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  • 令和2年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第2節 国会からの検査要請事項に関する報告

参考:報告書はこちら

第4 外国人材の受入れに係る施策について


要請を受諾した年月日
令和元年6月11日
検査の対象
法務省、文部科学省、厚生労働省、外国人技能実習機構等
検査の内容
外国人材の受入れに係る施策の実施状況についての検査要請事項
報告を行った年月日
令和3年7月16日

1 検査の要請の内容

会計検査院は、令和元年6月10日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月11日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

  • (一)検査の対象

    法務省、文部科学省、厚生労働省、外国人技能実習機構等

  • (二)検査の内容

    外国人材の受入れに係る施策に関する次の各事項

    • ① 大学等への外国人留学生受入れに係る施策の状況
    • ② 技能実習制度の適正化に係る取組の状況
    • ③ 外国人材の受入れに係る国の支援の状況

2 検査の結果の主な内容

本院は、上記要請の外国人材の受入れに係る施策に関する各事項について、合規性、効率性、有効性等の観点から、①文部科学省及び法務省は、大学等や都道府県等に対して、外国人留学生(注1)の在籍管理について、どのような指導等を行っているか、出入国在留管理庁(平成31年3月31日以前は法務省入国管理局。以下同じ。)が在留の管理に用いている情報システムは有効に活用されているか、文部科学省等の補助事業に係る補助要件等において、大学等における在籍管理の状況が適切に考慮されているか、②外国人技能実習機構(以下「技能実習機構」という。)は、実習実施者届出書の提出の督促及び行方不明事案に対する対応を適切に実施しているか、③外国人材の受入れに係る国の支援について、予算の執行状況はどのようになっているか、国の支援の一環として法務省、文部科学省及び厚生労働省が実施している補助事業や委託事業において、3省は、補助や委託を受けた事業主体等が行う事業の実施状況等を適切に把握しているかなどに着眼して検査を実施した。

(注1)
外国人留学生在留資格「留学」を有する在留外国人のうち、高等学校、特別支援学校等を除いた、我が国の大学(大学院を含む。)、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)、中等教育の課程の修了までに12年を要しない国の学生に対して我が国の大学入学資格を与えるために文部科学大臣が指定した課程を設置する教育施設及び出入国在留管理庁の告示により定められた日本語教育機関(以下「日本語教育機関」という。)において教育を受ける学生

検査の結果の主な内容は、次のとおりである。

(1)大学等への外国人留学生受入れに係る施策の状況

出入国在留管理庁は、受入れに関する届出(注2)の提出を求めており、受入れに関する届出を外国人留学生の在留の管理に活用している。しかし、外国人留学生が多数在籍していたり、外国人留学生に係る補助事業等を実施していたりしているなどの31校(注3)(以下「検査対象大学等」という。)における受入れに関する届出の提出状況についてみると、令和元年度では5校において全く提出されていなかった。また、電子届出システム(注4)の利用状況についてみると、検査対象大学等から受入れに関する届出を全く提出していなかった5校を除いた26校において、元年度に電子届出システムを利用して受入れに関する届出を提出していたのは2校と少ない状況となっていた。

(注2)
受入れに関する届出  出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)により中長期在留者(我が国に在留資格をもって在留する外国人のうち、3月以下の在留期間が決定された者、「外交」又は「公用」の在留資格が決定された者等を除く者)を受け入れている所属機関が届け出るよう努めなければならないこととされている「所属機関による届出」として、大学、日本語教育機関等の教育機関に対して、在留資格「留学」を有する中長期在留者の受入れを開始した年月日、受入れを終了した年月日等を記載したもの
(注3)
31校13国立大学、14私立大学等、独立行政法人国立高等専門学校機構が設置する2高等専門学校及び独立行政法人日本学生支援機構が設置する2教育センター
(注4)
電子届出システム出入国在留管理庁電子届出システム(平成31年3月以前は「入国管理局電子届出システム」)

私立大学等経常費補助金(以下「経常費補助金」という。)の交付状況についてみると、日本私立学校振興・共済事業団(以下「私学事業団」という。)が交付した経常費補助金の交付先には、各大学等の不法残留者や在留資格「留学」の在留期間更新許可申請が不許可となった者の状況等により、1年に一度在留状況を確認する必要があるなどと判断して出入国在留管理庁が慎重審査対象校とした大学が含まれており、これらに対して平成29年度及び令和元年度に、経常費補助金を減額することなく交付していた。

(2)技能実習制度の適正化に係る取組の状況

出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、実習実施者に対して適切に指導監督を行うために実習実施者届出書の提出を求めている。そして、実習実施者届出書の提出等の状況についてみると、全体の62.9%は、実習実施者が実際に技能実習を開始した日から1か月以内に技能実習機構が実習実施者届出書を受理していたが、全体の8.8%は、3か月を超えてから受理されていた。また、技能実習機構は、技能実習生(注5)が実際に入国しているかなどを把握できないため、業務システムに集約している技能実習計画等に関する情報を活用して、技能実習を開始しているのに実習実施者届出書を提出していないおそれのある実習実施者を把握して督促することは行っていないとしている。しかし、技能実習機構は、基本的に1か月分の入国情報(注6)について出入国在留管理庁から毎月提供を受けているとしていることから、入国情報の提供を受けた時点で、技能実習計画等に関する情報と入国情報とを突合することにより、技能実習生が実際に入国しているかなどを把握することが可能であったと認められる。

(注5)
技能実習生在留資格「技能実習」を有する在留外国人
(注6)
入国情報「在留資格「技能実習」の上陸許可を受けた外国人に係る情報」及び「入管法第20条又は第21条の規定に基づく在留資格「技能実習」の申請をした外国人に係る情報」

行方不明事案に対する技能実習機構による実地検査(注7)(以下「機構実地検査」という。)等の実施状況についてみると、平成31年4月から令和元年9月までの間に発生した行方不明事案3,639件について、その発生から少なくとも6か月が経過した時点である元年度末時点で機構実地検査が実施されていたのは2,884件(機構実地検査の対象件数に占める割合79.2%)となっており、機構実地検査が実施されていなかった755件(同20.7%)のうち客観的資料が入手されていたのは198件(機構実地検査の未実施件数に占める割合26.2%)となっていて、557件(同73.7%)は元年度末までに客観的資料が入手されていなかった。

(注7)
技能実習機構による実地検査実習実施者及び監理団体を実地に検査する事務

(3)外国人材の受入れに係る国の支援の状況

外国人就労・定着支援研修事業(以下「研修事業」という。)における就職支援の実施状況についてみると、平成27年度から30年度までの間は受託業者から公共職業安定所(以下「ハローワーク」という。)に提出された求職情報シートに基づく求職や、受託業者が行うこととされている受講者に対する面接希望の意向確認の状況について、事業実施結果報告書等により厚生労働本省に報告することとなっておらず、同本省は、各ハローワークにおける上記就職支援の実施状況について、把握していなかった。このため、同本省は求職情報誌による就職支援の実施状況を十分に確認しておらず、就職支援について改善を図ることの検討が十分にできない状況となっていた。また、令和元年度も、同本省は平成27年度から30年度までの間と同様に受託業者等が実施した就職支援の実施状況を十分に確認しておらず、就職支援について改善を図ることの検討が十分にできない状況となっていた。

3 検査の結果に対する所見

文部科学省等は、20年7月に策定された「『留学生30万人計画』骨子」(文部科学省ほか5関係省庁による閣僚懇談会報告)において、我が国を世界により開かれた国とし、アジア、世界との間のヒト、モノ、カネ、情報の流れを拡大する「グローバル戦略」を展開する一環として、令和2年を目途に30万人の外国人留学生を受け入れることを目指し、優秀な外国人留学生を戦略的に獲得していくとしている。また、技能実習については、平成29年11月に、人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的として外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号。以下「技能実習法」という。)が施行されている。そして、これらの外国人を含めた外国人材の受入れに当たっては、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するなどのため、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」等が取りまとめられるなどしている。一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う外国人の入国制限が行われるまで、外国人留学生は増加していた中、所在不明者(注8)が継続的に発生するなどしており、また、技能実習生についても、その人数が令和2年末には減少しているものの増加傾向にある中で、元年に技能実習法施行後の制度での技能実習生において8,695人の行方不明者が発生するなどしている。

(注8)
所在不明者大学等に在籍中に3か月以上所在確認の連絡が取れなくなる者

ついては、法務省、文部科学省、厚生労働省等において、我が国を世界により開かれた国とし、国際協力を推進するなどのために、次の点に留意するなどして、より一層、外国人留学生を適切に受け入れるための施策を検討したり、技能実習制度の適正化を図ったりすることなどに取り組むことが重要である。

(1)大学等への外国人留学生受入れに係る施策の状況について

ア 出入国在留管理庁において、外国人留学生の在留の管理等に一層活用するために、全ての大学等が受入れに関する届出を適時適切に提出することを引き続き要請するとともに、利用が低調となっている電子届出システムについて、利用者が電子届出システムを利用するに当たっての要望等を十分に把握し、分析した上で、電子届出システムの利便性の向上を図るなどして適正な在留の管理という目的を果たしつつ利用を促進することなどを検討すること

イ 文部科学省及び私学事業団において、慎重審査対象校等とされているかなど、大学等における外国人留学生に係る在籍管理の状況も考慮して経常費補助金を交付する仕組みを設けることなどを検討すること

(2)技能実習制度の適正化に係る取組の状況について

ア 技能実習機構において、出入国在留管理庁から提供を受けている入国情報を活用して、技能実習を開始しているのに実習実施者届出書を提出していないおそれのある実習実施者を適時適切に把握すること。そして、実習実施者又は監理団体に対して実習実施者届出書の提出の督促を効率的に行うこと

イ 技能実習機構において、技能実習生の行方不明事案が発生した実習実施者に対する機構実地検査を速やかに実施できない場合には、速やかに客観的資料を入手すること

(3)政府情報システムの利用状況及び効果の発現状況

厚生労働本省において、研修事業における就職支援の実施状況を適切に把握して翌年度以降の研修事業に活用できるよう、受託業者とハローワーク等における就職支援の実施状況について事業実施結果報告書等により報告させて把握すること

本院としては、今後とも、外国人材の受入れに係る施策の実施状況等について、引き続き検査していくこととする。