会計検査院は、前記要請の外国人材の受入れに係る施策に関する各事項について、合規性、効率性、有効性等の観点から、①文部科学省及び法務省は、大学等や都道府県等に対して、外国人留学生の在籍管理について、どのような指導等を行っているか、出入国在留管理庁が在留の管理に用いている情報システムは有効に活用されているか、文部科学省等の補助事業に係る補助要件等において、大学等における在籍管理の状況が適切に考慮されているか、②技能実習機構は、実習実施者届出書の提出の督促及び行方不明事案に対する対応を適切に実施しているか、③外国人材の受入れに係る国の支援について、予算の執行状況はどのようになっているか、国の支援の一環として法務省、文部科学省及び厚生労働省が実施している補助事業や委託事業において、3省は、補助や委託を受けた事業主体等が行う事業の実施状況等を適切に把握しているかなどに着眼して検査を実施した。
検査の結果の主な内容は、次のとおりである。
検査対象大学等における「受入れに関する届出」の提出状況についてみると、元年度では5校において全く提出されていなかった。また、電子届出システムの利用状況についてみると、検査対象大学等から「受入れに関する届出」を全く提出していなかった5校を除いた26校において、元年度に電子届出システムを利用して「受入れに関する届出」を提出していたのは2校と少ない状況となっていた(NUM3-4-iリンク参照)。
経常費補助金の交付状況についてみると、私学事業団が交付した経常費補助金の交付先には、各大学等の不法残留者や在留資格「留学」の在留期間更新許可申請が不許可となった者の状況等により、1年に一度在留状況を確認する必要があるなどと判断して出入国在留管理庁が慎重審査対象校とした大学が含まれており、これらに対して平成29年度及び令和元年度に、経常費補助金を減額することなく交付していた(NUM3-4-uリンク参照)。
実習実施者届出書の提出等の状況についてみると、全体の62.9%は、実習実施者が実際に技能実習を開始した日から1か月以内に技能実習機構が実習実施者届出書を受理していたが、全体の8.8%は、3か月を超えてから受理されていた。そして、技能実習機構は、技能実習生が実際に入国しているかなどを把握できないため、業務システムに集約している技能実習計画等に関する情報を活用して、技能実習を開始しているのに実習実施者届出書を提出していないおそれのある実習実施者を把握して督促することは行っていないとしている。しかし、技能実習機構は、基本的に1か月分の入国情報について出入国在留管理庁から毎月提供を受けているとしていることから、入国情報の提供を受けた時点で、技能実習計画等に関する情報と入国情報とを突合することにより、技能実習生が実際に入国しているかなどを把握することが可能であったと認められる(NUM2-2-a-iリンク参照)。
行方不明事案に対する機構実地検査等の実施状況についてみると、平成31年4月から令和元年9月までの間に発生した行方不明事案3,639件について、その発生から少なくとも6か月が経過した時点である元年度末時点で機構実地検査が実施されていたのは2,884件(機構実地検査の対象件数に占める割合79.2%)となっており、機構実地検査が実施されていなかった755件(同20.7%)のうち客観的資料が入手されていたのは198件(機構実地検査の未実施件数に占める割合26.2%)となっていて、557件(同73.7%)は元年度末までに客観的資料が入手されていなかった(NUM2-2-u-uリンク参照)。
研修事業における就職支援の実施状況についてみると、平成27年度から30年度までの間は受託業者からハローワークに提出された求職情報シートに基づく求職や、受託業者が行うこととされている受講者に対する面接希望の意向確認の状況について、事業実施結果報告書等により厚生労働本省に報告することとなっておらず、同本省は、各ハローワークにおける上記就職支援の実施状況について、把握していなかった。このため、同本省は求職情報誌による就職支援の実施状況を十分に確認しておらず、就職支援について改善を図ることの検討が十分にできない状況となっていた。また、令和元年度も、同本省は平成27年度から30年度までの間と同様に受託業者等が実施した就職支援の実施状況を十分に確認しておらず、就職支援について改善を図ることの検討が十分にできない状況となっていた(NUM3-3-dリンク参照)。
文部科学省等は、骨子において、我が国を世界により開かれた国とし、アジア、世界との間のヒト、モノ、カネ、情報の流れを拡大する「グローバル戦略」を展開する一環として、令和2年を目途に30万人の外国人留学生を受け入れることを目指し、優秀な外国人留学生を戦略的に獲得していくとしている。また、技能実習については、平成29年11月に、人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力を推進することを目的として技能実習法が施行されている。そして、これらの外国人を含めた外国人材の受入れに当たっては、前記のとおり、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するなどのため、総合的対応策等が取りまとめられるなどしている。一方、前記のとおり、新型コロナの感染拡大に伴う外国人の入国制限が行われるまで、外国人留学生は増加していた中、所在不明者が継続的に発生するなどしており、また、技能実習生についても、その人数が令和2年末には減少しているものの増加傾向にある中で、元年に新制度の技能実習生において8,695人の行方不明者が発生するなどしている。
ついては、法務省、文部科学省、厚生労働省等において、我が国を世界により開かれた国とし、国際協力を推進するなどのために、次の点に留意するなどして、より一層、外国人留学生を適切に受け入れるための施策を検討したり、技能実習制度の適正化を図ったりすることなどに取り組むことが重要である。
ア 出入国在留管理庁において、外国人留学生の在留の管理等に一層活用するために、全ての大学等が「受入れに関する届出」を適時適切に提出することを引き続き要請するとともに、利用が低調となっている電子届出システムについて、利用者が電子届出システムを利用するに当たっての要望等を十分に把握し、分析した上で、電子届出システムの利便性の向上を図るなどして適正な在留の管理という目的を果たしつつ利用を促進することなどを検討すること
イ 文部科学省及び私学事業団において、慎重審査対象校等とされているかなど、大学等における外国人留学生に係る在籍管理の状況も考慮して経常費補助金を交付する仕組みを設けることなどを検討すること
ア 技能実習機構において、出入国在留管理庁から提供を受けている入国情報を活用して、技能実習を開始しているのに実習実施者届出書を提出していないおそれのある実習実施者を適時適切に把握すること。そして、実習実施者又は監理団体に対して実習実施者届出書の提出の督促を効率的に行うこと
イ 技能実習機構において、技能実習生の行方不明事案が発生した実習実施者に対する機構実地検査を速やかに実施できない場合には、速やかに客観的資料を入手すること
厚生労働本省において、研修事業における就職支援の実施状況を適切に把握して翌年度以降の研修事業に活用できるよう、受託業者とハローワーク等における就職支援の実施状況について事業実施結果報告書等により報告させて把握すること
以上のとおり報告する。
会計検査院としては、今後とも、外国人材の受入れに係る施策の実施状況等について、引き続き検査していくこととする。