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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 令和3年5月

政府情報システムに関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

1 検査の結果の主な内容

会計検査院は、前記要請の政府情報システムに関する各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、①政府情報システムの整備及び運用に係る予算の執行状況はどのようになっているか、②政府情報システムの整備及び運用に当たって各府省等が締結する契約は競争性及び経済性が確保されているか、③政府情報システムは、有効に活用され、所期の目的に照らして十分な効果を発現しているか、各府省等において、システムの利用状況を把握し、効果の発現状況を検証するための体制が整備され、その体制により適切な把握及び検証が行われているか、④政府情報システムは全体として適切かつ効率的に整備され、及び運用されているか、また、コスト削減に向けた計画は適切に策定され、コスト削減を着実に実現しているかに着眼して検査を実施した。

検査の結果の主な内容は、次のとおりである。

(1) 政府情報システムの整備及び運用に係る予算の執行状況(NUM1リンク参照

予算現額が多額に上っている政府情報システム別に予算の執行状況をみると、各府省等の政府情報システムに係る予算のうち特に整備経費について、複数の府省等の政府情報システムにおいて、開発工期を見直すなどしたことによって繰越率や不用率が高くなっている状況が見受けられた(h-1-7リンク参照)。

システム数が多くPMOが執行額等の把握を行うのは困難であること、予算科目ごとの執行額等の把握は会計担当部門が行っていることなどを理由として、PMOが一元的に執行額等の把握を行っていない府省等も見受けられた。IT総合戦略室及び総務省は、執行額等を把握するためではないとはいえ、デジタルインフラを含め、政府情報システムに係る予算の執行状況の把握に関することを担う立場にあり、また、執行額等を含めて予算の執行状況の把握を行うことは、翌年度以降の予算作成にいかすなど政府情報システムに関する企画・予算要求、執行、検証及び見直しというPDCAサイクルを適切に機能させる上で有用である(28リンク参照)。

(2) 各府省等が締結する契約の競争性、経済性の状況(NUM2リンク参照

各府省等が平成30年度に締結した整備、運用等に係る契約755件のうち競争契約423件における応札者数の状況をみたところ、1者応札の件数は313件(73.9%)、契約金額は2929億余円(84.9%)となっており、1者応札の件数の割合が高く、ベンダーロックインが生じている可能性がある状況となっていた(NUM2-2リンク参照)。

一部の府省等では、調達仕様書等において競争を阻害しないような内容とするためにパッケージソフトの利用を可能としたり、調達単位を見直したりするなどの工夫を行うことにより、既存業者以外の業者の参入を通じて、競争性及び経済性を向上させている取組が見受けられた(41リンク参照)。

(3) 政府情報システムの利用状況及び効果の発現状況(NUM3リンク参照

ア マイナンバー制度関連システム
(ア) マイナンバーの情報連携の実施状況

マイナンバー制度関連システムの利活用及び添付書類の省略の促進のためには、情報連携を処理するシステムへのマイナンバーの登録及び情報連携の推進が重要である。しかし、マイナンバーの登録が低調となっているシステムが見受けられたり、情報連携の令和元年中の実績件数が年間想定件数に比較して著しく少なくなっていたりしていた。また、情報連携を支える基盤等のシステム等におけるITリソースについても、CPUの最大使用率が低いシステムが見受けられた(49リンク参照)。

(イ) マイナンバーの情報連携に係る監視・監督を行うシステムの利用状況

個人情報保護委員会は、29年7月の監視・監督システムの運用開始以降、同年10月から30年5月までの間においては試行的にしきい値を設定していたものの、同年6月以降は警告機能によるリアルタイムでの不正兆候の検知及び保留機能による情報照会の保留を行わないことにしていた(53リンク参照)。

(ウ) マイナポータルの利用状況

ぴったりサービスの実績件数については増加傾向となっていたものの、年間想定件数に対して30年度の実績件数は著しく少ない状況となっており、公金決済サービスについては実績件数が皆無となっていた(54リンク参照)。

イ マイナンバー制度関連システム以外の国民等や民間事業者等が利用する政府情報システム
(ア) 電子申請等関係システムの利用状況

電子完結不能な63手続のうち、電子申請率が20%未満の手続は55手続、1%未満の手続は41手続となっていた。また、添付資料がある113手続のうち、電子申請率が20%未満の手続は91手続、1%未満の手続は58手続となっていた(64リンク参照)。

外部連携機能が利用可能な142手続について、外部連携機能を利用した電子申請件数が把握されている手続を確認したところ13手続のみとなっており、外部連携機能の利用状況を確認することができない手続が多く見受けられた(67リンク参照)。

(イ) 受付システムの多重化と事務処理の状況

法人設立ワンストップサービスの開始により受付システムが多重化することとなったため、3受付システムの利用状況、事務処理システムとの連携状況等をみたところ、3事務処理システムについて、受付システムとしてe-Govとマイナポータルが併存していて電子申請のデータを受領するための機能が重複しており、このうち、ハローワークシステムにおいては、e-Govで利用することができた機能がマイナポータルでは利用することができないなどの状況となっており、行政側の業務が複雑化していた(69リンク参照)。

(ウ) 電子調達等関係システムの利用状況

各府省等における28年度から30年度までの契約の電子化の状況をみると、契約締結件数に対する電子契約の割合は1%未満にとどまっていた(75リンク参照)。

ウ 政府内の業務の効率化を図るための政府情報システム
(ア) 人給システム及び旅費等システムに係る機能の利用状況

人給システム及び旅費等システムについて、参加府省における各機能の利用状況をみたところ、令和2年2月末時点において、それぞれに参加している25省庁及び29省庁のうち10省庁以上が利用していない主要な機能があり、該当する業務がないことのほか、各機能を導入するための時間を参加府省において確保することができないことや、他の手段により運用していることなどのため、当該機能が利用されていない状況となっていた(83リンク参照)。

(イ) 他の政府情報システム等とのシステム連携機能の利用状況等

3共通システムと他の政府情報システム等とのシステム連携機能について、2年2月末時点の利用状況をみたところ、人給システムにおける3連携機能について、参加府省のうち連携機能を利用している省庁の割合が50%未満となっていた。

また、人給システムと他の政府情報システム等とのシステム連携については、連携する情報がシステム間で異なる形式であるなどシステム連携に係る仕様における課題が解決されないままとなっているため、システム連携を行うために相当の労力を要するものとなっていてシステム連携を実施できていない事態が見受けられた(90リンク参照)。

エ 政府情報システムに係る目標及び指標の設定状況、指標のモニタリングの実施状況、目標の達成状況等

89システムについて、プロジェクト計画書等の作成状況をみたところ、プロジェクト計画書及びプロジェクト管理要領の両方を作成していなかったものが、36システム見受けられた(93リンク参照)。

35システムについて、指標のモニタリングの実施状況を確認したところ、定量的な指標が計129件設定されていたが、このうち9システムの定量的な指標計20件については、モニタリングが行われていなかった(96リンク参照)。

(4) 政府情報システム全体の効率化及びコスト削減に向けた取組状況(NUM4リンク参照

ア 政府共通PFの整備及び運用の状況

第一期政府共通PFについては、整備を行ったセキュアゾーンや仮想PC機能について本来の事業効果を発現しておらず、経費の増大を招くなどしていた。また、政府情報システムの統合・集約化によるシステム運用コストの低減が図られているとは判断できない状況となっていたり、政府全体での投資対効果及び経費削減効果の検証等が十分に行われていなかったりしていた(103リンク参照)。

仮想CPUコア数の中には実際のシステムの運用に利用されていないものが、また、移行システムごとのITリソースや運用管理サーバ等に係るITリソースの中には十分に活用されていないものが見受けられた(107リンク参照)。

イ IT総合戦略室及び総務省による運用等経費の削減に関する取組の状況

IT総合戦略室は、各府省等から報告された削減実績額の妥当性を確認することについては、標準ガイドライン等に規定されていないことなどから、行っていないとしていた。また、IT総合戦略室は、平成29年度分以降の削減実績額については、報告の様式を変更したため、各政府情報システムの制度改正等増分経費の内訳を把握していなかった(112リンク参照)。

運用等経費の削減対象となっている政府情報システムのみについて令和2年度予算額を集計すると、3863億余円となり、削減基準額である4000億円との差は136億余円(削減目標額に対する割合11.3%)となっており、2年度の削減見込額としている1028億余円(同85.7%)と相当の開差が見受けられる状況となっていた。このような開差は、制度改正等増分経費が影響していることによると思料される(113リンク参照)。

ウ ITダッシュボードによる運用等経費の削減状況の公表

政府情報システムの運用等経費の削減状況の公表状況について、ITダッシュボードにおける公表状況をみたところ、平成30年4月から令和3年2月までの間に一度も更新していなかった(114リンク参照)。

エ 各府省等の政府情報システムに係る監査の実施状況

情報セキュリティ監査は実施しているが、システム監査計画を策定していなかったり、システム監査を実施していなかったりしていて、ITガバナンス及びITマネジメントの面で適切でない事態が3省庁において見受けられた(117リンク参照)。

オ ODBによる政府情報システムの情報資産の管理状況

総務省は、運用開始から7年を経過したODBの更改を行わずに、2年9月に運用を停止し、同年10月末に廃止している。そして、ODBの廃止後の政府情報システムの情報資産等の管理の在り方については、サブワーキンググループにおいて検討することになっている。このため、具体的な在り方が定まるまでの間は、情報システムIDの管理等については、表計算ソフトウェアを用いた手作業により維持する予定としている。また、ODBの廃止後の統一的な政府情報システムの情報資産等の管理の方向性については、現時点で未定であるとしている(118リンク参照)。

2 所見

政府は、政府情報システムの整備及び運用について、毎年度、多額の予算を計上している。そして、デジタル・ガバメントを実現するための取組を強化するとともに、政府情報システムを活用して、行政サービスの利便性の向上並びに行政運営の効率性及び透明性の向上を実現するため、デジタル庁の制度設計、体制整備等を進めている。また、政府内では、デジタル庁の設置に向けて、ITガバナンスにおけるIT総合戦略室、総務省、各府省等の従来の役割について、変更が検討されている状況にある。

ついては、政府は、次の点に留意するなどして、より一層、行政サービスを改善しデジタル社会に対応したデジタル・ガバメントの実現を目指すよう取り組むことが重要である。

(1) 政府情報システムの整備及び運用に係る予算の執行状況

ア 翌年度以降の予算を作成するに当たり、政府情報システムに関して、予算要求の状況だけでなく、執行額等を含めた予算の執行状況についても、各府省等において、把握を行うことを検討すること
イ 政府情報システムの適切な整備・見直しにも資するよう、一元的プロジェクト管理強化方針に基づき一括計上したデジタルインフラの整備に係る予算について、調査の実施方法等を検討した上で各システムの執行額等の情報を各府省等から集約するなどして把握を行い、PDCAサイクルを適切に機能させるために活用していくことを検討すること

(2) 各府省等が締結する契約の競争性、経済性の状況

政府情報システムの契約の締結に当たり、調達仕様書等において競争を阻害しないような内容としたり、業務の内容を分割するなどの調達単位を見直したりするなどの工夫を行うことにより、各府省等において、既存業者以外の業者の参入による競争性及び経済性の向上を図ること

(3) 政府情報システムの利用状況及び効果の発現状況

ア マイナンバー制度関連システム
(ア) マイナンバー制度関連システムにおけるマイナンバーの登録を各府省等において進めるとともに、所管する事務手続における情報連携を各府省等において一層推進すること。また、マイナンバー制度関連システムについて、各府省等においてITリソースの利用状況を注視しつつ、システムの適切な整備を行っていくこと
(イ) 情報連携に係る監視・監督業務の取組について、情報提供NWSの不適切な利用の早期発見という目的に照らして実際に有効な方法となっているか、個人情報保護委員会において、継続的に検証していくこと
(ウ) マイナポータルの情報提供等記録表示機能を今後も引き続き適切に提供するとともに、ぴったりサービス及び公金決済サービスについては、利用状況を踏まえてサービスの在り方について検討した上で、利用の推進等を図ること
イ マイナンバー制度関連システム以外の国民等や民間事業者等が利用する政府情報システム
(ア) 電子申請の在り方について利用状況を踏まえて検討した上で、電子申請等関係システムの利活用促進及び利便性向上の観点から、行政手続の見直しなどの際に、電子完結が可能となる仕組みの整備、添付資料の見直しなどの検討を行うとともに、外部連携機能を整備した効果を確認できるようにするなどして、電子申請率の向上等を図るための方策を各府省等において検討すること
(イ) 受付システムの多重化によって、関係する事務処理システムにおける業務の複雑化を招かないように、受付システムを整備し運用する府省等において、あらかじめ受付システムと事務処理システムとの連携方法を十分に検討すること
(ウ) GEPSによる電子契約の利用促進に向けた課題を整理し、各府省等が行う調達について、利便性に配慮した上で可能なものから順次電子契約を利用するよう、各府省等及び民間事業者等に対する周知、啓発等に努めること
ウ 政府内の業務の効率化を図るための政府情報システム
(ア) 人給システム及び旅費等システムについて、担当府省において、システムの利便性の向上を図りつつ、参加府省におけるシステムの機能の利用状況について適切に把握し、各機能の利用が低調となっている参加府省に対して、利用が進んでいる省庁の取組事例を紹介するなどして、両システムの利用促進に向けた取組等について適時適切に検討するように助言及び支援を行うこと。また、参加府省において、システムを利用した場合の業務の在り方を見直し、各機能を利用した場合の業務への影響やシステム化の可否について、十分に検討を行い、両システムの利用向上に向けて適切に取り組んでいくこと
(イ) 業務の効率化を図ることができるよう、担当府省において、人給システムについて、必要となるシステム改修等の技術的な対応を行うなどしたり、文書管理システム及び旅費等システムについて、参加府省に対してシステム連携が円滑に行えるように適時適切にシステム連携機能に係る周知等の支援を行ったりすることにより、システム連携を推進していくこと。また、デジタル・ガバメント実行計画において、データの標準化、情報システム間の互換性、円滑な情報連携等について、政府として統一性を確保しつつ効率的に実現することとなっていることを踏まえて、担当府省におけるシステム連携を推進するための取組について適時適切に助言及び支援を行っていくこと。さらに、担当府省によるシステム改修等の技術的な対応やシステム連携機能に係る周知等の支援等を踏まえて、参加府省においてシステム連携機能の利用を検討すること
エ 政府情報システムの利用状況及び効果の発現状況を把握するために、各府省等において、プロジェクト計画書等を作成して適切な目標及び指標を設定し、目標値に対する実績値の取得方法等を十分に検討してプロジェクト管理要領に明記するとともに、適切にモニタリングを行い、目標の達成に向けた継続的な改善に取り組んでいくこと

(4) 政府情報システム全体の効率化及びコスト削減に向けた取組状況

ア 第一期政府共通PFの運用状況の分析や見直しなどの実績を十分に踏まえて第二期政府共通PFの整備及び運用を行うことなどにより、引き続き政府情報システムの効率化及びコスト削減を推進すること
イ 政府情報システムに係る運用等経費の削減実績額の算定について、削減実績額が大きい政府情報システムの制度改正等増分経費等が適正であるかなどの検証を行うとともに、削減実績額の算定に当たっての方法等を各府省等と共有するなどして適正な削減実績額の算定に努めること
ウ 政府情報システムの運用等経費の削減状況を適時に公表して国民が確認できるようにすること
エ PMOの体制強化を各府省等において検討するなどして、システム監査等を適切に実施すること
オ ODB廃止後の政府情報システムに係る情報資産等のより効率的かつ効果的な管理の在り方について、早急に検討し、結論を得ること

以上のとおり報告する。

会計検査院としては、政府情報システムの整備及び運用に係る予算の執行状況、各府省等が締結する契約の競争性、経済性の状況、政府情報システムの利用状況及び効果の発現状況並びに政府情報システム全体の効率化及びコスト削減に向けた取組状況について、多角的な観点から今後も引き続き検査していくこととする。