農林水産省は、人・農地プランにおいて中心経営体に位置付けられている者等(以下「経営体」という。)が必要とする農業用機械・施設等の導入等を支援する経営体育成支援事業や、担い手の育成・確保の取組と農地の集積・集約化の取組を一体的かつ積極的に推進する地域において、経営体が必要とする農業用機械・施設等の導入等を支援する担い手確保・経営強化支援事業を実施しており、これらの事業の事業主体となる市町村に補助金を交付する都道府県に対して国庫補助金を交付している。そして、同省は、経営体の農業経営の発展等に係る取組内容等を基に市町村が算出した配分基準ポイントの高い地区から順に、市町村からの要望額に基づいて算定した額を都道府県に配分することなどとしており、配分基準ポイントの対象となる経営体の取組内容等は、配分基準表において定められている。また、配分基準表の運用に係る地方農政局等の文書において、市町村は、配分基準ポイントの対象となる取組内容等の実績等について客観的に確認できる資料(以下「客観資料」という。)により確認し、客観資料は整理して保存しておくものとするとしている。しかし、市町村において、経営体の取組内容等について取組の水準に応じた点数を付していないなどしていて配分基準ポイントを過大に算出していた事態及び配分基準ポイントの対象となった取組内容等の実績等について客観資料により確認せずに点数を付していたり、客観資料が保存されていなかったりしていて配分基準ポイントの対象となった取組内容等について適切に点数が付されているか確認できない事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、市町村が配分基準ポイントを算出する際の留意事項を作成したり、算出を誤っていた事例を整理したりなどするとともに、当該留意事項等を踏まえて配分基準ポイントの算出を適正に行うこと及び市町村において経営体の取組内容等を客観資料により確認して、当該客観資料を一定期間保存することについて、都道府県を通じて市町村に対して周知するなどするよう、農林水産大臣に対して令和2年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、配分基準ポイントを算出する際の留意事項や算出を誤った事例を作成するとともに、地方農政局等に事務連絡を発して上記の留意事項や事例を踏まえて配分基準ポイントの算出を適正に行うこと及び経営体の取組内容等を客観資料により確認して、当該客観資料を事業終了年度の翌年度から5年間保存することを3年1月及び2月に都道府県を通じて市町村に対して周知する処置を講じていた。また、3年1月及び4月に事業の実施要綱を改正して上記客観資料の確認や保存を明記する処置を講じていた。