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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 令和3年4月

高速道路に係る料金、債務の返済等の状況に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

1 検査の結果の主な内容

会計検査院は、高速道路に係る料金設定及び利用の状況、6会社の経営状況、高速道路に係る債務の返済状況及び機構の財務の状況、国による支援の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、①高速道路に係る料金の設定はどのように行われているか、高速道路の利用はどのような状況となっているか、②6会社の経営はどのような状況となっているか、③機構による債務の返済はどのような状況となっているか、機構の財務はどのような状況となっているか、④機構及び6会社に対する国の支援はどのような状況となっているかなどに着眼して検査を実施した。

検査の結果の主な内容は、次のとおりである。

(1) 高速道路に係る料金設定及び利用の状況(NUM1-1リンク参照

国土交通省は、6会社と機構との協定に定められた高速道路の料金の額等が、償還主義、公正妥当主義等の基準に適合しているか確認を行っていた。

償還主義について6会社の収支予算の明細をみたところ、計画料金収入により計画管理費及び貸付料を料金徴収期間内に賄うものとなっており、公正妥当主義について高速道路料金の推移をみたところ、その上昇率は電気料金を除く他の公共料金等と比べて低い割合となっていた(NUM1-2-uリンク参照)。

(2) 各高速道路株式会社の経営状況(NUM2-1リンク参照

平成18年度以降の高速道路の整備状況をみたところ、18年4月1日時点においては、開通済みの延長が8,976㎞、事業中の延長は1,394㎞となっていたが、令和2年3月末時点においては、開通済みの延長が10,355㎞、事業中の延長が313kmとなっており、平成18年4月1日時点で事業中となっていた延長1,394㎞のうち1,266km(90.8%)が開通していた(NUM2-1リンク参照)。

高速道路事業に係る損益のうち、料金収入に係る損益については、6会社の平成18年度から令和元年度までの実績損益の累計額は32億余円から253億余円までのプラスとなっていた。また、関連事業損益は、6会社とも、平成18年度以降、継続して利益を計上していた(s79-86リンク参照)。

(3) 高速道路に係る債務の返済状況及び機構の財務の状況(NUM3-1リンク参照

路線網等ごとの債務返済計画をみたところ、本四道路に係る出資金の令和元年度末における残高は、計1兆7382億余円となっている。機構は、高速道路勘定に係る出資金に相当する額を機構の解散の日までに出資積立金として積み立てる必要があるとされているが、本四道路に係る出資金については、民営化申合せにおいて、機構の解散時までに返済方法を検討することとされたため、当分の間、出資積立金の積立てに要する費用から本四道路に係る出資金に相当する額を除くこととなっている。

機構が上記の1兆7382億余円を出資積立金として積み立てるためには一定の期間が必要になり、債務返済計画に影響を与えることになることなどから、国土交通省及び機構において、本四道路に係る出資金の返済方法については、計画的に検討を行い、その結果を債務返済計画に反映する必要がある(s105-107リンク参照s121-124リンク参照)。

出資積立金の積立時期をみたところ、平成26年6月の特措法等改正の際に、建設債務の返済及び出資積立金の積立てを機構設立から45年以内に完了した後に、特定更新等工事債務を返済するという方針が国から示されたが、その後、首都高速道路に係る地域路線網の東京都等出資金及び阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の全出資金については、出資者との合意や各会社と調整を図った上で、国等が方針を示し、出資積立金の積立時期の見直しを行うこととして、それぞれの債務返済計画を変更し、出資積立金の積立てを有利子である特定更新等工事債務の返済の後に行うこととして、特定更新等工事債務に係る支払利息を低減させていた。一方、全国路線網に係る出資金及び首都高速道路に係る地域路線網の東京都等出資金以外の出資金については、出資積立金の積立時期の見直しを行っておらず、それぞれの債務返済計画において、特定更新等工事債務の返済前に出資積立金を積み立てることになっている。

しかし、このようにしていると、出資積立金を積み立てる期間に有利子債務である特定更新等工事債務を減少させることができず、同期間以降により多くの支払利息が発生することとなる。したがって、国土交通省及び機構において、全国路線網に係る出資金及び首都高速道路に係る地域路線網の東京都等出資金以外の出資金について、国、機構、各会社及び出資者である地方公共団体間で調整を図った上で出資積立金の積立時期の見直しを行い、将来の支払利息の低減を図るよう検討する必要があると認められた(s132-134リンク参照)。

(4) 国による支援の状況(s140-163リンク参照

国は、機構及び6会社に対して、出資や補助金の交付等の財政上の支援のほか、機構の資金調達に係る政府保証を行うなどの金融上の支援等の様々な支援を実施している。

このうち、機構が国等からの出資金等を財源として6会社に貸し付けている無利子貸付金相当額等について、債務の返済等にどのように寄与しているかをみるために、会計検査院において、仮に6会社が有利子で調達し、機構が有利子債務として引き受けることなどとした場合に機構の債務の返済等がどのようになるかを機械的に試算した。その結果、機構が引き受ける有利子債務及び支払利息が増加するなどしていたことから、国等による財政上の支援は、全国路線網、首都高速道路に係る地域路線網及び阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網に係る債務の返済等の完了期日が早期化することに寄与していたと考えられる(s140-163リンク参照)。

2 所見

機構及び6会社は、約40兆円に上る高速道路の建設等に係る有利子債務を一定期間内に確実に返済し、民間の経営上の判断を取り入れつつ、必要な道路を早期に、かつできるだけ少ない国民負担の下で建設するとともに、民間のノウハウを発揮することにより、多様で弾力的な料金設定や多様なサービスを提供することなどを目的として、平成17年10月1日に設立され、既に15年以上が経過している。

ついては、国土交通省、機構及び6会社は連携して、次の点に留意するなどして、高速道路に係る債務返済を確実に行い、必要な道路を早期にできるだけ少ない国民負担で建設することなどができるよう、高速道路事業等を適切に実施する必要がある。

ア 国土交通省、機構及び6会社において、引き続き、償還主義、公正妥当主義等に基づく検証を必要に応じて行うとともに、新たな路線や区間の開通等によるネットワークの整備状況、社会情勢の変化等に応じて適時適切に料金制度及び料金割引の見直しを行うこと

イ 国土交通省及び機構において、本四道路に係る出資金について、機構の解散時までに返済方法を検討することとなっているが、出資金は多額に上っており、機構が同額の出資積立金を積み立てるためには一定の期間が必要となることなどから、計画的に検討を行い、その結果を債務返済計画に反映すること

ウ 国土交通省及び機構において、債務の早期の確実な返済という機構の目的等に鑑み、全国路線網に係る出資金及び首都高速道路に係る地域路線網の東京都等出資金以外の出資金について、国、機構、各会社及び出資者である地方公共団体間で調整を図った上で出資積立金の積立時期の見直しを行い、将来の支払利息の低減を図るよう検討すること

以上のとおり報告する。

会計検査院としては、新型コロナウイルス感染症対策による交通量や貸付料等への影響を注視しつつ、今後とも、高速道路に係る料金、債務の返済等の状況について、引き続き検査していくこととする。