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  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 日本年金機構|
  • 令和元年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

年金給付の過払いにおける年金返納に関する事務について


(令和元年度決算検査報告2か所参照 リンク1 2

1 本院が求めた是正改善の処置

日本年金機構(以下「機構」という。)は、厚生労働省の監督の下で、同省から委任又は委託を受けた年金給付に係る事務を行っている。そして、年金給付に係る事務において機構が入力を誤るなどした事務処理誤りによる裁定等が判明し、これに伴う過払い(以下「過払い」という。)が生じていた場合には、事務処理誤りによる裁定等に基づき支払われた年金額と厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)等に基づき正しく計算された年金額との差額(以下「過払い年金」という。)は、民法(明治29年法律第89号)に基づく不当利得として返還を求めることとなる。機構は、「誤裁定に係る再裁定及び返納勧奨に関する事務処理要領」(以下「事務処理要領」という。)で過払いの判明から納入告知等までの事務処理(以下「返還請求に係る事務処理」という。)及び各手続に必要な期間を定めており、事務処理要領に基づき所定の期間内に返還請求に係る事務処理を完了することとしている。また、事務処理要領によれば、年金事務所等は、各手続を行った年月日を進捗管理簿に登録して返還請求に係る事務処理の進捗管理を行うこととされている。しかし、過払い年金の返還請求に係る事務処理について、年金事務所等において手続が事務処理要領に基づいて行われていないなどしていたり、機構本部(以下「本部」という。)において進捗管理が行われていなかったりしているため、返還請求等が可能であった過払い年金の全部又は一部について5年間の消滅時効期間が経過して、返還請求が行えなくなっている事態が見受けられた。

したがって、厚生労働大臣及び日本年金機構理事長に対して令和2年10月に、会計検査院法第34条の規定により次のとおり是正改善の処置を求めた。

ア 本部において、年金事務所等に対して返還請求に係る事務処理を事務処理要領に基づいて実施するよう周知徹底すること

イ 本部において、返還請求に係る事務処理について進捗管理の手続、方法等を事務処理要領に明確に示すなどして、年金事務所等の返還請求に係る事務処理の進捗管理を適切に行うとともに適時に必要な指示を行うための仕組みを整備すること

ウ 厚生労働省において、ア及びイの処置を適切に行うよう、機構に対して必要な指導監督を行うこと

2 当局が講じた処置

本院は、厚生労働本省及び本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、厚生労働省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 本部は、3年3月に年金事務所等に対して指示文書を発出するなどして、返還請求に係る事務処理を事務処理要領に基づいて実施するよう周知徹底した。

イ 本部は、3年4月に事務処理要領を改正して、本部において、毎月、年金事務所等が作成した進捗管理簿等により返還請求に係る事務処理の進捗状況を確認した上で、事務処理に遅延が生じている場合には、年金事務所等に対して遅延理由を確認するとともに、解決に向けた必要な指示を具体的な期日を設定した上で行うこととした。

ウ 厚生労働省は、機構がア及びイの処置を適切に行うよう、3年3月に機構に対して文書を発出して、返還請求に係る事務処理を事務処理要領に基づいて実施することや、本部における進捗管理の手続、方法等を事務処理要領に明確に示すことなどを指示するとともに、適宜、機構と事務処理要領の改正内容に係る協議を行うなどして、機構に対して必要な指導監督を行った。