厚生労働省は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)等に基づき、国民健康保険の保険者である市町村(特別区等を含む。以下同じ。)に対して、特定健康診査及び特定保健指導(以下「特定健康診査等」という。)の実施に要する費用の一部を負担するために、国民健康保険特定健康診査・保健指導国庫負担金(以下「負担金」という。)を交付している。国民健康保険特定健康診査・保健指導国庫負担金交付要綱(平成23年厚生労働省発保0331第1号厚生労働事務次官通知。以下「交付要綱」という。)によれば、負担金の交付額は、交付要綱に定める基準額と、特定健康診査等の実施に必要となる報酬、委託料等の対象経費の実支出額から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して、少ない方の額に補助率を乗ずるなどして得た額とすることとされている。そして、特定健康診査に係る基準額は、実施方法等別に定められた基準単価に実施人員数を乗じて算定した額の合計額とされていて、基準単価は、基本的な健診項目のみ実施した場合の単価と、基本的な健診項目と詳細な健診項目を実施した場合の単価(以下「基本・詳細単価」という。)とに区分するなどして定められている。また、基準額の算定に当たっては、詳細な健診項目として定められている3項目のうちのいずれか1項目以上を実施した場合、一律に基本・詳細単価が適用されている。そして、交付要綱によれば、負担金の交付決定には、証拠書類を整理し、保管しておかなければならないなどとする条件が付されることとされている。しかし、詳細な健診項目を実施した記録が確認できた者の中には、厚生労働省告示に定める詳細な健診項目を実施する際の基準等に該当していなかった者がいるなどしている状況にあるのに、負担金の算定基礎とした各種のデータ等を市町村が保管していないことなどから、基準額の算定が適切に行われていたかについて確認できない事態が見受けられた。また、厚生労働省は、基本・詳細単価について、詳細な健診項目を実施した際に保険者が実施医療機関等に支払う契約単価の実績を基に、各項目の単価として項目ごとに契約単価の平均値等を求め、これらの単価を合計して得た額を総項目数で除するなどして算定しているなどとしているものの、各項目の実施率は特に考慮されておらず、基本・詳細単価が詳細な健診項目の実施状況等を踏まえた単価となっていない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、負担金の交付額の算定が適切なものとなるよう、厚生労働大臣に対して令和2年10月に、次のとおり是正改善の処置を求め、及び意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 3年2月に都道府県に通知を発し、同年5月までに都道府県を通じて市町村に対して、負担金の交付額の算定に当たり、基準額を算定する際に集計した実施人員数の根拠としたデータ、資料等を、交付決定の条件に従って、適切に整理し、保管することについて周知徹底した。
イ 基本・詳細単価を定めるための方策について市町村の事務負担等も考慮して検討した結果、厚生労働省が特定健康診査等の効果について分析を行うことなどを目的として構築したシステムを活用し、同システムに保存されているデータから詳細な健診項目ごとの実施人員数を抽出してその実施状況を把握することとした。そして、3年4月に、当該実施人員数により詳細な健診項目ごとの単価を加重平均するなどして算定した単価を基本・詳細単価として新たに定めた。