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  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 平成30年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

独立行政法人農林漁業信用基金が行う漁業信用基金協会に対する貸付けについて


1 本院が要求した改善の処置

水産庁は、独立行政法人農林漁業信用基金(以下「信用基金」という。)に対して計257億8980万円を出資し、信用基金は、当該出資金等を財源として、各漁業信用基金協会(以下「協会」という。)に対して長期の資金(以下「本件貸付金」という。)を貸し付けている。そして、協会は、中小漁業融資保証法(昭和27年法律第346号)に基づき、中小漁業者等が、漁業者等の資本装備の高度化及び経営の近代化に資するための資金である漁業近代化資金等を借り入れる場合に、融資機関に対して債務の保証を行っており、中小漁業者等が債務不履行に陥った場合、保証債務の弁済に充てるための基金又は本件貸付金等の資金をもって、当該中小漁業者等に代わって融資機関に債務の弁済(以下「代位弁済」という。)を行っている。しかし、本件貸付金の使用実績が貸付金残高に対して著しく低い水準にとどまっていたり、全ての協会において保証債務の弁済能力の充実の状況が適当であるとされる水準を大幅に超えるなどしたりしていて、本件貸付けを行う必要性は低くなっているにもかかわらず、国の出資金を財源とする本件貸付金の規模が見直されずに、必要と認められる額を上回る貸付けが行われている事態が見受けられた。

したがって、水産庁において、本件貸付金が有効に使用されるように協会等の代位弁済の見込みや財務状況を踏まえて本件貸付金の規模を見直し、信用基金に真に必要な額の貸付けを行わせるとともに、更なる支援の必要が認められる協会への貸付けに充てるなどしてもなお過大となる本件貸付金について、相当する国の出資金を独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)に基づき信用基金から国庫に納付させて、本件貸付金及び国の出資金を適切な規模のものとするよう、また、上記の本件貸付金及び国の出資金の規模の見直しなどを適時適切に実施することができるように水産庁の体制を整備するよう、水産庁長官に対して令和元年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

2 当局が講じた処置

本院は、水産庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、水産庁は、本院指摘の趣旨に沿い、本件貸付金が有効に使用されるように協会等の代位弁済の見込みや財務状況を踏まえて本件貸付金の規模を見直して、信用基金に真に必要な額の貸付けを行わせることとし、その結果、信用基金は、2年3月に、当該出資金を2年度及び3年度に国庫に納付することとする中期計画の変更について、農林水産大臣及び財務大臣の認可を受けて、当該計画に基づき、2年10月に50億0617万余円、3年9月に38億6329万余円を国庫に納付する処置を講じていた。また、水産庁は、3年6月に、本件貸付金及び国の出資金の規模の見直しなどに係る要領を定め、これを信用基金に通知するなどして、当該見直しなどを適時適切に実施するための体制を整備する処置を講じていた。