ページトップ
  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 令和元年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(1) 保育間伐の実施について


(令和元年度決算検査報告参照)

1 本院が表示した意見

林野庁は、森林整備事業の一環として、造林木の生育を助けるために、造林木の一部を伐採する間伐(以下「保育間伐」という。)を造林請負契約により実施している。保育間伐は、林分の密度を調整する保育間伐(存置型)(以下「存置型」という。)と林分の密度を調整するとともに資源の有効活用を図る保育間伐(活用型)(以下「活用型」という。)に区分して実施することとなっている。そして、保育間伐等の伐採を伴う森林整備事業は、森林の整備を目的として行うものであり、販売を目的とする生産事業に比べて立木の直径が小さいなど林分内容の劣る箇所を対象に事業を実施することが多くなるものと考えられることから、存置型で実施する場合もあるが、販売可能なものは経済的合理性も勘案して活用型により極力販売するよう努めることとなっている。しかし、保育間伐のうち活用型の実施に当たり、森林管理署等において、土砂の崩落等により伐倒木が流出して被害を拡大させるなどの災害リスク等がある箇所に該当せず、経済的合理性を勘案して存置型によるか活用型によるかを選択することができる伐区について、活用型で実施する場合に発生する造材、集材、トラック運搬、検知、木材市場に支払う手数料等の経費(以下「活用型で発生する経費」という。)と販売収入を比較するなどしておらず、活用型で発生する経費が販売収入を上回っていて、経済的合理性が勘案されていない事態が見受けられた。

したがって、林野庁において、森林管理署等に対して、保育間伐のうち活用型の実施に当たり、災害リスク等がある箇所に該当しない伐区については、経済的合理性を勘案する際の考え方及び活用型で発生する経費と販売収入を比較するなどの方法を示した上で、造林請負契約の発注時に経済的合理性も十分に勘案するよう、林野庁長官に対して令和2年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。

2 当局が講じた処置

本院は、林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、林野庁は、本院指摘の趣旨に沿い、3年7月に通知を改正し、森林管理署等に対して、保育間伐のうち活用型の実施に当たり、傾斜が急であるなどの災害リスク等がある箇所に該当しない伐区については、活用型で発生する経費が収入見込額を上回らないようにするという経済的合理性を勘案する際の考え方を示した。そして、経済的合理性を勘案する具体的な方法として、活用型で発生する経費のうち間伐材等の運搬に係る直接経費(以下「運搬経費」という。)が、活用型で発生する経費に対する相関関係が高いことなどから、活用型で発生する経費が収入見込額を上回ることが予測される運搬経費の収入見込額に対する割合の基準値を定めて、運搬経費の収入見込額に対する割合がその基準値以下になる場合に限り活用型による契約を締結できることとして、4年4月以降に締結する契約から適用する処置を講じていた。