独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)の141病院のうち37病院が、災害時に多発する重篤救急患者の救命医療を行うための高度の診療機能を有するなどの災害拠点病院に指定されている。災害拠点病院は、厚生労働省の通知によれば、平時より病院の基本的な機能を維持するために必要な設備について、自家発電機等から電源の確保が行われていることなどとされており、機構の災害拠点病院においては、機構が担っている災害時の役割の重要性に鑑みて、水害時においても継続して医療を提供する上で必要な電気を確保するために、保有する自家発電機等について、所在する地方公共団体が公表しているハザードマップに応じた浸水対策を実施する必要がある。しかし、機構の2災害拠点病院に設置されている自家発電機等については、浸水対策を全く実施していなかったり、浸水を防ぐための止水板を設置していてもハザードマップで想定されている浸水を防ぐ高さには足りていなかったりしていたことから、水害により商用電源が途絶した場合に、自家発電機等が浸水して稼働できず、継続して医療を提供する上で必要な電気を確保できないおそれがある状況となっている事態が見受けられた。
したがって、独立行政法人国立病院機構理事長に対して令和2年9月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。
本院は、機構本部から関係資料の提出を受けるなどして、その後の処置状況について検査した。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 2災害拠点病院は、機構本部と連携して、浸水対策を講ずるまでの応急的な対処方法として土のうを設置することとして、土のうの調達や、設置要員、設置方法等について定めたマニュアルの作成を3年7月までに行った。そして、病院の建物の次期建替整備の際に最大浸水深以上の高さの場所に自家発電機等を設置する計画を同年6月に策定した。
イ 機構本部は、3年6月に2災害拠点病院に対して事務連絡を発して、計画策定後の事情変更により前倒しで実施できる浸水対策の有無等について定期的に報告を求めることとして、浸水対策の実施状況を確認するための体制を整備した。