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  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 経済産業省|
  • 令和元年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(1) 省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)による事業の実施状況について


令和元年度決算検査報告参照

1 本院が要求した適宜の処置及び求めた是正改善の処置並びに要求した改善の処置

資源エネルギー庁は、平成26年度から29年度までの間に、民間事業者等が事業主体となって、エネルギー使用合理化の取組等に係る事業(以下「合理化事業」という。)を実施する場合に、事業主体に対して事業に要する経費の一部を補助させるために、補助事業者である一般社団法人環境共創イニシアチブ(以下「SII」という。)に対して国庫補助金を交付している。そして、SIIは、国庫補助金の交付を受けて、既存の設備から省エネルギー効果の高い設備への更新、エネルギーマネジメントシステムに係る設備の導入等により省エネルギーを達成する事業等を実施する事業主体に対して補助金(以下「合理化補助金」という。)を交付している。しかし、合理化事業の実施に当たり、合理化事業を実施した後の1年間に達成される省エネルギー量の計画値(以下「計画量」という。)の達成の根拠とした補正の内容が適切でなく、合理化事業の実施により達成された省エネルギー量の実績値(以下「実績量」という。)を正しく計算すると計画量を達成していないなどしている事態、補正の内容が実質的に裕度(注)の内容と重複しているおそれがあるなどの状況となっていて、補正の内容が適切か確認できず計画量を達成していたか確認できない事態及び事業主体と共同して省エネルギー対策を実施する事業者(以下「エネマネ事業者」という。)と契約期間を3年間以上とするエネルギー管理支援サービス契約を締結して実施する、より効果的な省エネルギー対策(以下「エネマネ対策」という。)に係る運用改善等が行われていない事態が見受けられた。

したがって、資源エネルギー庁長官に対して令和2年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに改善の処置を要求した。

ア 補助事業者に対して、実績量を計算する際に適切でないデータを用いて補正を行っていた3事業主体について、計画量を達成するよう省エネルギーに取り組んだ上で改めて省エネルギー量を報告させるなどすることとし、計画量を達成できない場合は合理化補助金を返還させることも検討するよう指導すること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求したもの)

イ 補助事業者に対して、実績量の計算を適切に行うよう事業主体及びエネマネ事業者に十分周知するよう指導すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)

ウ 補助事業者に対して、裕度の内容と補正の内容が実質的に重複することがないよう、公募要領等において、実績量を計算する際に、裕度を加味した理由と同様の理由で補正を行う場合の取扱いについて定めるとともに、交付申請書、成果報告書等について、裕度を加味したり補正を行ったりしている内容が適切か確実に審査を行えるような記載内容とするよう指導すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求したもの)

エ 補助事業者に対して、公募要領等において、エネマネ対策としてエネマネ事業者から改善提案を受けて運用改善を行うことの必要性について明確に示すとともに、運用改善の実施内容について事業主体から報告させることとするよう指導すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求したもの)

(注)
裕度合理化事業において、省エネルギー効果の高い設備の実際の性能を製品カタログに記載されている性能と比較した場合の相違や気温の上昇等の様々な要因により、エネルギー使用の実態とのかい離が生ずることを想定して、計画量を計算する際に加味するもの

2 当局が講じた処置

本院は、資源エネルギー庁から関係資料の提出を受けるなどして、その後の処置状況について検査した。

検査の結果、資源エネルギー庁は、本院指摘の趣旨に沿い、3年5月までに、合理化事業の補助事業者及び同事業の後継事業として3年度から実施している先進的省エネルギー投資促進支援事業の補助事業者に対して指導を行い、次のような処置を講じていた。

ア 合理化事業の補助事業者に、3事業主体に対して計画量を達成するよう省エネルギーに取り組ませて実績量の再計測期間を定めた上で適切な実績量を再計測して報告させるとともに、計画量を達成できない場合は合理化補助金の返還を求めることも検討させた。

イ 合理化事業の補助事業者に、エネマネ事業者を対象とした連絡会を開催させるなどして、事業主体及びエネマネ事業者に対して、実績量の計算を適切に行うよう周知させた。

ウ 先進的省エネルギー投資促進支援事業の補助事業者に、公募要領等において、交付申請時の裕度設定の理由及び成果報告時の補正計算の適用可否の対応関係について明記するなどして、裕度の内容と補正の内容が実質的に重複することがないよう、実績量を計算する際に裕度を加味した理由と同様の理由で補正を行う場合の取扱いについて定めさせるとともに、交付申請書、成果報告書等について、裕度を加味したり補正を行ったりしている内容が適切か確実に審査を行えるような記載内容とさせた。

エ 先進的省エネルギー投資促進支援事業の補助事業者に、公募要領等において、エネマネ対策としてエネマネ事業者から改善提案を受けて運用改善を行うことの必要性について明確に示させるとともに、運用改善の実施内容について事業主体から報告させることを定めさせた。

なお、合理化事業の補助事業者は、3事業主体から改めて実績量の報告を受けるなどした結果、計画量を達成できない1事業主体に合理化補助金を返還させて、これに係る国庫補助金相当額を3年7月に国庫に返還した。