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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 令和3年5月

政府情報システムに関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 政府情報システムの整備及び運用に係る予算の執行状況

IT総合戦略室及び総務省は、標準ガイドラインに基づく政府全体のITガバナンスの一環として、毎年度、各府省等における政府情報システムの整備及び運用に係る予算の状況を調査している。この調査では、同予算は、情報システム関係予算のうち整備経費と運用等経費の合計となっている。一方、当該予算の執行額等(注16)を含めた執行状況について、IT総合戦略室及び総務省は、これまで統一的に調査したことはないとしている。

そこで、会計検査院が、各府省等における政府情報システムのうち前記の765システムに係る平成30年度の予算の執行状況を検査したところ、次のとおりとなっていた。

(注16)
執行額等   支出済歳出額、翌年度繰越額及び不用額

(1) 政府情報システムの整備経費及び運用等経費に係る予算の概況

各府省等における政府情報システムに係る予算について、30年度の上記765システムの当初予算額、補正予算額、前年度からの繰越額及び流用等増減額等を合計した額(以下「予算現額」という。)をみると、図表1-1のとおり、予算現額は6193億余円となっていた(765システム別の内訳は別図表1-1参照)。

h-1-1図表1-1 政府情報システムに係る予算の予算現額(平成30年度)

図表1-1 政府情報システムに係る予算の予算現額(平成30年度)

(単位:千円)

平成30年度
当初予算額
(A)


30年度
補正予算額
(B)


前年度からの
繰越額
(C)


流用等増減額等
(D)


政府情報システムに
係る予算の予算現額
(A)+(B)+(C)+(D)

595,551,227 17,034,766 5,744,565 1,013,126 619,343,686
  • (注) 各金額は、整備経費と運用等経費の合計であり、その他経費は含まない。

これを府省等別にみると、図表1-2のとおり、厚生労働省の2231億余円(予算現額全体に対する割合36.0%)が最も多くなっており、次いで国税庁の586億余円(同9.4%)、法務省の561億余円(同9.0%)となっていて、上位3省庁で全体の54.5%を占めていた(予算現額が多額に上っている上位50システムの一覧については、別図表1-2参照)。また、経費区分別にみると、整備経費が2041億余円(同32.9%)、運用等経費が4151億余円(同67.0%)となっていた。

h-1-2図表1-2 政府情報システムに係る経費区分別の予算現額の状況(平成30年度)

図表1-2 政府情報システムに係る経費区分別の予算現額の状況(平成30年度)

(単位:システム、千円、%)
府省等名 シス
テム
予算現額
整備経費 運用等経費 府省等別
割合
金額
(A)
割合
(A)/(C)
金額
(B)
割合
(B)/(C)
金額
(C)=(A)+(B)
内閣官房 14 1,146,626 39.5 1,756,170 60.4 2,902,796 0.4
内閣法制局 2 10,195 9.3 98,658 90.6 108,853 0.0
人事院 11 1,639,717 43.8 2,097,188 56.1 3,736,906 0.6
内閣府 33 8,050,806 42.7 10,777,958 57.2 18,828,764 3.0
宮内庁 4 349,267 100.0 349,267 0.0
公正取引委員会 6 64,861 31.5 140,594 68.4 205,455 0.0
警察庁 37 3,433,927 25.5 9,984,233 74.4 13,418,160 2.1
個人情報保護委員会 5 135,780 11.5 1,041,918 88.4 1,177,698 0.1
金融庁 14 968,215 36.7 1,667,369 63.2 2,635,584 0.4
消費者庁 14 199,364 22.9 667,701 77.0 867,065 0.1
復興庁 2 22,283 100.0 22,283 0.0
総務省 60 15,548,605 29.5 37,099,426 70.4 52,648,031 8.5
消防庁 17 608,488 46.0 713,406 53.9 1,321,894 0.2
法務省 43 16,935,325 30.1 39,256,736 69.8 56,192,062 9.0
外務省 32 2,489,395 16.9 12,202,287 83.0 14,691,683 2.3
財務省 25 7,351,815 28.3 18,623,677 71.6 25,975,493 4.1
国税庁 21 6,957,934 11.8 51,708,950 88.1 58,666,884 9.4 54.5%
文部科学省 23 803,949 27.5 2,117,675 72.4 2,921,625 0.4
文化庁 8 11,878 6.6 167,768 93.3 179,647 0.0
厚生労働省 76 77,540,913 34.7 145,622,146 65.2 223,163,059 36.0
農林水産省 46 4,904,467 49.4 5,008,712 50.5 9,913,180 1.6
経済産業省 30 1,783,763 17.6 8,305,777 82.3 10,089,540 1.6
特許庁 11 16,648,695 47.7 18,194,502 52.2 34,843,197 5.6
国土交通省 83 19,809,787 57.0 14,929,056 42.9 34,738,844 5.6
気象庁 35 1,962,043 31.3 4,288,711 68.6 6,250,754 1.0
環境省 37 983,536 30.5 2,231,519 69.4 3,215,055 0.5
原子力規制委員会 24 708,483 13.1 4,698,842 86.8 5,407,325 0.8
防衛省 46 12,391,783 38.4 19,870,151 61.5 32,261,934 5.2
防衛装備庁 6 1,054,169 40.3 1,556,466 59.6 2,610,635 0.4
765 204,144,528 32.9 415,199,158 67.0 619,343,686 100.0
  • 注(1) 予算現額の計上に際して、他府省等が分担金を拠出する政府情報システムについては、担当府省等に分担金を合算している。
  • 注(2) 法務省には入国管理局(平成31年4月1日以降は出入国在留管理庁)の分を含む。以下、図表1-3から図表1-4図表1-5図表1-6図表1-7まで、図表2-1図表3-9及び別図表1-1から別図表1-2別図表1-3別図表1-4別図表1-5までにおいて同じ。
  • 注(3) 文部科学省から気象庁に支出委任している政府情報システムである1システムについては、文部科学省においてシステム数及び予算現額を計上している。

予算現額の上位3省庁(厚生労働省、国税庁及び法務省)について、30年度の予算現額が多額に上っている政府情報システムをみると、厚生労働省では、記録管理・基礎年金番号管理システム(別図表1-2の順位1)が878億余円、ハローワークシステム(同順位2)が619億余円、年金給付システム(同順位3)が385億余円、国税庁では、国税総合管理システム(KSKシステム)(同順位5)が280億余円、法務省では、登記情報システム(同順位6)が227億余円、出入国管理システム(同順位8)が154億余円等となっていた。

さらに、政府情報システムごとに、30年度の予算現額が多額に上っているものをみると、整備経費については、予算現額が多額に上っている上位10システムは図表1-3のとおりであり、その合計は1231億余円となっていて、全体の整備経費2041億余円に対する割合は60.3%となっていた。このうち厚生労働省のシステムが上位二つを占めており、当該2システムで全体の整備経費の29.5%を占めていた。

h-1-3図表1-3 政府情報システムの整備経費の予算現額の上位10システム(平成30年度)

図表1-3 政府情報システムの整備経費の予算現額の上位10システム(平成30年度)

(単位:千円、%)
順位 府省等名 システム名 整備経費の
予算現額
(A)
全体の整備経費
に占める割合
(A)/(B)
別図表
1-2の
順位
1 厚生労働省 記録管理・基礎年金番号管理システム 38,965,732 19.0 1
2 厚生労働省 ハローワークシステム 21,450,271 10.5 2
3 特許庁 特許事務システム 16,629,661 8.1 4
4 国土交通省 管制情報処理システム 10,335,204 5.0 9
5 厚生労働省 年金給付システム 8,612,772 4.2 3
6 法務省 登記情報システム 6,400,220 3.1 6
7 総務省 総合無線局監理システム 6,298,837 3.0 11
8 法務省 出入国管理システム 5,898,293 2.8 8
9 防衛省 人事・給与情報システム 4,378,747 2.1 24
10 内閣府 情報提供等記録開示システム 4,171,781 2.0 13
上位10システムの計 123,141,519 60.3
全体の整備経費の合計(B) 204,144,528

また、30年度の運用等経費について、予算現額が多額に上っている上位10システムは図表1-4のとおりであり、その合計は2222億余円となっていて、全体の運用等経費4151億余円に対する割合は53.5%となっていた。このうち厚生労働省のシステムが上位三つを占めており、当該3システムで全体の運用等経費の28.7%を占めていた。

h-1-4図表1-4 政府情報システムの運用等経費の予算現額の上位10システム(平成30年度)

図表1-4 政府情報システムの運用等経費の予算現額の上位10システム(平成30年度)

(単位:千円、%)
順位 府省等名 システム名 運用等経費の
予算現額
(A)
全体の運用等経
費に占める割合
(A)/(B)
別図表
1-2の
順位
1 厚生労働省 記録管理・基礎年金番号管理システム 48,893,024 11.7 1
2 厚生労働省 ハローワークシステム 40,523,301 9.7 2
3 厚生労働省 年金給付システム 29,980,848 7.2 3
4 国税庁 国税総合管理システム(KSKシステム) 26,226,237 6.3 5
5 特許庁 特許事務システム 16,661,655 4.0 4
6 法務省 登記情報システム 16,317,947 3.9 6
7 総務省 政府共通プラットフォーム 15,202,610 3.6 7
8 厚生労働省 労働基準行政システム(労働基準行政情報システム・労災行政情報管理システム) 10,109,254 2.4 10
9 法務省 出入国管理システム 9,563,125 2.3 8
10 外務省 外務省ネットワーク・LANシステム 8,810,389 2.1 12
上位10システムの計 222,288,390 53.5
全体の運用等経費の合計(B) 415,199,158

(2) 政府情報システムの整備経費及び運用等経費に係る予算の執行状況

ア 各府省等における政府情報システムに係る予算の執行状況

各府省等における政府情報システムに係る30年度の予算の執行状況をみると、図表1-5のとおり、予算現額6193億余円に対して、支出済歳出額5477億余円、翌年度繰越額175億余円(うち最も多額なのは内閣府の56億余円(翌年度繰越額全体の32.1%))、不用額540億余円(同厚生労働省の381億余円(不用額全体の70.6%))となっており、支出済歳出額の予算現額に対する割合(以下「執行率」という。)は88.4%、翌年度繰越額の予算現額に対する割合(以下「繰越率」という。)は2.8%、不用額の予算現額に対する割合(以下「不用率」という。)は8.7%となっていた。

h-1-5図表1-5 政府情報システムの整備経費及び運用等経費の合計に係る予算の執行状況(平成 30年度)

図表1-5 政府情報システムの整備経費及び運用等経費の合計に係る予算の執行状況(平成 30年度)

(単位:システム、千円、%)
府省等名 システム
整備経費及び運用等経費の合計
予算現額
(A)
執行状況
支出済歳出額
(B)
執行率
(B)/(A)
翌年度繰越額
(C)
繰越率
(C)/(A)
不用額
(D)
不用率
(D)/(A)
内閣官房 14 2,902,796 1,949,435 67.1 137,166 4.7 816,195 28.1
内閣法制局 2 108,853 108,604 99.7 248 0.2
人事院 11 3,736,906 3,726,376 99.7 10,530 0.2
内閣府 33 18,828,764 11,670,731 61.9 5,645,744 29.9 1,512,289 8.0
宮内庁 4 349,267 321,855 92.1 27,411 7.8
公正取引委員会 6 205,455 192,287 93.5 13,167 6.4
警察庁 37 13,418,160 12,814,317 95.4 603,843 4.5
個人情報保護委員会 5 1,177,698 1,123,914 95.4 53,784 4.5
金融庁 14 2,635,584 2,394,713 90.8 178,445 6.7 62,426 2.3
消費者庁 14 867,065 701,784 80.9 165,281 19.0
復興庁 2 22,283 22,281 99.9 1 0.0
総務省 60 52,648,031 49,761,556 94.5 1,636,567 3.1 1,249,907 2.3
消防庁 17 1,321,894 1,108,636 83.8 213,258 16.1
法務省 43 56,192,062 52,007,550 92.5 3,118,434 5.5 1,066,077 1.8
外務省 32 14,691,683 14,172,685 96.4 518,997 3.5
財務省 25 25,975,493 24,881,659 95.7 1,093,834 4.2
国税庁 21 58,666,884 57,467,827 97.9 1,199,056 2.0
文部科学省 23 2,921,625 2,555,114 87.4 181,332 6.2 185,179 6.3
文化庁 8 179,647 160,107 89.1 19,540 10.8
厚生労働省 76 223,163,059 184,722,492 82.7 274,014 0.1 38,166,553 17.1
農林水産省 46 9,913,180 6,189,757 62.4 3,379,121 34.0 344,301 3.4
経済産業省 30 10,089,540 9,064,640 89.8 500,320 4.9 524,579 5.1
特許庁 11 34,843,197 32,068,809 92.0 2,774,387 7.9
国土交通省 83 34,738,844 31,329,110 90.1 2,347,640 6.7 1,062,093 3.0
気象庁 35 6,250,754 5,994,621 95.9 256,133 4.0
環境省 37 3,215,055 2,871,815 89.3 343,240 10.6
原子力規制委員会 24 5,407,325 4,884,241 90.3 135,000 2.4 388,084 7.1
防衛省 46 32,261,934 31,455,410 97.5 806,523 2.4
防衛装備庁 6 2,610,635 2,069,048 79.2 541,586 20.7
765 619,343,686 547,791,387 88.4 17,533,783 2.8 54,018,514 8.7
  • (注) 図表中の数値は、表示単位未満を切り捨てているため、別図表1-3及び、1-4の合計と一致しないものがある。

これを経費区分別にみたところ、整備経費は、予算現額2041億余円に対して、支出済歳出額1539億余円、翌年度繰越額151億余円、不用額349億余円となっており、執行率75.4%、繰越率7.4%、不用率17.1%となっていた(各府省等の政府情報システムの整備経費に係る予算の執行状況については 別図表1-3参照)。また、運用等経費は、予算現額4151億余円に対して、支出済歳出額3938億余円、翌年度繰越額23億余円、不用額190億余円となっており、執行率94.8%、繰越率0.5%、不用率4.5%となっていた(各府省等の政府情報システムの運用等経費に係る予算の執行状況については別図表1-4参照)。

このように、30年度における執行状況をみると、整備経費は運用等経費に比べて執行率が低く、繰越率及び不用率が高くなっていた。

イ 政府情報システム別にみた政府情報システムに係る予算の執行状況

予算の執行状況に係る検査の対象とした前記765システムのうち、30年度の予算現額が多額に上っている上位50システムに係る予算の執行状況をみると、50システムの合計で、予算現額5089億余円、支出済歳出額4504億余円、翌年度繰越額139億余円、不用額445億余円となっており、765システムの合計の予算現額6193億余円、支出済歳出額5477億余円、翌年度繰越額175億余円、不用額540億余円に対する割合はそれぞれ82.1%、82.2%、79.6%、82.5%となっており、その大半を占めていた。また、予算現額上位50システム全体の執行率は88.4%、繰越率は2.7%、不用率は8.7%となっていた(予算現額上位50システムの整備経費及び運用等経費の合計に係る予算の執行状況については、別図表1-5参照)。

これを経費区分別にみたところ、整備経費は、図表1-6のとおり、予算現額1669億余円に対して、支出済歳出額1252億余円、翌年度繰越額119億余円、不用額296億余円となっており、執行率75.0%、繰越率7.1%、不用率17.7%となっていた。

h-1-6図表1-6 予算現額上位50システムの整備経費に係る予算の執行状況(平成30年度)

図表1-6 予算現額上位50システムの整備経費に係る予算の執行状況(平成30年度)

(単位:千円、%)

府省等名 システム名 整備経費
予算現額
(A)
執行状況
支出済歳出額
(B)
執行率
(B)/(A)
翌年度繰越額
(C)
繰越率
(C)/(A)
不用額
(D)
不用率
(D)/(A)
1 人事院 人事・給与関係業務情報システム 1,301,798 1,297,529 99.6 4,268 0.3
2 内閣府 内閣府LAN(共通システム) 369,654 365,078 98.7 4,575 1.2
3 内閣府 情報提供等記録開示システム 4,171,781 1,119,808 26.8 2,701,522 64.7 350,450 8.4
4 内閣府 サービス検索・電子申請機能等システム 2,135,738 1,139,848 53.3 915,214 42.8 80,676 3.7
5 警察庁 全国的情報処理センター用電子計算機
6 警察庁 指掌紋自動識別システム 574,251 535,573 93.2 38,677 6.7
7 総務省 総務省LAN 112,052 109,312 97.5 2,739 2.4
8 総務省 電子政府の総合窓口システム(e-Gov) 3,154,328 1,641,726 52.0 1,386,500 43.9 126,101 3.9
9 総務省 政府共通ネットワーク 754,972 754,972 100.0
10 総務省 政府共通プラットフォーム 632,155 338,364 53.5 293,791 46.4
11 総務省 情報提供ネットワークシステム 131,842 97,200 73.7 34,642 26.2
12 総務省 総合無線局監理システム 6,298,837 6,298,837 100.0
13 法務省 地図情報システム 509,697 356,685 69.9 153,012 30.0
14 法務省 登記情報システム 6,400,220 6,235,800 97.4 128,012 2.0 36,407 0.5
15 法務省 出入国管理システム 5,898,293 4,432,933 75.1 1,436,344 24.3 29,016 0.4
16 外務省 外務省ネットワーク・LANシステム
17 外務省 領事業務情報システム 1,211,148 1,155,922 95.4 55,225 4.5
18 財務省 財務局行政情報化LANシステム 511,351 398,812 77.9 112,538 22.0
19 財務省 官庁会計システム 532,413 439,556 82.5 92,856 17.4
20 財務省 予算編成支援システム 1,965,331 1,965,330 99.9 0 0.0
21 財務省 通関情報総合判定システム 3,069,698 2,822,503 91.9 247,194 8.0
22 財務省 通関事務総合データ通信システム 193,792 193,792 100.0
23 国税庁 国税総合管理システム(KSKシステム) 1,858,525 1,624,372 87.4 234,152 12.5
24 国税庁 国税総合管理システム(オープンシステム) 2,467,185 2,315,160 93.8 152,024 6.1
25 国税庁 国税庁LANシステム 327,292 266,173 81.3 61,118 18.6
26 国税庁 確定申告書等作成コーナー 261,937 261,936 99.9 0 0.0
27 国税庁 法人番号システム等 1,020,049 1,017,437 99.7 2,611 0.2
28 国税庁 国税電子申告・納税システム(e-Tax) 433,271 403,947 93.2 29,323 6.7
29 厚生労働省 統合ネットワークシステム 83,592 70,200 83.9 13,392 16.0
30 厚生労働省 厚生労働省ネットワークシステム
31 厚生労働省 労働保険適用徴収システム 725,696 706,760 97.3 18,935 2.6
32 厚生労働省 労働基準行政システム(労働基準行政情報システム・労災行政情報管理システム) 3,779,306 3,195,779 84.5 89,905 2.3 493,621 13.0
33 厚生労働省 ハローワークシステム 21,450,271 19,566,133 91.2 1,884,137 8.7
34 厚生労働省 年金給付システム 8,612,772 7,706,695 89.4 906,076 10.5
35 厚生労働省 記録管理・基礎年金番号管理システム 38,965,732 16,466,214 42.2 22,499,517 57.7
36 農林水産省 国営造成土地改良施設防災情報ネットワーク 2,879,130 15,489 0.5 2,859,761 99.3 3,879 0.1
37 経済産業省 経済産業省基盤情報システム
38 特許庁 特許事務システム 16,629,661 14,903,210 89.6 1,726,450 10.3
39 国土交通省 特殊車両通行許可システム 1,521,083 441,083 28.9 1,080,000 71.0
40 国土交通省 自動車登録検査業務電子情報処理システム 751,357 751,357 100.0
41 国土交通省 管制情報処理システム 10,335,204 9,541,843 92.3 793,360 7.6
42 国土交通省 航空管制セキュリティシステム 3,512,000 3,079,760 87.6 430,000 12.2 2,239 0.0
43 気象庁 数値解析予報システム 837,974 829,270 98.9 8,703 1.0
44 原子力規制委員会 統合原子力防災ネットワークシステム
45 防衛省 防衛省中央OAネットワーク・システム 48,232 40,068 83.0 8,164 16.9
46 防衛省 人事・給与情報システム 4,378,747 4,370,635 99.8 8,112 0.1
47 防衛省 統合気象システム 3,872,238 3,808,346 98.3 63,891 1.6
48 防衛省 業務用電子計算機 1,774,737 1,774,737 100.0
49 防衛省 陸自業務システム 83,297 83,133 99.8 164 0.1
50 防衛省 事務共通システム 363,994 345,600 94.9 18,394 5.0
166,902,636 125,284,935 75.0 11,973,630 7.1 29,644,069 17.7

また、運用等経費は、図表1-7のとおり、予算現額3420億余円に対して、支出済歳出額3251億余円、翌年度繰越額19億余円、不用額149億余円となっており、執行率95.0%、繰越率0.5%、不用率4.3%となっていた。

h-1-7図表1-7 予算現額上位50システムの運用等経費に係る予算の執行状況(平成30年度)

図表1-7 予算現額上位50システムの運用等経費に係る予算の執行状況(平成30年度)

(単位:千円、%)

府省等名 システム名 運用等経費
予算現額 (A) 執行状況
支出済歳出額
(B)
執行率
(B)/(A)
翌年度繰越額
(C)
繰越率
(C)/(A)
不用額
(D)
不用率
(D)/(A)
1 人事院 人事・給与関係業務情報システム 1,834,344 1,830,286 99.7 4,057 0.2
2 内閣府 内閣府LAN(共通システム) 2,758,897 2,734,721 99.1 24,175 0.8
3 内閣府 情報提供等記録開示システム 4,140,186 3,470,110 83.8 194,400 4.6 475,675 11.4
4 内閣府 サービス検索・電子申請機能等システム 3,030,382 1,274,557 42.0 1,276,236 42.1 479,588 15.8
5 警察庁 全国的情報処理センター用電子計算機 2,072,214 2,068,275 99.8 3,938 0.1
6 警察庁 指掌紋自動識別システム 3,740,429 3,727,629 99.6 12,799 0.3
7 総務省 総務省LAN 2,738,772 2,694,221 98.3 44,550 1.6
8 総務省 電子政府の総合窓口システム(e-Gov) 396,489 394,059 99.3 2,429 0.6
9 総務省 政府共通ネットワーク 2,537,585 2,537,583 99.9 1 0.0
10 総務省 政府共通プラットフォーム 15,202,610 15,132,950 99.5 69,659 0.4
11 総務省 情報提供ネットワークシステム 7,033,350 7,023,769 99.8 9,580 0.1
12 総務省 総合無線局監理システム 4,211,162 4,099,081 97.3 112,081 2.6
13 法務省 地図情報システム 3,799,020 3,743,260 98.5 55,760 1.4
14 法務省 登記情報システム 16,317,947 16,156,573 99.0 161,373 0.9
15 法務省 出入国管理システム 9,563,125 9,416,811 98.4 146,313 1.5
16 外務省 外務省ネットワーク・LANシステム 8,810,389 8,404,061 95.3 406,328 4.6
17 外務省 領事業務情報システム 1,916,175 1,916,174 99.9 0 0.0
18 財務省 財務局行政情報化LANシステム 1,963,252 1,851,339 94.2 111,912 5.7
19 財務省 官庁会計システム 4,136,429 4,115,957 99.5 20,471 0.4
20 財務省 予算編成支援システム 1,996,852 1,925,899 96.4 70,952 3.5
21 財務省 通関情報総合判定システム 2,065,412 2,043,318 98.9 22,093 1.0
22 財務省 通関事務総合データ通信システム 3,110,662 3,022,248 97.1 88,413 2.8
23 国税庁 国税総合管理システム(KSKシステム) 26,226,237 26,161,931 99.7 64,305 0.2
24 国税庁 国税総合管理システム(オープンシステム) 3,570,064 3,570,056 99.9 7 0.0
25 国税庁 国税庁LANシステム 5,505,672 5,447,225 98.9 58,446 1.0
26 国税庁 確定申告書等作成コーナー 2,874,871 2,431,626 84.5 443,244 15.4
27 国税庁 法人番号システム等 4,338,859 4,264,551 98.2 74,307 1.7
28 国税庁 国税電子申告・納税システム(e-Tax) 7,389,896 7,347,835 99.4 42,060 0.5
29 厚生労働省 統合ネットワークシステム 2,292,909 1,994,548 86.9 298,360 13.0
30 厚生労働省 厚生労働省ネットワークシステム 5,204,979 5,098,822 97.9 106,156 2.0
31 厚生労働省 労働保険適用徴収システム 3,132,720 2,831,049 90.3 301,670 9.6
32 厚生労働省 労働基準行政システム(労働基準行政情報システム・労災行政情報管理システム) 10,109,254 9,475,578 93.7 633,675 6.2
33 厚生労働省 ハローワークシステム 40,523,301 38,183,645 94.2 2,339,655 5.7
34 厚生労働省 年金給付システム 29,980,848 28,225,130 94.1 1,755,717 5.8
35 厚生労働省 記録管理・基礎年金番号管理システム 48,893,024 44,035,559 90.0 4,857,464 9.9
36 農林水産省 国営造成土地改良施設防災情報ネットワーク 721,335 195,522 27.1 519,360 71.9 6,452 0.8
37 経済産業省 経済産業省基盤情報システム 5,581,812 5,511,762 98.7 70,050 1.2
38 特許庁 特許事務システム 16,661,655 15,817,179 94.9 844,475 5.0
39 国土交通省 特殊車両通行許可システム 554,189 554,189 100.0
40 国土交通省 自動車登録検査業務電子情報処理システム 3,203,819 2,967,868 92.6 235,950 7.3
41 国土交通省 管制情報処理システム 3,646,578 3,421,379 93.8 225,198 6.1
42 国土交通省 航空管制セキュリティシステム
43 気象庁 数値解析予報システム 1,298,427 1,284,368 98.9 14,058 1.0
44 原子力規制委員会 統合原子力防災ネットワークシステム 2,378,634 2,341,239 98.4 37,394 1.5
45 防衛省 防衛省中央OAネットワーク・システム 1,909,322 1,819,045 95.2 90,276 4.7
46 防衛省 人事・給与情報システム 618,816 613,420 99.1 5,396 0.8
47 防衛省 統合気象システム 2,397,035 2,306,408 96.2 90,627 3.7
48 防衛省 業務用電子計算機 1,580,973 1,580,973 100.0
49 防衛省 陸自業務システム 4,813,475 4,812,693 99.9 782 0.0
50 防衛省 事務共通システム 3,288,702 3,256,146 99.0 32,555 0.9
342,073,093 325,132,649 95.0 1,989,996 0.5 14,950,447 4.3

このように、各府省等の政府情報システムに係る予算のうち特に整備経費について、複数の府省等の政府情報システムにおいて、繰越率や不用率が高くなっている状況が見受けられた。

繰越率や不用率が高くなっていたシステムについてその理由を各府省等に確認したところ、図表1-8のとおり、開発工期を見直すなどしたことによるものとしている。

h-1-8図表1-8 平成30年度において繰越率又は不用率が高くなっていたシステム

図表1-8 平成30年度において繰越率又は不用率が高くなっていたシステム

(単位:%)
府省等名及び
システム名
繰越率又は不用率 府省等による繰越率又は不用率が高くなっていた理由














内閣府
情報提供等記録開示システム
整備経費 64.7 マイナポータルの法人設立等の手続のワンストップ実現に向けた計画の変更に伴い、関連する情報提供等記録開示システムのクラウド化のための開発が進まなかったことなどのため
内閣府
サービス検索・電子申請機能等システム
整備経費
運用等経費
42.8
42.1
総務省
電子政府の総合窓口システム(e- Gov)
整備経費 43.9 法人共通認証基盤のインターフェース設計書を基に要件定義及び設計・開発を進めていくことなどを予定していたが、関係省庁の検討結果を踏まえる必要が生じたことなどにより、当初の想定よりも時間を要したことによって、システム設計・開発の完了が遅れたため
農林水産省
国営造成土地改良施設防災情報ネットワーク
整備経費
運用等経費
99.3
71.9
ダム等の農業水利施設に設置された水位計等観測機器の観測情報を内閣府の総合防災情報システムや施設管理者、農林水産 省、都道府県及び市町村の関係者へ防災情報として提供することとなっているが、観測機器を制御する設備とデータ転送装置間の連携についての調整に時間を要したため
国土交通省
特殊車両通行許可システム
整備経費 71.0 新たな特殊車両通行許可審査自動化システムの詳細設計や開発用試作機の稼働に必要となるデータの再検討に時間を要したため
 不
 用
 率
 が
シ高
スく
テな
ムっ
 て
 い
 た
総務省
政府共通プラット
フォーム
整備経費 46.4 新規事業である第二期政府共通PFの設計及び開発に向けて、予算成立以降も引き続き精査を行い、要件・仕様、スケジュール等を詳細化して具体化し、クラウドを活用した基盤構築についてより効率的に実施したなどのため
厚生労働省
記録管理・基礎年金番号管理システム
整備経費 57.7 業務プロセスの徹底した検証を行うために、同システムの本格開発に向けた開発工期を見直したなどのため
  • 注(1) 法人共通認証基盤とは、法人番号を活用し、一つのID及びパスワードで複数の行政サービスにアクセスできる経済産業省所管の認証システムである。
  • 注(2) 要件定義とは、情報システムに関する調達(情報システムの設計・開発、機能改修、運用若しくは保守等業務の委託に関する調達又は情報システムを構成する機器若しくはソフトウェア製品等の調達)を行うに当たって、必要な要件を明確に定める行為又はその定めた内容である。
ウ 各府省等、IT総合戦略室及び総務省による政府情報システムに係る予算の執行額等の把握の状況

標準ガイドラインによれば、各府省等のPMOは、当初予算の概算要求時及び補正予算の取りまとめ前に予算額を適正化するための調整を行うとともに、調達等の予算の執行に際しては適正な予算執行となるよう調整し、システムの運用及び保守に関する稼働実績を把握して過大な支出等がないか確認することとされている。また、IT総合戦略室及び総務省は、情報システム関係予算の要求状況及び執行状況を把握し、必要な調整を行うこととなっている。

そこで、各府省等のPMOにおける政府情報システムに係る予算の執行額等の把握の状況をみたところ、契約締結後にPJMOから契約金額等の報告を受けてシステムごとに取りまとめるなどの方法でPMOが執行額等の把握を行っている府省等がある一方、システム数が多くPMOが執行額等の把握を行うのは困難であること、予算科目ごとの執行額等の把握は会計担当部門が行っていることなどを理由として、PMOが一元的に執行額等の把握を行っていない府省等も見受けられた。

また、前記のとおり、IT総合戦略室及び総務省は、政府情報システムに係る予算の執行額等を含めた執行状況について統一的に調査したことはないとしている。その理由についてIT総合戦略室に確認したところ、標準ガイドラインにおいて、IT総合戦略室及び総務省は政府情報システムに係る予算の執行状況の把握に関することを担うとされているが、その内容は、主にプロジェクトの進捗状況を確認するために調達状況、作業工程等を把握することであり、必ずしも執行額等を把握することではないためとしている。

一方で、一元的プロジェクト管理強化方針によると、IT総合戦略室は、原則として、情報システム関係予算のうちデジタルインフラの整備及び運用に係る予算を一括して要求し、予算案として計上した上で予算成立後にデジタルインフラ担当府省に配分し、デジタルインフラ担当府省がIT総合戦略室の定める全体方針に基づき統一的に執行することとなっている。また、IT総合戦略室及び総務省は、前記のとおり、執行額等を把握するためではないとはいえ、デジタルインフラを含め、政府情報システムに係る予算の執行状況の把握に関することを担う立場にある。そして、前記のとおり、複数の府省等の政府情報システムに係る予算のうち特に整備経費について繰越率や不用率が高くなっている状況が見受けられ、執行額等を含めて予算の執行状況の把握を行うことは、翌年度以降の予算作成にいかすなど政府情報システムに関する企画・予算要求、執行、検証及び見直しというPDCAサイクルを適切に機能させる上で有用である。

したがって、各府省等は、翌年度以降の予算を作成するに当たり、政府情報システムに関して、予算要求の状況だけでなく、執行額等を含めた予算の執行状況についても把握を行うことが重要である。また、IT総合戦略室及び総務省は、政府情報システムの適切な整備・見直しにも資するよう、一元的プロジェクト管理強化方針に基づき一括計上したデジタルインフラの整備に係る予算について、調査の実施方法等を検討した上で各システムの執行額等の情報を各府省等から集約するなどして把握を行い、PDCAサイクルを適切に機能させるために活用していくことが重要である。

2 各府省等が締結する契約の競争性、経済性の状況

政府情報システムに係る契約には、システム整備、運用等に係るハードウェア及びソフトウェアの調達並びにシステム整備、運用等のための役務等、様々な内容のものがある。

そこで、各府省等が前記の765システムに関して30年度に締結した整備、運用等に係る契約のうち、契約金額(単価契約の場合は、調達時の想定数量に契約単価を乗じた額)が3000万円以上である契約755件を対象として、政府情報システムの調達状況並びに各契約の競争性及び経済性の状況について検査したところ、次のとおりとなっていた。

(1) 政府情報システムに係る契約の概況

ア 府省等別の契約の状況

上記の契約755件に係る契約件数及び契約金額を府省等別にみると、図表2-1のとおり、契約件数が多い府省等は、法務省112件、総務省93件、厚生労働省88件等の順となっていた。また、契約金額が多い府省等は、厚生労働省1292億余円、法務省819億余円、国税庁619億余円等の順となっており、その中でも厚生労働省は、ハローワークシステムのセンター設備更改等に係る契約2件の契約金額がそれぞれ100億円を超えているなど、特に多額に上っていた。

h-2-1図表2-1 政府情報システムに係る府省等別の契約件数及び契約金額の状況(平成30年度)

図表2-1 政府情報システムに係る府省等別の契約件数及び契約金額の状況(平成30年度)

(単位:件、百万円、%)
府省等名 件数(A) 金額(B)
割合 割合
内閣官房 4 0.5 1,133 0.2
内閣法制局 1 0.1 70 0.0
人事院 6 0.7 3,658 0.7
内閣府 19 2.5 18,561 3.8
宮内庁
公正取引委員会 3 0.3 237 0.0
警察庁 34 4.5 12,830 2.6
個人情報保護委員会 2 0.2 73 0.0
金融庁 9 1.1 3,002 0.6
消費者庁 6 0.7 3,395 0.7
復興庁
総務省 93 12.3 41,837 8.6
消防庁 12 1.5 922 0.1
法務省 112 14.8 81,972 17.0
外務省 47 6.2 12,433 2.5
財務省 21 2.7 5,594 1.1
国税庁 51 6.7 61,927 12.8
文部科学省 7 0.9 305 0.0
文化庁 1 0.1 81 0.0
厚生労働省 88 11.6 129,260 26.8
農林水産省 16 2.1 8,554 1.7
経済産業省 24 3.1 5,186 1.0
特許庁 33 4.3 13,349 2.7
国土交通省 59 7.8 38,658 8.0
気象庁 25 3.3 3,343 0.6
環境省 13 1.7 1,111 0.2
原子力規制委員会 15 1.9 7,792 1.6
防衛省 46 6.0 20,821 4.3
防衛装備庁 8 1.0 5,022 1.0
755 100.0 481,140 100.0
1件当たりの契約金額(B)/(A) 637
イ 契約方式別の状況

国の調達事務は、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の規定によれば、契約を締結する場合、原則として一般競争に付さなければならないこととされている。ただし、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がない場合、一般競争に付することが不利と認められる場合等においては、指名競争に付することができることとされている。また、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合等は随意契約によることができることとされている。

前記の契約755件に係る契約件数及び契約金額を契約方式別にみると、図表2-2のとおり、競争契約の件数は423件と全体の56.0%を占めており、契約金額は3448億余円と全体の71.6%を占めていた。

そして、上記の状況を18年報告及び23年報告における分析結果と比較してみると、競争契約の割合は、18年報告(16年度に支払が行われた契約が対象。件数で19.1%、支払金額で3.6%)から23年報告(20年度から22年度までに支払が行われた契約が対象。件数で56.6%、契約金額で72.2%)にかけて増加したものの、30年度時点においては横ばいとなっていた。

なお、随意契約332件の中には、競争に付したが入札者がいないため又は再度の入札をしても落札者がいないため行う随意契約(不落随契)が51件含まれている。

z-2-2図表2-2 政府情報システムに係る平成30年度における契約方式別の契約件数及び契約金額の状況と18年報告及び23年報告における分析結果との比較

図表2-2 政府情報システムに係る平成30年度における契約方式別の契約件数及び契約金額の状況と18年報告及び23年報告における分析結果との比較

図表2-2 政府情報システムに係る平成30年度における契約方式別の契約件数及び契約金額の状況と18年報告及び23年報告における分析結果との比較画像

ウ 経費性質区分別の契約件数及び契約金額の状況

前記の競争契約423件について、整備経費に区分される予算のみによる契約(以下「整備契約」という。)、運用等経費に区分される予算のみによる契約(以下「運用等契約」という。)並びに整備経費及び運用等経費に区分される予算による契約(以下「整備・運用等契約」という。)の三つに区分(以下、これらの3区分を「経費性質区分」という。)してみると、図表2-3のとおり、契約件数及び契約金額は、運用等契約が45.6%、41.3%となっていた。これに対して、1件当たりの契約金額では、整備・運用等契約の契約金額が大きくなっていた。

h-2-3図表2-3 経費性質区分別の契約件数及び契約金額の状況(平成30年度)

図表2-3 経費性質区分別の契約件数及び契約金額の状況(平成30年度)

(単位:件、百万円、%)
件数等
経費性質区分
整備契約 運用等契約 整備・運用等契約
件数(A) 149 193 81 423
割合 35.2 45.6 19.1 100.0
金額(B) 64,929 142,738 137,214 344,883
割合 18.8 41.3 39.7 100.0
1件当たりの金額
(B)/(A)
435 739 1,694 815

(2) 政府情報システムに係る契約の競争性及び経済性の状況

ア 政府情報システムに係る調達における1者応札の状況

競争契約に当たっては、できるだけ多くの入札者の参加により実質的な競争性が確保されていることが重要である。

一方、デジタル・ガバメント実行計画(令和元年12月改定)によれば、情報システムについては、競争入札を実施しても特定の事業者のみが受注を繰り返すベンダーロックイン(注17)が生じやすいとされている。

(注17)
ベンダーロックイン   整備を行った情報システムについて、特定の販売会社や情報システムの開発会社(ベンダー)の製品、サービス等に囲い込まれ、他社の参入が困難となる状況

そこで、前記の競争契約423件における応札者数の状況をみたところ、図表2-4のとおり、応札者が1者となった契約(以下「1者応札」という。)の件数は313件(73.9%)、契約金額は2929億余円(84.9%)となっていた。

図表2-4 政府情報システムに係る競争契約の応札者数別の契約件数及び契約金額の状況(平成30年度)

図表2-4 政府情報システムに係る競争契約の応札者数別の契約件数及び契約金額の状況(平成30年度)画像

上記の状況を18年報告及び23年報告における分析結果と比較してみると、18年報告は保守・運用契約のみを分析の対象としており、23年報告は年間支払額が1000万円以上の契約を分析の対象としているため単純な比較はできないものの、図表2-5のとおり、30年度における競争契約423件に対する1者応札の件数の割合(73.9%)は、18年報告の62.9%(保守・運用契約27件のうち17件)、23年報告の66.4%(950件のうち631件)より高くなっていた。

h-2-5図表2-5 政府情報システムに係る18年報告及び23年報告における競争契約の応札者数別の契約件数の状況

図表2-5 政府情報システムに係る18年報告及び23年報告における競争契約の応札者数別の契約件数の状況

図表2-5 政府情報システムに係る18年報告及び23年報告における競争契約の応札者数別の契約件数の状況画像

また、国全体の競争契約における応札者の状況については、「令和元年度調達改善の取組に関する点検結果」(令和2年11月行政改革推進会議公表。以下「点検結果」という。)が公表されている。点検結果によると、図表2-6のとおり、30年度の国全体の競争契約における1者応札の契約件数の割合は30%となっていた。これに対して、前記のとおり競争契約423件に対する1者応札の件数の割合は、73.9%となっており、国全体の競争契約における1者応札の件数の割合より高く、ベンダーロックインが生じている可能性がある状況となっていた。

図表2-6 点検結果における競争契約の応札者数別の契約件数及び契約金額の状況(平成30年度)

図表2-6 点検結果における競争契約の応札者数別の契約件数及び契約金額の状況(平成
							30年度)画像

イ 競争契約における落札率の状況

各契約の契約金額の予定価格に対する比率(以下「落札率」という。)については、予定価格の妥当性や契約方式ごとの特性等から、その高低だけをもって一律に評価できない面はあるものの、契約の競争性及び経済性を評価する際の指標の一つと考えられる。

前記の競争契約423件について、平均落札率(落札率を合計したものを契約件数で除した数値をいう。以下同じ。)をみると、図表2-7のとおり、平均落札率は、応札者数が1者の場合は96.0%となっているのに対して、応札者数が2者以上の場合は82.5%と13ポイント以上低くなっていた。

なお、上記競争契約423件の平均落札率について、経費性質区分ごとにみると、大きな差はみられなかった。

h-2-7図表2-7 競争契約の平均落札率の状況(平成30年度)

図表2-7 競争契約の平均落札率の状況(平成30年度)

(単位:件、%)
区分
経費性質区分
整備契約 運用等契約 整備・運用
等契約
競争契約 件数 149 193 81 423
平均落札率 92.8 93.1 90.6 92.5
1者 件数 110 145 58 313
平均落札率 95.8 96.5 95.0 96.0
2者以上 件数 39 48 23 110
平均落札率 84.2 82.7 79.4 82.5

前記の競争契約423件に係る運用等契約193件のうち整備契約を締結せずにシステムを自前で整備するなどしていた4件を除いた189件について、平均落札率の状況をみると、図表2-8のとおり、整備契約と同一の契約相手方となっている契約における平均落札率は95.2%となっており、整備契約と異なる契約相手方となっている契約における平均落札率89.5%より若干高くなっていた。

h-2-8図表2-8 運用等契約のうち契約相手方が整備契約と同一となっているものの平均落札率 の状況(平成30年度)

図表2-8 運用等契約のうち契約相手方が整備契約と同一となっているものの平均落札率の状況(平成30年度)

(単位:件、%)
運用等契約
左記から整備契
約を締結してい
ない契約を除い
た運用等契約
平均落札率
うち契約相手方
が整備契約と同
一の契約
うち契約相手方
が整備契約と異
なる契約
うち契約相手方
が整備契約と同
一の契約
うち契約相手方
が整備契約と異
なる契約
193 189 129 60 93.3 95.2 89.5
ウ 契約目的分類別の1者応札の状況

前記の競争契約423件について、契約の目的に着目して、情報システムの設計、開発等を含む契約(注18)(以下「設計・開発契約」という。)、運用又は保守を含む契約(注19)(ただし、設計・開発契約に該当するものは除く。以下「運用・保守契約」という。)等に分類(以下、これらの分類を「契約目的分類」という。)すると、図表2-9のとおり、設計・開発契約の件数は152件、運用・保守契約の件数は184件となっており、競争契約の件数に対する割合はそれぞれ35.9%、43.4%となっていた。

(注18)
情報システムの設計、開発等を含む契約   情報システムに関する契約のうち、府省等が自らの業務要件に基づいて情報システムの設計、開発及び移行に係る業務を事業者に委託する内容を含むもの
(注19)
運用又は保守を含む契約であって、設計・開発契約にも該当する契約55件は、設計・開発契約に付随して必要となる契約であり、その応札状況は、設計・開発契約の内容の影響を受けることが多いと考えられるため、設計・開発契約に含めている。
h-2-9図表2-9 競争契約の契約目的分類別内訳(平成30年度)

図表2-9 競争契約の契約目的分類別内訳(平成30年度)

(単位:件、百万円、%)
契約目的分類
件数等
件数 金額
割合 割合
競争契約 423 100.0 344,883 100.0
設計・開発契約 152 35.9 127,049 36.8
運用・保守契約 184 43.4 184,911 53.6
その他の契約 87 20.5 32,922 9.5

そして、契約目的分類別に応札者数の状況をみると、次のとおりとなっていた。

(ア) 設計・開発契約

設計・開発契約152件については、図表2-10のとおり、1者応札となっていた契約件数は125件(152件に対する割合は82.2%)となっていた。

上記の152件について、新たな情報システムの設計・開発等を行う契約(以下「新規開発契約」という。)、既存の情報システムの全部を更新する契約(以下「再構築契約」という。)、既存の情報システムについて一部の機能を変更し、又は新たな機能を追加する契約(以下「改修契約」という。)に更に分類して、応札者数の状況をみると、次のとおりとなっていた。

新規開発契約に係る契約件数27件のうち1者応札となっていたのは16件(27件に対する割合は59.2%)、再構築契約に係る契約件数39件のうち1者応札となっていたのは28件(39件に対する割合は71.7%)となっており、いずれの契約も設計・開発契約全体における1者応札となっていた契約件数の割合(82.2%)より低くなっていた。

一方、改修契約については、契約件数86件のうち1者応札となっていたのは81件(86件に対する割合は94.1%)となっており、設計・開発契約全体における1者応札となっていた契約件数の割合(82.2%)より高くなっていた。

h-2-10図表2-10 設計・開発契約における応札者数の状況(平成30年度)

図表2-10 設計・開発契約における応札者数の状況(平成30年度)

(単位:件、百万円、%)
区分
応札者数
競争契約
1者 2者以上
割合 割合 割合
競争契約 件数 423 100.0 313 73.9 110 26.0
金額 344,883 100.0 292,918 84.9 51,964 15.0
設計・開発契約 件数 152 100.0 125 82.2 27 17.7
金額 127,049 100.0 105,938 83.3 21,111 16.6
うち新規開発契約 件数 27 100.0 16 59.2 11 40.7
金額 10,022 100.0 5,693 56.8 4,329 43.1
うち再構築契約 件数 39 100.0 28 71.7 11 28.2
金額 57,298 100.0 40,815 71.2 16,483 28.7
うち改修契約 件数 86 100.0 81 94.1 5 5.8
金額 59,728 100.0 59,430 99.5 298 0.4

このように、設計・開発契約において、改修契約は、新規開発契約及び再構築契約と比較して、1者応札の割合が高くなっていた。これは、改修契約では、再構築契約において実施されている情報システムの仕様の抜本的な見直しやプラットフォームの見直しなどが行われないため、元のシステムについての知見を有する開発業者が有利な条件にあり、ベンダーロックインが生じやすいのに対して、新規開発契約及び再構築契約では、新規業者の参入の余地が相対的に大きいことなどによるものと推測される。

競争性の向上の取組については、一部の府省等において、調達仕様書等において競争を阻害しないような内容とするためにパッケージソフトの利用を可能とするなどの工夫を行っていた。

上記の取組について、事例を示すと次のとおりである。

<参考事例2-1> システムの再構築契約の締結に当たり、パッケージソフトの利用を可能とすることなどにより、更新前のシステムの開発業者以外の業者の参入を促し競争性が向上したもの

財務省会計センター(以下「センター」という。)は、国の予算の執行等の会計事務の効率的な処理を主な目的として、官庁会計システム等の整備、運用等を行っている。

センターは、平成27年5月に、「官庁会計システム等のハード更新に伴う設計等及び機能追加に係る業務一式」について、再度の入札をしても落札者がいなかったため、株式会社エヌ・ティ・ティ・データと5,065,875,432円(契約金額の予定価格に対する比率99.5%)で随意契約(不落随契)により契約を締結し、29年1月にハードウェア及びソフトウェア(以下、これらを合わせて「ハードウェア等」という。)の更新を行っていた。

そして、センターは、上記の更新を行った官庁会計システム等について、ハードウェア等のシステム用機器等の賃貸借期間の終了に合わせて34年(令和4年)1月に次期システムに更新することとした。当該更新に先立ち、センターは、同省のCIO補佐官等の助言を踏まえるなどして、クラウドの利用を前提としたパッケージソフトの提案も可能とすることなどとして、要件を検討して、調達仕様書等を作成するなどの取組を行った。また、30年10月に、システムのデータ構造等の関係性を整理した資料を作成するために、「官庁会計システム等のデータモデリング業務一式」について株式会社ユニリタと契約を締結して、この契約の成果物を次期システムの更新業務に係る入札を希望する事業者が閲覧できるようにするなどの取組を行った。

センターは、上記の取組を行うなどして、令和元年6月に、次期システム等の更新業務について一般競争入札(総合評価落札方式)を行ったところ、2者の応札があり、9,460,000,000円(契約金額の予定価格に対する比率70.2%)で落札した株式会社エヌ・ティ・ティ・データとの間で契約を締結していた。

(イ) 運用・保守契約

運用・保守契約184件については、図表2-11のとおり、1者応札となっていた契約件数は140件(184件に対する割合は76.0%)となっており、競争契約全体における1者応札となっていた契約件数の割合(73.9%)とほぼ同じ傾向となっていた。

上記184件のうち、契約の目的が運用又は保守のみである契約95件(以下「運用・保守のみの契約」という。)及び運用又は保守に加えてハードウェア又はソフトウェアの調達を含む契約84件(以下「ハードウェア・ソフトウェア調達を含む契約」という。)に更に分類して、応札者数の状況をみると、次のとおりとなっていた。

運用・保守のみの契約については、契約件数95件のうち1者応札となっていたのは83件(95件に対する割合は87.3%)となっており、運用・保守契約全体における1者応札となっていた契約件数の割合(76.0%)より高くなっていた。

ハードウェア・ソフトウェア調達を含む契約については、契約件数84件のうち1者応札となっていたのは55件(84件に対する割合は65.4%)となっており、運用・保守契約全体における1者応札となっていた契約件数の割合(76.0%)より低くなっていた。

h-2-11図表2-11 運用・保守契約における応札者数の状況(平成30年度)

図表2-11 運用・保守契約における応札者数の状況(平成30年度)

(単位:件、百万円、%)
区分
応札者数
競争契約
1者 2者以上
割合 割合 割合
競争契約 件数 423 100.0 313 73.9 110 26.0
金額 344,883 100.0 292,918 84.9 51,964 15.0
運用・保守契約 件数 184 100.0 140 76.0 44 23.9
金額 184,911 100.0 164,378 88.8 20,532 11.1
運用・保守のみの契約 件数 95 100.0 83 87.3 12 12.6
金額 34,989 100.0 33,671 96.2 1,318 3.7
ハードウェア・ソフトウェア調達を含む契約 件数 84 100.0 55 65.4 29 34.5
金額 148,036 100.0 130,512 88.1 17,524 11.8
その他の契約 件数 5 100.0 2 40.0 3 60.0
金額 1,884 100.0 194 10.3 1,689 89.6

また、運用・保守のみの契約のうち1者応札となっていた83件について、各府省等が応札しなかった事業者に対するアンケート調査等により把握した1者応札の要因を確認したところ、図表2-12のとおり、「受託業務を履行するための人員等の資源が不足している」「対象業務・システムに対する知識不足から、既存業者より有利な条件で応札することができない」などとなっていた。

h-2-12図表2-12 運用・保守のみの契約についての1者応札の要因(平成30年度)

図表2-12 運用・保守のみの契約についての1者応札の要因(平成30年度)

(単位:件、百万円、%)
区分
件数等
件数 金額
1者応札に
対する割合
1者応札に
対する割合
競争契約 423 344,883
運用・保守契約 184 184,911
運用・保守のみの契約 95 34,989
1者応札 83 100.0 33,671 100.0

受託業務を履行するための人員等の資源が不足
している
42 50.6 11,706 34.7
対象業務・システムに対する知識不足から、既
存業者より有利な条件で応札することができな
24 28.9 16,259 48.2
契約対象システムの信頼性の要件(品質、可用
性等)、受注者の資格要件の水準が高い
3 3.6 216 0.6
その他の要因 14 16.8 5,488 16.2
  • (注) 応札しなかった事業者に対して、各府省等がアンケート調査等により把握した1者応札の要因を会計検査院が集計した。

そして、運用・保守のみの契約については競争性の確保が難しい面があるものの、一部の府省等では、運用・保守業務の内容を分割して、第三者による保守(注20)(以下「第三者保守」という。)を活用するなどの調達単位を見直すなどの工夫を行うことにより、既存業者以外の業者の参入による競争性及び経済性の向上に取り組んでいた。

上記の取組について、事例を示すと次のとおりである。

(注20)
第三者保守を活用する場合、①中古市場から保守部品を調達するため、シェアの低い製品や特殊な機器等は対応ができないこと、②第三者保守は新製品には対応できないため、最初の数年はメーカーによる保守が必要となること、③メーカーによる保守を直接受ける場合と比べて、修理時間の拡大とシステム稼働率の低下が発生する可能性があるため、リスクの検討を行った上でサービスレベル契約(SLA)の見直しが必要になる場合があることなどに留意する必要があるとされている。

<参考事例2-2> システムの保守契約において、第三者保守を活用するなどして一般競争入札を行ったことにより、2者の応札となり競争性及び経済性が向上したもの

金融庁は、金融検査等の業務における情報連携の強化等、情報の利用を高度化するためのシステムとして、「金融庁業務支援統合システム」を平成27年3月末から運用している。そして、同庁は、28年度から30年度までは同システムのハードウェア及びソフトウェア(以下、これらを合わせて「ハードウェア等」という。)のリース及び保守業務について、公募により一括して調達することとし、契約金額1,058,702,400円(1年間当たりの費用相当額は、352,900,800円。このうち、1年間当たりのハードウェアの保守業務分の費用相当額は137,116,800円、ハードウェア等のリースによる調達及びソフトウェアの保守業務分の費用相当額は215,784,000円)で株式会社文祥堂と随意契約により契約を締結していた。そして、このうちハードウェアの保守業務については、再委託等により同社を介してメーカーによる定額制の保守サービスを受けていた。

同庁は、31年1月に翌年度の契約に向けて、同システムのハードウェアの保守業務について、メーカー以外の第三者から見積りを取得して第三者保守の実施を検討し、従前は一括調達の一部とされていたハードウェアの保守業務を分離して、同業務を三つに分割することとした。すなわち、一部のハードウェアの保守業務については、第三者保守の保守条件について従来のSLAと同等のサービスを維持できるかなどの必要な検討を行った上で活用することとして、一般競争入札により調達することとし(①)、また、第三者保守による保守サービスを受けることができないその他のハードウェアについては、メーカーによる保守を直接受ける契約(②)及びメーカーによる保守を必要な都度受けて当該保守の対価をその都度支払う契約(③)の二つの契約に分割することとした。そして、同年2月に第三者保守の契約について一般競争入札(最低価格落札方式)を行ったところ、2者の応札があるなどして、令和元年度のハードウェアの保守業務に係る契約3件分の費用相当額は①から③までの計15,844,363円となり、従前の当該業務分の費用相当額(137,116,800円)と比べて費用が大幅に低減されていた。

このように、政府情報システムに係る契約においては、1者応札の割合が高い状況となっているが、一部の府省等では、調達仕様書等において競争を阻害しないような内容とするためにパッケージソフトの利用を可能としたり、調達単位を見直したりするなどの工夫を行うことにより、既存業者以外の業者の参入を通じて、競争性及び経済性を向上させている取組が見受けられた。

したがって、政府情報システムの契約の締結に当たり、調達仕様書等において競争を阻害しないような内容としたり、業務の内容を分割するなどの調達単位を見直したりするなどの工夫を行うことにより、各府省等において、既存業者以外の業者の参入による競争性及び経済性の向上を図る必要がある。

3 政府情報システムの利用状況及び効果の発現状況

(1) 主なシステムの利用状況等

令和元年基本計画によれば、我が国の今後のデジタル化は、デジタル技術の導入により国民生活の利便性が向上し、行政機関や民間事業者等の効率化に資するものでなければ意味がないとされている。そして、デジタル・ガバメント実行計画において、①行政手続のデジタル化、ワンストップサービス等の推進等、②サービスデザイン・業務改革の徹底による行政サービス改革、③デジタル・ガバメント実現のための基盤の整備等の項目が挙げられており、それぞれ、①行政機関間の情報連携の仕組みによる各手続における添付書類の省略、②利用者のニーズに応じた行政サービスの整備等、③政府全体で共通的に利用するシステム、基盤、機能等の整備等を実現するなどとしている。

そこで、上記①から③までの各項目に対応して、政府情報システムを「ア マイナンバー制度関連システム」「イ マイナンバー制度関連システム以外の国民等や民間事業者等が利用する政府情報システム(電子申請等関係システム及び電子調達等関係システム)」及び「ウ 政府内の業務の効率化を図るための政府情報システム」に分類し、それぞれの利用状況及び上記の政府情報システムに係る効果の発現状況について検査したところ、次のとおりとなっていた。

ア マイナンバー制度関連システム

マイナンバー制度は、社会保障・税制度の効率化及び透明性の向上を図り、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するために、複数の機関に存在する個人情報について同一人の情報であるということの確認を行うための社会基盤である。そして、既存システムが情報提供NWS等を通じて特定個人情報(注21)をやり取りする情報連携により、申請等の手続において、従来必要とされた住民票等の添付書類が不要となったり、行政運営の効率化等が図られたりするとされている。マイナンバー制度関連システムにおいて、情報提供NWS等を介して、複数システム間で情報連携できる事務は、マイナンバー法別表第二(注22)に定められており、地方公共団体での児童手当や介護保険、地方税の減免手続等に係る事務が掲げられている。

(注21)
特定個人情報   マイナンバー(マイナンバーに対応して、当該マイナンバーに代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。)をその内容に含む個人情報
(注22)
マイナンバー法別表第二   情報提供NWSを利用して特定個人情報の提供を行うことができる場合が規定されており、不正な情報提供がなされないよう、情報提供の種別ごとに、情報照会者、情報提供者、利用事務及び提供される特定個人情報が限定列挙されている。

国の行政機関等は、マイナンバー制度の導入に伴い、マイナンバー制度関連システムの整備及び運用を行ってきた。マイナンバー制度関連システムを機能別に分類すると、次のように区分できる。

① マイナンバー法に基づき、国の行政機関等がマイナンバーを利用して行う事務(以下「マイナンバー利用事務」という。)を処理するシステム

② マイナンバー利用事務を実施する者等がその事務を処理するために必要がある場合に行う情報連携を処理するシステム

③ 情報連携を支える基盤又は情報連携の適切な取扱いを確保することを目的としたシステム

なお、マイナンバー制度関連システムの中には、①及び②の両方に該当するものもある(マイナンバー制度関連システムについては、図表3-1参照)。

h-3-1図表3-1 マイナンバー制度関連システム一覧

図表3-1 マイナンバー制度関連システム一覧

(単位:千円)
府省等名 システム名 機能分類 支出済歳出額
平成30年度
整備経費
30年度
運用等経費
内閣府 マイナポータル 2,259,657 4,744,668
個人情報保護委員会 情報保護評価書受付システム 62,422 25,245
監視・監督システム 978,969
総務省 情報提供NWS 97,200 7,023,769
国税庁 国税総合管理システム 3,939,533 29,731,987
国税電子申告・納税システム(e-Tax) 403,947 7,347,835
文部科学省 高等学校等就学支援金事務処理システム 340,335 56,700
厚生労働省 援護システム 7,567
労働基準行政システム(労働基準行政情報システム
・労災行政情報管理システム)
3,195,779 9,475,578
社会保険オンラインシステム 24,172,909 72,260,689
ハローワークシステム 19,566,133 38,183,645
  • 注(1) 国において整備されたシステムのうち、整備後に国以外の機関に移管されるなどして、会計実地検査時点で政府情報システムに該当しないものについては表から除外している。また、行政事務の処理に関し、その処理に必要とされる他人のマイナンバーを記載した書面の提出等、マイナンバーを利用した事務を行うこととされた者(厚生年金・健康保険の被保険者の資格取得に関する届出を行う者等)は、マイナンバーの関係事務実施者として当該事務の実施に必要な範囲において他人のマイナンバーを利用することができることとなっている。マイナンバーの関係事務実施者は、マイナンバーを記載した届出等の情報管理のためにシステムを整備している場合があるが、今回の分析ではマイナンバー制度関連システムには含めていない。
  • 注(2) マイナポータルに係る「平成30年度整備経費」及び「30年度運用等経費」は、情報提供等記録開示システム及びサービス検索・電子申請機能等システムに係る平成30年度の整備経費及び運用等経費をそれぞれ合計したものである。
  • 注(3) 国税総合管理システムに係る「平成30年度整備経費」及び「30年度運用等経費」は、国税総合管理システム(KSKシステム)及び国税総合管理システム(オープンシステム)に係る平成30年度の整備経費及び運用等経費をそれぞれ合計したものである。
  • 注(4) 社会保険オンラインシステムは、公的年金業務を行うシステムであり、年金給付システム及び記録管理・基礎年金番号管理システムから構成される。社会保険オンラインシステムの「平成30年度整備経費」及び「30年度運用等経費」は、年金給付システム及び記録管理・基礎年金番号管理システムに係る平成30年度の整備経費及び運用等経費をそれぞれ合計したものである。
(ア) マイナンバーの情報連携の実施状況

a マイナンバーの情報連携の概要

国の行政機関等は、情報提供NWSを始め、情報連携を目的としたシステムの整備を行っている。各機関は、情報連携を行うために、既存システムと情報提供NWSとの間にそれぞれ中間サーバーを設置している。既存システムには、特定個人情報のデータベースが正本として保存されており、中間サーバーには、情報提供を目的としてそのデータのコピー(以下「副本データ」という。)が保存されている。情報連携は、特定個人情報の照会を行う機関が特定個人情報の提供を行う機関の副本データに照会して行うこととなっており、中間サーバーを介して情報連携を行うことにより、情報提供NWSに障害等があった場合でもその影響を中間サーバー上の副本データにとどめ、正本に影響を及ぼさないようにしている(図表3-2参照)。

図表3-2 情報連携の概念図

図表3-2 情報連携の概念図画像

b マイナンバーの登録状況

情報連携を行うためには、既存システムに登録されている個人情報に対してマイナンバーが登録され、個人情報の内容が当該個人のマイナンバーと紐付けられていることが前提となっている。したがって、情報照会先の既存システムにおいてマイナンバーの登録状況が低調となっている場合は、情報照会者が必要とする個人情報を入手できないなどの結果、申請等の手続において添付書類の提出が必要とされるなどして、情報連携による効果が適切に発現しない可能性がある。

そこで、マイナンバー制度関連システムのうち、情報連携を処理するシステム(図表3-1の②)について、マイナンバーの登録状況をシステム別にみたところ、図表3-3のとおり、ハローワークシステムにおいて、個人情報の保有件数に比べてマイナンバーの登録件数が少なくなっていた。その理由について、厚生労働省は、ハローワークシステムの雇用保険ファイルに保有する個人情報の件数には、マイナンバー法の施行以降就職や離職等に伴う雇用保険関係手続を行う機会がなく、マイナンバーを届け出る契機がなかった者、マイナンバー法施行時点で死亡していたり、海外に居住していたりなどして、マイナンバー法の施行以降住民票に記録されたことがなく、マイナンバーを付番できない者等の件数が含まれているためであるとしている(登録状況が低調であるため、申請者に対して添付書類の提出を引き続き求めている事例について後掲d参照)。

h-3-3図表3-3 マイナンバーの登録状況(令和元年12月末時点)

図表3-3 マイナンバーの登録状況(令和元年12月末時点)

(単位:件)
府省等名 システム名 個人情報を記録している
ファイルの名称
個人情報の
保有件数
マイナンバーの
登録件数
文部科学省 高等学校等就学支援金事務処理システム 高等学校等就学支援金の支給に関する
特定個人情報照会依頼ファイル
55,000 55,000
厚生労働省 労働基準行政システム(労働基準行政情報システム
・労災行政情報管理システム)
労災情報年金ファイル 235,698 233,304
社会保険オンラインシステム 個人番号管理ファイル 97,851,000 97,384,000
ハローワークシステム 雇用保険ファイル 92,000,000 22,089,579
求職者支援ファイル 640,000 36,757
職業紹介ファイル 1,000,000 35
上記以外 12 12
  • 注(1) 個人情報の保有件数及びマイナンバーの登録件数については、概数値で回答があったものが含まれる。
  • 注(2) 社会保険オンラインシステムに係る個人情報の保有件数及びマイナンバーの登録件数は、令和元年9月末時点の件数である。

c 情報連携の年間想定件数と実績件数

情報連携の開始後、システム整備時点の想定に対して、実際にどの程度情報連携が行われていたかについては、情報連携を行うために整備されたシステムの利用の度合いや、添付書類の省略による国民の負担軽減の度合いを測る上で重要な指標となる。

そこで、26年3月に作成された情報提供ネットワークシステム等の設計・開発等業務仕様書(以下「情報提供NWS仕様書」という。)に定める情報連携の年間想定件数に対する、31年1月から令和元年12月までの間(以下「令和元年中」という。)の実績件数をみると、図表3-4のとおり、年間想定件数が計6億4683万余件であったのに対して、令和元年中の実績件数は計3603万余件(年間想定件数の計に対する割合5.5%)と年間想定件数を大きく下回っていた。なお、元年7月の実績件数は計431万余件であったが、2年7月の実績件数(注23)は計3786万余件となっていた。

(注23)
2年7月の実績件数   日本年金機構による大量の情報照会が一部の大都市圏の地方公共団体に集中した場合においても情報連携に遅延が生じないよう、地方公共団体の中間サーバーの改修が行われたことなどにより、国民年金保険料の免除を勧奨する手続において、令和2年6月から情報連携の本格的な実施が可能となったことから、その影響が反映された2年7月の状況を確認している。
h-3-4図表3-4 情報連携の年間想定件数と令和元年中の実績件数

図表3-4 情報連携の年間想定件数と令和元年中の実績件数

(単位:件、%)
事務分野 年間想定件数(A) 令和元年中の実績件数
(B)
年間想定件数に
対する割合
(B)/(A)
(参考)
平成30年の実績件数
(C)
年間想定件数に
対する割合
(C)/(A)
情報連携の実績があった
事務を8つの事務分野に
分類したもの
年金 341,408,785 21,803,727 6.3 7,570 0.0
医療 61,113 2,221,830 3635.6 1,568,193 2566.0
福祉 86,388,239 3,636,474 4.2 2,248,546 2.6
3,000,314 1,501,815 50.0 1,099,965 36.6
労働 1,144,073 824,001 72.0 8,337 0.7
災害対策 1,500,000 0.0 2 0.0
年金・医療 93,390 1,844 1.9 194 0.2
その他 90,426,252 6,048,482 6.6 1,028,294 1.1
年間想定件数に計上していたものの
情報連携の実績がなかったもの
122,808,966
646,831,132 36,038,173 5.5 5,961,101 0.9
  • 注(1) 「年間想定件数」は、内閣官房社会保障改革担当室が作成した情報提供NWS仕様書で想定されていた年間業務量を、会計検査院において、令和2年2月時点のマイナンバー法別表第二の項番単位で8事務分野に組み替えて算定したものである。
  • 注(2) 「年金・医療」は、マイナンバー法別表第二の項番34に定められている事務「私立学校教職員共済法による短期給付又は年金である給付の支給に関する事務であって主務省令で定めるもの」のみが該当する。
  • 注(3) 情報連携の実績がなく、8事務分野のいずれにも分類できなかった事務は、「年間想定件数に計上していたものの情報連携の実績がなかったもの」としている。情報連携を行う事務については、マイナンバー法別表第二の主務省令に規定されていることが必要であるが、当該主務省令が規定されていなかったり、情報提供NWS仕様書で記載されていた事務がマイナンバー法別表第二の対象から外れたりしたことにより、8事務分野のいずれにも分類ができなかったものが該当する。なお、実際に行われた情報連携は、8事務分野のいずれかに分類されるため、「令和元年中の実績件数」及び「平成30年の実績件数」は、「-」としている。

事務分野別の情報連携の年間想定件数と実績件数をみると、「年金」では、年間想定件数3億4140万余件に対して、平成30年の実績件数は7,570件(0.0%)であったが、令和元年中は事務手続ごとの情報連携が順次開始された結果、実績件数は2180万余件(6.3%)へと大幅に増加していた。なお、「医療」では、実績件数が年間想定件数を大きく上回っているが、これは、情報提供NWS仕様書作成時点において、マイナンバー法別表第二の項番単位に該当する18事務のうち、12事務について年間想定件数に関する見積りができていなかったためであり、年間想定件数6万余件という数値は当該事務分野の全体像を反映したとはいえないものとなっている。

一方、実績件数の少ない事務分野をみたところ、例えば「災害対策」については、該当する3事務のうち2事務で情報連携が開始されておらず、残りの1事務も情報連携が一時休止となっており、令和元年中の実績件数は0件となっていた。

マイナンバー制度においては、既存システムが情報提供NWS等を通じて行う情報連携により、申請等の手続において、従来必要とされた添付書類が不要となるなどとされている。情報連携による添付書類の省略状況について、総務省が全市区町村に対して、地方公共団体が扱う10事務手続を対象として調査したところ、令和元年12月時点において、回答総数43,129件のうち、27,498件(63.7%)が省略できていたとの回答を得たとしている。また、文部科学省は、高等学校等就学支援金の申請について、国立高等学校等では平成31年4月に、公立・私立高等学校等では令和2年4月に、それぞれオンライン申請を開始しており、さらに、元年度に、マイナンバーを活用した情報照会を開始している。そして、令和元年中における約3.6万件の事務処理件数のうち約3.4万件について、課税証明書等の添付が省略できたとしている。

一方、bのとおり、ハローワークシステムにおけるマイナンバーの登録状況が低調であることから、日本年金機構は、2年12月時点において、年金の裁定請求の事務手続について、雇用保険情報を情報連携により取得することは難しく、引き続き、年金請求者から雇用保険被保険者証の提出を求めることなどとしており、情報連携による添付書類の省略が実現できていない状況となっていた。

e 情報連携を支える基盤等のシステム等の令和元年中におけるITリソースの利用状況

マイナンバー制度関連システムの利用状況を分析するための一つの指標としてITリソース(注24)の利用状況を確認したところ、情報連携を支える基盤等のシステム(図表3-1の③)のうち、既存システムによる個人情報のやり取りの基盤である情報提供NWSを構成している209サーバ(注25)についてはCPUの最大使用率(通年での最大時点の使用率。以下同じ。)は0.6%から98.3%までとなっていた(令和元年中の情報提供NWSを構成する209サーバのITリソースの利用状況については、別図表3-1参照)。

また、情報連携を支える基盤等のシステム(図表3-1の③)のうち情報提供NWS以外のシステムについてCPUの最大使用率をみたところ、個人情報保護委員会の監視・監督システムは7.1%、内閣府のマイナポータルのうち情報提供等記録開示システムは4.0%などとなっていた(令和元年中のITリソースの利用状況(図表3-1の③に該当するシステム本体)については、別図表3-2参照)。

さらに、国において整備した中間サーバーについてCPUの最大使用率をみたところ、48.8%から99.0%までとなっていた(令和元年中のITリソースの利用状況(国において整備した中間サーバー)については、別図表3-3参照)。

(注24)
ITリソース   ソフトウェアやハードウェアを動作させるのに必要なCPU(Central Processing Unitの略。コンピュータを構成する部品の一つで、各装置の制御やデータの計算・加工を行う装置)、メモリ、ストレージ(データを記録したり保存したりするための機器)等
(注25)
209サーバ   主に仮想サーバで構成されており、本番機だけではなく、運用管理用のサーバや予備機等も含まれている。
(イ) 情報連携におけるマイナンバーの保護等に関するシステムの利用状況等

内閣府によると、マイナンバー制度に対する国民の懸念として、マイナンバーを利用した名寄せにより集約された個人情報の外部への漏えいや、マイナンバーの不正利用による財産権の侵害のリスク等があるとされている。これを踏まえて、マイナンバー法に基づく制度面における保護措置として、本人確認措置やマイナンバー法に規定された場合以外の特定個人情報の収集・保管等の禁止、個人情報保護委員会による監視・監督が規定されるなどしている。また、システム面における保護措置として、個人情報の分散管理やアクセス制御等が行われているほか、情報提供NWSを通じて情報連携が行われるデータについて、不正な情報照会又は情報提供と疑われるデータをリアルタイムに検知し、個人情報保護委員会が設置する監視・監督システムに、不正兆候の検知・通知が行われるなどしている。そこで、情報連携におけるマイナンバーの保護に関するシステムの利用状況等について確認したところ、次のとおりとなっていた。

a データ標準レイアウトの不備等の状況

各府省等は、情報提供NWSを通じて情報連携を行うために、情報提供機関が保有する特定個人情報を構成するデータ項目のうち、マイナンバー法別表第二に規定する主務省令(以下「別表第二主務省令」という。)において規定する地方税関係、医療保険給付関係等の事務ごとに情報照会機関が必要とするデータ項目について、データの型式等のシステムにおいて必要な情報等を規定したもの(以下「データ標準レイアウト」という。)を作成しており、元年6月の改版までは内閣官房が、その後は総務省がそれらを取りまとめている。データ標準レイアウトは、制度改正等に伴い定期的な改版等が行われているが、データ標準レイアウトと別表第二主務省令の整合性について内閣官房に確認したところ、同月以前のデータ標準レイアウトの改版等で生じた不整合が厚生労働省所管の6事務手続及び文部科学省所管の1事務手続を契機として発覚し、その後に当該不整合を解消していた事態が見受けられた。

そこで、上記発覚の契機となったこれらの事務手続について確認したところ、別表第二主務省令において規定する情報とデータ標準レイアウトに規定したデータ項目に不整合が生じており、図表3-5のとおり、別表第二主務省令に適合しない特定個人情報が、計2,603件の情報照会に応じて提供されていた。具体的には、厚生労働省所管の6事務手続において別表第二主務省令に規定されていない「都道府県民税所得割額」について、また、文部科学省所管の1事務手続において別表第二主務省令に規定されていない「都道府県民税所得割額」及び「都道府県民税均等割額」について、それぞれ情報連携により提供可能なデータ標準レイアウトが作成され、これに基づいて情報連携が行われたことにより、別表第二主務省令に適合しない特定個人情報が情報照会者に提供されていた。そして、この事態を受けて、厚生労働省及び文部科学省は、当該事務について情報提供NWSを通じて情報連携を行わないよう関係機関に対し周知するなどしていた。

h-3-5図表3-5 別表第二主務省令に適合しない特定個人情報が提供された情報照会の件数等

図表3-5 別表第二主務省令に適合しない特定個人情報が提供された情報照会の件数等

(単位:件)
府省等名 事務分野 事務番号
(マイナンバー法別表第二)
事務手続の内容 情報照会
件数
文部科学省 その他 106 独立行政法人日本学生支援機構法による所得連動返還型奨学金の割賦額の決定 1,998
厚生労働省 福祉 16 児童福祉法による里親への委託、障害者支援施設等への入所等の措置費の徴収 49
20 身体障害者福祉法による障害者支援施設等への入所等の措置費の徴収 140
23 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による入院措置費の徴収 339
53 知的障害者福祉法による障害者支援施設等への入所等の措置費の徴収 72
61 老人福祉法による通所介護、養護老人ホームへの入所等の措置
62 老人福祉法による通所介護、養護老人ホームへの入所等の措置費の徴収 5
2,603
  • 注(1) 各事務手続の情報連携において提供されることとなっていた情報は市町村民税に係る情報であったが、都道府県民税に係る情報も提供されていた。
  • 注(2) 事務番号61の「老人福祉法による通所介護、養護老人ホームへの入所等の措置」については、別表第二主務省令において規定する情報とデータ標準レイアウトに規定したデータ項目に不整合は生じていたものの、情報照会は行われていなかった。

さらに、内閣官房及び総務省は、元年9月に情報照会を行う事務手続及び情報提供される特定個人情報に係る全ての制度を所管する府省(以下「制度所管府省」という。)に対して通知を発出し、データ標準レイアウトに掲載されている全ての事務手続について、別表第二主務省令とデータ標準レイアウトとの整合性を確認し、及び今後のデータ標準レイアウト関連様式の改版の各段階において、複数の職員によるチェックを徹底するよう要請していた。

そして、制度所管府省による確認の結果、不整合が生じていたと認められた事務手続は、図表3-6のとおり、前記の7事務手続を含めた84事務手続となっており、これらは、別表第二主務省令において規定する情報とデータ標準レイアウトに規定したデータ項目に不整合が生じており、マイナンバー制度に係る法令を踏まえると、情報連携が想定されていない情報が提供される状態となっていた。これら84事務手続については、制度所管府省において順次、情報連携を一時停止する措置が執られており、この間、申請者が行政機関等に提出する添付書類を省略することができなくなるなどの状況となっていた。

このような状況を受けて、個人情報保護委員会は、元年10月に制度所管府省に対して通知を発出し、別表第二主務省令において規定する情報とデータ標準レイアウトに規定したデータ項目に不整合が生じている場合には、国民生活に影響が出ないように対応するとともに、再発防止策を確実に実施することなどの注意喚起を行っていた。

h-3-6図表3-6 別表第二主務省令とデータ標準レイアウトの間に不整合が生じていた事務手続(令和元年12月時点)

図表3-6 別表第二主務省令とデータ標準レイアウトの間に不整合が生じていた事務手続(令和元年12月時点)

(単位:事務手続)
事務分野
年金 医療 福祉 労働 災害対策 年金・医療 その他
20 19 41 1 3 84
  • 注(1) 事務手続の数は、内閣官房番号制度推進室及び内閣府大臣官房番号制度担当室が作成している「情報連携可能な事務手続の一覧及び省略可能な書類」に記載の単位に基づいて算出している。
  • 注(2) 内閣官房は、別表第二主務省令に適合しない特定個人情報が提供された事態について、データ標準レイアウトの設定誤りであり、特定の情報照会者又は情報提供者が、別表第二主務省令に適合しないことについて故意をもって行ったものではないこと、当該事態を認識した後、速やかに必要な措置が講じられていることなどから、マイナンバー法第29条の4に規定する「特定個人情報の安全の確保に係る重大な事態」には当たらないとしている。

内閣官房及び総務省は、元年12月の別表第二主務省令の改正や2年6月のデータ標準レイアウトの改版により、同年10月時点において、全ての不整合は解消されているとしている。

b マイナンバーの情報連携に係る監視・監督を行うシステムの利用状況

マイナンバー制度に関しては、前記のとおり、個人情報の外部への漏えいや、マイナンバーの不正利用が懸念されており、これに対応するために、個人情報保護委員会は、マイナンバー法に基づく特定個人情報の情報連携に関し、監視・監督システムを平成29年7月から運用しており、27年4月から令和2年1月までの間に、当該システムに係る機器借入、データセンター借入、運用、保守等に係る6契約を契約金額計37億9973万余円で締結している。

上記のシステムは、総務省が設置する情報提供NWSから提供される情報提供等記録を取得し、行政機関等の職員が特定個人情報を不正に取得していないかについて分析して、そのような事態を早期に発見することなどを目的としたものである。

当該システムの主な機能には次のようなものがあり、情報提供NWSにおける情報連携のデータから、リアルタイムで不正兆候を検知し警告を発出させたり、情報照会を一時的に保留させたりすることが可能な設計となっている。

① データ分析ソフト等を利用し、情報提供等記録の検索、集計、統計分析等を行う機能(以下「情報提供等記録分析機能」という。)

② 不正兆候の検知条件であるしきい値を情報提供NWSに設定することにより、警告を発出させる機能(以下「警告機能」という。)

③ 情報照会の保留条件であるしきい値を情報提供NWSに設定することにより、自動的に特定の情報照会を保留させる機能(以下「保留機能」という。)

また、これらの機能の設計段階における利用方法の想定については、情報照会機関の職員が、①特定の個人の様々な個人情報を複数の情報提供機関から不正に取得したり、②個人情報を業務時間外の休日・夜間に不正に取得したり、③名簿作成等のために複数の個人情報を不正に取得したりなどすることを検知等することになっていた。

その後、情報提供NWSからの情報では個人を識別できないこと、設計当初に想定されていた情報提供NWSの休日・夜間利用がシステム上制限されていること及び各情報提供NWS利用機関における事務処理手順等がそれぞれ異なっており、個人情報の不正取得の兆候を一律に把握できないことが判明した。このため、個人情報保護委員会は、実効性のあるしきい値を設定することは現実的に可能ではないなどとしていた。そして、平成29年7月の監視・監督システムの運用開始以降、同年10月から30年5月までの間においては試行的にしきい値を設定していたものの、同年6月以降は警告機能によるリアルタイムでの不正兆候の検知及び保留機能による情報照会の保留を行わないことにしていた。また、令和元年7月に、総務省及び個人情報保護委員会において、情報提供NWSにおける不正兆候の検知等の機能を次期システムには実装しないことなどが合意された。

個人情報保護委員会は、情報提供等記録分析機能の強化を行うとともに、不正の疑いがある情報照会を保留するための事務手順を確立することを可能にしたとしているが、情報連携に係る監視・監督業務の実施に当たっては、マイナンバー制度に対する国民の懸念に今後も確実に対応するために、情報提供NWSの不適切な利用の早期発見を着実に行っていくことが重要であると考えられる。

したがって、個人情報保護委員会においては、情報連携に係る監視・監督業務の取組について、情報提供NWSの不適切な利用の早期発見という目的に照らして実際に有効な方法となっているか、継続的に検証していくことが必要である。

(ウ) マイナポータルの利用状況

マイナンバー制度においては、各個人が、自分の特定個人情報を国、地方公共団体等の機関がどのように取り扱っているのかが分かるよう、情報提供等記録に対する開示の請求及び通知を電子的に行う機能(以下「情報提供等記録表示機能」という。)を有するマイナポータルが整備されている。また、マイナポータルにおいては、情報提供等記録表示機能以外に、次のような各種オンラインサービス等が提供されている。

① 地方公共団体の子育てなどに関するサービスの検索やオンライン申請ができるサービス(ぴったりサービス)

② マイナポータルの「お知らせ」を使い、ネットバンキングやクレジットカードでの公金決済ができるサービス(公金決済サービス)

ぴったりサービス及び公金決済サービスについて、利用状況を確認したところ、ぴったりサービスの実績件数については、図表3-7のとおり、毎年増加傾向となっていたものの、年間想定件数1440万件に対して、年間の実績件数が確認できている平成30年度の実績件数は8,902件(0.0%)と著しく少ない状況となっており、公金決済サービスについては実績件数が皆無となっていた。そして、公金決済サービスの利用が進まない原因について、マイナポータルを所管する内閣府は、サービスを導入する地方公共団体が、既に申請手数料の電子納付に係る既存のサービスを導入しているなどのため、当該サービスの導入について必ずしもメリットを感じていないことなどが要因となっている可能性があるとしている。

h-3-7図表3-7 マイナポータルにおけるぴったりサービス及び公金決済サービスの利用状況(平成29年度~令和元年度)

図表3-7 マイナポータルにおけるぴったりサービス及び公金決済サービスの利用状況(平成29年度~令和元年度)

(単位:件)
サービス 年間想定件数 実績件数
平成29年度
(7月から)
30年度 令和元年度
(12月まで)
ぴったりサービス 14,400,000 619 8,902 10,808
公金決済サービス 14,400,000
  • (注) ぴったりサービス及び公金決済サービスは、平成29年7月にサービスを開始している。なお、ぴったりサービスの件数はオンライン申請件数を対象としている。

マイナポータルにおいては、情報提供等記録表示機能について、各個人からの開示の請求に対して、適切に通知を行う機能が提供されていることが重要である。また、ぴったりサービス及び公金決済サービスを提供するに当たっては、システムの利活用促進の観点から、更なる利用の推進が図られることが重要であるとともに、利用状況を踏まえて、サービスの在り方について検討を行うことも必要である。

したがって、内閣府は、マイナポータルの情報提供等記録表示機能を今後も引き続き適切に提供するとともに、ぴったりサービス及び公金決済サービスについては、利用状況を踏まえてサービスの在り方について検討した上で、利用の推進等を図る必要がある。

イ マイナンバー制度関連システム以外の国民等や民間事業者等が利用する政府情報システム
(ア) 電子申請等関係システムの利用状況

各府省等は、国の行政手続等のオンライン化実施を原則としたデジタル手続法の方針に従い、国民等や民間事業者等の申請者(以下「民間申請者」という。)の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化、効率化等に資するために、電子申請等関係システムの整備等を行っている。そこで、民間申請者が行政手続を電子的に行った場合に利用するシステムが、どの程度利用されているか、民間申請者の利便性の向上に資するものとなっているかなどについて、行政手続別の電子化の状況を確認するなどしたところ、次のような状況となっていた。

a 電子申請等関係システムの概要等

各府省等は、民間申請者が主体となって国の行政機関等に対して行う申請等の行政手続について電子的に実施することができるように、電子申請等関係システムを整備し運用している。

民間申請者からの電子申請に関連する電子申請等関係システムを機能別にみると、次のように区分できる。

① 民間申請者から国の行政機関等(手続の受け手)に対する電子申請について受付を行うシステム(以下「受付システム」という。)

② 受け付けた電子申請について事務処理を行うシステム(以下「事務処理システム」という。)

なお、電子申請等関係システムの中には、①及び②の両方に該当するものもある。

民間申請者による国の行政機関等への電子申請は、民間申請者がパーソナルコンピュータ、スマートフォン等のブラウザ(注26)又はアプリケーションソフトウェア(受付システムが提供する申請用の外部連携機能(API)(注27)に対応したもの)を用いて、インターネットを介して受付システムにアクセスして電子申請のデータを送信することにより行われている。送信された電子申請のデータは、受付システムを経由して事務処理システムに到着するなどした上で、国の行政機関等において処理されており、この処理結果は、事務処理システムから受付システムを経由して民間申請者に送信されるなどしている(図表3-8参照)。

(注26)
ブラウザ   データや情報をまとまった形で閲覧するためのソフトウェア。一般的には、ウェブページを閲覧するためのソフトウェアを指す。
(注27)
外部連携機能(API)   システムが備えている申請等の機能を外部のソフトウェアから呼び出して利用することができるように当該ソフトウェアと連携するための手順やデータ形式等を規約として定め、当該規約を用いて申請等を行う仕組み。APIはApplication Programming Interfaceの略

図表3-8 電子申請のデータの主な流れ

図表3-8 電子申請のデータの主な流れ画像

IT総合戦略室及び総務省は、各行政手続等の実態を把握して、行政手続等のオンライン化に向けた業務の見直しやシステム改革を推進するために、29年度以降、行政手続等を所管する行政機関に対して調査を依頼しており、調査結果に基づき「行政手続等の棚卸結果等」(以下「棚卸結果」という。)を作成して公表している。棚卸結果の令和元年度調査(令和2年3月公表。同年7月更新)によると、平成31年3月31日時点において、民間申請者が国の行政機関等に対して行う行政手続は計17,278種類、年間手続件数が把握可能な行政手続に係る年間手続件数の総計は11億3076万余件となっている。このうち、電子申請が可能とされている行政手続は2,917種類(民間申請者が国の行政機関等に対して行う行政手続の総計に対する割合16.8%)となっており、年間手続件数の総計でみると10億4881万余件(年間手続件数が把握可能な行政手続に係る年間手続件数の総計に対する割合92.7%)が電子申請によることが可能となっている。なお、棚卸結果によると、民間申請者が国の行政機関等に対して行う行政手続のうち、電子申請が可能とされているものには約130システムが用いられている。

b 電子申請等関係システムを利用した電子申請の状況

棚卸結果における行政手続の種類と年間手続件数との関係をみたところ、年間手続件数が1万件を超える行政手続に係る年間手続件数の総計は10億4745万余件となっており、電子申請が可能とされている行政手続に係る年間手続件数の総計10億4881万余件の99%以上を占めていた。さらに、棚卸結果における政府情報システムと年間手続件数との関係をみたところ、受付等を行う行政手続の年間手続件数の総計が100万件を超えるシステムにおいて、約8億件が受付等の対象とされており、電子申請が可能とされている行政手続に係る年間手続件数の総計の約8割を占めていた。

そこで、棚卸結果における上記の傾向を踏まえて、民間申請者が直接に国の行政機関等に対して行う電子申請が可能とされている行政手続の大部分を占める政府情報システムとして、電子申請等関係システムのうち、受付又は事務処理を行う手続に係る年間手続件数の総計が100万件を超える受付システム又は事務処理システムに該当する政府情報システム計19システム(マイナポータルを1システムとして計上している。)を対象として、30年度までの電子申請件数の状況等を基に利用状況等を確認した。

上記の19システムを所管府省等別に示すと、図表3-9のとおり、受付システムが7システム、事務処理システムが15システムとなっており、これらのうち、電子申請の受付及び事務処理の両方を行うシステムは3システムとなっている。

h-3-9図表3-9 電子申請等関係システム一覧

図表3-9 電子申請等関係システム一覧

(単位:手続、千円)
府省等名 システム名 システム形態 受付又は事務処理を行う手続数 支出済歳出額
受付 事務
処理
受付 事務処理 平成30年度
整備経費
30年度
運用等経費
内閣府 マイナポータル -   2,259,657 4,744,668
金融庁 金融庁電子申請・届出システム   76 1,490 58,710
総務省 電子政府の総合窓口システム(e-Gov) 4,176   1,641,726 394,059
法務省 登記・供託オンライン申請システム 12   - 1,748,450
登記情報システム   6 6,235,800 16,156,573
地図情報システム   2 356,685 3,743,260
成年後見登記システム   2 10,169 240,262
出入国管理システム   14 4,432,933 9,416,811
国税庁 国税電子申告・納税システム(e-Tax) 414 155 403,947 7,347,835
国税総合管理システム(KSKシステム)   259 1,624,372 26,161,931
国税総合管理システム(オープンシステム)   2,315,160 3,570,056
厚生労働省 労働保険適用徴収システム   11 706,760 2,831,049
労働基準行政システム(労働基準行政情報システム・労災行政情報管理システム)   327 3,195,779 9,475,578
ハローワークシステム 1 78 19,566,133 38,183,645
年金給付システム   148 7,706,695 28,225,130
記録管理・基礎年金番号管理システム   132 16,466,214 44,035,559
特許庁 特許事務システム 432 432 14,903,210 15,817,179
国土交通省 自動車保有関係手続のワンストップサービスシステム 12   552,364 476,277
自動車登録検査業務電子情報処理システム   12 751,357 2,967,868
  • 注(1) マイナポータルに係る「平成30年度整備経費」及び「30年度運用等経費」は、情報提供等記録開示システム及びサービス検索・電子申請機能等システムに係る平成30年度の整備経費及び運用等経費をそれぞれ合計したものである。なお、マイナポータルは、各手続において、地方公共団体ごとに受付を行っているもの及び受付を行っていないものが混在していることから、受付手続数を記載していない。
  • 注(2) 法務省が整備し運用している電子認証システムは、民間申請者が直接に国の行政機関等に対して行う手続の年間手続件数の総計が100万件を超える手続に係る事務処理システムに該当するが、当該手続は、自動的に電子で行われるなどする署名検証処理であるため、本件の検査対象から除いている。
  • 注(3) 出入国管理システムは、申請を受け付ける機能を有しているが、受付を行う手続の年間手続件数の総計が100万件を超えないことから、受付システムとしては本件の対象に該当しないため、事務処理システムに位置付けている。

前記のとおり、棚卸結果において、年間手続件数が多い手続が民間申請者の行う手続の大部分を占めている傾向が見受けられることを踏まえて、前記の電子申請等関係システム19システムが受付又は事務処理の対象としている手続のうち、民間申請者が国の行政機関等に対して行う30年度の年間手続件数が1万件以上のもの263手続(年間手続件数が把握されていないものを除く。以下「対象手続」という。)について、電子申請等関係システム別の電子申請の利用状況を確認した。その結果、図表3-10のとおり、対象手続に係る30年度の年間手続件数の総計は5億8971万余件、このうち電子申請件数の計は2億5935万余件となっていて、電子申請件数を年間手続件数で除した率(以下「電子申請率」という。)は全体で43.9%となっており、電子申請等関係システム別の電子申請率は、0.0%から97.9%までと大きな差が見受けられた。

そこで、それぞれの電子申請等関係システムについて対象手続別の件数等を確認すると、電子申請件数については、登記・供託オンライン申請システムにより申請を受け付けて登記情報システム及び地図情報システムにより事務処理を行っている4手続に係る電子申請件数が1億7528万余件となっており、電子申請件数の総数2億5935万余件の67.5%を占める状況となっていた。そして、これらの4手続に係る電子申請率は77.9%と相対的に高くなっていた。一方、電子申請率が20%を下回る手続が163手続と対象手続の61.9%を占めており、電子申請件数が多い上記の4手続が全体の電子申請率を引き上げている状況となっていた。

h-3-10図表3-10 電子申請等関係システム別の対象手続に係る電子申請率(平成30年度)

図表3-10 電子申請等関係システム別の対象手続に係る電子申請率(平成30年度)

(単位:件、%、手続)
システム名 システム別の電子申請率 手続数  
電子申請率別の手続数
受付システム名 事務処理システム名 年間手続件数
の総計
(A)
  電子申請率
(B)/(A)
20%未満   20%以上
40%未満
40%以上
60%未満
60%以上
80%未満
80%
以上
うち電子申請
件数
(B)
うち1%未満
マイナポータル 注(1) 国税電子申告・納税システム
(e-Tax)等
102,123,134 29,728,824 29.1 21 12 1 2 2 3 2
電子政府の総合窓口システム(e-Gov) 金融庁電子申請・届出システム 970,917 950,836 97.9 4 2 0 0 0 0 2
労働保険適用徴収システム 2,993,210 248,716 8.3 9 9 1 0 0 0 0
労働基準行政システム(労働基準行政情報システム・労災行政情報管理システム) 5,200,212 74,716 1.4 27 26 21 1 0 0 0
ハローワークシステム 38,793,289 5,210,858 13.4 29 26 15 3 0 0 0
年金給付システム 7,108,894 9 0.0 21 21 21 0 0 0 0
記録管理・基礎年金番号管理システム 118,210,225 25,541,077 21.6 26 18 6 8 0 0 0
登記・供託オンライン申請システム 登記情報システム
地図情報システム
224,771,929 175,282,886 77.9 4 0 0 1 2 0 1
成年後見登記システム 1,701,217 19,299 1.1 2 2 0 0 0 0 0
輸出入・港湾関連情報処理システム又は出入国管理システム 出入国管理システム 5,014,071 4,211,831 84.0 6 2 0 0 0 0 4
国税電子申告・納税システム(e-Tax) 5,503,919 4,138,385 75.1 22 10 6 0 4 4 4
国税電子申告・納税システム(e-Tax) 国税総合管理システム(KSKシステム) 80,677,446 26,343,097 32.6 46 19 6 9 7 4 7
国税総合管理システム(オープンシステム) 30,721,636 8,485,095 27.6 33 20 5 2 1 1 9
ハローワークシステム 1,445,903 239,662 16.5 1 1 0 0 0 0 0
特許事務システム 3,090,441 2,737,003 88.5 25 1 0 0 0 3 21
自動車保有関係手続のワンストップサービスシステム 自動車登録検査業務電子情報処理システム 63,511,400 5,875,638 9.2 8 6 4 2 0 0 0
  589,714,709 259,359,108 43.9 263 163 85 26 14 12 48
割合 100.0 61.9 32.3 9.8 5.3 4.5 18.2

さらに、対象手続のうち、受付システムと事務処理システムの組合せ別に年間手続件数が多い上位各3手続について、電子申請の状況を確認したところ、図表3-11のとおり、最も電子申請件数の多い手続は、登記・供託オンライン申請システムにより申請を受け付けて登記情報システム及び地図情報システムにより事務処理を行っている「不動産登記に係る登記事項証明書等の交付請求等」となっており、当該手続に係る30年度の電子申請件数は1億5421万余件と全体の電子申請件数の59.4%を占めていた。

また、上記の各3手続について、28年度から30年度までの推移をみると、電子申請率が若干ではあるものの年々おおむね上昇している傾向が見受けられた。

一方、手続によっては、30年度の電子申請率が10%を下回るなど、電子申請率が相対的に低いものが見受けられたほか、年金給付システムにより事務処理を行っている3手続については、うち1手続において28年度に2件の電子申請があったのみで、他は28年度から30年度までの毎年度いずれも0件となっていた。これについて、厚生労働省は、年金給付システムにより事務処理を行う手続においては、申請に必要な書類をあらかじめ年金受給者等に郵送しており、当該書類を用いた申請が行われていることなどにより、電子申請が低調であるとしている。

このように、各電子申請等関係システムの利用状況等については、特定の対象手続による電子申請件数が全体の電子申請件数の多数を占めていた。また、電子申請率の上昇傾向が見受けられた一方で、手続によっては、電子申請率が相対的に低いものがあったり、中にはほとんど電子申請が利用されていないものがあったりしていた。

h-3-11図表3-11 電子申請等関係システム別の年間手続件数が多い上位各3手続に係る電子申請率(平成28年度~30年度)

図表3-11 電子申請等関係システム別の年間手続件数が多い上位各3手続に係る電子申請率(平成28年度~30年度)

(単位:件、%)
システム名 手続名 平成28年度 29年度 30年度
受付システム名 事務処理システム名 年間手続
件数
(A)
  電子申
請率
(B)/(A)
年間手続
件数
(C)
  電子申
請率
(D)/(C)
年間手続
件数
(E)
  電子申
請率
(F)/(E)
うち電子申
請件数
(B)
うち電子申
請件数
(D)
うち電子申
請件数
(F)
マイナポー
タル
国税電子申
告・納税シ
ステム(e-
Tax)等
納付手続 44,080,000 2,900,000 6.5 44,400,000 3,300,000 7.4 45,140,000 4,020,000 8.9
居住者の給与等、
退職手当等及び弁
護士等の報酬若し
くは料金について
の所得税徴収高計
算書
20,000,000 1,794,930 8.9 20,000,000 2,029,195 10.1 20,000,000 2,287,885 11.4
国税申告手続(所得税申告)             19,100,000 11,472,798 60.0
電子政府の総合窓口システム(e-Gov) 金融庁電子申請・届出システム 日本損害保険協会・代申支社による損害保険代理店の登録、変更、廃業等又は役員・使用人の届出 586,186 586,184 99.9 541,771 541,771 100.0 552,905 552,903 99.9
協会による生命保険募集人の登録、変更、廃業等の届出 404,092 404,092 100.0 438,268 438,268 100.0 396,063 396,038 99.9
投資信託委託会社の運用報告書の届出 13,716 1,846 13.4 10,855 1,833 16.8 11,213 1,694 15.1
労働保険適用徴収システム 概算保険料の申告(継続) 1,930,033 106,473 5.5 2,257,560 165,794 7.3 1,985,765 171,406 8.6
労働保険保険関係成立届 368,945 21,958 5.9 480,546 35,339 7.3 350,135 36,438 10.4
労働保険保険関係成立届名称所在地変更届 157,844 6,503 4.1 185,005 10,144 5.4 164,757 12,085 7.3
労働基準行政システム(労働基準行政情報システム・労災行政情報管理システム) 時間外労働・休日労働に関する協定届 1,507,843 4,776 0.3 1,623,025 5,262 0.3 1,678,583 16,115 0.9
就業規則(変更)届 645,457 5,393 0.8 871,168 10,953 1.2 778,993 21,463 2.7
療養補償給付たる療養の給付の請求(業務災害) 532,200 0 - 549,508 3 0.0 575,659 2 0.0
ハローワークシステム 雇用保険被保険者資格取得届 10,063,666 1,199,590 11.9 10,243,670 1,575,219 15.3 10,139,356 2,043,221 20.1
雇用保険被保険者資格喪失届 6,928,879 1,175,103 16.9 7,090,648 1,558,920 21.9 7,315,053 2,080,262 28.4
雇用保険被保険者個人番号変更届 558,316 24,170 4.3 741,723 110,377 14.8 5,096,596 654,819 12.8
年金給付システム 国民年金・厚生年金保険未支給年金保険給付請求書(厚生年金保険) 1,369,611 2 0.0 1,382,976 0 - 1,423,488 0 -
国民年金・厚生年金保険・船員保険年金受給権者現況届(厚生年金保険) 1,455,131 0 - 1,403,253 0 - 1,333,649 0 -
国民年金・厚生年金保険老齢給付裁定請求書(ハガキ形式)(厚生年金保険) 1,353,354 0 - 1,288,984 0 - 1,194,010 0 -
記録管理・基礎年金番号管理システム 健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届、船員保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届 59,557,209 7,200,078 12.0 61,444,208 9,411,516 15.3 56,749,656 12,378,688 21.8
健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届 35,564,354 3,858,074 10.8 36,785,255 5,126,174 13.9 35,407,730 7,482,991 21.1
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届、船員保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 7,484,972 1,198,817 16.0 7,464,833 1,478,286 19.8 7,435,124 1,933,877 26.0
登記・供託オンライン申請システム 登記情報システム地図情報システム 不動産登記に係る登記事項証明書等の交付請求等 170,259,971 132,433,072 77.7 173,559,718 137,080,413 78.9 176,348,305 154,219,025 87.4
商業・法人登記に係る登記事項証明書等の交付請求等 35,987,585 12,825,491 35.6 36,265,818 13,838,443 38.1 36,720,751 14,531,406 39.5
不動産登記の申請 10,644,963 4,659,490 43.7 10,287,327 5,032,804 48.9 10,110,795 5,667,159 56.0
成年後見登記システム 後見登記等に関する証明書の交付申請 1,739,427 15,006 0.8 1,653,050 16,211 0.9 1,541,093 16,395 1.0
後見登記等の申請 162,693 2,271 1.3 158,483 2,587 1.6 160,124 2,904 1.8
輸出入・港湾関連情報処理システム又は出入国管理システム 出入国管理システム 乗員上陸許可の申請 2,472,558 2,412,377 97.5 2,927,258 2,854,853 97.5 2,847,757 2,784,886 97.7
所属機関による届出 508,538 37,399 7.3 591,195 48,260 8.1 665,261 69,081 10.3
船舶の長による乗員名簿の提出等 572,590 572,010 99.8 572,601 571,734 99.8 583,409 581,771 99.7
国税電子申告・納税システム(e-Tax) 国税申告手続(消費税申告(法人)) 1,972,716 1,524,073 77.2 1,992,088 1,624,911 81.5 2,004,662 1,655,396 82.5
電子申請等証明書の交付請求 2,369,677 2,369,677 100.0 1,757,547 1,757,547 100.0 1,261,622 1,261,622 100.0
国税申告手続(消費税申告(個人)) 1,130,170 714,773 63.2 1,126,670 745,056 66.1 1,161,059 770,681 66.3
国税電子申告・納税システム(e-Tax) 国税総合管理システム(KSKシステム) 納付手続 44,080,000 2,900,000 6.5 44,400,000 3,300,000 7.4 45,140,000 4,020,000 8.9
国税申告手続(所得税申告) 18,553,586 9,921,691 53.4 19,142,161 10,430,168 54.4 19,100,000 11,472,798 60.0
電子申告・納税等開始(変更等)届出 2,989,854 2,968,857 99.2 7,358,303 7,316,619 99.4 6,849,682 6,790,648 99.1
国税総合管理システム(オープンシステム) 居住者の給与等、退職手当等及び弁護士等の報酬若しくは料金についての所得税徴収高計算書 20,000,000 1,794,930 8.9 20,000,000 2,029,195 10.1 20,000,000 2,287,885 11.4
給与所得の源泉徴収票(及び同合計表) 3,553,390 2,058,201 57.9 3,676,985 2,188,589 59.5 3,701,687 2,283,195 61.6
居住者又は内国法人の報酬若しくは料金、契約金、賞金又は年金についての所得税徴収高計算書 1,500,000 123,174 8.2 1,500,000 145,297 9.6 1,500,000 174,816 11.6
ハローワークシステム 雇入れ/離職に係る外国人雇用状況届出 964,675 132,841 13.7 1,159,391 185,630 16.0 1,445,903 239,662 16.5
特許事務システム 特許料納付の申出 900,379 783,230 86.9 844,474 764,502 90.5 865,131 783,593 90.5
手続補正書 356,159 313,602 88.0 341,784 302,004 88.3 336,604 298,069 88.5
特許出願 275,724 254,449 92.2 270,035 249,847 92.5 265,223 245,524 92.5
自動車保有関係手続のワンストップサービスシステム 自動車登録検査業務電子情報処理システム 自動車重量税の納付手続(印紙・現金) 24,675,936 不明 不明 23,665,068 不明 不明 21,612,270 1,054,233 4.8
自動車(検査対象外軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)の継続検査 21,272,353     20,540,869 288,949 1.4 20,965,660 2,655,541 12.6
移転登録 6,246,301     6,343,507 1,764 0.0 6,481,263 25,154 0.3
  • 注(1) 対象手続には、年間手続件数及び電子申請件数について概数値で回答があったものが含まれる。
  • 注(2) マイナポータルにより申請を受け付けている3手続については、従来、国税電子申告・納税システム(e-Tax)でのみ受付を行っていたが、「納付手続」及び「居住者の給与等、退職手当等及び弁護士等の報酬若しくは料金についての所得税徴収高計算書」は平成29年1月から、「国税申告手続(所得税申告)」は31年1月から、マイナポータルの「もっとつながる」を経由して申請を行うことも可能となっている。このため、マイナポータル及び国税電子申告・納税システム(e-Tax)の両方に年間手続件数及び電子申請件数を記載している。
  • 注(3) 自動車保有関係手続のワンストップサービスシステムにより申請を受け付けている「自動車重量税の納付手続(印紙・現金)」について、国土交通省は、平成29年10月以降の電子申請件数しか把握できなかったとしているため、28、29両年度の電子申請件数を記載していない。
  • 注(4) 自動車保有関係手続のワンストップサービスシステムにより申請を受け付けている「自動車(検査対象外軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)の継続検査」及び「移転登録」の2手続については、平成29年度に電子申請による申請の受付を開始している。

行政手続については、申請条件、頻度等の要素がそれぞれ異なる一方、電子完結(電子申請に際して、紙媒体による添付資料の提出及び対面を必要としないことをいう。以下同じ。)か否かなど、電子申請に際して各手続に共通する要素があることから、対象手続のうち、法令により電子申請による申請等のみが可能とされている10手続を除いた253手続について、電子申請に共通する要素別に電子申請率に与える影響を確認したところ、次のとおりとなっていた。

上記253手続のうち、棚卸結果において電子完結の状況が不明であった2手続を除く251手続について電子完結の状況別に、30年度の電子申請率を確認したところ、図表3-12のとおり、電子完結可能な188手続のうち、電子申請率が20%未満の手続は106手続(188手続に対する割合56.3%)となっているのに対して、電子完結不能な63手続のうち、電子申請率が20%未満の手続は55手続(63手続に対する割合87.3%)、そのうち、電子申請率が1%未満の手続は41手続(同65.0%)となっていて、電子完結不能な手続については電子申請率が相対的に低いものの割合が大きい状況となっていた。

h-3-12図表3-12 電子完結の状況別の電子申請率の状況(平成30年度)

図表3-12 電子完結の状況別の電子申請率の状況(平成30年度)

(単位:手続、%)
電子完結の状況 電子申請率別の手続数
20%未満   20%以上
40%未満
40%以上
60%未満
60%以上
80%未満
80%以上
うち
1%未満
電子完結可能 手続 106 43 23 13 12 34 188
割合 56.3 22.8 12.2 6.9 6.3 18.0 100.0
電子完結不能 手続 55 41 3 1 0 4 63
割合 87.3 65.0 4.7 1.5 - 6.3 100.0
手続 161 84 26 14 12 38 251
  • (注) 電子完結の状況については、棚卸結果を基に集計しているが、集計においては、棚卸結果において電子完結の状況が不明であった2手続を除いている。

他方、電子完結可能な手続でも電子申請率が低調なものがあり、この中には、電子申請を行う際に、金融機関の確認印を受けた書類等をスキャナ等を用いて電子データ化して提出する必要があるものが見受けられた。

また、前記の253手続について、添付資料(電子データによるものを含む。以下同じ。)の有無別に、30年度の電子申請率を確認したところ、図表3-13のとおり、添付資料がない140手続のうち、電子申請率が20%未満の手続は72手続(140手続に対する割合51.4%)となっているのに対して、添付資料がある113手続のうち、電子申請率が20%未満の手続は91手続(113手続に対する割合80.5%)となっていた。そして、当該113手続のうち、電子申請率が1%未満の手続は58手続(同51.3%)となっており、添付資料のある手続については電子申請率が相対的に低いものの割合が大きい状況となっていた。

h-3-13図表3-13 添付資料の有無別の電子申請率の状況(平成30年度)

図表3-13 添付資料の有無別の電子申請率の状況(平成30年度)

(単位:手続、%)
添付資料の有無 電子申請率別の手続数
20%未満   20%以上
40%未満
40%以上
60%未満
60%以上
80%未満
80%以上
うち
1%未満
添付資料なし 手続 72 27 18 9 9 32 140
割合 51.4 19.2 12.8 6.4 6.4 22.8 100.0
添付資料あり 手続 91 58 8 5 3 6 113
割合 80.5 51.3 7.0 4.4 2.6 5.3 100.0
手続 163 85 26 14 12 38 253

さらに、図表3-12の251手続について、電子完結の状況と添付資料の有無を組み合わせて電子申請率に与える影響を確認したところ、図表3-14のとおり、電子完結可能であり、かつ、添付資料がない137手続については、電子申請率が20%未満の手続が69手続(137手続に対する割合50.3%)、このうち電子申請率が1%未満の手続は26手続(同18.9%)となっていた。これに対して、電子完結不能な手続は、そのほとんどが添付資料があるものとなっており、これに該当する62手続のうち、電子申請率が20%未満の手続が54手続(62手続に対する割合87.0%)、このうち電子申請率が1%未満の手続は41手続(同66.1%)となっていた。

このように、電子完結可能であり、かつ、添付資料がない手続については、電子申請率が相対的に高いものの割合が大きい状況となっていた。

h-3-14図表3-14 電子完結の状況及び添付資料の有無別の電子申請率の状況(平成30年度)

図表3-14 電子完結の状況及び添付資料の有無別の電子申請率の状況(平成30年度)

(単位:手続、%)
電子完結の状況及び添付資料の有無 電子申請率別の手続数
20%未満   20%以上
40%未満
40%以上
60%未満
60%以上
80%未満
80%以上
うち
1%未満
電子完結可能 添付資料なし 手続 69 26 18 9 9 32 137
割合 50.3 18.9 13.1 6.5 6.5 23.3 100.0
添付資料あり 手続 37 17 5 4 3 2 51
割合 72.5 33.3 9.8 7.8 5.8 3.9 100.0
電子完結不能 添付資料なし 手続 1 0 0 0 0 0 1
割合 100.0 - - - - - 100.0
添付資料あり 手続 54 41 3 1 0 4 62
割合 87.0 66.1 4.8 1.6 - 6.4 100.0
手続 161 84 26 14 12 38 251
  • (注) 電子完結の状況については、棚卸結果を基に集計しているが、集計においては、棚卸結果において電子完結の状況が不明であった2手続を除いている。

d 電子申請等関係システムにおける外部連携機能等の利活用の状況と電子申請率の状況

電子申請等関係システムのうち受付機能を有するものの利便性の向上については、「オンライン手続の利便性向上に向けた改善方針」(平成26年4月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)において、民間事業者を含む幅広い者がソフトウェア開発を行えるように、受付システムの仕様を開示し、又は外部連携機能の開発を行うこととされていた。そして、30年1月に決定されたデジタル・ガバメント実行計画においても、民間申請者等にとって利便性の高い形で外部連携機能を公開することが必要であるとされている。

そこで、前記の電子申請等関係システム19システムのうち、受付システムについて30年度末時点における外部連携機能の整備状況及び外部連携機能による電子申請の受付状況をみたところ、図表3-15のとおり、外部連携機能については、電子政府の総合窓口システム(以下「e-Gov」という。)、登記・供託オンライン申請システム、国税電子申告・納税システム(以下「e-Tax」という。)及び自動車保有関係手続のワンストップサービスシステムの計4受付システムにおいて整備されていた。このうち、外部連携機能を利用した電子申請の受付件数について把握しているe-Gov、登記・供託オンライン申請システム及び自動車保有関係手続のワンストップサービスシステムをみると、28年度から30年度までにかけて、外部連携機能を利用した電子申請の受付件数は増加していた。また、受付を行う電子申請が全て外部連携機能によるものである登記・供託オンライン申請システムを除き、外部連携機能による電子申請の受付件数の増加は、全体の電子申請の受付件数の増加分の大半又はほぼ全てを占めていた。

h-3-15図表3-15 外部連携機能の整備状況及び外部連携機能を利用した電子申請の受付状況(平成28年度~30年度)

図表3-15 外部連携機能の整備状況及び外部連携機能を利用した電子申請の受付状況(平成28年度~30年度)

(単位:件)
システム名 システム
形態
平成30年
度末時点
の外部連
携機能
  電子申請の受付件数 28年度から30年度までの
増加件数
30年度
の仕様の
一般
公開
28年度 29年度 30年度
電子申請の
受付件数
(A)
  電子申請の
受付件数
(C)
  電子申請の
受付件数
(E)
  電子申請
の受付件数
(E)-(A)
 
受付 事務
処理
うち外部連携機能によるもの
(B)
うち外部連携機能によるもの
(D)
うち外部連携機能によるもの
(F)
うち外部連携機能によるもの
(F)-(B)
マイナポータル                      
e-Gov   6,474,041 4,644,062 8,587,892 6,374,245 11,351,168 8,569,573 4,877,127 3,925,511
登記・供託オンライン申請システム   151,443,637 151,443,637 157,502,826 157,502,826 176,093,931 176,093,931 24,650,294 24,650,294
e-Tax 31,259,651   37,217,803   40,630,950   9,371,299  
ハローワークシステム                    
特許事務システム                    
自動車保有関係手続のワンストップサービスシステム   931,838 931,835 1,235,633 1,235,182 3,769,369 3,768,437 2,837,531 2,836,602
  • 注(1) 民間申請者は、外部連携機能等を利用して複数の手続に係る電子申請のデータを一括して送信することなどが可能であり、この場合、受付システムは電子申請のデータを1件として受け付けるなどしている。このため、各システムの電子申請の受付件数は、受け付けた手続別の電子申請件数の総数とは一致しない。
  • 注(2) マイナポータルについては、各府省等へ申請・届出を行う手続に係る外部連携機能を対象としている。
  • 注(3) e-Govの外部連携機能による件数には、手続のオンライン利用を行うに当たって企業等が保有するデータの利用を容易にする一括申請機能による申請分を含んでいる。
  • 注(4) 外部連携機能の仕様については、e-Gov及びe-Taxがウェブサイト上にて一般公開している一方、登記・供託オンライン申請システムについては、法務省と機密保持の誓約を取り交わした開発業者に対して仕様書を貸与することとしており、自動車保有関係手続のワンストップサービスシステムについては、申出があった者に対して仕様を開示することとしている。
  • 注(5) 自動車保有関係手続のワンストップサービスシステムについては、民間団体が整備したソフトウェアから、外部連携機能を利用しての申請が可能となっている。

さらに、前記253手続のうち、外部連携機能が整備されている上記の4受付システムにより受付を行っている221手続について、事務処理システムを所管する行政機関に対して、外部連携機能が利用可能な手続を確認したところ、142手続となっていた。

そして、上記の142手続について、電子申請等関係システム別に、30年度の電子申請率を確認したところ、図表3-16のとおり、電子申請率が80%以上の手続が11手続(142手続に対する割合7.7%)となっていた一方、電子申請率が20%未満の手続が83手続(同58.4%)、このうち電子申請率が1%未満の手続が25手続(同17.6%)となっていた。

h-3-16図表3-16 電子申請等関係システム別の外部連携機能が利用可能な手続の状況(平成30年度)

図表3-16 電子申請等関係システム別の外部連携機能が利用可能な手続の状況(平成30年度)

(単位:手続、%)
システム名 対象
手続数
外部連携機能
対象の対象手
続数
電子申請率別の手続数
20%
未満
  20%以上
40%未満
40%以上
60%未満
60%以上
80%未満
80%以上
受付システム名 事務処理システム名 うち1%
未満
e-Gov 金融庁電子申請・届出システム 4 0 0 0 0 0 0 0
労働保険適用徴収システム 9 9 9 1 0 0 0 0
労働基準行政システム(労働基準行政情報システム・労災行政情報管理システム) 27 0 0 0 0 0 0 0
ハローワークシステム 29 13 10 3 3 0 0 0
年金給付システム 21 0 0 0 0 0 0 0
記録管理・基礎年金番号管理システム 26 15 7 0 8 0 0 0
登記・供託オンライ
ン申請システム
登記情報システム地図情報システム 4 4 0 0 1 2 0 1
成年後見登記システム 2 2 2 0 0 0 0 0
e-Tax 21 21 10 6 0 4 4 3
e-Tax 国税総合管理システム(KSKシステム) 46 46 19 6 9 7 4 7
国税総合管理システム(オープンシステム) 24 24 20 5 2 1 1 0
自動車保有関係手続のワンストップサービスシステム 自動車登録検査業務電子情報処理システム 8 8 6 4 2 0 0 0
  221 142 83 25 25 14 9 11
割合 100.0 58.4 17.6 17.6 9.8 6.3 7.7

そこで、前記の142手続について、受付システム及び事務処理システムを所管する行政機関において外部連携機能を利用した電子申請件数が把握されている手続を確認したところ、登記・供託オンライン申請システムで受け付けている6手続及び自動車保有関係手続のワンストップサービスシステムで受け付けている手続のうち7手続の計13手続(142手続に対する割合9.1%)のみとなっており、外部連携機能の利用状況を確認することができない手続が多く見受けられた。

このように、外部連携機能については、整備されている受付システムに対して行われる電子申請の多くに利用されていた一方、外部連携機能が利用できる手続の大半は、外部連携機能を利用した電子申請件数が把握されておらず、外部連携機能を整備した効果を確認することができない状況となっていた。

また、受付システムにおけるスマートフォン専用画面の整備状況について確認したところ、30年度末までに整備が行われていたものは、マイナポータル及びe-Taxのみとなっていた。なお、令和元年12月に改正されたデジタル・ガバメント実行計画においては、行政手続の更なる利便性の向上に係るシステム整備の一環として、スマートフォンやタブレットを利用したオンライン手続における利便性向上のために、スマートフォン専用画面の整備等を行うこととなっている。

前記のとおり、電子申請においては、電子完結不能な手続及び添付資料がある手続について電子申請率が相対的に低いものの割合が大きく、また、外部連携機能を利用した電子申請件数が把握されておらず、外部連携機能を整備した効果を確認することができない手続が多い状況となっていた。

したがって、各府省等においては、電子申請の在り方について利用状況を踏まえて検討した上で、電子申請等関係システムの利活用促進及び利便性向上の観点から、行政手続の見直しなどの際に、電子完結が可能となる仕組みの整備、添付資料の見直しなどの検討を行うとともに、外部連携機能を整備した効果を確認できるようにするなどして、電子申請率の向上等を図るための方策を検討することが必要である。

受付システムについては、「行政情報の電子的提供業務及び電子申請等受付業務の業務・システム最適化計画」(平成17年8月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)において、e-Govに各府省の電子申請を一元的に受け付けるための窓口システムを整備し、各府省は、原則として、平成18年度までに当該窓口システムを利用して申請を受け付けるための電子申請システムの見直しを実施するなどとされた。これを受けて、多くの府省等においては、所管する行政手続の受付についてe-Govを用いて行うこととしている。

一方、マイナポータルについては、29年7月に、地方公共団体の所管する行政手続を電子申請の対象とした子育てワンストップサービス等が開始されたほか、「未来投資戦略2018」(平成30年6月閣議決定)において、「世界最高水準の起業環境を実現するために、法人設立手続のオンライン・ワンストップ化を行う」などとされていることを受けて、令和2年1月に国の行政機関等の所管する手続も電子申請の対象とした法人設立ワンストップサービスが開始されている。法人設立ワンストップサービスの開始により、法人設立時に必要な国税関係手続等の同一の行政手続に係る受付システムとして、既存のe-Gov又はe-Taxとマイナポータル(以下、これらを合わせて「3受付システム」という。)が併存して受付システムが多重化することとなったため、3受付システムの利用状況、事務処理システムとの連携状況等をみたところ、次のとおりとなっていた。

法人設立ワンストップサービスで受付が開始された手続のうち、国の行政機関等が所管する計19手続(2年1月時点)については、3受付システムにより申請を受け付けて、労働保険適用徴収システム、記録管理・基礎年金番号管理システム、ハローワークシステム、e-Tax及び国税総合管理システム(KSKシステム)の5事務処理システムにより事務処理を行っていた。

そこで、上記の5事務処理システムにおける受付システムの多重化への対応状況について確認したところ、e-Tax及び国税総合管理システム(KSKシステム)については、受付システムとしてe-Taxとマイナポータルが併存しているが、図表3-17のとおり、マイナポータルで行われた申請についても、e-Taxに電子申請のデータを送信することにより、e-Taxにおける既存の受領機能を利用して電子申請のデータを受領していた。一方、労働保険適用徴収システム、記録管理・基礎年金番号管理システム及びハローワークシステム(以下「3事務処理システム」という。)については、受付システムとしてe-Govとマイナポータルが併存していて、図表3-18のとおり、e-Govで行われた電子申請のデータを受領する既存の機能のほかに、マイナポータルで行われた電子申請のデータを受領する機能が整備されており、電子申請のデータを受領するための機能が重複している事態が見受けられた。

図表3-17 事務処理システムの受領機能が重複していない場合における電子申請のデータの流れ(e-Tax、国税総合管理システム(KSKシステム))

図表3-17 事務処理システムの受領機能が重複していない場合における電子申請のデータの流れ(e-Tax、国税総合管理システム(KSKシステム))画像

図表3-18 事務処理システムの受領機能が重複している場合における電子申請のデータの流れ(労働保険適用徴収システム、記録管理・基礎年金番号管理システム、ハローワークシステム)

図表3-18 事務処理システムの受領機能が重複している場合における電子申請のデータの流れ(労働保険適用徴収システム、記録管理・基礎年金番号管理システム、ハローワークシステム)画像

3事務処理システムは、2年1月の法人設立ワンストップサービスの開始に伴い、新たにマイナポータルから電子申請のデータを受領する必要が生じたことから、既存のe-Govに加え、新たにマイナポータルから直接に電子申請のデータを受領するための改修をそれぞれ実施していた。

このうち、ハローワークシステムについては、同システムの更改も同年1月に予定されていたことから、更改にマイナポータルとの本格的なシステム連携に係る内容も取り込むことは難しいとして、本格的なシステム連携は、システム更改後の同年11月に開始することとし、契約金額11億2146万余円で改修を行っていた。そして、法人設立ワンストップサービスが開始された同年1月から10月末までの間は、マイナポータルから受領した電子申請データについては、一旦職員が紙に出力し、紙に記載された申請データをスキャナで読み込むことによってハローワークシステムに取り込み、事務処理を行っていた。そして、事務処理が終わった後に民間申請者に送付する公文書等については、職員が、ハローワークシステムから出力したデータをマイナポータルに手動でアップロードしていた。また、上記の間に申請内容に疑義が生じた場合等に民間申請者へ差戻しを行う機能については、受付システムがe-Govの場合は、職員がe-Govを経由して、民間申請者に確認する機能を利用することが可能であったが、受付システムがマイナポータルの場合には同様の機能を利用することができず、電話等によって申請内容の修正を求めるなどしなければならない状況となっていた。

このように、ハローワークシステムにおいては、民間申請者からの電子申請を受け付ける受付システムとして、既存のe-Govに加えて、別途マイナポータルと連携した結果、e-Govで利用することができた機能がマイナポータルでは利用することができないなどの状況となっており、行政側の業務が複雑化していた。

上記の状況について、総務省は、法人設立ワンストップサービスが2年1月に開始される方針であったのに対して、e-Govの更改時期を同年10月に予定していたことから、投資対効果の観点から、e-Govにおいて法人設立ワンストップサービスを整備することは困難であったとしている。

このように、受付システムの多重化は、申請者の利便性を向上させる効果が生じる可能性がある一方で、事務処理システムにおける業務の複雑化を招くおそれがある。

そして、政府は、前記法人設立ワンストップサービスのほかにも、同様のワンストップサービスを実現するなどとしており、今後も、同一の行政手続に係る受付システムが複数構築されることが想定される。

したがって、受付システムを整備し運用する府省等は、受付システムの多重化によって、関係する事務処理システムにおける業務の複雑化を招かないように、あらかじめ受付システムと事務処理システムとの連携方法を十分に検討することが重要である。

(ウ) 電子調達等関係システムの利用状況

前記のとおり、政府は、電子調達等関係システムを整備するなどして電子入札や電子契約を導入する取組を実施してきている。そして、各府省等における入札及び契約の電子化の状況等をみたところ、次のとおりとなっていた。

a 入札の電子化の状況

通常の物品及び役務の調達並びに公共事業の調達のうち物品及び役務の調達と同様の手順を経て行われるものについては、調達業務の業務・システム最適化計画に基づき、各府省等が個々に整備し運用していた既存の電子入札システムを廃止し、総務省が整備する電子調達システム(以下「GEPS」という。)に順次移行して電子入札が実施されている。

一方、①防衛装備品等の特殊な物品等の調達、②発注を行う府省等が独自に技術上の審査等を行う公共事業の調達は、上記の最適化計画における調達業務に含まれていないことから、各府省等が自ら電子入札を実施するためのシステムを整備し運用しており、自衛隊の装備品等の調達については防衛装備庁が、公共事業の調達については文部科学省及び国土交通省が、それぞれ電子入札を実施するためのシステムを整備し運用している。

平成28年度から30年度までの入札の電子化の状況をみると、図表3-19のとおり、競争入札による契約件数全体に対する電子入札が可能である調達案件の割合は、物品及び役務の調達手続、公共事業の調達手続共に70%台後半から80%台半ばとなっていた。

また、28年度から30年度までの入札の電子化の実績について18年報告で記述している15年度から17年度までの実績と比較すると、電子入札が可能である調達案件の件数及び競争入札による契約件数に対する電子入札が可能である調達案件の件数の割合は、いずれも相当増加していた。

h-3-19図表3-19 入札の電子化の状況(平成28年度~30年度)

図表3-19 入札の電子化の状況(平成28年度~30年度)

(単位:件、%)
年度 物品及び役務 公共事業
競争入札による契約件数 左のうち電子入札が可能である件数 電子入札が可能である件数の割合 競争入札による契約件数 左のうち電子入札が可能である件数 電子入札が可能である件数の割合
(A) (B) (B/A) (C) (D) (D/C)
平成28年度 13,628 10,285 75.4 603 477 79.1
29年度 13,583 10,496 77.2 517 441 85.2
30年度 13,318 10,034 75.3 538 416 77.3
40,529 30,815 76.0 1,658 1,334 80.4
(参考:18年報告)  
15年度 2,577 129 5.0 649 132 20.3
16年度 3,531 1,299 36.7 513 143 27.8
17年度(9月まで) 2,264 1,234 54.5 197 81 41.1
  • 注(1) 総務省が各府省等を対象として実施している調達手続の電子化の状況に係る調査を基に、検査の対象とした30省庁から平成31年4月に設置された出入国在留管理庁を除いた29省庁の内部部局における件数を集計して会計検査院が作成した。
  • 注(2) 参考として示した18年報告における件数には、随意契約に係る調達案件のうち、システムを利用して電子的に見積等を徴したものが含まれている。

30年度に運用されていた電子調達等関係システムについて、各府省等の内部部局における利用状況をみたところ、大部分の府省等において電子入札が実施されていた(別図表3-4参照)。

電子調達等関係システムにより電子入札等を実施することができる調達案件の総数に対する、実際に電子入札等が実施されたものの割合を確認したところ、図表3-20のとおり、文部科学省電子入札システム及び国土交通省の電子入札システムではそれぞれ95%以上となっており、防衛装備庁の中央調達システムでは69.4%、GEPSでは53.2%となっていた。

なお、18年報告で記述している、17年4月から9月までの間の上記の割合は、物品及び役務では32.6%、公共事業では88.8%となっていた。

h-3-20図表3-20 電子調達等関係システム別の入札等の電子化の状況(平成30年度)

図表3-20 電子調達等関係システム別の入札等の電子化の状況(平成30年度)

(単位:件、%)
システム名 担当府省 調達の対象 電子入札等が可能な調達案件数 左のうち
電子入札等があった調達案件数
電子化率
(A) (B) (B/A)
GEPS 総務省 物品及び役務 35,222 18,749 53.2
文部科学省電子入札システム 文部科学省 公共事業 2,143 2,047 95.5
(21) (21) (100)
電子入札システム 国土交通省 公共事業 22,518 22,500 99.9
中央調達システム 防衛装備庁 防衛装備品等 5,426 3,766 69.4
(参考:18年報告)  
電子入札の利用状況
(物品及び役務)
15年度 129 37 28.6
16年度 1,299 408 31.4
17年度(9月まで) 1,234 403 32.6
電子入札の利用状況
(公共事業)
15年度 132 104 78.7
16年度 143 123 86.0
17年度(9月まで) 81 72 88.8
  • 注(1) 件数は、平成30年度における各システムの利用実績の全体数であり、内部部局以外における数を含んでいる。
  • 注(2) 「電子入札等が可能な調達案件数」は、電子入札を実施することができる競争入札に係る調達案件及びシステムにより見積書を提出することができる随意契約に係る調達案件の数であり、実際の入札等が全て紙によるものであったものを含んでいる。
  • 注(3) GEPSの調達の対象には、物品及び役務の調達と同様の手順を経る公共事業の調達を含んでいる。
  • 注(4) 文部科学省電子入札システムは国立大学法人等の国以外の機関も利用しており、各件数には国以外の機関の利用に係るものを含んでいる。括弧書きは国の機関の利用に係る件数及び電子化率であり、件数は内数である。
  • 注(5) 参考として示した18年報告における電子入札の利用状況は、各府省等が個別に整備していたシステムによる競争契約等の電子入札等の利用状況を合計したものである。

各府省等における28年度から30年度までの契約の電子化の状況をみると、図表3-21のとおり、電子契約の締結件数は増加傾向にあったものの、契約締結件数全体に対する電子契約の割合は1%未満にとどまっていた。

h-3-21図表3-21 契約の電子化の状況(平成28年度~30年度)

図表3-21 契約の電子化の状況(平成28年度~30年度)

(単位:件、%)
年度 契約締結件数   左のうち
  電子契約の件数
電子契約の割合
(A) (B) (B/A)
平成28年度 27,983 102 0.3
29年度 27,395 152 0.5
30年度 27,567 213 0.7
82,945 467 0.5
  • 注(1) 総務省が各府省等を対象として実施している調達手続の電子化の状況に係る調査を基に、検査の対象とした30省庁から平成31年4月に設置された出入国在留管理庁を除いた29省庁の内部部局における件数を集計して会計検査院が作成した。
  • 注(2) 契約締結件数欄の件数は、「公共調達の適正化について」(平成18年8月財計第2017号)の「3 契約に係る情報の公表」に基づき公表された競争入札に係る契約及び随意契約の件数を集計したものである。

また、30年度に運用されていた電子調達等関係システムのうち、電子契約を締結するために各府省等の内部部局において利用されていたものはGEPSのみであった。GEPSは電子入札と電子契約の両方を実施することができるシステムであり、電子入札を実施する際と同様の方法によりGEPSにログインして電子契約を締結することができるようになっているものの、各府省等の内部部局におけるGEPSによる電子契約の利用状況をみたところ、GEPSによる電子契約を締結していたのは、総務省、財務省、国税庁、経済産業省及び環境省の計5省庁にとどまっていた。

さらに、各府省等の内部部局以外の利用に係るものを含めた、30年度におけるGEPSによる電子契約の締結件数は計240件となっており、その契約の相手方は90者となっていた。そして、これら90者の状況を契約金額別及び契約件数別にみたところ、図表3-22のとおり、契約金額別では、上位5者が契約金額全体の88.4%を占めており、契約件数別では、上位5者が契約件数全体の43.7%を占めていた。このように、GEPSによる電子契約は一部の事業者との間の契約で利用されるにとどまっており、多くの事業者に普及しているとはいえない状況となっていた。

図表3-22 GEPSによる電子契約の相手方の状況(平成30年度)

図表3-22 GEPSによる電子契約の相手方の状況(平成30年度)画像

そして、GEPSによる電子契約の利用が低調となっている理由について、総務省が令和元年度に各府省等から当該利用が進まない理由等を聴取した結果を確認したところ、「利用しようと考えたことがない」「電子契約を実施することによる官側・民側のメリットが分からない」などといったシステムの操作性以前の理由が挙げられていた。また、各府省等からは、「電子契約を利用した事例を紹介してほしい」「電子契約を普及させていくためにはメリットを明確にして利用促進を図る必要がある」などの要望や意見が挙げられていた。

また、各府省等との取引において民間事業者等が電子契約を締結しない理由等について、各府省等の内部部局の調達担当者が民間事業者等に対して聴取するなどした内容を確認したところ、「紙の方が契約書を管理しやすい」「組織内のルールにより紙の契約書を作成する必要がある」などの理由が挙げられていた。一方、各府省等との取引において電子契約を利用したことのある民間事業者等に対して、各府省等の内部部局の調達担当者が、電子契約を利用して感じたメリットについて聴取するなどした内容を確認したところ、「発注機関に赴く移動時間・経費の削減につながった」「契約書の印刷、押印、相手方への送付等の手間がなくなり業務量の削減につながった」などといった点が挙げられていた。

なお、国土交通省は、電子契約システム(工事・業務)の運用を元年8月に開始している。元年度中の同システムの利用状況を確認したところ、同省のほか、内閣府、農林水産省及び防衛省のそれぞれの地方支分部局が利用しており、電子契約の締結件数は計1,926件となっていた。

令和2年基本計画によれば、行政機関等の内部手続についての押印、書面提出等の見直しを進めることとされており、契約書については電子的手段の利活用促進を図ることとされている。また、「規制改革実施計画」(令和2年7月閣議決定)によれば、行政機関等の内部手続について書面、押印及び対面の見直しを行い、内閣官房がその結果についてフォローアップを行うこととされている。

令和2年基本計画等の趣旨を踏まえると、GEPSによる電子契約についても、今後、利用促進に向けた取組を行う必要があるが、取組の実施に当たっては、GEPSにより電子契約を締結することによる利便性等について認知度を高めることなどが課題になると考えられる。

したがって、総務省は、内閣官房や内閣府等と連携した上でGEPSによる電子契約の利用促進に向けた課題を整理し、各府省等が行う調達について、利便性に配慮した上で可能なものから順次電子契約を利用するよう、各府省等及び民間事業者等に対する周知、啓発等に努めることが必要である。

ウ 政府内の業務の効率化を図るための政府情報システム

各府省が共通的に利用する政府情報システムについては、前記の電子政府構築計画に基づき、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議(以下「CIO連絡会議」という。)において策定された最適化計画により整備が進められてきており、人給システム、旅費等システム等が府省共通システム(注28)として整備され、運用されている。

デジタル・ガバメント実行計画によれば、政府は、府省共通システムの安定的運用を行うとともに、各府省において、府省共通システムを最大限活用した業務効率化及び業務改革を推進することとされており、特に、人事・給与関係の業務・システム改革や、旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務に係るシステムの運用改善等に取り組むとともに、利用者のシステム利用における負担軽減・生産性向上を目指すなどとされている。

また、「電子決裁移行加速化方針」(平成30年7月デジタル・ガバメント閣僚会議決定)によれば、電子決裁への移行により、迅速・正確な業務処理や行政文書の確実な保存・管理が図られるよう、各府省は、業務プロセス全体の電子化の中で電子決裁を行うことについて検討し、推進することとされている。そして、総務省は、各府省に提供している文書管理システムの処理能力の向上や使い勝手の向上に計画的に取り組むほか、各府省における電子決裁への移行の進捗状況の継続的な把握及び業務改革を推進する立場からの各府省の取組への支援を行うこととされている。

そこで、各府省が共通的に利用する政府情報システムのうち、最適化計画の実施後においても、特に個別の取組が求められている人給システム、文書管理システム及び旅費等システム(以下、これらを合わせて「3共通システム」という。)について、各府省等の参加状況をみたところ、図表3-23のとおり、2年2月末時点において3共通システムのいずれかの利用に参加しているのは30省庁(当該システムの担当府省を含む。)であり、人給システムには25省庁、文書管理システムには29省庁、旅費等システムには29省庁が参加していた。

(注28)
府省共通システム   令和元年12月のデジタル・ガバメント実行計画の改定により、政府全体で共通的に利用するシステム、基盤、機能等として「デジタルインフラ」に位置付けられているもの。これについては、今後も引き続き、整備に取り組み、横断的かつ業務改革を意識したサービス視点での整備・運用を、効果的かつ効率的に実現することとされている。
h-3-23図表3-23 3共通システムのいずれかの利用に参加している各府省等の参加状況(令和2年2月末時点)

図表3-23 3共通システムのいずれかの利用に参加している各府省等の参加状況(令和2年2月末時点)


参加府省名 参加状況(「○」が参加、「-」が不参加) 参加していない理由
人給システム 文書管理
システム
旅費等
システム
1 内閣官房  
2 内閣法制局
3 人事院
4 内閣府
5 宮内庁
6 公正取引委員会
7 警察庁 人給システム:政府共通ネットワークへの接続の制約等で、集中管理に参加することが費用対効果の観点から効率化に資さないことから、最適化計画に基づいて人事院が開発したソフトウェアを利用しているため

 

文書管理システム:専用の庁内情報ネットワークシステムを利用しているため

8 個人情報保護委員会  
9 金融庁
10 消費者庁
11 復興庁 人給システム:時限組織であること、非常勤職員が多数であることから、導入が合理化につながらず費用対効果が少ないため

 

旅費等システム:もともと時限組織であったことから、府省共通システムの連携が想定されていなかったため

12 総務省  
13 消防庁
14 法務省
15 出入国在留管理庁
16 外務省 人給システム:外務省に固有の業務に係る機能について、人給システムへの実装が困難であるため、IT総合戦略室、人事院及び外務省が協議の上、政府CIO承認の下、人給システムの導入を見送ることとした。
17 財務省  
18 国税庁
19 文部科学省
20 文化庁
21 厚生労働省
22 農林水産省
23 経済産業省
24 特許庁
25 国土交通省
26 気象庁
27 環境省
28 原子力規制委員会
29 防衛省 人給システム:防衛省では、府省共通の情報通信ネットワークの利用に係る制限及び人事管理における特殊事情があることから、最適化計画等の内容を踏まえつつ、防衛省で独自にシステムを整備し運用することとしてい る。
30 防衛装備庁 上記と同様
25 29 29  
  • (注) 上記の参加府省のほか、衆議院、参議院、国立国会図書館、最高裁判所及び会計検査院において、3共通システムの全部又は一部を利用している場合がある。

そして、参加府省等における3共通システムの利用状況等を確認したところ、次のとおりとなっていた。

(ア) 3共通システムに係る運用開始時期等の状況

各府省における3共通システムの運用開始予定時期等は、CIO連絡会議において策定された最適化計画等に基づき定められており、各府省の運用開始予定時期等が定められた計画等によれば、人給システムは平成22年度から29年度にかけて、文書管理システムは20年度から24年度にかけて、旅費等システムは26年度及び27年度に、それぞれ各府省において運用を開始することとなっていた。これに対して、各府省等が実際に運用を開始した時期をみると、図表3-24のとおり、人給システムは21省庁(注29)、文書管理システムは9省庁(注30)、「旅費及び謝金・諸手当システム」(旅費等システムの一部。以下同じ。)は27省庁(注31)、物品管理システム(旅費等システムの一部。以下同じ。)は個人情報保護委員会において、それぞれ運用開始時期が計画より遅延していた。

(注29)
21省庁   内閣官房、内閣法制局、内閣府、宮内庁、公正取引委員会、金融庁、消費者庁、総務省、消防庁、法務省、財務省、国税庁、文部科学省、文化庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、特許庁、国土交通省、気象庁、環境省
(注30)
9省庁   人事院、宮内庁、消費者庁、外務省、財務省、文部科学省、文化庁、環境省、防衛省。なお、9省庁には、「平成21年度文書管理業務の業務・システム最適化実施評価報告書」(平成22年8月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)及び「平成22年度文書管理業務の業務・システム最適化実施評価報告書」(平成23年9月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)において運用開始時期が遅延したと評価されていない省庁も含まれている。
(注31)
27省庁   内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、個人情報保護委員会、金融庁、消費者庁、総務省、消防庁、法務省、外務省、財務省、国税庁、文部科学省、文化庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、特許庁、国土交通省、気象庁、環境省、原子力規制委員会、防衛省
h-3-24図表3-24 3共通システムに係る運用開始時期の遅延の状況

図表3-24 3共通システムに係る運用開始時期の遅延の状況

(単位:省庁)
担当府省名 システム名 参加府省
の数
運用開始時期の遅延の状況
遅延なし 1か月以上、
6か月未満
6か月以上、
1年未満
1年以上、
3年未満
3年以上、
5年未満
5年以上 遅延した
省庁数の計
人事院 人給システム 注(1) 25 4 1 2 5 2 11 21
総務省 文書管理システム 注(2) 29 20 4 2 2 1 0 9
経済産業省 旅費等
システム
注(3)
旅費及び謝金・諸手当システム 29 2 21 6 0 0 0 27
物品管理システム 注(4) 29 28 0 0 1 0 0 1

人給システムについて、会計検査院は、24年10月に、会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告「人事・給与等業務・システム、調達業務の業務・システム並びに旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システムの3の府省共通業務・システムにおける最適化の進捗状況等について」において参加府省の運用開始時期の遅延の状況について報告している。同報告においては、21年8月に改定された最適化計画に基づき各府省における運用開始予定時期が決定された後、移行作業に問題が発生するなどして参加府省の運用開始時期に遅れが生じ、24年1月に最適化計画が改定されている旨を記述している。その後、29年度中に全ての参加府省において移行作業が完了し、運用が開始されていた。

旅費及び謝金・諸手当システムについては、「平成25年度旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システム最適化実施評価報告書」(平成26年9月経済産業省)によると、24年11月に設計・開発が開始されており、人給システムと連携して人給システムから組織情報や職員情報を取得する計画であったが、各府省において人給システムの運用状況に相違が生じていたとして人給システムとの連携を断念していた。そして、暫定的に職員等利用者共通認証基盤(現在は職員認証サービス)と連携するために連携方式を再検討する必要が生じたため、設計、製造、結合・総合テスト等の各工程に合計5か月の遅延が生じたとしていたが、導入を予定していた参加府省においては、27年度までには全て導入が完了していた。

(イ) 最適化計画における効果の発現状況

3共通システムの最適化計画においては、担当府省が設計して開発した標準的なシステムを各府省が導入することなどにより、各府省が、従来独自に実施している業務を共通化し、政府全体として最適化するとしており、最適化に伴い削減される経費(以下「削減経費」という。)や削減される業務処理時間数(以下「削減業務処理時間数」という。)が最適化による効果の指標とされている。そこで、3共通システムに係る最適化による効果の発現状況をみたところ、図表3-25のとおり、人給システムの削減経費及び旅費等システムの削減業務処理時間数について、実績値が目標値を下回っていた。また、人給システムについては、担当府省である人事院において、削減業務処理時間数に係る実績値を把握していないため、目標の達成状況を評価できない状況となっていた。

h-3-25図表3-25 3共通システムに係る効果の発現状況

図表3-25 3共通システムに係る効果の発現状況

(単位:千円、時間/年)
担当府省名 システム名 システムに対応する
最適化計画の名称
効果の指標 効果の
発現年度
目標値
(A)
実績値
(B)
目標値と
実績値
との差
(B-A)
人事院 人給システム 人事・給与等業務・システム最適化計画(29年2月改定) 削減経費 令和元年度 580,000 224,126 △ 355,874
削減業務処理時間数 注(1) 平成30年度 500,000 - -
総務省 文書管理システム 文書管理業務の業務・システム最
適化計画(23年9月改定)
削減経費 25年度 1,232,398 1,414,302 181,904
削減業務処理時間数 6,650 6,650 -
経済産業省 旅費等
システ
旅費及び謝金・諸
手当システム
旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システム最適化計画(24年1月改定) 削減経費 注(2) 28年度 △ 298,990 △ 120,727 178,263
削減業務処理時間数 9,501,194 1,218,007 △ 8,283,187
物品管理システム 削減経費 注(2) △ 140,887 △ 96,627 44,260
削減業務処理時間数 1,061,871 233,279 △ 828,592

人事院は、人給システムに関する最適化に伴う削減経費について、第一期政府共通PFへの移行に向けて、機器構成の見直しを実施し、サーバの台数等を削減することとして試算していた。しかし、当初の想定よりもサーバ・ソフトウェアに係る経費が削減できなかったなどのため、目標値である5億8000万円に対して実績値は2億2412万余円(目標値の38.6%)にとどまっていた。

また、人給システムの削減業務処理時間数について、人事院は、29年2月改定の最適化計画における試算において、削減業務処理時間数の目標値を約50万時間と算出していた。しかし、人事院は、目標値を精緻に算出したため、参加府省においてその算出方法に沿って実績を把握するには多大な事務負担が生ずることから実績の把握が困難であるとして、実績値を算出するためのフォローアップ調査を行っておらず、削減業務処理時間数に係る実績値を把握していなかった。

旅費等システムについては、年間のシステム経常経費は旅費等システムの導入前より増加するものの、業務処理時間の大幅な削減が見込まれるとして導入が決定されたにもかかわらず、特に地方支分部局において本格運用の開始が遅れていて電子化率(全起案件数に対するシステム利用起案件数の割合)が伸び悩んでいる。このことなどから、削減業務処理時間数についてみると、旅費及び謝金・諸手当システムの目標値である950万1194時間及び物品管理システムの目標値である106万1871時間に対して、実績値は、それぞれ121万8007時間(目標値の12.8%)及び23万3279時間(目標値の21.9%)にとどまっていた。

(ウ) 3共通システムに含まれている各機能の利用状況

3共通システムにおいては、それぞれ様々な機能が開発され、実装されている。

人給システム及び旅費等システムについて、参加府省における各機能の利用状況をみたところ、令和2年2月末時点において、主要な機能のうち、それぞれに参加している25省庁及び29省庁のうち10省庁以上が利用していない主な機能は、図表3-26のとおりとなっており、該当する業務がないことのほか、各機能を導入するための時間を参加府省において確保することができないことや、他の手段により運用していることなどのため、当該機能が利用されていない状況となっていた。

なお、主要な機能のうち、利用している参加府省が全くないものは見受けられなかった。

h-3-26図表3-26 人給システム及び旅費等システムの利用されていない主な機能(令和2年2月末時点)

図表3-26 人給システム及び旅費等システムの利用されていない主な機能(令和2年2月末時点)

システム名 主要な機能のうち、10省庁以上が利用していない主な機能
業務類型 主な機能 機能が利用されていない主な理由
人給システム 届出申請 ・諸手当に関する届出情報入力
・年末調整(所得税)に関する届出情報入力
・口座振込に関する届出情報入力
届出申請機能を導入するための時間を確保することができなかったため
職員の入力誤りのチェック等が必要なため、かえって効率的でないため
旅費等シ
ステム
旅費及び謝金・諸手当
システム
旅費 ・海外赴任旅費に係る概算請求
・海外赴任旅費に係る旅行計画
・国内旅行に係る概算請求
該当する業務がないため
謝金・諸手当 ・支出伺の作成 文書管理システムを使用して決裁しているため
物品管理システム 検査 ・検査書の作成 表計算ソフトウェアや紙媒体により作成しているため
各種報告書
作成
・物品に係る各種報告書の作成 全ての物品が登録されていないため
表計算ソフトウェアや紙媒体により作成しているため

3共通システムのうち、人給システムにおいては、平成27年度までに、職員から申請される各種届出について自動的に処理が行えるよう、57の届出申請機能(注32)が整備されていた。しかし、人給システムに実装されていた143機能の使用状況の「人事給与業務効率化に向けた改善計画」(平成27年3月人事給与業務効率化推進会議決定。27年8月改定)における調査結果を踏まえて、28年度に業務効率化の観点からシステム機能の再編を実施することとされ、勤務時間管理に係る全機能が廃止された。これに伴い、57の届出申請機能のうち、身上調査、希望調査、旧姓使用届等の職員に関する10の届出申請機能、休暇・勤務時間等に関する20の届出申請機能、宿舎に関する5の届出申請機能及び共済に関する4の届出申請機能が廃止された。そこで、残りの18の届出申請機能について、令和2年2月末時点において人給システムを利用している前記の25省庁における利用状況(以下、届出申請機能については、申請者である職員本人が届出申請を行う場合の利用状況を示す。)をみたところ、図表3-27のとおり、参加府省の半数を超える15省庁(注33)が届出申請機能を全く利用しておらず、また、残りの10省庁(注34)も利用する機能が一部にとどまっていて、従来と同様に紙媒体による申請や承認を行っているなど、人給システムにおいて、開発され及び実装されている機能の一部が十分に利用されておらず、業務の効率化に寄与していない事態が見受けられた。

(注32)
届出申請機能   届出申請機能には、申請者である職員本人が届出申請を行う場合に利用される機能と、端末が一人に1台設置されていない官署に勤務する職員や人給システムを使用することができない職員のために、庶務担当者等が申請者である職員本人に代わって届出申請(代行申請)を行う場合に利用される機能がある。
(注33)
15省庁   内閣官房、内閣法制局、内閣府、公正取引委員会、個人情報保護委員会、金融庁、消費者庁、消防庁、文部科学省、財務省、文化庁、経済産業省、特許庁、環境省、原子力規制委員会
(注34)
10省庁   人事院、宮内庁、総務省、法務省、出入国在留管理庁、国税庁、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、気象庁
h-3-27図表3-27 届出申請機能の利用状況等(令和2年2月末時点)

図表3-27 届出申請機能の利用状況等(令和2年2月末時点)

(単位:省庁、%)
参加府省の数 届出申請機能を利用している省庁数 届出申請機能を全く利用していない省庁数
手当認定に
関する届出
(4機能)
年末調整(所得税
控除)に関する届出
(4機能)
口座振込に
関する届出
(2機能)
共済に関する
届出
(8機能)
純計
25(100.0) 10(40.0) 6(24.0) 5(20.0) 0(0.0) 10(40.0) 15(60.0)
  • (注) 各届出のうち、1機能でも利用していれば「届出申請機能を利用している省庁数」に計上している。

届出申請機能を利用していない理由について参加府省に確認したところ、同機能を全く利用していない15省庁においては、「同機能を導入するための時間を確保することができなかったこと」「人給システム導入後も紙媒体を原本として給与担当職員が入力を行っていること」などとなっていた。また、届出申請機能の一部のみを利用している10省庁においては、「利用していない機能に係る届出申請には証拠書類を添付する必要があるが、当該機能においては証拠書類を電子データで添付して送信することができるようになっていないこと」などとなっていた。

前記の事態のうち、届出申請機能の利用が一部にとどまっていたものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例3-1> 特定の届出申請に係る証拠書類を電子データで添付して送信することができるようになっていないことなどを理由として、届出申請機能の利用が一部にとどまっていたもの

厚生労働省は、平成24年10月に人給システムの本格稼働を開始しているが、人給システムで整備された年末調整(所得税控除)に関する4の届出申請機能及び口座振込に関する2の届出申請機能については、届出に係る証拠書類(戸籍謄本、保険料控除証明書、通帳の写しなど)を電子データで添付して申請する機能がないことなどから、当該届出申請機能を利用するに当たっての具体的な検討を行うことができる段階には至っていないとして、当該届出申請機能を利用しておらず、紙媒体により処理していた。

また、旅費及び謝金・諸手当システムについては、外部委員に係る謝金等の支出伺を同システムではなく文書管理システムにより決裁していたり、物品管理システムについては、検査書や物品に係る各種報告書の作成機能を利用せず、これらの書類を表計算ソフトウェアや紙媒体により作成していたりなどしていて、一部の機能を利用していない省庁が見受けられた。

このように、人給システムについて、特定の届出申請に係る証拠書類を電子データで添付して送信することができるようになっておらず、届出申請機能の利用が一部にとどまっていた事態や、参加府省において、各機能を導入するための時間を確保することができなかったり、人給システム導入後も業務を見直すことなく紙媒体を原本として給与担当職員が入力を行っていたり、他の手段により運用がされていたりすることなどを理由として各機能が利用されていない事態は、各府省が共通的に利用する政府情報システムの効果的な活用の面からみて適切ではないと考えられる。

したがって、人給システム及び旅費等システムについて、担当府省において、後掲(エ)のようにシステムの利便性の向上を図りつつ、参加府省におけるシステムの機能の利用状況について適切に把握し、各機能の利用が低調となっている参加府省に対して、利用が進んでいる省庁の取組事例を紹介するなどして、両システムの利用促進に向けた取組等について適時適切に検討するように助言及び支援を行うことが必要である。また、参加府省において、システムを利用した場合の業務の在り方を見直し、各機能を利用した場合の業務への影響やシステム化の可否について、十分に検討を行い、両システムの利用向上に向けて適切に取り組んでいくことが必要である。

b 文書管理システムに係る電子決裁率の状況

政府における電子決裁の推進については、IT国家創造宣言、「世界最先端IT国家創造宣言工程表」(平成25年6月高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)等により、平成27年度までを電子決裁推進の集中取組期間とし、そのKPI(注35)として、同年度までに電子決裁率(電子決裁が可能な端末を整備している官署の決裁における電子決裁の割合。以下同じ。)を60%とすること、特に、地方支分部局を除く部局についてはおおむね80%とすることを目標として取組が進められてきた。その後、25年度から28年度までの政府における電子決裁の取組状況については、各府省において個別に整備された個別業務システムの電子決裁の取組状況も含めて総務省が調査を行っており、「平成28年度政府における電子決裁の取組状況」の調査によると、28年度の政府全体の電子決裁率は91.4%、内部部局の電子決裁率は95.8%となっている。

また、30年7月には、決裁終了後の文書の取扱いに係る問題を踏まえて、文書管理システム等の電子決裁システムへの移行を加速することとされ、前記のとおり、「電子決裁移行加速化方針」が決定された。同方針によれば、電子決裁への移行により、迅速・正確な業務処理や行政文書の確実な保存・管理が図られるよう、各府省は、業務プロセス全体の電子化の中で電子決裁を行うことについて検討し、推進することとされ、総務省は、各府省における電子決裁への移行の進捗状況の継続的な把握及び業務改革を推進する立場からの各府省の取組への支援を行うことなどとされている。

そして、参加府省における28年度から30年度までの文書管理システムの電子決裁率の状況をみたところ、図表3-28のとおり、電子決裁率が80%未満の省庁は、28年度の9省庁から、30年度には4省庁に減少しており、また、28年度から30年度までのいずれかの年度において電子決裁率が80%未満となっていた10省庁の電子決裁率は、おおむね上昇傾向となっていた(28年度から30年度までのいずれかの年度において文書管理システムの電子決裁率が80%未満となっていた10省庁の電子決裁率の推移の状況については、別図表3-5参照)。

(注35)
KPI   Key Performance Indicatorの略。重要業績評価指標
h-3-28図表3-28 文書管理システムの電子決裁率の状況(平成28年度~30年度)

図表3-28 文書管理システムの電子決裁率の状況(平成28年度~30年度)

(単位:省庁)
担当府省名 システム名 参加府省の数 電子決裁率の状況
  平成28年度 29年度 30年度
総務省 文書管理システム 28 90%以上の
省庁数
16 14 18
90%未満、
80%以上の
省庁数
3 6 6
80%未満の
省庁数
9 8 4
28 28 28
  • 注(1) 出入国在留管理庁は平成31年4月に設置されたため、参加府省の数から除外している。
  • 注(2) 平成28年度の電子決裁率の状況については、「平成28年度政府における電子決裁の取組状況」の調査において各府省が回答した内容を基に算出している。
  • 注(3) 平成29年度及び30年度の電子決裁率の状況については、総務省が把握している参加府省(防衛省を除く。)の文書管理システムの電子決裁率を基に算出している。
  • 注(4) 平成29年度及び30年度の防衛省の電子決裁率の状況については、文書管理システムを利用できる端末が導入されていないなど、業務環境の制約により電子決裁を実施できない部署等における決裁数を除外するため、防衛省が28年度と同様にして算出した電子決裁率を基に算出している。

電子決裁に移行できない理由について参加府省に確認したところ、「利用できる端末が導入されていない」「そもそも現場に安定的なネットワーク環境がない」などの業務環境の制約のほか、「膨大な紙媒体の添付書類等があり電子決裁に添付するための書類の電子化が困難である」ことなども見受けられた。

前記のとおり、3共通システムについて、利用しない理由としてシステムの利便性の問題が挙げられていたり、利用している場合においても業務の効率化に必ずしも寄与していない事態も見受けられたりするなどしている。担当府省は、システムの利用状況等の改善を図るため、各府省に対してシステムに係る改修要望を募集し、その結果を基にするなどして、予算の制約や改修の緊急性等も踏まえつつ、システムに係る利便性の向上に取り組んでいるとしている。

そして、各府省から提出されている改修要望の内容をみたところ、画面の表示項目を簡素化したり、重要項目を強調したりするなどの画面表示に関するもの、エラーチェック機能を強化したり、ガイド表示の機能を設けたりするなどの入力・審査の自動化及び省力化に関するものなど、システムに係る利便性に影響があると考えられる要望が提出されている。

そこで、29年度から令和元年度までの改修要望数やそれに対応して概算要求に挙げ、さらに、改修を実施した数の状況をみると、図表3-29のとおり、改修案件として概算要求に挙げた数の割合は、各府省からの改修要望数に対して、最大で、人給システムが4.2%、文書管理システムが6.6%、旅費及び謝金・諸手当システムが61.9%、物品管理システムが3.2%となっていた。また、各府省からの改修要望を基に改修を実施した数の割合は、各府省からの改修要望数に対して、最大で、人給システムが1.5%、文書管理システムが1.3%、旅費及び謝金・諸手当システムが61.9%、物品管理システムが3.2%となっていた。なお、「旅費及び謝金・諸手当システム」及び物品管理システムについては、一部の年度において、そもそも各府省に対して改修要望に係る意見募集を行っていなかった。

h-3-29図表3-29 3共通システムに係る改修要望数、概算要求に挙げた数及び改修を実施した数

図表3-29 3共通システムに係る改修要望数、概算要求に挙げた数及び改修を実施した数

(単位:件、%)
担当府省名 システム名   平成29年度 30年度 令和元年度
件数 左の割合 件数 左の割合 件数 左の割合
人事院 人給システム 各府省からの改修要望数 65   71   54  
  うち、概算要求に挙げたもの 2 3.0 3 4.2 - -
  うち、改修を実施したもの 1 1.5 1 1.4 - -
総務省 文書管理システム 各府省からの改修要望数 336   224   136  
  うち、概算要求に挙げたもの 8 2.3 15 6.6 5 3.6
  うち、改修を実施したもの 3 0.8 3 1.3    
経済産業省 旅費等
システム
旅費及び謝金・
諸手当システム
各府省からの改修要望数 27   21   -  
  うち、概算要求に挙げたもの 9 33.3 13 61.9 - -
  うち、改修を実施したもの 9 33.3 13 61.9 - -
物品管理システム 各府省からの改修要望数 -   123   -  
  うち、概算要求に挙げたもの - - 4 3.2 - -
  うち、改修を実施したもの - - 4 3.2 - -
  • 注(1) 各府省からの改修要望数は、各システムの担当府省が機能等ごとに分類して取りまとめた数である。
  • 注(2) 人給システムについては、人事院は、1省庁につき1年度に3案件までに限定して改修要望に係る意見募集を行っている。
  • 注(3) 文書管理システムについて、総務省は、本図表に記載したもののほか、平成30年度に運用・保守業務において1件の改修を実施している。
  • 注(4) 「旅費及び謝金・諸手当システム」の「令和元年度」については、経済産業省は改修項目に係る意見照会を行っているが、改修要望に係る意見募集を行っていないため、各府省からの改修要望数については「-」となっている。
  • 注(5) 「物品管理システム」の「平成29年度」及び「令和元年度」については、経済産業省は、運用・保守業務において、平成29年度に10件、令和元年度に5件の改修を実施しているが、改修要望に係る意見募集を行っていないため、各府省からの改修要望数は「-」となっている。

このように、人給システム、文書管理システム及び物品管理システムについては、各府省からの改修要望数に対して改修を実施した割合が低い状況となっていた。

(オ) 他の政府情報システム等とのシステム連携機能の利用状況等

3共通システムは、図表3-30のとおり、それぞれ他の政府情報システム等とのシステム連携を図ることとされている。

h-3-30図表3-30 3共通システムのシステム連携に係る方針

図表3-30 3共通システムのシステム連携に係る方針

担当府省名 システム名 システム連携に係る方針 (注)
人事院 人給システム

官庁会計システム、国有財産総合情報管理システム、標準共済システム及び政府共通PFの職員認証サービスとのシステム連携を図り、業務の効率的な運用を図るとともに、人給システムで作成された源泉徴収票等のe-Tax及び地方税ポータルシステムを利用したオンライン提出を推進する。

総務省 文書管理システム

文書の取得・作成から移管・廃棄に至る一貫した電子的処理を実現し、手作業による処理を極力排除する観点から、職員等利用者共通認証基盤(現在は職員認証サービス)、電子申請・届出システム等の関連するシステムとの連携を図る。

経済産業省 旅費等システム

業務に係る一連の事務処理を原則として電子化して効率的に行えるようにすることが基本理念とされており、人給システム、職員等利用者共通認証基盤(現在は職員認証サービス)、文書管理システム、GEPS、官庁会計システム、財務書類作成システム、電子証拠書類等管理システム等とのシステム連携を図る。

そこで、3共通システムと他の政府情報システム等とのシステム連携機能について、2年2月末時点の利用状況をみたところ、人給システムにおける3連携機能について、参加府省のうち連携機能を利用している省庁の割合が50%未満となっていた(官庁会計システムとの連携機能(利用している省庁数の割合20.0%)、職員認証サービス(異動情報)との連携機能(同20.0%)、国有財産総合情報管理システムとの連携機能(同44.0%)。同月末時点における3共通システムと他の政府情報システム等とのシステム連携機能の利用状況については、別図表3-6参照)。

そして、人給システムと他の政府情報システム等とのシステム連携については、連携する情報がシステム間で異なる形式であるなどシステム連携に係る仕様における課題が解決されないままとなっているため、システム連携を行うために相当の労力を要するものとなっていてシステム連携を実施できていない事態が見受けられた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3-2> システム連携に係る仕様における課題が解決されないままとなっているため、システム連携を行うために相当の労力を要することとなっていたもの

人給システムは、職員認証サービス(担当府省は総務省)とのシステム連携に当たり、職員情報(氏名、本務等)とマスタ情報(組織、官名、職名及び職級)について連携を行うことになっており、人事院は、人給システムのマニュアルにおいて、これらの情報についてシステム連携を行うための導入手順を示している。

参加府省の中には、人給システムと職員認証サービスとの間で組織の階層設定が異なっていたり、同一の職員情報について職名コードが一致していなかったりして、システム連携に係る仕様における課題が解決されないままとなっているものがあり、このような参加府省においては、人事院から示された導入手順に基づきシステム連携を実施しようとすると、連携機能の導入時期までに、システム連携の対象となる職員全ての職員情報等について目視による確認作業が必要となり、相当の労力を要する状況となっていた。このようなことなどから、令和2年2月末時点において、既にシステム連携を実施している人事院、宮内庁、公正取引委員会、金融庁及び環境省を除く参加府省においては、システム連携を実施できておらず、これらの情報について人給システムと職員認証サービスの両方でそれぞれ独立して管理している状況のままとなっていた。

その結果、人事異動等により情報に変更が生じたときは、人給システムと職員認証サービスの両方に職員情報等を入力することが必要となっており、システム連携による業務効率化が図られていない状況となっていた。

なお、連携機能を利用している省庁数の割合が最も低いものの一つである人給システムと官庁会計システムとのシステム連携(注36)の状況をみたところ、2年7月時点において、環境省については、同省における事務負担増加のため、金融庁については、システム連携が適切に行われるかの確認に当たり、支給事務に支障が生ずるおそれのある事態が判明し、これについて人給システムの改修を要することになったため、当初の導入スケジュールを見直している。また、同時点において、8省庁(注37)については、これまでの導入実績を踏まえて、各府省の作業負担の分散や人事院による支援体制の増強等のため、当初の導入スケジュールを見直している。

(注36)
人給システムと官庁会計システムとのシステム連携   人事院によると、人給システムと官庁会計システムとのシステム連携を行った場合、職員の給与支払に係る振込手数料を1件当たり約90円節減させる効果が得られるとしている。
(注37)
8省庁   内閣官房、内閣法制局、内閣府、総務省、法務省、出入国在留管理庁、国税庁、厚生労働省

このように、人給システムにおいて、システムの仕様の問題等のため、システム連携機能が利用されず、システム連携による業務効率化が図られていない状況となっていることは、業務の効率化及びシステムの機能の活用の観点から適切ではないと認められる。また、文書管理システムや旅費等システムにおいて、一部の連携システムについて、参加府省が運用の見直しを行っている段階であること、システム連携機能の存在を把握できていないことなどを理由として、システム連携機能が存在しているにもかかわらず、当該機能を十分に利用していない省庁も見受けられた。

したがって、他の政府情報システム等とのシステム連携により業務の効率化を図ることができるよう、担当府省において、人給システムについて、必要となるシステム改修等の技術的な対応を行うなどしたり、文書管理システム及び旅費等システムについて、参加府省に対してシステム連携が円滑に行えるように適時適切にシステム連携機能に係る周知等の支援を行ったりすることにより、システム連携を推進していくことが必要である。また、元年12月に改定されたデジタル・ガバメント実行計画において、データの標準化、情報システム間の互換性、円滑な情報連携等について、政府として統一性を確保しつつ効率的に実現することとなっていることを踏まえて、担当府省におけるシステム連携を推進するための取組について適時適切に助言及び支援を行っていくことが必要である。

さらに、参加府省においては、担当府省によるシステム改修等の技術的な対応やシステム連携機能に係る周知等の支援等を踏まえて、システム連携機能の利用を検討する必要がある。

(2) 政府情報システムに係る目標及び指標の設定状況、指標のモニタリングの実施状況、目標の達成状況等

ア 政府情報システムのプロジェクト計画書等の作成状況及び目標等の記載状況

各府省等のPJMOは、ITを活用して利用者中心のサービス・業務改革を推進するために、利用者が実感できる効果を確実に達成することを目的として、プロジェクトの計画、整備、運営及び状況把握の一連の活動を行うこととなっている。標準ガイドラインによれば、PJMOは、プロジェクトを計画的に遂行するため、プロジェクトの実行に先立ち、プロジェクト計画書及びプロジェクト管理要領(以下、これらを合わせて「プロジェクト計画書等」という。)を作成することとされていて、平成27年4月時点で実行中のプロジェクトのうちこれらが作成されていないものについては、遅くとも30年8月までに作成することなどとされている。

標準ガイドラインによれば、プロジェクト計画書には、目標、モニタリングの項目等を記載し、プロジェクトの進捗に合わせ、その内容を具体化し詳細化していくこととされており、IT総合戦略室によると、プロジェクト計画書は、プロジェクトのライフサイクルを通じて達成すべき成果を明確にし、各工程における意思決定や関係者との合意における指針として参照することにより、プロジェクト本来の目的に対して最大の効果を発揮することを目指すものであるとしている。

また、標準ガイドラインによれば、プロジェクト計画書に記載する目標の達成状況を適切に管理するために把握すべき指標項目、実績値の取得目的・取得手法・取得頻度等をプロジェクト管理要領に記載することとされている(以下、このような指標による管理を「指標管理」という。)。そして、プロジェクト管理要領には、プロジェクトを管理する手法、手順、遵守事項等を明確に記載するとともに、指標管理の項目を記載することとされている。

このうち、プロジェクト計画書で定義した目標の達成状況を測定するための指標は、プロジェクトにおける各活動において把握した実績値と比較して、プロジェクト活動期間中、定期的かつ定量的に管理する必要があるとされている。

また、モニタリングについては、プロジェクトの目標が達成されているかどうかを判断するために実施する継続的なモニタリングの方法をプロジェクト計画書に記載することとされており、モニタリングの対象は、プロジェクト管理要領に記載されている指標管理等とされている。

前記のとおり、プロジェクト計画書等はプロジェクトがその目的に沿った効果を発揮する上で重要なものとされていることから、予算額(注38)が10億円を超えている政府情報システムのうち、令和2年3月末時点で利用されている23府省等の89システム(注39)について、プロジェクト計画書等の作成状況をみたところ、同時点において、プロジェクト計画書及びプロジェクト管理要領の両方を作成していなかったものが、36システム(89システムに対する割合40.4%)見受けられた。一方、プロジェクト計画書を作成して、目標を記述し定量的な指標を設定しているものは48システム(同53.9%)、プロジェクト管理要領も作成していたものは31システム(同34.8%)となっていた。また、プロジェクト管理要領に指標の実績値の取得方法又は取得頻度を記述しているものは、それぞれ5システム(同5.6%)となっていた(89システムのプロジェクト計画書等の作成状況及び目標等の記載状況については、別図表3-7及び3-8参照)。

(注38)
予算額   平成30年度情報システム関係予算の政府案状況表(IT総合戦略室及び総務省が行っている情報システム関係予算に関する調査結果を取りまとめたもの)に記載されている整備経費又は運用等経費に係る29、30両年度の当初予算額の合計額
(注39)
89システム   89システムに係る平成30年度の予算現額(5484億余円)の765システムに係る同年度の予算現額(6193億余円)に対する割合は88.5%となっている。

そして、プロジェクト計画書を作成していない理由について各府省等に確認したところ、「プロジェクトが開始されたのが標準ガイドライン施行前であることなどのため」「作成することの認識が不足していたため」などとしていた。

イ 政府情報システムに係る指標の設定状況

標準ガイドラインによれば、利用者視点から真に求められる姿を定義した上でそのために必要となるサービス・業務改革やシステム整備を行うことにより達成できる目標を設定することが重要であるとされている。そして、目標の達成状況を測定するための指標には、業務効果に関する指標と情報システム効果に関する指標の2種類があるとされている。このうち、業務効果に関する指標については、行政内部の視点のみではなく、利用者がサービスを通じて享受する価値や効用を優先することに留意して設定することとされており、情報システム効果に関する指標については、業務効果に関する指標を踏まえて、情報システムが果たすべき効果を整理し設定するものであるとされている。

プロジェクト計画書に記載されている業務効果に関する指標及び情報システム効果に関する指標の例を挙げると、業務効果に関する指標については、ユーザの利用満足度調査におけるアンケートの基準スコア、自動車保有関係手続のワンストップサービスシステム利用率等、主に政府情報システムを整備することによる効果の発現状況を確認するための指標等が記載され、情報システム効果に関する指標については、計画停止を除いたシステムの稼働率、SLA(注40)等、主に政府情報システムを運用していく上でのサービスレベルに関する指標等が記載されていた(プロジェクト計画書に記載されている指標の例については、別図表3-9参照)。

(注40)
SLA   Service Level Agreement(サービスレベルアグリーメント)の略。サービスの提供者とその利用者の間で結ばれるサービスの範囲、品質、達成目標、稼働率等のサービス水準に関する合意のこと。サービスレベル契約ともいう。

前記のとおり、プロジェクト計画書で定義した目標の達成状況を測定するための指標は、プロジェクト活動期間中、定期的かつ定量的に管理する必要がある。

そこで、プロジェクト計画書を作成して目標及び指標の記載をしていた48システムについて、目標に対する定量的な指標の設定状況をみたところ、図表3-31のとおり、186件設定されていた。これらについて、業務効果に関する指標、情報システム効果に関する指標の別にみたところ、業務効果に関する指標が77件(定量的な指標計186件に対する割合41.3%)、情報システム効果に関する指標が102件(同54.8%)となっていた。また、業務効果に関する指標のみを設定している政府情報システムは5システム(48システムに対する割合10.4%)となっており、情報システム効果に関する指標のみを設定している政府情報システムは7システム(同14.5%)となっていて、これらの合計は12システムとなっていた。

h-3-31図表3-31 目標に対する定量的な指標の設定状況

図表3-31 目標に対する定量的な指標の設定状況

(単位:システム、件、%)
省庁名 プロジェクト
計画書におい
て目標及び定
量的な指標を
設定している
システム数
  左記のシステ
ムに係る目標
に対する定量
的な指標の数
 
  業務効果に関
する指標の数
  情報システム
効果に関する
指標の数
  その他の指標
の数
業務効果に関
する指標又は
情報システム
効果に関する
指標のどちら
か一方のみを
設定している
システム数
業務効果に関
する指標のみ
を設定してい
るシステム数
情報システム
効果に関する
指標のみを設
定しているシ
ステム数
人事院 1 - 11 2 - 9 - -
内閣府 - - - - - - - -
警察庁 5 1 27 8 - 16 1 3
個人情報保護委員会 1 - 4 3 - 1 - -
金融庁 2 1 5 1 - 4 1 -
消費者庁 1 - 5 2 - 3 - -
総務省 4 1 23 13 1 10 - -
法務省 6 1 20 10 1 10 - -
出入国在留管理庁 - - - - - - - -
外務省 1 1 3 3 1 - - -
財務省 4 3 11 6 1 5 2 -
国税庁 - - - - - - - -
文部科学省 1 1 8 - - 8 1 -
厚生労働省 3 - 20 12 - 8 - -
農林水産省 1 - 2 1 - 1 - -
経済産業省 - - - - - - - -
特許庁 1 1 2 2 1 - - -
国土交通省 7 1 21 8 - 13 1 -
気象庁 2 - 6 2 - 4 - -
環境省 1 - 6 2 - 4 - -
原子力規制委員会 1 - 3 1 - 2 - -
防衛省 5 - 8 1 - 3 - 4
防衛装備庁 1 1 1 - - 1 1 -
48(100.0) 12(25.0) 186(100.0) 77(41.3) 5(10.4) 102(54.8) 7(14.5) 7(3.7)

このように、上記の12システムでは、業務効果に関する指標又は情報システム効果に関する指標のみを設定しており、両方の指標を適切に設定していない状況となっていた。業務効果に関する指標のみを設定している場合には、当該効果の発現において政府情報システムがどのような効果を果たしているかが明らかにならないおそれがあり、また、業務効果に関する指標を設定することなく、情報システム効果に関する指標のみを設定している場合には、プロジェクトの本来の目的を離れて、情報システムの利用が自己目的化するおそれがある。

ウ 政府情報システムに係る指標のモニタリングの実施状況

標準ガイドラインによれば、モニタリングの対象となる指標について、プロジェクト遂行中に、指標の目標水準と現状の水準との差異を客観的に把握し、水準の見直しや指標の追加・変更を検討するなど、常時適切な指標を管理することが肝要であるとされている。

そこで、プロジェクト計画書を作成して目標及び定量的な指標の設定を行っていた48システムのうち、2年3月末時点において1年以上のプロジェクトの期間がある35システムについて指標のモニタリングの実施状況を確認したところ、定量的な指標が計129件設定されていたが、このうち9システムの定量的な指標計20件については、モニタリングが行われていなかった(目標に対する定量的な指標の設定を行っているシステムにおけるモニタリングの状況については、別図表3-10参照)。

これらの指標のモニタリングを行っていない理由について各府省等に確認したところ、「モニタリングが困難な指標項目であるため」などとしており、モニタリングを行うための実績値の取得方法、取得頻度等について、十分に検討を行っていなかった。

そして、プロジェクト計画書を作成して目標の設定をしている政府情報システムであっても、設定した指標に係る実績値の取得方法、取得頻度等をプロジェクト管理要領に明記していなかったことから、実際にモニタリングを実施していなかった事態が見受けられた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3-3> プロジェクト計画書の目標で当初設定した指標の一部についてモニタリングを実施していなかったもの

総務省は、政府共通ネットワークの整備及び運用を行っている。同省は、政府共通ネットワークについて、プロジェクト計画書等を作成して、業務効果等に関する各種指標を10指標設定していたが、このうち6指標については、設定した指標に係る実績値の取得方法、取得頻度等をプロジェクト管理要領に明記していなかったことから、指標のモニタリングを実施していなかった。

例えば、当該システムにおいて業務効果に関する指標の一つとして設定されていた「利用機関の満足度」については、総務省は、令和2年3月末時点までに、当該指標をモニタリングするための「利用機関の満足度」に関する調査を行っていなかった。

総務省は、会計実地検査を行った2年7月時点において、当該システムに係る指標についてモニタリングの結果をより有効活用できる指標に変更するために見直しを検討しているところであったとしており、その後、同年9月にプロジェクト計画書等を改定して、モニタリングが可能な指標として、当該指標に替えて、通信サービスの稼働率、電子メール中継サービスの稼働率等の指標を設定し、同年10月以降にモニタリングを実施したとしている。

エ 政府情報システムに係る目標の達成状況

設定された目標の達成状況について、直近のモニタリングが実施された際に、当該時点における各指標の目標値に対する実績値により目標をどの程度達成していたかを確認したところ、図表3-32のとおり、目標を達成していると評価されていたものは、業務効果に関する指標で37件(88.0%)、情報システム効果に関する指標で74件(98.6%)などとなっていて、指標全体で117件(95.1%)となっていた。

h-3-32図表3-32 指標の目標値に対する達成状況

図表3-32 指標の目標値に対する達成状況

(単位:件、%)
指標の区分 定量的な指標数  
うち、モニタリングを行っている指標数 (A)  
うち、直近のモニタリングが実施された際に、当該時点における各指標の目標値に対する実績値により目標を達成していると評価されていた指標の数 (B) モニタリングを行っている指標数に占める左の割合 (B)/(A)
業務効果に関する指標 77 42 37 88.0
情報システム効果に関する指標 102 75 74 98.6
その他の指標 7 6 6 100.0
186 123 117 95.1

以上のように、各府省等において、プロジェクト計画書等を作成していなかったり、適切な目標及び指標を設定していなかったり、実績値の取得方法等をプロジェクト管理要領に明記しておらずモニタリングを実施していなかったりしている状況が見受けられた。

したがって、政府情報システムの利用状況及び効果の発現状況を把握するために、各府省等において、プロジェクト計画書等を作成して適切な目標及び指標を設定し、目標値に対する実績値の取得方法等を十分に検討してプロジェクト管理要領に明記するとともに、適切にモニタリングを行い、目標の達成に向けた継続的な改善に取り組んでいくことが必要である。

4 政府情報システム全体の効率化及びコスト削減に向けた取組状況

政府は、デジタル社会に向けた電子行政の目指す方向性を示すために、平成29年5月にデジタル・ガバメント推進方針を策定した。そして、同推進方針を具体化するための計画として、30年1月にデジタル・ガバメント実行計画が策定され、令和2年12月までに3回改定された(平成30年1月時点のデジタル・ガバメント実行計画の概要については、別図表4-1参照)。

30年1月時点のデジタル・ガバメント実行計画に掲げられた施策のうち政府情報システムの効率化及びコスト削減に関連がある主な取組並びに政府情報システムに関する改革に向けた取組の実施状況について検査したところ、次のとおりとなっていた。

(1) 政府共通PFの整備及び運用の状況

政府共通PFは、各府省等が業務及びシステムごとに整備して運用している政府情報システムの段階的な統合・集約化を図るための情報システム基盤として、25年3月に運用開始されており、23年11月に策定された政府共通プラットフォーム整備計画によれば、政府共通PF等の整備により見込まれる効果として、ITリソースの効率的配分によるシステム運用コストの抑制、情報セキュリティ対策を底上げするなどの政府情報システムの質の向上等があるとされている。そこで、第一期政府共通PFへの移行状況及びITリソースの配分状況等をみたところ、次のような状況となっていた。

ア 第一期政府共通PFへの移行状況等
(ア) 第一期政府共通PFへ移行した政府情報システムの実績

第一期政府共通PFに統合して集約化する政府情報システム(以下「移行対象システム」という。)の数は、IT国家創造宣言に基づき27年3月に改定されたロードマップでは316システムとされていたが、その後、117システムが移行を取りやめる一方、16システムが移行対象に追加されて、29年12月に改定されたロードマップでは215システムとなっていた。そして、これら215システムについて令和3年度末までに移行を実施することとし、元年度末時点では、このうち144システムが移行の予定となっていた。これに対して、第一期政府共通PFに移行したシステム(以下「移行システム」という。)の実績は、図表4-1のとおり、最大となっていた平成30年度末においても102システム(注41)となっており、その後、令和元年度末までに8システムが第一期政府共通PFの利用を終了したため、元年度末時点において第一期政府共通PF上で運用している移行システムは94システムとなっていて、予定数を下回っていた。

(注41)
102システム   政府共通PFについては平成30年度末の102システムを対象として検査を行ったが、このうち6システムは30年度に予算を計上していないなどしており、政府情報システムに係る30年度予算の執行状況の検査の対象(765システム)に該当するのは96システムである(765システムの運用等経費計に対する96システムの割合等については、別図表4-2参照)。
h-4-1図表4-1 第一期政府共通PFの移行対象システム及び移行システム実績

図表4-1 第一期政府共通PFの移行対象システム及び移行システム実績

(単位:システム)
年度 移行対象システム 移行システム
実績(B)
差(B-A)
ロードマップ
(平成27年3月改定)
ロードマップ
(29年12月改定)(A)
平成24年度 2 2 6 4
25年度 9 9 16 7
26年度 23 23 28 5
27年度 51 50 56 6
28年度 122 79 89 10
29年度 188 94 100 6
30年度 260 115 102 △ 13
令和元年度 280 144 94 △ 50
2年度 301 176 未確定
3年度 316 215
  • 注(1) 移行対象システムは、ロードマップに記載された累計移行数見込みである。
  • 注(2) 移行システム実績は、各年度末時点で第一期政府共通PF上で運用している政府情報システムの数である。
  • 注(3) 令和2年度及び3年度の移行システム数は未確定のため、実績(B)及び差(B-A)は記載していない。

そこで、ロードマップ(平成27年3月改定)において移行対象システムとされていたがその後移行を取りやめたシステムに、移行対象システムとなっているが元年度末時点で移行が実現していないシステムを加えるなどした計225システム(注42)について、移行を取りやめた又は移行が実現していない理由を確認した。その結果、図表4-2のとおり、システム自体を廃止したためとしていたものが75システム(33.3%)、移行による経費削減効果が見込めなかったためとしていたものが47システム(20.8%)、第二期政府共通PFへの移行を検討予定のためとしていたものが31システム(13.7%)、クラウドサービスや各府省等が独自に整備した共通基盤(注43)を利用することとしたためとしていたものが23システム(10.2%)等となっていた。

(注42)
225システム   当初移行対象システムとされていた316システムのうち移行が取りやめとなっていた117システム及び移行対象システム215システムのうち移行が未実現となっている113システムの計230システムから、関連資料等が保存されていないなどの5システムを除いたもの
(注43)
各府省等が独自に整備した共通基盤   環境省データセンター(10システムを運用)、文部科学省プライベートクラウド(11システムを運用)等

図表4-2 第一期政府共通PFへの移行を取りやめた主な理由

図表4-2 第一期政府共通PFへの移行を取りやめた主な理由画像

(イ) 第一期政府共通PFの整備経費及び運用等経費の状況等

a 第一期政府共通PFの整備経費及び運用等経費の状況

第一期政府共通PFの平成30年度の整備経費及び運用等経費の合計は、図表4-3のとおり146億余円となっていた。この146億余円(注44)の経費の中には、本来の目的で利用されないまま30年度末に廃止されたセキュアゾーン(注45)に係る運用等経費5億余円が含まれていたり、外部接続環境提供サービス(注46)のうち本来の目的で利用されないまま令和2年度末に廃止された仮想PC機能(注47)に係る運用等経費(外部接続環境提供サービスに係る運用等経費5億余円のうちの一部)が含まれていたりするなど、本来の事業効果が発現していない機能に係る運用等経費が含まれていた。

また、第一期政府共通PFについて、総務省が行う基盤整備に係る整備経費の平成30年度までの累計額をみると、図表4-3のとおり、53億余円となっていた。令和元年度以降は新たな整備経費は見込まれていないが、老朽化した機器等の更改が必要となったことなどから、運用等経費は、平成24年度から令和2年度まで増加し続けていた。

(注44)
146億余円   政府共通PFの整備経費及び運用等経費に係る総務省の平成30年度支出済歳出額の総額は、第一期政府共通PF分の146億余円に第二期政府共通PF分及び特別会計分を加えると154億余円となっている。
(注45)
セキュアゾーン   日本年金機構の個人情報流出事件を踏まえ、平成28年度契約により整備されたインターネットから分離された環境のこと。セキュアゾーンを利用するシステムに提供する仮想PC機能等が整備されたが、本来の目的で利用されないまま30年度末に廃止された(平成30年度決算検査報告「本来の事業効果が発現せずに廃止されたセキュアゾーンの整備経緯等を踏まえて、今後の政府共通プラットフォームの整備等に際して、需要の把握、各府省との調整等を適時適切に行うための手続を明確にするよう是正改善の処置を求め、及び早急な対応が求められるなどの際にも、一元的な状況把握、プロジェクト管理等を行うこととするよう意見を表示したもの」及び令和元年度決算検査報告「政府共通プラットフォームにおけるセキュアゾーンの整備について」参照)。
(注46)
外部接続環境提供サービス   セキュアゾーンと同時期に整備されたもので、セキュアゾーンを利用しないシステムに提供する仮想PC機能及び利用者端末と第一期政府共通PFを接続するリモートVPN(仮想専用ネットワーク)のこと。なお、リモートVPNは令和2年7月時点での利用者数は2,987人となっているが、各府省等のLANにおいてリモート接続機能の整備が個別に進むなどしていることから、第一期政府共通PFにおいて政府共通の接続機能として運用する必要性は低くなってきており、2年度末に廃止された。
(注47)
仮想PC機能   仮想PC機能は本来の目的で利用されていなかったが、仮想PCにアクセスするためのハードウェアトークン(職員認証用のパスワードを一定間隔で生成して表示するキーホルダー型の機器)の一部は、リモートVPNに接続するためのハードウェアトークンとして利用されていた。
h-4-3図表4-3 第一期政府共通PFについて総務省が負担する整備経費等の状況(平成24年度~令和3年度)

図表4-3 第一期政府共通PFについて総務省が負担する整備経費等の状況(平成24年度~令和3年度)

(単位:システム、千円)
年度 移行対象システム 移行システム
実績
第一期政府共通PFの経費
(令和元年度までは執行額、2年度及び3年度は予算額)
整備経費 運用等経費
平成24年度 2 6 10,500 235,590 246,090
25年度 9 16 23,232 2,666,798 2,690,031
26年度 23 28 1,506,895 4,879,750 6,386,646
27年度 50 56 737,027 6,996,667 7,733,695
28年度 79 89 2,854,081 8,862,061 11,716,142
29年度 94 100 30,240 11,946,108 11,976,348
30年度 115 102 195,372 14,498,054 14,693,426
令和元年度 144 94 - 17,424,182 17,424,182
2年度 176 未確定 - 21,067,613 21,067,613
3年度 215 - 20,681,637 20,681,637
5,357,348 109,258,463 114,615,811
  • 注(1) 総務省の支出済歳出額のうち第二期政府共通PF分及び特別会計分を除いて集計した。
  • 注(2) 移行対象システム数は、平成24年度から26年度まではロードマップ(平成27年3月改定)、27年度以降はロードマップ(平成29年12月改定)による。

b 移行システムに係る運用等経費の低減状況

第一期政府共通PFに係る運用等経費は、各府省等が負担する政府情報システムの府省運用等経費(注48)及びPF運用等分担経費(注49)並びに総務省が負担するPF運用等共通経費(注50)の合計となる(以下、これらを合わせて「PF府省運用等経費」という。)。28年報告では、第一期政府共通PFへの移行後、各府省等が負担する府省運用等経費及びPF運用分担経費は削減されているが、総務省が負担するPF運用等共通経費分の内訳額は算出されておらず、これを含めた全体のPF府省運用等経費の低減が図られているとは判断できない状況となっていることを記述している。平成30年度においても、PF運用等共通経費は原則として総務省が負担する経費とされており、システムごとの内訳は算出されていないことから、28年報告と同様に、第一期政府共通PFへの移行後、総務省負担分を含めた全体のPF府省運用等経費の低減が図られているかどうかは判断できない状況となっていた。

そこで、移行システムのうち、移行前の経費等が確認できた77システムについて、移行前後の各府省等が負担する運用等経費を比較したところ、図表4-4のとおり、移行前の年度が69億3935万余円であったのに対して、移行後の30年度は67億7930万余円、削減額は1億6004万余円となっており、削減率は2.3%にとどまる状況となっていた。上記のとおり、移行後は一部の経費が総務省の負担となる仕組みとなっていることを踏まえてもなお、このような削減率にとどまっている原因としては、第一期政府共通PFへの移行に当たり、各府省等のニーズにより、業務量増加を見込んだり、システムの安定稼働を重視したりしたことから、移行後のITリソースを増やすなどした結果、運用等経費が増加したことなどが考えられる。

(注48)
府省運用等経費   移行システムの業務アプリケーションソフトウェア等に係る運用・保守等のための経費。これらの経費については、移行前と同様に移行システムの担当府省等がシステム運用保守業者等と運用・保守契約等を締結するなどして行っていることから、担当府省等が負担している。
(注49)
PF運用等分担経費   第一期政府共通PFに係る運用等経費のうち、移行システムが利用する環境やITリソースの規模等に応じて移行システムごとに個別に要する経費。これらの経費については、各府省等が受益者負担の観点から負担している。
(注50)
PF運用等共通経費   第一期政府共通PFを利用する全ての移行対象システムに共通的に要する管理、企画等の運用等経費。これらの経費については、新規構築システム等を除き、原則として、総務省が負担している。なお、第二期政府共通PFでは、原則として、各府省等が負担することとなっている。
h-4-4図表4-4 運用等経費の規模別にみた第一期政府共通PFへの移行前後における各府省等が負担する運用等経費の状況

図表4-4 運用等経費の規模別にみた第一期政府共通PFへの移行前後における各府省等が負担する運用等経費の状況

(単位:システム、千円、%)
平成30年度
運用等経費
システム数 移行前の年度の運用等経費(23~29年度のいずれか)(A) 移行後の年度の運用等経費(30年度) 増減額
(B-A)
増減率
((B-A)/A)
府省運用等経費 PF運用等分担経費 計(B)
1億円以上10億円未満 12 5,330,276 3,565,437 1,646,823 5,212,260 △ 118,016 △ 2.2
1000万円以上1億円未満 39 1,496,715 959,033 505,771 1,464,804 △ 31,910 △ 2.1
1000万円未満 26 112,360 55,822 46,419 102,241 △ 10,119 △ 9.0
77 6,939,351 4,580,292 2,199,013 6,779,305 △ 160,045 △ 2.3

平成27年度政府情報システム投資計画(注51)においては、総務省が行う第一期政府共通PFの基盤整備に88億円、各府省等の第一期政府共通PFへのシステム移行に309億円、計397億円の総投資額(注52)が見込まれていた。そして、総務省は、各府省等の移行対象システムの年間運用経費が削減されること、ライフサイクル到来時に移行対象システムを更新するためのハードウェア・ソフトウェアの経費が政府共通PFにおいて一括して支払われることにより削減されることなどを理由として、全体で64億円(令和4年度の単年度の額)の経費削減が見込まれるなどとしていた。また、その結果、発現する経費削減効果の累積額は、6年度に総投資額397億円を上回る予定としていた。

(注51)
平成27年度政府情報システム投資計画   ロードマップ(平成27年3月改定)に基づき策定された中期的なシステム投資計画
(注52)
総投資額   平成23年度から33年度(令和3年度)までの政府共通PFに係る総投資額

一方、デジタル・ガバメント実行計画(令和元年12月改定)によると、第一期政府共通PFについては、遅くとも5年度までに運用を終了し、第二期政府共通PFへ更改することとしている。そして、更改に当たっては、これまでの運用実績を踏まえて改めて現状分析及び見直しを実施して第二期政府共通PFの構築を行うこととしたため、第一期政府共通PFの投資計画における効果の見込額については更新しないこととなった。また、平成29年度以降、第一期政府共通PFの投資計画は策定されておらず、各府省等のシステム移行の投資額等の状況は把握されていないことから、現状分析等は比較可能な運用等経費の分析にとどまり、政府全体での第一期政府共通PFの投資対効果及び経費削減効果の発現状況について、現時点まで十分に検証が行われていない状況となっている。

このように、第一期政府共通PFについては、第一期政府共通PFへの移行に当たりITリソースを増やすなどしたため運用等経費が増加したことも考えられるものの、整備を行ったセキュアゾーンや仮想PC機能について本来の事業効果を発現しておらず、経費の増大を招くなどしていた。また、政府情報システムの統合・集約化によるシステム運用コストの低減が図られているとは判断できない状況となっていたり、政府全体での投資対効果及び経費削減効果の検証等が十分に行われていなかったりしていた。

(ウ) ITリソース規模の最適化等への取組

a サーバ台数等の増減の状況

23年11月に策定された政府共通プラットフォーム整備計画によれば、政府共通PFの整備により、ITリソースの効率的配分によるシステム運用コストの抑制等の効果が見込まれるとされていた。この点について、会計検査院は、28年報告において、サーバの台数の削減については効果が見受けられなかった旨を記述している。そこで、移行システムのうち、移行前のITリソース関連資料等が確認できた72システムについて、各システムが利用しているITリソースを政府共通PF移行前後のサーバ台数等の増減の状況により比較したところ、図表4-5のとおり、第一期政府共通PF全体として、メモリ総量が8.3%増加しているものの、CPUコア(注53)数及びストレージ総量は、移行前と比較してそれぞれ24.8%及び19.6%減少しており、これらのITリソースについては、配分の効率化が図られていると認められた。

(注53)
CPUコア   CPUを構成し、実際に演算処理を行う部分のこと。コアの数により性能に差が生ずることになる。
h-4-5図表4-5 サーバ台数等の増減

図表4-5 サーバ台数等の増減

(単位:台、コア、GB(ギガバイト)、%)
項目 移行前(A) 移行後(B) 増減(B-A)  
増減率
((B-A)/A)
サーバ台数 428 390 △ 38 △ 8.8
CPUコア数 2,205 1,657 △ 548 △ 24.8
サーバのメモリ総量 5,043 5,466 423 8.3
サーバのストレージ総量 327,241 262,944 △ 64,297 △ 19.6

b CPUコア数の割当状況

28年報告では、第一期政府共通PFにおいて、システム構築ニーズへの柔軟な対応が行われず、仮想化技術によるCPU共有を行っている割合が少ないため、サーバのCPU使用率が低いことを記述している。

第一期政府共通PF上で運用される政府情報システムには、物理的な存在としてのサーバをそのまま利用する運用形態と、サーバの機能を論理的に分割して、1台の物理的なサーバの中に複数のサーバ(仮想化(注54)されたサーバ)が入っているように利用する運用形態とがある(以下、前者の運用形態におけるサーバを「物理提供サーバ」、後者の運用形態において仮想化されたサーバを提供するサーバを「仮想化提供サーバ」という。)。

(注54)
仮想化   ITリソース及びそれらの組合せを、物理的構成によらず論理的に分割したり統合したりする技術(参考図参照

(参考図) 仮想化されたサーバのイメージ

(参考図) 仮想化されたサーバのイメージ画像

物理提供サーバ及び仮想化提供サーバのいずれにおいても、物理的な存在としてのサーバには複数個のCPUコアが実装されている(以下、物理的な存在としてのサーバに実装されているCPUコア数を「物理CPUコア数」という。)が、仮想化提供サーバにおいては、物理CPUコア数より多くのCPUコア数を仮想化により設定し(以下、仮想化により設定されたCPUコア数を「仮想CPUコア数」という。)、システムの利用に割り当てることにより、ITリソースの効率的な利用を実現することができるとされている。

そこで、仮想化提供サーバにおいて、実際のシステムの運用に利用されている割当て済みの仮想CPUコア数の状況をみたところ、図表4-6のとおり、28年8月には2,276コアであったが、令和2年2月には6,599コアに増加していた。また、物理CPUコア数に対する、割当て済みの仮想CPUコア数の割合は、平成28年8月には89.4%であったが、令和2年2月には115.3%に増加していた。

h-4-6図表4-6 割当て済み又は未割当ての仮想CPUコア数の状況

図表4-6 割当て済み又は未割当ての仮想CPUコア数の状況

(単位:コア、%)
CPUコアの割当状況 平成28年8月 令和2年2月
物理CPUコア数(A) 2,544 5,720
仮想CPUコア数 4,558 12,950
利用されている割当て済みの仮想CPUコア数(B) 2,276 6,599
利用されていない未割当ての仮想CPUコア数 2,282 6,351
物理CPUコア数に対する割当て済みの仮想CPUコア数の割合(B/A) 89.4 115.3

そして、仮想化提供サーバごとの仮想CPUコア数の割当ての状況をみたところ、仮想的に100%以上のコア数を割り当てているサーバ台数の全仮想化提供サーバ台数(注55)に対する割合は、平成28年8月には46.8%であったが、令和2年2月には59.8%に増加するなどしていた(仮想化提供サーバごとの仮想CPUコア数の割当ての状況については、別図表4-3参照)。

(注55)
全仮想化提供サーバ台数   予備用のものなどを除く301台を対象とした。301台のほかに、予備等の仮想化提供サーバ83台が設置されているが、これらは、障害発生時等に使用するサーバであり、平常時には利用されず、仮想CPUコアは未割当てとなっていることから、対象外とした。このほか、各府省LAN端末等から第一期政府共通PFのサーバ等へ接続するための仮想化提供サーバ29台については、令和2年10月時点で同年2月のデータが確認できなかったため、対象から除外している。

このように、総務省においては、28年報告等を踏まえて、仮想化技術の機能を強化し、1台の物理的なサーバから利用可能な仮想化されたサーバの台数を増やすなどの改善が一定程度図られている。

一方、仮想化提供サーバにおいて、実際のシステムの運用に利用されていない未割当ての仮想CPUコア数が、図表4-6のとおり、同月時点で、全12,950コアの約半数となる6,351コアある状況が見受けられた。このような状況が生じていたのは、第一期政府共通PFのITリソースが、システムの冗長性を高める(注56)などのために、複数の拠点やネットワークグループに分割されたり、信頼性等の要件に応じて複数のサーバ構成パターンに分割されたりした結果、分割後に余ったITリソースを活用できないことなどによると考えられる。

(注56)
冗長性を高める   システムの一部に何らかの障害が発生した場合に備えて、障害発生後でもシステム全体の機能を維持し続けられるように、予備装置を平常時からバックアップとして配置したり、災害発生等に備えて平常時の運用拠点とは異なる場所に予備装置を配置したりすること

c 各システムへ割り当てられたITリソースの使用率の状況

移行システムのうち、ITリソース使用率等が確認できた86システムについて、サーバのCPU等のITリソースの使用率をみたところ、図表4-7のとおり、CPUの月別平均使用率が30%未満のシステムが79システムあり、全体の91.8%を占めていた。また、ストレージの月別平均使用率が30%未満のシステムが31システムあり、全体の36.9%を占めるなど、移行後のITリソースが割当て分に対して十分に活用されていないシステムが見受けられた。

h-4-7図表4-7 第一期政府共通PFへ移行した政府情報システムのITリソース使用率(平成30年度)

図表4-7 第一期政府共通PFへ移行した政府情報システムのITリソース使用率(平成30年度)

(単位:システム、%)
使用率 月別平均使用率の年間最大値 年間平均使用率
CPU メモリ ストレージ CPU
システム数 割合 システム数 割合 システム数 割合 システム数 割合
90%以上100%以下 1 1.1 28 32.5 1 1.1 0 0.0
80%以上90%未満 1 1.1 7 8.1 6 7.1 0 0.0
70%以上80%未満 0 0.0 12 13.9 8 9.5 0 0.0
60%以上70%未満 0 0.0 3 3.4 5 5.9 1 1.1
50%以上60%未満 1 1.1 1 1.1 8 9.5 1 1.1
40%以上50%未満 1 1.1 8 9.3 12 14.2 2 2.3
30%以上40%未満 3 3.4 14 16.2 13 15.4 1 1.1
20%以上30%未満 10 11.6 4 4.6 18 21.4 4 4.6
10%以上20%未満 16 18.6 6 6.9 9 10.7 12 13.9
0%以上10%未満 53 61.6 3 3.4 4 4.7 65 75.5
86 100.0 86 100.0 84 100.0 86 100.0
  0%以上50%未満 83 96.5 35 40.6 56 66.6 84 97.6
0%以上30%未満 79 91.8 13 15.1 31 36.9 81 94.1
  • 注(1) 移行システムの主なサーバに係る月別平均使用率の年間最大値、同使用率の年間平均を記載した。なお、第一期政府共通PFのITリソース最適化案算出等においては、リソースの最大使用率は、ウイルススキャンや修正プログラム(パッチ)適用などで一時的に高負荷がかかる使用率が含まれ、正しいリソースの評価ができない可能性があるため使用されず、平均使用率が使用されていることを踏まえて、本図表においても平均使用率を使用している。
  • 注(2) ストレージ使用率は、86システムのうち、ストレージの使用率の確認ができた84システムについて記載している。

第一期政府共通PFにおいては、移行システムを稼働させるための上記サーバのほか、それらの運用管理、ログ管理、ウイルス対策等を行うための運用管理サーバ等が、平成29年度末時点(注57)で843台設置されている。これらサーバのCPU等のITリソースの使用率をみたところ、約半数の413台について、CPUの使用率が30%未満となっているなど、仮想化提供サーバと同様にITリソースが十分に活用されていないサーバが見受けられた(運用管理サーバ等のITリソース使用率については、別図表4-4参照)。

(注57)
平成29年度末時点   運用管理サーバ等の台数及びITリソース使用率については、平成30年度のデータが確認できなかったため、29年度末時点を対象とした。
(エ) リスク評価、システム監査及び情報セキュリティ対策の実施状況

政府共通プラットフォーム整備計画によれば、政府共通PFの整備により、情報セキュリティ対策の底上げなどの効果が見込まれるとされている。そこで、情報セキュリティ要件を定義する際の各府省等におけるリスク評価の実施状況、ログの解析により不正アクセス等を確認するなどの情報セキュリティリスクの評価の実施状況及びシステム監査の実施状況をみたところ、いずれの実施状況も、28年報告における状況と比較して改善が図られていた(リスク評価、ログ解析及びシステム監査の実施状況については、別図表4-54-6及び4-7参照)。

また、28年報告の所見では、総務省において、各府省等が実施したシステム監査結果等の共有が図られるよう検討することなどについて記述している。この所見に対する対応状況をみたところ、総務省は、各府省等で監査を行った結果、第一期政府共通PFで対処が必要となる指摘が含まれている場合にはその内容を共有するよう各府省等へ依頼を行い、総務省が令和元年5月に開催した「政府共通プラットフォーム・政府共通ネットワークワーキンググループ(第25回)」等の関係会議においてシステム監査結果等を共有するよう周知を行うなどしていた。

なお、情報セキュリティ対策について、第一期政府共通PFが提供するセキュリティ関連サービスの利用状況をみたところ、移行システムのうち約9割のシステムはサーバウイルス対策機能のサービスを利用し、残りの約1割は独自の対策を講じているなどの状況が見受けられた(第一期政府共通PFが提供するセキュリティ関連サービスの利用状況については、別図表4-8参照)。

イ 第二期政府共通PFの整備状況等
(ア) 第二期政府共通PFの整備状況

第二期政府共通PFは、「政府共通プラットフォーム第二期整備計画(注58)」(以下「第二期整備計画」という。)に基づいて、クラウドサービスを活用した新たな政府のプラットフォームとして整備されている。第二期整備計画によると、第二期政府共通PFは、基本的な取組として、ITリソースの効率的利用による政府情報システムの整備及び運用の効率化や、セキュリティ対策の充実・強化、可用性・信頼性の向上等の政府情報システムの質の向上を図り、政府のITガバナンスを支える基盤としての役割を果たすこととなっている。第二期政府共通PFは、2年9月末に設計及び開発の工程を終了し、同年10月に運用開始されている。

第一期政府共通PFでは、データセンター等の施設やサーバ等を一元的に調達して共有化していたが、第二期政府共通PFでは、サーバ等を所有せず、クラウドサービスを活用することとなっている。そして、第二期整備計画によると、第二期政府共通PFでは、移行システムが標準化され、及び共通化されたサービスを利用することを前提に、第一期政府共通PFの水準に比べ、政府共通PFのサービス提供に必要な年間運用等経費について5割を超える削減を目指すこととなっている。

(注58)
政府共通プラットフォーム第二期整備計画   「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」(平成30年6月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)における、クラウドサービスの利用をデフォルト(第一候補)とするクラウド・バイ・デフォルト原則等を踏まえて、平成30年度から令和5年度までを計画対象期間として策定された整備計画(平成31年2月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定。令和2年9月改定)
(イ) 第二期政府共通PFの調達の課題

第二期政府共通PFが利用するクラウドサービスは、一般競争入札(総合評価落札方式)により調達されており、3者から入札(注59)があり、2年6月に落札者が決定された。

IT総合戦略室及び総務省によると、クラウドサービス事業者からクラウドサービスの提供を受けるための契約については、クラウドサービス事業者が求める契約形態が準委任契約(注60)であったり、契約終了時期(注61)が記載されなかったりしているといった課題があるとしている。このため、国がクラウドサービス事業者と直接契約を締結するに当たってはより一層の調整が必要であるとして、2年度においては、国が中間事業者(落札者)と契約を行い、この中間事業者を介してサービスの提供を受けるという間接的な請負契約が採用されている。この請負契約においては、クラウドサービスの従量課金に対応した単価契約が採用されている。また、第二期政府共通PFの調達仕様書においては、契約更新等に伴いクラウドサービス事業者を変更する場合の対策として、業務継続のための手段が用意されていること及びクラウドサービスから転出するための移行方法が存在することを求めている。

(注59)
第二期政府共通PFの設計及び開発は、設計開発事業者により提案されたクラウドサービスを前提に行われていた。本件の入札においては、提案者の創意工夫により上記以外のクラウドサービスを活用した代替提案を行うことも可能としていたが、代替提案を行った入札者はいなかった。
(注60)
準委任契約   当事者の一方が法律行為でない事務処理を相手方に委託し、相手方がこれを承諾する契約のことで、相手方は一定の事務を処理すれば足り、請負契約のように仕事の完成を約束するものではない。IT総合戦略室及び総務省は、国におけるクラウドサービスの契約は、システム構築や運用役務とセットで実施している請負契約の形態が多くなるものと考えられ、準委任契約を締結するに当たっては、そのひな形の検討及び整理等、より一層の調整が必要であるとしている。
(注61)
契約終了時期   クラウドサービス事業者が示している契約書のひな形には、契約終了時期の記載がないものがある。一方、現状の政府IT調達の考え方は、契約書において契約期間を設定するものとされている。

なお、「第二期政府共通プラットフォームにおけるクラウドサービス調達とその契約に係る報告書」(令和2年8月内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室及び総務省公表)によると、コスト削減等に向けたクラウドサービス事業者との直接契約の可否、準委任契約の在り方、単価契約の適正化等については、今後も検討を行うこととなっている。

標準ガイドラインによれば、PJMOは、ベンダーロックインの解消等による調達コストの削減、透明性向上等を図るために、市場において容易に取得できるオープンな標準的技術又は製品を用いることとされている。政府調達の候補となるクラウドサービスは複数あり、それらのクラウドサービスについて政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(注62)が運用されることとなっている。前記のとおり、第二期政府共通PFでは、特定の事業者が提供するクラウドサービスを利用することになるが、結果として特定のサービス、システム等に依存することにならないよう、今後の状況を踏まえつつ、引き続き取り組むことが重要である。

(注62)
政府情報システムのためのセキュリティ評価制度   「政府情報システムにおけるクラウドサービスのセキュリティ評価制度の基本的枠組みについて」(令和2年1月サイバーセキュリティ戦略本部決定)において決定された基本的枠組みなどに基づき、令和2年5月に運用が開始された制度

したがって、IT総合戦略室及び総務省は、第一期政府共通PFの運用状況の分析や見直しなどの実績を十分に踏まえて第二期政府共通PFの整備及び運用を行うことなどにより、引き続き政府情報システムの効率化及びコスト削減を推進する必要がある。

(2) IT総合戦略室及び総務省による運用等経費の削減に関する取組の状況

ア 政府情報システムの運用等経費の削減状況等
(ア) 運用等経費の削減対象となる政府情報システムの範囲、削減額の算定の基礎となる削減基準額等

政府は、平成24年度に実施した情報システム棚卸調査の結果により把握した約1,500システムのうち同年度末までに廃止されたものを除くなどした1,363システムを運用等経費の削減対象となる政府情報システムの基礎とし、これらに係る25年度の情報システム関係予算額から整備経費等を除いた運用等経費約4000億円を基準額(以下「削減基準額」という。)として、その3割に当たる約1200億円を8年後である令和3年度までに削減することを目標としている。

また、新規に整備された政府情報システム、第一期政府共通PF本体、第一期政府共通PFへ移行した政府情報システム(一部の機能を第一期政府共通PFに移行した政府情報システムについては、移行した部分)等は、この取組とは別に運用等経費の削減額の算定を実施していることなどから、運用等経費の削減対象となる政府情報システムから除外するとされている(注63)

そして、制度改正等により業務要件が変更された場合又は消費税率及び地方消費税率の変更により運用等経費が増加した場合には、当該増加分(以下「制度改正等増分経費」という。)を可能な限り除外した上で運用等経費の削減対象となる政府情報システムの運用等経費の削減額を算定することとなっている(注64)図表4-8参照)。

このように、運用等経費の削減対象となる政府情報システムに係る削減額については、算定する年度の予算額又は予算執行額から制度改正等増分経費等を控除した額を算出し、当該額と削減基準額との差を求めることにより算定することとなっているため、削減額の算定においては、制度改正等増分経費等を適切に算定することが必要となる。

図表4-8 運用等経費の3割削減の概念図

図表4-8 運用等経費の3割削減の概念図画像

そこで、制度改正等増分経費の算出方法について、IT総合戦略室に確認したところ、IT総合戦略室が制度改正等増分経費の算出例を提示して、各府省等でそれぞれの判断において算出しているとしていた。

(注63)
「政府情報システムに係るコスト削減計画の作成について」(平成26年7月内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室及び総務省行政管理局作成)による。
(注64)
プラットフォーム改革記載要領(内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室及び総務省行政管理局作成)による。
(イ) 政府情報システムの運用等経費の削減状況

各府省等は、プラットフォーム改革記載要領等に基づき、平成25年度における削減対象システムの運用等経費額を基礎とするなどして算定した削減基準額並びに同年度以降の各年度における削減見込額及び削減実績額をIT総合戦略室へ毎年報告しており、IT総合戦略室は、各府省等から報告された削減見込額及び削減実績額を取りまとめている。そして、運用等経費の削減額をIT総合戦略室へ報告している21省庁(注65)について、報告された政府情報システムに係る運用等経費の削減状況をみたところ、30年度の削減実績額は837億余円と、削減目標額1200億円に対して69.7%の割合となっていた。

そこで、その取りまとめ状況等について確認したところ、IT総合戦略室は、25年度から28年度までの分について各政府情報システムの制度改正等増分経費の内訳が確認できる様式により削減実績額の報告を受けていた。しかし、IT総合戦略室は、報告された削減実績額の妥当性を確認することについては、標準ガイドライン等に規定されていないことなどから、行っていないとしていた。

また、IT総合戦略室は、29年度分以降の削減実績額については、報告の様式を変更したため、各政府情報システムの制度改正等増分経費の内訳を把握していなかった。

なお、運用等経費の削減対象となっている政府情報システムについて、各府省等に確認したところ、認識の誤りにより制度改正等増分経費を算出していないなどの事態も見受けられた。

(注65)
21省庁   内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、金融庁、消費者庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省

そして、運用等経費の削減対象となっていない政府情報システム等の運用等経費を含む政府情報システム全体の運用等経費に係る予算額をみると、図表4-9のとおり、30年度から令和2年度にかけて増加傾向となっていた。

図表4-9 運用等経費の削減状況等の推移(平成30年度~令和3年度)

図表4-9 運用等経費の削減状況等の推移(平成30年度~令和3年度)画像

また、運用等経費の削減対象となっている政府情報システムのみについて2年度予算額を集計すると、図表4-10のとおり、3863億余円となり、削減基準額である4000億円との差は136億余円(削減目標額に対する割合11.3%)となっており、2年度の削減見込額としている1028億余円(同85.7%)と相当の開差が見受けられる状況となっていた。

このような開差は、削減見込額の算定時に可能な限り除外することとされている制度改正等増分経費が影響していることによると思料される。

h-4-10図表4-10 運用等経費の削減対象となっている政府情報システムの予算額の状況(令和元年度~3年度)

図表4-10 運用等経費の削減対象となっている政府情報システムの予算額の状況(令和元年度~3年度)

(単位:億円、%)
区分
年度
削減基準額
(A)
削減目標額
(B=A×0.3)
削減見込額
(C)
  予算額の合計
(D)
(試算)
削減基準額から予算額の合計を控除した額
 
削減目標額に対
する割合
(試算)
削減目標額に対
する割合
(C/B) (E=A-D) (E/B)
令和元年度 4,000 1,200 861 71.7 3,844 155 12.9
2年度 1,028 85.7 3,863 136 11.3
3年度 1,152 96.0      
  • 注(1) 「削減基準額」及び「削減見込額」は、各府省等が中長期計画において運用等経費の削減対象とした各政府情報システムに係る各金額の合計である。
  • 注(2) 「予算額の合計」は、各府省等が中長期計画において運用等経費の削減対象とした各政府情報システムの予算額の合計である。

したがって、IT総合戦略室は、政府情報システムに係る運用等経費の削減実績額の算定について、削減実績額が大きい政府情報システムの制度改正等増分経費等が適正であるかなどの検証を行うとともに、削減実績額の算定に当たっての方法等を各府省等と共有するなどして適正な削減実績額の算定に努める必要がある。

(ウ) 一元的プロジェクト管理強化方針において定められた運用等経費の削減に関する取組方針

前記のとおり、政府は、平成25年度を基準とし、8年後である令和3年度までに運用等経費の3割削減が達成される見込みであるとして、一元的プロジェクト管理強化方針において、新たな目標として2年度時点での政府情報システムの運用等経費に加えて、整備経費のうちシステム改修に係る経費を削減目標の対象とし、7年度までの5年間でこれらを3割削減することを目指すこととしている。そして、IT総合戦略室は、新たな削減目標における削減基準額等の考え方について、今後各府省等に示す予定であるとしており、第一期政府共通PF及び第二期政府共通PFに移行した政府情報システム等を削減目標の対象外とするかどうかについては検討中であるとしている。

また、新たな目標において、整備経費のうちシステム改修に係る経費を削減対象に加えた理由について、IT総合戦略室は、システム改修に係る経費は、各府省等の判断で運用等経費にも整備経費にも計上される場合があることなどから、運用等経費に含まれるシステム改修に係る経費のみが削減目標の対象となっていた状況を改めるためであるとしている。そして、新たな削減目標において3割削減を目指すこととしたことについては、現行の削減目標が3年度までに達成される見込みであることから、引き続き3割削減を目標として設定したとしている。

イ ITダッシュボードによる運用等経費の削減状況の公表

ITダッシュボードは、前記のとおり、各府省等のIT投資の状況等をインターネット経由で国民が確認できる仕組みとして、平成26年7月から公開されており、公表される情報の中には、年度ごとの政府情報システムの数や運用等経費の削減実績も含まれていて、これにより政府がIT国家創造宣言に掲げた削減目標の達成状況を国民に公表することになっている。

そこで、政府情報システムの運用等経費の削減状況の公表状況について、ITダッシュボードにおける公表状況をみたところ、30年4月から令和3年2月までの間に一度も更新していなかった。

このような公表状況となっている理由について、IT総合戦略室は、平成28年度末の集計を最後にロードマップが廃止されたためであるとしている。また、IT総合戦略室は、ITダッシュボードを令和3年度に政府CIOのポータルサイトと統合する予定であり、これに併せて他の公表値を用いて更新する予定であるとしている。

その後、IT総合戦略室は3年3月にITダッシュボードを更新したものの、その内容は、ウェブページ上に表示される運用等経費の削減実績の集計値等について平成28年度末現在の計数から30年度末現在の計数に更新したにとどまるものであり、当該更新時点では、ウェブページから別途ダウンロード機能により取得できるデータの集計値等は更新されていなかった。

前記のとおり、各府省等は、政府情報システムの運用等経費の削減状況をIT総合戦略室へ報告しており、新たな目標においても引き続き3割削減が目標として設定されている。

したがって、IT総合戦略室は、政府情報システムの運用等経費の削減状況を適時に公表して国民が確認できるようにする必要がある。

(3) 各府省等における中長期計画の履行のためのPMOの状況等

標準ガイドラインによれば、PMOは、中長期計画に係る施策の実施に当たって、その実施状況を常時把握するとともに、PJMO等と連携及び協力して、予算管理、執行管理、システム監査、情報資産管理等の機能を担うこととされており、各府省等のITガバナンスにおいて重要な位置付けを有するとされている。

そこで、PMOの体制及びPMOが担う機能の状況について確認したところ、次のとおりとなっていた。

ア PMOの体制の整備状況

各府省等におけるPMOの体制をみたところ、PMOは、各府省等の情報システム部門より構成され、PMOの業務を行っている各府省等の職員のうち、主にPMOの業務に従事している職員の人数は、1人から16人までと様々となっていた(各府省等におけるPMOの体制については、別図表4-9参照)。

イ 各府省等の政府情報システムに係る監査の実施状況

情報システムに係る監査は、システム監査と情報セキュリティ監査に大別される。

このうち、システム監査は、主に情報システムの整備又は運用管理のプロセスを対象としており、情報システムの調達が適切に実施されているか、運用に際して委託先の管理は適切に実施されているかなどを評価するものである。標準ガイドラインによれば、システム監査を計画し管理することは、府省等におけるITガバナンス及びITマネジメントの一環として位置付けられており、各府省等は、中長期計画等を適切かつ効率的に履行し、関連プロジェクト等の目標を達成するために、その整備又は管理を行う政府情報システムに存するリスクとその対応状況を客観的に評価し、問題点の指摘及び改善案の提示を行うシステム監査を実施することとされている。また、PMOは、各府省等内における政府情報システムに係るシステム監査を効率的に実施するために、システム監査計画に係る企画立案等に関する機能を担うこととされている。

なお、「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン実践ガイドブック」(内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室公表。令和2年3月改定)によれば、PMOは、経済産業省が策定及び公表した「システム監査基準」及び「システム管理基準」を参考にするなどして、適切な監査を行うこととされている。

一方、情報セキュリティ監査は、主に情報資産を対象としており、情報が外部に漏えいしたり、情報システムがウイルス等の外部からの攻撃により利用できなくなったりしないよう適切な対策が講じられているかなどを評価するものである。また、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(以下「NISC」という。)が策定した「政府機関等情報セキュリティ対策のための統一基準群(平成30年度版)」(以下「統一基準群」という。)によれば、情報セキュリティ対策の実効性を担保するために、独立性を有する者による情報セキュリティ監査を実施することが必要であるとされている。

そして、標準ガイドラインによれば、IT総合戦略室及び総務省は、少なくとも年1回、各府省等の協力を得て、標準ガイドラインの適用及び活用の状況を確認することとされているが、システム監査の実施状況等の確認は行われていなかった。一方、NISCは、内閣官房組織令(昭和32年政令第219号)第4条の2の規定に基づくマネジメント監査を、2か年で各府省等を一巡する頻度で実施しており、情報セキュリティ監査を含めた統一基準群に係る取組が有効に機能しているかなどを検証したり、改善のための必要な助言等を行ったりするなどしていた。

このように、システム監査と情報セキュリティ監査は、目的や対象が異なることを踏まえて、政府情報システムを所管する各府省等において、それぞれの監査について適切に実施していくことなどが重要である。

そこで、7省庁(注66)において、これらの監査の実施状況をPMOに確認したところ、情報セキュリティ監査は実施しているが、システム監査計画を策定していなかったり、システム監査を実施していなかったりしていて、ITガバナンス及びITマネジメントの面で適切でない事態が3省庁(注67)において見受けられた。その原因としては、PMO等の体制が十分ではなかったこと、情報セキュリティ監査とシステム監査の差異を明確に認識していなかったこと、システム監査はNISCのマネジメント監査のような取組状況の確認がないことから取組の優先度が低くなったことなどが考えられる。

(注66)
7省庁   内閣府、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省
(注67)
3省庁   内閣府、外務省、経済産業省

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例4-1> 情報セキュリティ監査は実施しているが、システム監査計画を策定していなかったもの

経済産業省においては、経済産業省情報セキュリティ管理規程(平成18年3月制定)、経済産業省情報セキュリティ対策基準(平成18年3月制定)等に基づき、同省及び特許庁が所管する39システム(令和2年9月時点)を対象として、おおむね4か年で一巡する頻度で情報セキュリティ監査の計画を策定し、情報セキュリティ監査を実施することとしている。

一方、システム監査について、同省は、これまで、予算要求前段階のレビュー、予算要求時段階のレビュー及び予算執行段階のレビュー(仕様書チェック等)を実施したり、一部のプロジェクトについては工程レビューを実施したりすることにより、所管システムに係るリスク等を評価していたが、同月時点で、システム監査計画は策定されていなかった。

したがって、各府省等は、PMOの体制強化を検討するなどして、システム監査等を適切に実施することが必要である。

(4) ODBによる政府情報システムの情報資産の管理状況

総務省は、25年度に運用を開始したODBについて、令和2年9月に運用を停止し、同年10月に廃止している。そこで、ODBの概要、ODBを活用した情報資産等の管理状況等についてみたところ、次のとおりとなっていた。

ア ODBの概要等

ODBは、各府省等が個別に情報システムを管理するだけにとどまらず、国が保有する情報システムに係る情報について、ITガバナンスの強化、重複投資を避けるなどの情報システムの合理化、情報システムの経費削減、ぜい弱な情報システムへの対処等、政府情報システム全体の情報を一元管理し、政府全体の効率化の推進に資するために、総務省が整備したシステムである。ODBの整備及び運用に要した経費は、平成24年度から令和2年度(10月末)までの約9年間で計5億2312万余円となっている。

標準ガイドライン(平成30年3月改定)によれば、各府省は、政府情報システムを整備するときは、当該システムをODBに登録して情報システムIDを取得しなければならないことなどとされていた。さらに、各府省は、政府情報システムに関する基本情報、担当組織、予算情報、調達情報、システム構成並びに運用及び保守情報等の登録を行うこととされていた。

イ ODBを活用した情報資産等の管理状況等

上記のように、平成30年3月に改定された標準ガイドラインにおいては、ODBへの情報の登録及びその利用が推進されていたが、31年2月に改定された標準ガイドラインによると、情報システムIDの取得及び工程レビュー(注68)の登録のみODBへの入力を必須とし、それ以外の予算情報等の登録については、PMOの指示に基づきODB以外の手法で管理することを妨げないこととなっていた。

そして、各府省等におけるODB以外の手法による情報資産の管理方法について令和元年度末時点の状況を確認したところ、ODBでのみ管理していた府省等が11省庁(注69)、ODB以外に政府情報システムの管理台帳等を作成するなどして管理していた府省等が10省庁(注70)となっており、管理台帳等が各府省等において別々に管理されるなどしていて、ODBによる政府情報システムに係る情報の一元管理は実施されていない状況となっていた。

(注68)
工程レビュー   PMOが指定するプロジェクト等について、IT総合戦略室及び総務省が定める手順に基づき、政府情報システムを整備する過程の各段階において評価を実施するもの
(注69)
11省庁   人事院、公正取引委員会、警察庁、消費者庁、総務省、法務省、外務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、環境省
(注70)
10省庁   内閣官房、内閣法制局、内閣府、宮内庁、個人情報保護委員会、金融庁、文部科学省、経済産業省、国土交通省、防衛省

総務省は、運用開始から7年を経過したODBの更改を行わずに、2年9月に運用を停止し、同年10月末に廃止している。そして、ODBの廃止後の政府情報システムの情報資産等の管理の在り方については、今後、デジタル・ガバメント技術検討会議(注71)の下に設置されたサブワーキンググループにおいて検討することになっている。

このため、具体的な在り方が定まるまでの間は、情報システムIDの管理等については、表計算ソフトウェアを用いた手作業により維持する予定としており、工程レビューについては、工程レビュー実施手順書を元年11月に改定して、ODBを用いない運用に切り替えるなどしている。

また、ODBの廃止後の統一的な政府情報システムの情報資産等の管理の方向性については、現時点で未定であるとしている。

したがって、IT総合戦略室及び総務省は、ODB廃止後の政府情報システムに係る情報資産等のより効率的かつ効果的な管理の在り方について、早急に検討し、結論を得ることが必要である。

(注71)
デジタル・ガバメント技術検討会議   デジタル・ガバメント推進方針を推進するに当たって、政府職員だけでは解決が困難な技術的、専門的な課題等について検討するため、政府CIO補佐官から構成され、CIO連絡会議の下に設置された会議

(5) 政府情報システムに関する改革に向けた政府の取組状況

政府は、社会経済活動全般のデジタル化を推進することが、我が国が抱えてきた多くの課題を解決して、今後の経済成長にも資するとともに、制度や政策、組織の在り方等を変革していくことが、新型コロナウイルス感染症への対応を契機として訪れた「新たな日常」の原動力となるとしている。そして、政府は、社会のデジタル化を強力に進めるために、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月閣議決定)を策定し、併せてデジタル・ガバメント実行計画を改定した。同基本方針においては、デジタル社会の目指すビジョン、デジタル社会を形成するための基本原則、IT基本法の見直しの考え方及びデジタル庁設置の考え方が示されている。これらのうち、政府情報システムに特に関連する内容については、次のように示されている。

ア IT基本法の見直しの考え方

IT基本法の施行後、IT基本法において重点とされていたインターネットなどの高度情報通信ネットワークの整備に加え、インターネットを通じて流通するデータを最大限に活用していくことが「あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展」の実現のために不可欠となっていること、新型コロナウイルス感染症への対応において、国及び地方公共団体のデジタル化の遅れや人材不足、不十分なシステム連携に伴う行政の非効率、煩雑な手続や給付の遅れが見受けられたことなどの課題に的確に対応し、社会のデジタル化を強力に進めるため、政府は、IT基本法の全面的な見直しを行うこととしている。

イ デジタル庁の設置の考え方

政府は、デジタル庁について、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するための司令塔として、各府省等に対する強力な総合調整権限(勧告権等)を有する組織とすることとしている。また、政府全体のシステムに関して企画立案、統括及び監理を行うこととし、3年度予算においては、情報システム関係予算(2年度予算では約8000億円)のうち一般会計分における約3000億円規模について、デジタル庁に一括して計上した後に、各府省等に配分して執行するなどの仕組みを構築することとしている。そして、このうち重要なシステムについては、デジタル庁自らが整備することとしている。これらを実現するために、デジタル庁を内閣直属の組織とし、あわせて、事務執行の機能を付与することとしている。

マイナンバー制度については、デジタル庁が企画立案を一元的に行う体制を構築することなどとするとともに、同庁において、情報連携の範囲を拡大させ、マイナポータルの使い勝手の向上を図ることとしている。

また、デジタル庁を含めた政府部門においてデジタル改革を牽引していく人材を確保するために、今後、人材の採用計画や育成のための考え方及び研修の充実・強化のための方策を新たに示すこととしている。このほか、3年度から、デジタル庁を中心に、各府省等において、情報工学系の区分等の国家公務員採用試験の合格者について積極的な採用に努めるとともに、民間企業等における実務経験を有する人材を確保する採用試験を活用するなどとしている。そして、これらのことにより、行政と民間の人材が効果的に連携して業務を進める組織文化を醸成することとしている。