮することなどとされている。そして、複合的な課題を持つ生活困窮者に対し、生活困窮者自立支援法に基づく自立相談支援事業において包括的な支援を行うことなどとされている。

c 保護者に対する就労の支援

貧困対策大綱によれば、保護者に対する就労の支援は、保護者が労働によって一定の収入を得て、生活の安定を図る上で重要であり、収入面のみならず、家庭で家族がゆとりを持って接する時間を確保することや、保護者が働く姿を子どもに示すことによって、子どもが労働の価値や意味を学ぶことなど、貧困の連鎖を防止する上で大きな教育的意義が認められることからも、保護者に対する就労の支援の充実を図る必要があるとされている。保護者に対する就労の支援においては、子育てと就業の両立等、ひとり親家庭が抱える様々な課題に対応し、生活支援や就業支援を組み合わせた支援メニューをワンストップで提供することができるよう必要な支援を行うことなどとされている。

d 経済的支援

貧困対策大綱によれば、子どもの貧困対策を進めるに当たっては、生活保護や各種手当等の金銭の給付や貸与、現物給付等を組み合わせた形で世帯の生活の基礎を支えていく必要があり、経済的支援に関する施策は、子どもの貧困対策を推進する上で重要であるとされている。また、両親の離婚後、養育費の支払が適切に行われることは、親としての経済的な責任を果たすだけでなく、子どもの福祉の観点からも望ましいことから、母子家庭等就業・自立支援センター等において、養育費に関する相談支援を行うことなどとされている。

e 地域における施策推進への支援

貧困対策大綱によれば、子どもの貧困対策を総合的に推進するためには、教育分野、福祉分野等の地域における多様な関係者の連携・協力を得つつ、地域の実情に即した効果的な施策に取り組むことが重要であるとされている。このため、政府は、都道府県等の地方公共団体において子どもの貧困対策についての検討の場が設けられるよう、また、地域の実情を踏まえた貧困対策計画が策定されるよう働きかけるとともに、情報提供等の適切な支援を行うとされている。さらに、教育の支援、生活の支援等の四つの支援施策に加えて、地域を基盤とした支援ネットワークの整備・活用を視野に入れて地方公共団体の取組を支援することなどとされている。

なお、沖縄県では、同県の子どもを取り巻く厳しい状況を踏まえて、28年度から令和3年度までを集中対策期間として、子どもの貧困対策に特化した沖縄子供の貧困緊急対策事業(以下「緊急対策事業」という。)が実施されており、緊急対策事業において、上記のaからcまでに関連する施策が行われている。

(オ) 民間団体等との連携等

政府は、貧困対策大綱において、子どもの貧困対策が国を挙げて推進されるよう、国、地方公共団体、民間の企業・団体等によるネットワークを構築して、各種支援情報等の収集・提供、民間資金を活用した支援等、官公民の連携・協働プロジェクトを推進していくこととしている。

また、子どもの貧困対策の取組は、国や地方公共団体だけではなく民間企業や特定非営利活動法人(以下「NPO」という。)等によっても実施されている。ひとり親家庭や生活困窮世帯の子どもが抱える特有の課題に対応し、生活困窮世帯の子どもなどに対して、自宅や学校以外で学習支援や食事の提供を行う「居場所づくり」が重要となっており、その主な取組としては、支援を必要とする子どもなどに無料又は安価で夕食等を提供する「子ども食堂」等があり、NPO等が実施主体となっている。

(3) これまでの会計検査の実施状況

会計検査院は、子ども・子育て支援施策に係る事業の実施等について毎年検査し、その結果を不当事項、意見を表示し又は処置を要求した事項等として検査報告に掲記している。これらのうち、平成21年度から30年度までの検査報告に掲記された各事項について、主なものを示すと図表0-7のとおりとなっている。

図表0-7 子ども・子育て支援施策に係る事業の実施等に関する主な検査報告掲記事項

検査報告年度
件名
【不当事項】
平成21年度 「地域子ども教室推進事業等の委託に当たり、支払の事実のない謝金を再委託費に含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっていたもの」
21、22両年度 「児童扶養手当給付費負担金が過大に交付されていたもの」
21、25両年度 「児童手当交付金が過大に交付されていたもの」
21年度~23年度 「次世代育成支援対策交付金が過大に交付されていたもの」
「障害児施設措置費(給付費等)国庫負担金が過大に交付されていたもの」
21年度~29年度 「児童保護費負担金等の国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの」注(1)
22、26、27各年度 「放課後子どもプラン推進事業費補助金(放課後児童健全育成事業費等に係る分)が過大に交付されていたもの」注(2)
23年度 「放課後子どもプラン推進事業費補助金(放課後子ども教室推進事業等に係る分)が過大に交付されていたもの」
24年度~26年度 「雇用保険の事業所内保育施設設置・運営等支援助成金の支給が適正でなかったもの」
24年度~28年度 「保育対策等促進事業費補助金(延長保育促進事業等に係る分)が過大に交付されていたもの」注(3)
25年度 「子育て支援交付金(地域子育て支援拠点事業に係る分)等が過大に交付されていたもの」
26年度 「子育て支援対策臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業(保育士等処遇改善臨時特例事業に係る分)において基金が過大に使用されていたもの」
「子育て支援対策臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業(賃貸物件による保育所整備事業に係る分)において基金が過大に使用されていたもの」
26年度~29年度 「子育て支援対策臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業(地域子育て支援拠点事業に係る分)において基金が過大に使用されていたもの」注(4)
27年度 「地域子育て支援拠点事業の対象経費に、補助の対象とならない経費を含めていたもの」
28年度 「子ども・子育て支援交付金(延長保育事業に係る分)を過大に交付していたもの」
「子育て支援対策臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業(保育所緊急整備事業に係る分)において基金が過大に使用されていたもの」
28、29両年度 「地域子育て支援拠点事業の実施に当たり、補助金等の交付額の算定が適切でなかったもの」
28、30両年度 「子ども・子育て支援交付金(放課後児童健全育成事業に係る分)を過大に交付していたもの」
「子育て支援対策臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業(認定こども園整備事業に係る分)において基金が過大に使用されていたもの」
28年度~30年度 「子どものための教育・保育給付費負担金の国庫負担対象事業費を過大に精算していたもの」
「へき地児童生徒援助費等補助金が過大に交付されていたもの」
29年度 「保育対策総合支援事業費補助金(認可化移行改修費等支援事業に係る分)により実施した事業が補助の対象とならないもの」
30年度 「子ども・子育て支援交付金(地域子育て支援拠点事業に係る分)を過大に交付していたもの」
「企業主導型保育事業における企業主導型保育施設の整備費を過大に精算するなどしていたもの」
【意見を表示し又は処置を要求した事項、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項及び特定検査対象に関する検査状況】
22年度 特定検査対象に関する検査状況
「子ども・子育て支援対策における国の財政支援制度の実施状況について」
23年度 意見を表示し又は処置を要求した事項「社会福祉法人により設置された民間保育所が、保有する積立預金について透明性の確保を図ることなどにより有効に活用されるよう意見を表示し、及び過大に保有している当期未払資金残高が是正されるよう改善の処置を要求したもの」本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項「子ども手当の受給資格者の認定の状況を踏まえて、児童手当の受給資格者の認定が適切に行われ国費の負担が適正となるよう改善させたもの」
24年度 意見を表示し又は処置を要求した事項
「事業所内に設置される保育施設について、設置等計画の審査及び保育施設の休止に係る事業主等への指導を適切に行うことにより、長期的かつ安定的な運営の確保を図るよう改善の処置を要求したもの」
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
「保育所緊急整備事業の実施において、社会福祉法人等の事業者が競争契約の入札に当たり最低制限価格の設定を行う際は、市町村が実施する公共工事等における算定方法に準ずるよう、市町村及び事業者に対して周知するなどして、競争の利益を阻害することのないよう改善させたもの」
26年度 意見を表示し又は処置を要求した事項
「子育て支援対策臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施する賃貸物件による保育所整備事業における消費税の取扱いが適切に行われ、これにより同基金が効率的に活用されるよう是正改善の処置を求めたもの」
27年度 意見を表示し又は処置を要求した事項
「地域子育て支援拠点事業に係る国庫補助金の交付額の算定に当たり、地域の子育て支援活動の展開を図るための取組に係る加算分の算定が適正に行われるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの」
「高等学校等就学支援金の支給が適切かつ公平に行われるよう、学校設置者に受給資格認定申請書等の確認作業を委託する場合にその確認結果の妥当性についての検証を行い確認作業が適正かつ確実に実施されるよう指導したり、学校設置者から生徒への高等学校等就学支援金が適時適切に引き渡されることを確保したりすることを周知徹底するよう是正改善の処置を求め、及び保護者等が国外に在住する場合の当該保護者等の収入の把握方法やその収入を考慮した受給資格の認定等の方法を検討するよう意見を表示したもの」
28年度 意見を表示し又は処置を要求した事項
「子ども・子育て支援全国総合システムの構築の目的が達成されるようにするために、同システムに登録する情報の範囲や活用方法等について具体的に検討するとともに、市町村等における業務の実態等を的確に把握するなどして、同システムの運用等について見直しなどを行うよう意見を表示したもの」
29年度 意見を表示し又は処置を要求した事項
「高校生等奨学給付金制度の実施に当たり、奨学給付金を学校が代理受領して授業料以外の教育費に充当することについて認めることを都道府県において制度化するなど、高等学校等修学支援事業費補助金(奨学のための給付金)が授業料以外の教育費に確実に活用されるために必要な仕組みとなるための措置を講ずるよう意見を表示したもの」
30年度 意見を表示し又は処置を要求した事項
「企業主導型保育助成事業により企業主導型保育施設を整備するに当たり、補助事業者に対して利用定員の妥当性等について適切に審査等を行わせるとともに、補助事業者が企業主導型保育施設の設備基準等との適合性等について十分に審査等を行えるような仕組みを整備することなどにより、企業主導型保育施設の利用定員の設定等が適切に行われ、整備された企業主導型保育施設が有効に利用されるよう改善の処置を要求したもの」
「認定こども園等の施設整備事業の実施に当たり、助成金等の額を適切に算定するために、増築等の場合における補助基準額の算定が適切なものとなるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに認定こども園において幼稚園部分と保育所部分の二つの事業を同時に行う場合の1施設当たりの特殊附帯基準額が適切な額となるよう改善の処置を要求したもの」
  • 注(1) 平成21年度から26年度までの検査報告では「児童保護費等負担金の国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの」
  • 注(2) 平成22年度決算検査報告及び平成26年度決算検査報告では「放課後子どもプラン推進事業費補助金(放課後児童健全育成事業等に係る分)が過大に交付されていたもの」
  • 注(3) 平成24年度決算検査報告では「保育対策等促進事業費補助金(延長保育促進事業に係る分)等が過大に交付されていたもの」、また、平成25年度決算検査報告では「保育対策等促進事業費補助金(延長保育促進事業に係る分)が過大に交付されていたもの」
  • 注(4) 平成26年度から28年度までの検査報告では「子育て支援対策臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業(地域子育て支援拠点事業に係る分)において基金が過大に使用されるなどしていたもの」

平成22年度決算検査報告には、特定検査対象に関する検査状況として「子ども・子育て支援対策における国の財政支援制度の実施状況について」を掲記している。その所見では、22年度末において、認可保育所の定員数は増加しているものの、依然として多数の待機児童がいる市町村も多く存在し、また、認定こども園、家庭的保育等の保育サービスに係る事業についても十分な供給量の増加が図られていない状況となっていること、待機児童をめぐっては、今後、子ども・子育て支援対策に係る各種施策、財政支援等についての検討を進めていく中で、それらの施策等が地方公共団体等にとって利用しやすいものとなっていくかは不透明な部分が多くなっている状況であることなどを記述している。そして、文部科学省及び厚生労働省において、今後の施策等を速やかに策定するとともに、希望する全ての人が子どもを預けて働くことができるよう多様な保育サービス等が十分に提供されることが必要であるとして、子ども・子育て支援に係る事業の実施状況について引き続き注視していくこととするとしている。

また、31年4月には、企業主導型保育事業について、企業主導型保育施設の利用定員の設定が適切に行われ、企業主導型保育施設が有効に利用されるよう、内閣府において、補助事業者に利用定員の妥当性等について適切に審査等を行わせたり、補助事業者が企業主導型保育施設の設備基準等との適合性等について十分に審査等を行えるような仕組みを整備したりなどするよう、内閣総理大臣に対して会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求している。

3 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

現在、我が国において深刻な社会問題となっている少子化の進行、待機児童問題等に対応するために、保育環境の充実、待機児童の解消、地域の子ども・子育て支援等の充実等が求められている。

これらを実現するために、24年度に支援法等のいわゆる「子ども・子育て関連3法」が制定され、27年度から全面施行されて、国及び地方公共団体は、支援法等に基づき、地域の実情に応じた子育て支援や、仕事と子育ての両立支援等を推進していくこととなっている。

そして、国は、待機児童の解消を確実なものとするために、25年4月に加速化プランを策定して、25年度から29年度末までの間に50万人分の保育の受け皿を確保することができるよう、保育所の整備、保育士等確保のための支援等を実施してきた。さらに、その後「子育て安心プラン」を策定するなどして、30年度から32年度(令和2年度)末までの間に新たに32万人分の保育の受け皿を確保することを目標として、待機児童の解消等を推進している。

また、近年、子どもの貧困が社会問題となっていることなどを受けて、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的として、25年度に貧困対策法が制定された。そして、貧困対策法に基づき、26年8月に、貧困対策大綱が閣議決定され、国は、貧困対策大綱に基づき、子どもの貧困対策を総合的に推進していくこととなっている。

会計検査院は、上記の状況等を踏まえて、子ども・子育て支援施策の予算の執行状況及び同施策の実施状況並びに同施策に係る主要施策による効果の発現状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。

ア 子ども・子育て支援施策の予算の執行状況及び同施策の実施状況

(ア) 待機児童解消、子どもの貧困対策等の子ども・子育て支援施策に係る予算の執行状況はどのようになっているか。各施策に係る需要の見込みを適切に把握していないことなどにより、多額の不用額が生じているなどの事態はないか。

(イ) 3府省等が実施している保育施設等整備施策、保育士等確保施策、企業主導型保育事業、放課後児童健全育成事業、子どもの貧困対策に係る各施策等の子ども・子育て支援施策は適切かつ効率的に実施されているか。

(ウ) 各都道府県及び市町村における貧困対策計画の策定及び指標の設定の状況はどのようになっているか。また、貧困対策計画に基づき子どもの貧困対策に係る各施策を実施するに当たり、支援を必要とする者(以下「支援対象者」という。)の把握等が的確に行われているか。

(エ) 子ども・子育て支援施策の実施に当たり、3府省間の連携状況や、各施策の調整状況等はどのようになっているか。

イ 子ども・子育て支援施策に係る主要施策による効果の発現状況

(ア) 保育施設等整備施策、保育士等確保施策、企業主導型保育事業等の待機児童解消施策は、各施策に係る需要や実績等を的確に把握した上で適時適切に実施され、利用定員の拡大等が図られるなどして、待機児童解消等に十分な効果を上げているか。

(イ) 放課後児童健全育成事業について、放課後児童クラブの利用に関する需要等を踏まえて、放課後児童クラブの整備、運営等が適切に行われているか。また、地域子育て支援拠点事業について、子育て親子の交流の促進等を図るための取組等が推進されているか。

(ウ) 子どもの貧困対策に係る施策について、生活困窮世帯等の子どもに対する学習支援、母子家庭の母等に対する就労支援等が効果的に実施され、その効果の把握等が十分に行われているか。

(2) 検査の対象及び方法

会計検査院は、子ども・子育て支援施策の予算の執行状況については、原則として28年度から30年度までを、同施策の実施状況及び同施策に係る主要施策による効果の発現状況については、原則として25年度から30年度までをそれぞれ対象として、3府省、25都道府県(注3)及び同都道府県の205市区町村(14政令指定都市、31中核市並びに政令指定都市及び中核市を除く160市区町村(注4))並びに児童育成協会及び企業主導型保育事業を実施する65事業実施者において、593人日を要して会計実地検査を行った(205市区町村のうち、待機児童解消施策等の会計実地検査を行ったのは166市区町村、子どもの貧困対策に係る施策の会計実地検査を行ったのは109市区町。別図表3参照)。

検査に当たっては、3府省、25都道府県及び205市区町村から調書及び関係資料を徴したり、担当者等から説明を聴取したりなどするとともに、公表されている資料を活用して調査・分析を行うなどした。また、子どもの貧困対策に係る施策については、同施策の実施主体となり得る上記の25都道府県及び同都道府県内の全ての市町村(1,066市区町村)から調書を徴するなどして、調書の内容を分析するなどして検査した。

(注3)
25都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、宮城、山形、栃木、埼玉、千葉、神奈川、富山、石川、長野、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、山口、愛媛、高知、福岡、大分、宮崎、沖縄各県
(注4)
政令指定都市、中核市及びその他市町村の区分は、平成30年度末時点で整理している(以下同じ。)。