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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 令和3年7月

外国人材の受入れに係る施策に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 大学等への外国人留学生受入れに係る施策の状況

(1)大学等における外国人留学生数の状況

JASSOは、外国人留学生施策に関する基礎資料を得ることを目的として、我が国の大学院、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)、準備教育課程を設置する教育施設及び日本語教育機関における外国人留学生について在籍状況調査を実施し、その集計結果を公表している。その内容は、図表1-1のとおり、外国人留学生数は年々増加しており、元年の外国人留学生数は312,214人となっていて、骨子において2年を目途に目指すとされている30万人を超えていた。

zuhyo1-1図表1-1 大学等における外国人留学生の在籍状況(平成27年~令和元年)

図表1-1 大学等における外国人留学生の在籍状況(平成27年~令和元年)

(単位:人、%)
区分 平成27年 28年 29年 30年 令和元年
大学院(A) 41,396 43,478 46,373 50,184 53,089
構成比(A)/(I) 19.8 18.1 17.3 16.7 17
大学(B) 67,472 72,229 77,546 84,857 89,602
構成比(B)/(I) 32.3 30.1 29 28.3 28.6
(大学院、大学)(C) 108,868 115,707 123,919 135,041 142,691
構成比(C)/(I) 52.2 48.3 46.4 45.1 45.7
正規生 88,146 91,474 98,272 106,690 114,635
非正規生 16,453 18,796 20,529 22,754 23,167
専攻科生・別科生 4,269 5,437 5,118 5,597 4,889
短期大学(D) 1,414 1,530 1,915 2,439 2,844
構成比(D)/(I) 0.6 0.6 0.7 0.8 0.9
正規生 1,082 1,235 1,533 1,865 2,286
非正規生 45 62 71 85 54
専攻科生・別科生 287 233 311 489 504
高等専門学校(E) 519 564 559 510 506
構成比(E)/(I) 0.2 0.2 0.2 0.1 0.1
正規生 435 494 476 446 421
非正規生 76 59 70 55 76
専攻科生 8 11 13 9 9
専修学校(専門課程)(F) 38,654 50,235 58,771 67,475 78,844
構成比(F)/(I) 18.5 20.9 22 22.5 25.2
準備教育課程を設置する教育施設(G) 2,607 3,086 3,220 3,436 3,518
構成比(G)/(I) 1.2 1.2 1.2 1.1 1.1
日本語教育機関(H) 56,317 68,165 78,658 90,079 83,811
構成比(H)/(I) 27 28.4 29.4 30.1 26.8
208,379 239,287 267,042 298,980 312,214
計(I)
 
正規生 (89,663) (93,203) (100,281) (109,001) (117,342)
非正規生 (16,574) (18,917) (20,670) (22,894) (23,297)
専攻科生・別科生 (4,564) (5,681) (5,442) (6,095) (5,402)
  • 注(1) 本図表は在籍状況調査を基にするなどして会計検査院が作成した。
  • 注(2) 記載の人数は各年の5月1日現在の人数である。
  • 注(3) 専修学校(専門課程)、準備教育課程を設置する教育施設及び日本語教育機関における正規生等の区分はJASSOにおいて集計していない。
  • 注(4) 正規生、非正規生及び専攻科生・別科生の各年の計欄の括弧内の数字は、大学院、大学、短期大学及び高等専門学校の人数の計である。

外国人留学生数を学校種別等ごとにみると、平成27年は、大学が67,472人(外国人留学生の年別総数に占める割合32.3%)と最も多く、次に日本語教育機関56,317人(同27.0%)、大学院41,396人(同19.8%)、専修学校(専門課程)38,654人(同18.5%)の順になっていて、大学及び大学院に在籍している外国人留学生数は計108,868人(同52.2%)と過半を占めていた。しかし、令和元年になると、大学が89,602人(同28.6%)、日本語教育機関83,811人(同26.8%)、専修学校(専門課程)78,844人(同25.2%)、大学院53,089人(同17.0%)の順になっていて、日本語教育機関及び専修学校(専門課程)に在籍する外国人留学生数は計162,655人(同52.0%)となり、大学及び大学院の計142,691人(同45.7%)を上回る状況となっていた。

また、大学院、大学、短期大学及び高等専門学校の外国人留学生数を正規生、非正規生等別にみると、平成27年の正規生89,663人、非正規生16,574人、専攻科生・別科生4,564人から、令和元年は正規生117,342人、非正規生23,297人、専攻科生・別科生5,402人となっていて、それぞれ1.30倍、1.40倍、1.18倍といずれも増加していた(注11)。

(注11) JASSOは、外国人留学生を非正規生、専攻科生及び別科生とそれ以外の正規生とに区分しているが、在籍状況調査においては正規生、非正規生等の区分別の在籍状況は公表されていないため、平成27年から令和元年までの間の外国人留学生が在籍する各教育機関の区分別の外国人留学生数をJASSOに確認して整理した。また、在籍状況調査において、非正規生とは一般的に学位を取得しない研究生、聴講生、科目等履修生等を指し、正規生とは非正規生、専攻科生及び別科生以外の者を指しており、本報告書においても同様とする。

(2)外国人留学生の受入れに係る文部科学省等の奨学金、補助金等の状況

ア 外国人留学生の受入れに係る大学等の財源等の状況

大学等は、授業料収入や寄附金と合わせて、国立大学法人等であれば文部科学省から国立大学法人運営費交付金等、私立大学等を設置する学校法人であれば私学事業団から経常費補助金の交付を受けるなどして学校の運営を行っており、その一環として外国人留学生の受入体制の整備等を行っている。

国立大学法人運営費交付金、経常費補助金等の支出済歳出額は、図表1-2のとおりとなっており、国立大学法人運営費交付金については毎年度1兆1000億円前後、経常費補助金については毎年度3200億円前後で推移していた。

zuhyo1-2図表1-2 国立大学法人運営費交付金等の支出済歳出額の状況(平成27年度~令和元年度)

図表1-2 国立大学法人運営費交付金等の支出済歳出額の状況(平成27年度~令和元年度)

(単位:千円)
区分 平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
国立大学法人運営費交付金 1,094,545,795 1,103,568,143 1,092,557,813 1,098,245,787 1,097,500,818
経常費補助金 317,976,390 322,404,366 312,522,483 312,674,383 315,940,615
独立行政法人国立高等専門学校機構運営費交付金 62,004,004 62,194,930 62,324,365 62,525,506 62,567,381
独立行政法人日本学生支援機構一般勘定運営費交付金 注(1) 12,868,615 13,245,304 13,773,046 13,399,960 13,132,688
1,487,394,804 1,501,412,743 1,481,177,707 1,486,845,636 1,489,141,502
  • 注(1) 平成28年度以前は独立行政法人日本学生支援機構運営費交付金。また、本図表においては、政府開発援助独立行政法人日本学生支援機構一般勘定運営費交付金(28年度以前は政府開発援助独立行政法人日本学生支援機構運営費交付金)の支出済歳出額を含んでいる。
  • 注(2) 大学等は、国立大学法人運営費交付金等から外国人留学生の受入体制の整備に支出された金額について、他と区分して正確に把握することが困難であることなどから、本図表においては、国立大学法人運営費交付金等の総額を計上している。

また、外国人留学生の受入れに係る文部科学省等の奨学金、私立大学等を設置する学校法人に対する私学事業団からの特別補助等の交付等の状況は、図表1-3のとおりとなっており、このうち、文部科学省等の奨学金についてみると、前記のとおり外国人留学生が増加している中で、平成28年度を除いて減少傾向となっていた。

zuhyo1-3図表1-3 外国人留学生の受入れに係る文部科学省等の奨学金等の交付等の状況(平成27年度~令和元年度)

図表1-3 外国人留学生の受入れに係る文部科学省等の奨学金等の交付等の状況(平成27年度~令和元年度)

(単位:千円)
区分 平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
文部科学省等の奨学金 25,979,295 26,148,895 25,296,272 24,896,976 24,072,269
特別補助 4,239,970 3,996,511 4,304,729 5,792,690 3,900,820
支援金(JASSOの留学生借り上げ宿舎支援事業) 159,323 153,730 152,808 147,807 142,323
補助金等(文部科学省) 9,211,847 7,926,302 8,199,779 5,917,340 5,257,472
39,590,435 38,225,440 37,953,589 36,754,813 33,372,885
  • 注(1) 「文部科学省等の奨学金」は、日本政府奨学金、学習奨励費、協定受入奨学金等を計上している。
  • 注(2) 「特別補助」は、特別補助の対象となる項目のうち外国人留学生に関連する項目を計上している。
  • 注(3) 「補助金等(文部科学省)」には、外国人留学生に係る事業のほか、日本人学生の海外派遣の促進に係る事業等が含まれている。

そして、文部科学省等の奨学金のうち日本政府奨学金、学習奨励費及び協定受入奨学金の支給等の状況、私学事業団における外国人留学生に係る項目の特別補助の状況等についてみると、次のイからエのとおりとなっていた。

イ 日本政府奨学金等の支給等の状況
(ア) 日本政府奨学金

27年度から令和元年度までの間の日本政府奨学金の歳出予算額及び支出済歳出額は、図表1-4のとおり、給与(奨学金)、教育費及び旅費の区分ごとにみると年度により多少の増減の違いはあるものの、全体としては減少傾向となっていた。

また、不用額は、上記と同様に区分ごとにみると年度により増減の違いはあるものの、全体としては増加傾向となっており、平成27年度と令和元年度を比較すると、4億余円(歳出予算額に占める不用額の割合2.3%)から8億余円(同4.7%)と約2倍となっていた。不用額が生じた主な要因について、文部科学省は、国費外国人留学生の採用者数が予定を下回ったこと、進路変更等により日本政府奨学金を辞退した者が生じたことなどによるとしている。

zuhyo1-4図表1-4 日本政府奨学金の予算の執行状況(平成27年度~令和元年度)

図表1-4 日本政府奨学金の予算の執行状況(平成27年度~令和元年度)

(単位:千円、%)
区分 平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
給与
(奨学金)
歳出予算額(A) 16,541,917 16,704,563 16,414,832 16,348,994 16,079,264
支出済歳出額 16,155,546 16,172,333 16,072,509 15,942,443 15,485,883
不用額(B) 386,371 532,230 342,323 406,551 593,381
歳出予算額に占める
不用額の割合(B)/(A)
2.3 3.1 2 2.4 3.6
教育費 歳出予算額(C) 1,149,297 1,119,297 1,119,297 1,119,297 1,033,950
支出済歳出額 1,124,099 1,065,392 963,813 931,803 933,986
不用額(D) 25,197 53,904 155,483 187,494 99,963
歳出予算額に占める
不用額の割合(D)/(C)
2.1 4.8 13.8 16.7 9.6
旅費 歳出予算額(E) 856,409 856,409 856,409 856,409 804,084
支出済歳出額 828,783 733,393 750,226 713,120 642,440
不用額(F) 27,625 123,015 106,182 143,288 161,643
歳出予算額に占める
不用額の割合(F)/(E)
3.2 14.3 12.3 16.7 20.1
歳出予算額(G) 18,547,623 18,680,269 18,390,538 18,324,700 17,917,298
支出済歳出額 18,108,428 17,971,118 17,786,549 17,587,366 17,062,309
不用額(H) 439,194 709,150 603,988 737,333 854,988
歳出予算額に占める
不用額の割合(H)/(G)
2.3 3.7 3.2 4 4.7

また、平成27年度から令和元年度までの間の国費外国人留学生数は、図表1-5のとおり、全体では平成28、30、令和元各年度はそれぞれ前年度より減少していた。

そして、国費外国人留学生数の学校種別等ごとの構成割合についてみると、大学院が最も高く、正規生及び非正規生を合わせると全ての年度において約80%となっており、その割合は平成30年度を除いて増加傾向となっていた。このように国費外国人留学生の大部分が大学院に在籍している理由について、文部科学省は大学院の場合、研究分野等によっては日本語が不要であり、かつ学位を英語で取得できるコースが大学と比較して多く存在するため、外国人留学生のニーズが高いことが一因と考えられるとしている。

zuhyo1-5図表1-5 国費外国人留学生数の学校種別等ごとの構成割合(平成27年度~令和元年度)

図表1-5 国費外国人留学生数の学校種別等ごとの構成割合(平成27年度~令和元年度)

(単位:人、%)
区分 平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
大学院 人数(A) 9,440 9,425 9,623 9,334 9,757
構成割合(A)/(H) 77.9 78.9 79.9 78.7 83.4
正規生 人数(B) 7,752 7,943 8,074 7,753 7,577
構成割合(B)/(H) 63.9 66.5 67 65.3 64.7
非正規生 人数(C) 1,688 1,482 1,549 1,581 2,180
構成割合(C)/(H) 13.9 12.4 12.8 13.3 18.6
大学 人数(D) 2,335 2,029 1,991 2,148 1,553
構成割合(D)/(H) 19.2 17 16.5 18.1 13.2
高等専門学校 人数(E) 190 198 174 151 136
構成割合(E)/(H) 1.5 1.6 1.4 1.2 1.1
専修学校
(専門課程)
人数(F) 6 167 125 100 107
構成割合(F)/(H) 0 1.3 1 0.8 0.9
日本語教育機関 人数(G) 146 116 125 125 144
構成割合(G)/(H) 1.2 0.9 1 1 1.2
人数(H) 12,117 11,935 12,038 11,858 11,697
構成割合 100 100 100 100 100
(イ) 学習奨励費

27年度から令和元年度までの間の学習奨励費に係る予算額は、平成27年度から29年度までは毎年度39億余円となっていたが、30年度は37億余円、令和元年度は36億余円と平成30年度以降は減少しており、決算額も予算額と同様に30年度以降減少していた(別図表1-1参照)。

そして、支給者数の学校種別等ごとの構成割合についてみると、いずれの年度においても大学院及び大学に在籍する正規生が75%以上となっていた(別図表1-1参照)。

また、学習奨励費の採用枠ごとの支給者数は、一般枠による支給者数は27年度の4,481人から令和元年度の1,545人(対平成27年度減少率65.5%)へと年々減少していたが、特別枠による支給者数は27年度の207人から令和元年度の1,341人(対平成27年度増加率547.8%)、予約枠による支給者数は27年度の3,815人から令和元年度の5,191人(同36.0%)へと増加していた(別図表1-2参照)。

このように一般枠による支給者数が大幅に減少した一方で、特別枠及び予約枠による支給者数が増加した理由について、JASSOは、平成28年度以降、戦略的に外国人留学生を確保できるよう、特別枠や予約枠を重点化し、一般枠については段階的に削減する推薦区分の配分の見直しを行ったことによるとしている。

なお、大学院及び大学の一般枠は令和2年度以降廃止された。

(ウ) 協定受入奨学金

平成27年度から令和元年度までの間の協定受入奨学金に係る決算額及び支給者数は、平成28年度までは増加していたが、29年度以降は減少傾向となっていた。

また、支給者数の学校種別ごとの構成割合についてみると、いずれの年度も大学(大学院を含む。)に在籍する外国人留学生が97%以上となっていた(別図表1-3参照)。

ウ 私学事業団における外国人留学生に係る特別補助の状況
(ア) 外国人留学生に係る特別補助の額等の状況

特別補助の対象となる項目のうち外国人留学生に係る項目である「海外からの学生の受入れ」「大学等の教育研究環境の国際化」等の27年度から令和元年度までの間の特別補助の額等は、図表1-6のとおりとなっており、特別補助の額は、「私立大学等改革総合支援事業(タイプ4 グローバル化)」が終了している元年度を除くと増加傾向にあり、平成27年度の42億余円に比べて30年度は57億余円と15億余円の増加(対27年度増加率36.6%)となっていた。

また、令和元年度の「大学等の教育研究環境の国際化」の区分をみると、前年度以前と比べて対象校数は大幅に減少したにもかかわらず、特別補助の額は増加している。この理由について、私学事業団は、第1の3(2)イ(エ)のとおり、元年度に要件の見直しを行ったことで対象校数が減少した一方、平成30年度までは30万円としていた単価について、令和元年度からは大学等の規模に応じて30万円から120万円までの単価の区分を設けたことにより、対象校への特別補助の額が増加したためと考えられるとしている。

zuhyo1-6図表1-6 外国人留学生に係る特別補助の額等(平成27年度~令和元年度)

図表1-6 外国人留学生に係る特別補助の額等(平成27年度~令和元年度)

(単位:千円、人、校)
区分 平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
海外からの学生の受入れ 交付額 1,664,890 1,578,122 1,677,046 1,912,871 1,716,124
対象者数 64,011 67,724 72,016 80,622 70,013
大学等の教育研究環境の国際化 交付額 1,839,080 1,731,692 1,534,683 1,988,819 2,184,696
大学等の教育研究環境の国際化 対象者数 626 625 640 640 247
留学生に対する授業料減免 対象者数 20,807 22,051 22,866 24,670 25,801
私立大学等改革総合
(タイプ4 グローバル化)
交付額 736,000 686,697 1,093,000 1,891,000
対象者数 78 81 80 82
交付額 4,239,970 3,996,511 4,304,729 5,792,690 3,900,820

(注) 「大学等の教育研究環境の国際化」及び「留学生に対する授業料減免」の交付額は個別に算出できないため両項目の合計額を記載している。

(イ) 「大学等の教育研究環境の国際化」に係る取組の実施状況

前記のとおり、「大学等の教育研究環境の国際化」の項目については、平成30年度までは図表0-2の1から7までの取組のいずれかを実施することなどが要件とされていたが、令和元年度には、取組が15項目に増え、そのうち6項目以上の取組を実施することとされるなど要件の見直しが行われた。

そこで、平成27年度から令和元年度までの間に当該項目に係る特別補助が行われた私立大学等における図表0-2に掲げる取組の実施状況を確認したところ、「1留学生の受入体制の整備」及び「2 留学生の修学支援」のように全ての年度において実施率がおおむね90%以上となっているなど、当該項目に係る特別補助が行われた私立大学等のほとんどで実施されていた取組がある一方、「7 帰国留学生のフォローアップ」のように全ての年度において実施率が30%を下回っている取組があるなど、取組の実施状況に偏りがある状況となっていた。なお、元年度は上記のとおり要件の見直しが行われたことから、当該項目に係る特別補助が行われた私立大学等数が減少していた(別図表1-4参照)。

エ 文部科学省の外国人留学生に係る補助事業等の状況

前記のとおり、文部科学省は、外国人留学生の受入れの増加を目指すことなどを目的として、外国人留学生に係る補助事業等を実施しており、平成27年度から令和元年度までの間に実施され、予算額が多額になっているものは①スーパーグローバル大学創成支援事業、②大学の世界展開力強化事業、③留学コーディネーター配置事業、④日本留学海外拠点連携推進事業及び⑤留学生就職促進プログラムの5種類の補助事業等となっていた(5種類の補助事業等の概要は別図表0-3参照)。

会計検査院は、外国人留学生受入れに係る施策の状況について検査を行うに当たり、外国人留学生が多数在籍していたり、外国人留学生に係る補助事業等を実施していたりしているなどの31校(13国立大学、14私立大学等、高専機構が設置する2高等専門学校及びJASSOが設置する2教育センター。以下、この31校を「検査対象大学等」という。)を選定して検査を実施した。

そして、各補助事業等の全体に係る交付額等及び検査対象大学等において前記5種類の補助事業等のうち1種類以上の補助事業等を平成27年度から令和元年度までの間に実施していた16校(12国立大学及び4私立大学。以下、この16校を「補助事業等実施大学」という。)に対する補助金等の交付額等は図表1-7のとおりとなっており、スーパーグローバル大学創成支援事業の全体に係る交付額は5年間で264億余円となっていて、5種類の補助事業等の交付額等で最も大きくなっていた。

zuhyo1-7図表1-7 各補助事業等の全体に係る交付額等及び補助事業等実施大学に対する補助金等の交付額等(平成27年度~令和元年度)

図表1-7 各補助事業等の全体に係る交付額等及び補助事業等実施大学に対する補助金等の交付額等(平成27年度~令和元年度)

(単位:事業主体、事業、千円)
区分 平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
スーパー
グローバ
ル大学創
成支援事
事業主体数 37 37 37 37 37
補助事業等実施大学数 13 13 13 13 13
事業数 37 37 37 37 37
補助事業等実施大学が実施している事業数 13 13 13 13 13
交付額 6,845,565 6,189,379 6,016,290 3,986,752 3,413,428 26,451,415
補助事業等実施大学に対する交付額 3,622,463 3,257,911 3,137,895 2,077,809 1,770,749 13,866,829
大学の世
界展開力
強化事業
事業主体数 36 35 35 37 36
補助事業等実施大学数 11 11 10 11 10
事業数 71 71 68 66 60
補助事業等実施大学が実施している事業数 31 29 24 23 19
交付額 2,256,358 1,616,979 1,826,785 1,400,537 1,183,676 8,284,338
補助事業等実施大学に対する交付額 1,077,953 658,820 627,941 458,920 353,890 3,177,526
留学コー
ディネー
ター配置
事業
事業主体数 4 4 4
補助事業等実施大学数 3 3 3
事業数 4 4 4
補助事業等実施大学が実施している事業数 3 3 3
支出額 109,923 119,943 119,948 349,814
補助事業等実施大学に対する支出額 89,953 89,956 89,961 269,870
日本留学
海外拠点
連携推進
事業
事業主体数 6 6
補助事業等実施大学数 4 4
事業数 7 7
補助事業等実施大学が実施している事業数 5 5
支出額 248,840 381,181 630,021
補助事業等実施大学に対する支出額 195,370 304,216 499,587
留学生就
職促進プ
ログラム
事業主体数 12 12 12
補助事業等実施大学数 6 6 6
事業数 12 12 12
補助事業等実施大学が実施している事業数 6 6 6
支出額 236,755 281,209 279,186 797,151
補助事業等実施大学に対する支出額 122,862 139,968 141,178 404,009

(注) 令和元年度に実施したスーパーグローバル大学創成支援事業及び大学の世界展開力強化事業の交付額のうち、一部の事業については、3年5月末において額の確定がされていないため、交付決定額を計上している。

前記5種類の補助事業等については各補助事業等の公募要領により、中間評価又は事後評価を実施することとなっており、文部科学省等は、各補助事業等の目的の達成状況を把握するためにそれぞれ成果指標を設定している。そして、平成27年度から令和元年度までの間に中間評価又は事後評価を実施していたのは3種類の補助事業等となっている(外国人留学生に関係する主な成果指標については別図表1-5参照)。

上記3種類の補助事業等のうち、補助事業等実施大学において、平成27年度から令和元年度までの間に外国人留学生に関係する主な成果指標を用いて、中間評価を実施していた事業は、スーパーグローバル大学創成支援事業の13事業、大学の世界展開力強化事業の21事業及び留学生就職促進プログラムの6事業、また、事後評価を実施していた事業は、大学の世界展開力強化事業の28事業となっていた。これらの事業について、中間評価及び事後評価における成果指標の目標値に対する達成状況を確認したところ、図表1-8のとおりとなっており、成果指標ごとに達成状況の違いが見受けられる状況となっていた。

zuhyo1-8図表1-8 主な成果指標の中間評価及び事後評価における目標値に対する達成状況(平成27年度~令和元年度)

図表1-8 主な成果指標の中間評価及び事後評価における目標値に対する達成状況(平成27年度~令和元年度)

(単位:校、事業、%)
事業名 大学

(A)
事業

(B)
主な成果指標 平成27年度から令和元年度までの間に中間評価又は事後評価を実施した事業の目標値に対する達成状況
達成(C) 未達成(D)
割合
(C)/(B)
割合
(D)/(B)
中間
評価
スーパーグ
ローバル大学
創成支援事業
13 13 外国人留学生数(各年5月1日現在) 3 23.0 10 76.9
外国人留学生数(通年) 10 76.9 3 23.0
大学間協定に基づく受入外国人留学生数(通年) 11 84.6 2 15.3
外国語による授業科目数(通年) 11 84.6 2 15.3
英語による授業科目数(通年) 11 84.6 2 15.3
外国語のみで卒業できるコースの設置数
(各年5月1日現在
8 61.5 5 38.4
外国語のみで卒業できるコースの在籍者数
(各年5月1日現在)
6 46.1 7 53.8
シラバスを英語化している授業科目数
(各年5月1日現在)
9 69.2 4 30.7
外国人留学生への奨学金支給の入学許可時の伝達数
(通年)
12 92.3 1 7.6
混住型学生宿舎に入居している外国人留学生数
(各年5月1日現在)
5 38.4 8 61.5
大学の世界展
開力強化事業
10 21 受入外国人学生数 17 80.9 4 19.0
留学生就職促
進プログラム
6 6 全学生に占める外国人留学生の割合
(各年5月1日現在)
3 50.0 3 50.0
年度内に卒業(修了)した外国人留学生のうち日本企業に
就職した者の割合
2 33.3 4 66.6
外国人留学
生へのビジ
ネス日本語
教育の実施
(累計数)
就職に向けた日本語指導を受けている学生数 5 83.3 1 16.6
外国人留学生へのビジネス日本語教育のため
に開設されるカリキュラムを受講する学生数
5 83.3 1 16.6
日本語教育の授業時間数 4 66.6 2 33.3
外国人留学
生へのキャ
リア教育の
実施(累計
数)
就職に向けたキャリア教育の受講学生数 3 50.0 3 50.0
外国人留学生へのキャリア教育のために開設
されるカリキュラムを受講する学生数
3 50.0 3 50.0
キャリア教育の授業時間数 2 33.3 4 66.6
外国人留学
生へのイン
ターンシッ
ププログラ
ムの実施
(累計数)
インターンシップを行うための連携企業数 3 50.0 3 50.0
説明会での企業による発表数 2 33.3 4 66.6
インターンシップ実施のための企業への申込
1 16.6 5 83.1
136 81
事後
評価
大学の世界展
開力強化事業
11 28 受入外国人学生数 14 50.0 14 50.0
合計 150 95

(注) 各補助事業等において文部科学省が示した外国人留学生に係る成果指標のうち補助事業等実施大学で実施している各事業間で共通する成果指標を主な成果指標としている。

中間評価における目標値を達成していた割合が最も高かった成果指標は、スーパーグローバル大学創成支援事業において大学の国際開放度の達成状況を把握するために設定された「外国人留学生への奨学金支給の入学許可時の伝達数(通年)」であり、達成12事業、未達成1事業となっていた。

一方、中間評価における目標値を達成していた割合が最も低かった成果指標は、留学生就職促進プログラムにおいて求められる取組の一つである「中長期インターンシップの実施状況」を確認するために設定された「外国人留学生へのインターンシッププログラムの実施(累計数)」の「インターンシップ実施のための企業への申込数」であり、達成1事業、未達成5事業となっていた。未達成となっていた大学は、その理由について、外国人留学生から採用直結型でないインターンシップへは積極的な参加希望がなかったことや長期休暇中のインターンシップ参加が難しかったことなどによるとしていた。

また、事後評価における成果指標は、大学の世界展開力強化事業において外国人学生の受入れが促進されていることの達成状況を把握するために設定された「受入外国人学生数」のみであり、達成14事業、未達成14事業となっていた。未達成となっていた大学は、その理由について、受入れを予定していた学生が辞退したことや諸外国の高等教育機関から推薦された学生数が減少したことなどによるとしていた。

(3)大学等における外国人留学生の受入体制等の状況

ア 外国人留学生に係る入試等の状況
(ア) 大学等における外国人留学生に係る入試等の状況

前記のとおり外国人留学生が増加する状況の中、東京福祉大学における外国人留学生の在籍管理の問題が発生したことを受けて、文部科学省は、各大学等への注意喚起のために平成31年3月に次の事項を大学等に対して通知している(注12)。

① 学生数の確保という観点で安易に外国人留学生を受け入れることは厳に慎むとともに、外国人留学生の受入数については、当該大学等の入学定員、教職員組織、施設整備等を考慮した適切なものとし、教育体制の現状に見合わない過大な受入数にならないようにすること

② 入学志願者が真に修学を目的としており、その目的を達するための十分な能力、意欲、適正等を有しているかを適切に判定すること、特に、日本語等の必要な能力の基準(学位が授与される正規の教育課程において日本語で授業を行う場合、日本語能力試験(注13)N2レベル相当以上が目安)を明確化し、適正な水準を維持することが重要であること

また、出入国在留管理庁は、在留資格に係る審査上の留意点等を規定している入国・在留審査要領において、大学(短期大学及び大学院を含む。)又は高等専門学校において日本語で授業を受けようとするなどの者は日本語能力試験N2相当以上、留学生別科、準備教育課程を設置する教育施設等に入学しようとする者は日本語能力試験N5相当以上の日本語能力を有していることなどが必要であるとしている。

そこで、会計検査院は、検査対象大学等において、入学試験及び選考(以下「入試等」という。)で必要とされる日本語能力の基準がどのようになっているかについてみることにした。検査対象大学等の学校種別等ごとの内訳は22大学院、24大学、2短期大学、2高等専門学校、準備教育課程を設置する3教育施設(注14)であり、学校種別等ごとの外国人留学生数は、大学院及び大学の正規生が多くを占めている(別図表1-6参照)。これらの検査対象大学等について、令和元年度に入学する者に対して実施された入試等の出願資格を学校種別等ごとにみたところ、日本語能力に係る出願資格を設けている割合は、大学の正規生で59.4%となっていた。また、日本語能力に係る出願資格を設けていない入試等は1,090件あり、このうち706件は外国語(英語)のみで履修可能なものなどであったが、残る384件は、大学等が入試等において日本語能力を判断するなどとして、日本語能力を出願資格としていないものであった。そして、日本語能力試験を出願資格としている338件についても、N2未満を基準としているものが5件、具体的な基準を明記していないものが42件見受けられた(別図表1-7参照)。

(注12)
通知  「外国人留学生の適切な受入れ及び在籍管理の徹底等について(通知)」(平成31年30高学留第72号文部科学省高等教育局学生・留学生課長通知。以下「在籍管理の徹底等通知」という。主な内容等は別図表1-8参照
(注13)
日本語能力試験  独立行政法人国際交流基金と公益財団法人日本国際教育支援協会が共催する、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験。N1からN5までの五つのレベルがあり、N1が最も難しいものとなっている。

(注14) 専修学校(専門課程)及び日本語教育機関においても多数の外国人留学生が在籍しているが、これらの教育機関に対しては、経常的経費に係る補助金等の国費が交付されていないなどのため、検査対象大学等には含めていない。また、検査対象大学等のうち東京日本語教育センターには進学課程と大学院等進学課程の2課程があり、進学課程については準備教育課程の指定を受けており大学院等進学課程は準備教育課程の指定を受けていないが、令和元年度までの在籍状況調査においては進学課程と大学院等進学課程を合わせて準備教育課程としていたことから、本報告書においてもこれに準じて2課程を合わせて、準備教育課程を設置する1教育施設として整理している。

(イ) 専修学校における外国人留学生に係る入試等の状況

文部科学省は、専修学校を所管している各都道府県に対して通知(注15)を発して、専修学校における外国人留学生の管理等に関する留意事項として、生徒数の確保の観点からのみで安易に外国人留学生を受け入れることは厳に慎むこととするとともに、専修学校における入学志願者の日本語能力の判定に当たっては、志望学科(日本語に関する学科を除く。)の教育課程を履修し得る日本語能力を有しているか否かを適切に判定する観点から、日本語能力試験(N1又はN2レベル)、日本留学試験(試験科目「日本語」)等を活用することが望ましいとしている。

そして、文部科学省は、専修学校グローバル化対応推進支援事業として、優秀な外国人留学生の受入れ促進や留学環境の整備に係る施策検討の基礎材料とするために、専修学校における留学状況等に関する継続的な実態把握を目的に、専修学校におけるグローバル化対応に係る実態調査(以下「専修学校実態調査」という。)を行っている。

元年度の専修学校実態調査によると、外国人留学生の日本語能力に関する選抜基準に関して回答のあった633専修学校における回答別の割合は、「日本語能力試験N2以上の資格保有の義務づけ」が47.1%、「日本語能力試験以外の日本語資格保有の義務づけ」が13.1%、「日本語資格を基準にせず面接で教職員が判断」が42.7%、「その他」が26.5%、「特に選抜基準を設けていない」が3.0%となっていた(調査項目は複数選択可となっている。)。

(注15)
通知  「専修学校及び各種学校における留学生の受入れについて(通知)」(平成22年22文科生第473号文部科学省生涯学習政策局長通知。以下「専修学校受入れ通知」という。)及び「専修学校における留学生管理等の徹底について(通知)」(平成22年22生生推第51号文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課長通知。以下「専修学校管理徹底通知」という。主な内容等は別図表1-8参照
イ 外国人留学生の宿舎の整備等の状況
(ア) 大学等における宿舎の整備状況

我が国は、骨子において、宿舎確保の取組等により外国人留学生が安心して勉学に専念できる受入れ環境づくりを推進するとともに、大学等が各関係機関と連携して短期留学を含めた渡日後1年以内の外国人留学生に宿舎を提供できるよう大学の宿舎整備等の多様な方策の推進を行うこととしている。

また、これらの宿舎には混住型学生宿舎があり、その整備の目的は、外国人留学生の受入れ環境づくりだけではなく、外国人留学生と日本人学生とが共同生活をすることにより、多文化交流による学びの場としてのグローバル人材育成に向けた取組の一環となっており、図表1-8のとおり、混住型学生宿舎に入居している外国人留学生数(各年5月1日現在)は、スーパーグローバル大学創成支援事業における外国人留学生に関係する主な成果指標の一つとなっている。

そこで、検査対象大学等における元年度の外国人留学生のための宿舎の整備状況についてみたところ、外国人留学生を受け入れている宿舎を所有していた大学等は22校、借り上げていた大学等は14校となっていた。これら宿舎の整備に係る財源は、国立大学法人運営費交付金、各大学等の自己収入等となっていた。

このうち、混住型学生宿舎の整備状況についてみたところ、元年度に混住型学生宿舎を所有していた大学等は19校、借り上げていた大学等は5校となっていた。

また、前記の大学等22校が所有している宿舎は元年5月1日現在で146棟(入居可能戸数15,048戸、入居数12,585戸)となっており、入居率の平均は79.1%となっていた。そして、これら宿舎のうち入居率が50%未満となっていた宿舎は10棟(入居可能戸数511戸、入居数202戸)となっており、大学等は入居率が低調となっている要因について、夏季休暇等の間に外国人留学生を受け入れるための宿舎であること、宿舎がキャンパスから離れていることや宿舎が老朽化していることなどが考えられるとしている。

(イ) 留学生借り上げ宿舎支援事業

JASSOは、外国人留学生が我が国において安心して充実した留学生活を送るために、民間宿舎を借り上げることなどにより宿舎を提供している大学等を支援し、もって大学等のニーズに沿って外国人留学生のために宿舎を効果的、効率的かつ安定的に確保することを目的として留学生借り上げ宿舎支援事業を実施している。

平成27年度から令和元年度までの間に民間宿舎を借り上げる場合において同事業による支援金の支給を受けていた大学等は延べ649校となっており、その支給状況は、図表1-9のとおり、対象戸数は延べ10,917戸、支給金額は計7億5599万余円となっていた。

zuhyo1-9図表1-9 民間宿舎を借り上げる場合に係る留学生借り上げ宿舎支援事業の実施状況(平成27年度~令和元年度)

図表1-9 民間宿舎を借り上げる場合に係る留学生借り上げ宿舎支援事業の実施状況(平成27年度~令和元年度)

(単位:校、戸、千円)
区分 平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
文部科学省外国人留学生
学習奨励費受給者等支援
大学等数 112 119 132 133 130 626
戸数 2,349 2,109 2,053 1,930 1,929 10,370
支援金額 152,524 142,662 144,898 141,473 134,936 716,495
海外留学支援制度(協定受入)支援 大学等数 6 8 7 6 10 37
戸数 87 146 119 86 109 547
支援金額 6,798 11,068 7,910 6,333 7,387 39,498
大学等数 115 124 137 137 136 649
戸数 2,436 2,255 2,172 2,016 2,038 10,917
支援金額 159,323 153,730 152,808 147,807 142,323 755,993
  • 注(1) 文部科学省外国人留学生学習奨励費受給者等支援は、学習奨励費の給付を受ける者又は在留資格「留学」により大学等に在籍し、渡日後1年以内に居住を開始する者等に対して原則として1年以上、大学等が宿舎を提供するために賃貸借契約を締結し、民間宿舎を借り上げる場合において、当該大学等に対して支援金を交付するものである。
  • 注(2) 海外留学支援制度(協定受入)支援は、協定受入奨学金を受ける者に対して原則として1年以内の間、大学等が宿舎を提供するために賃貸借契約を締結し、民間宿舎を借り上げる場合において、当該大学等に対して支援金を交付するものである。
  • 注(3) 各年度の「大学等数」の計は、両事業の支援金の交付を受けている大学等を含むため、「文部科学省外国人留学生学習奨励費受給者等支援」と「海外留学支援制度(協定受入)支援」の「大学等数」を合計しても一致しない。

(4)外国人留学生に対する在籍管理等の状況

外国人留学生の増加に伴い、大学等に在籍中に3か月以上所在確認の連絡が取れなくなる者(以下「所在不明者」という。)が発生するなどしていることから、文部科学省等においては、大学等に対する適切な指導等が課題となっている。そこで、文部科学省等における外国人留学生の在籍管理等に関する施策の実施状況等についてみたところ、次のとおりとなっていた。

ア 文部科学省における外国人留学生の在籍管理に関する施策

文部科学省は、大学等で受け入れた外国人留学生が所在不明者となったことなどを受けて、これまでに度々通知を発して、大学等に対して、また、専修学校等に対しては都道府県等を通じて、外国人留学生の適切な受入れ、在籍管理等を求めるなどしており、大学の学位課程等が大学進学のための日本語予備教育を実施する課程等として実施されないよう依頼するなどしているところである(別図表1-8参照)。

イ 法務省における外国人留学生の在留の管理に関する施策
(ア) 大学、専修学校等の外国人留学生の受入れの報告状況等

a 外国人留学生の受入れの届出

出入国在留管理庁は、前記のとおり、大学、日本語教育機関等の教育機関に対して「所属機関による届出」である「受入れに関する届出」を提出することを求めているが、提出については罰則規定のない努力義務となっている。そして、「受入れに関する届出」の提出を受けた同庁は、大学等の退学者等を把握することなどにより、後述する(イ)のとおり適正校等の選定等に活用するなど、外国人留学生に係る在留の管理を行っている。そこで、検査対象大学等について、元年度において「受入れに関する届出」が提出されているか確認したところ、5校において全く提出されていなかった。提出していない5校にその理由を確認したところ、提出が努力義務であるためなどとしていた。

b 電子届出システムの利用状況

「受入れに関する届出」については、地方出入国在留管理局への書面の提出によるほか、出入国在留管理庁電子届出システム(平成31年3月以前は「入国管理局電子届出システム」。以下「電子届出システム」という。)により、25年6月からインターネットを利用して提出することが可能となった。電子届出システムは、中長期在留者から提出される「所属機関等に関する届出」及び中長期在留者を受け入れている所属機関から提出される「所属機関による届出」をオンラインで行うことができるシステムであり、外国人留学生の所属機関となる教育機関が「所属機関による届出」の利用対象の多くを占めている。

出入国在留管理庁は、電子届出システムの運用、改修等に係る契約を27年度から令和元年度までの間に計15億0253万余円(平成30年度及び令和元年度については他のシステムと統合され、共有された契約を含む。)で締結していた。そして、同庁は、大学等に対して電子届出システムの利用促進のための案内文書を発出したり、日本語教育機関に対して電子届出システムの利便性の改善に向けた調査を実施したりしていた。

そこで、検査対象大学等のうち前記の「受入れに関する届出」を全く提出していなかった5校を除いた26校における電子届出システムの元年度の利用状況を確認したところ、電子届出システムを利用して「受入れに関する届出」を提出していたのは2校と少ない状況となっていた。また、電子届出システムを利用していた2校の元年度の提出状況について確認したところ、1校は電子届出システムにより全て提出しており、1校は電子届出システムによる提出を行っていたものの一部は書面により提出していた。そして、電子届出システムを利用していなかった24校にその理由を確認したところ、大学等で保有する既存のデータを流用することができず外国人留学生ごとに新規に情報を入力しなければならないなど事務量が膨大になるためなどとしていた。

したがって、出入国在留管理庁は、外国人留学生の在留の管理等に一層活用するために、全ての大学等が「受入れに関する届出」を適時適切に提出することを引き続き要請するとともに、利用が低調となっている電子届出システムについて、利用者が電子届出システムを利用するに当たっての要望等を十分に把握し、分析した上で、電子届出システムの利便性の向上を図るなどして適正な在留の管理という目的を果たしつつ利用を促進することなどを検討する必要がある。

(イ) 適正校等の選定の状況

出入国在留管理庁は、入国・在留審査を適切かつ円滑に行う観点から、外国人留学生を受け入れている教育機関について、毎年、外国人留学生の入国手続等の申請を簡素化することができる対象校等の選定作業を行っている。

平成30年度以前における選定作業に当たっては、入国・在留審査要領に基づき、大学、大学に準ずる機関、高等専門学校については、不法残留者(在留期間の更新等をしないまま在留期間を経過して我が国に残留する者)の前年における数が19人以下であるか、「受入れに関する届出」等により当該教育機関に受け入れた外国人留学生の在留状況が確認でき、その状況に問題がないかなどの事項について確認することにより、当該教育機関の在籍管理能力を確認することとなっている。そして、同庁が、その在籍管理状況から所属する外国人留学生について1年に一度在留状況を確認する必要があると判断した場合は、慎重審査対象校として入国手続等の申請を簡素化せず原則どおり手続を行うこととしており、その他の場合は、申請を簡素化することができることとしている。なお、令和元年度以降は、後者を適正校として扱うこととしている。

また、上記教育機関以外の専修学校等(高等学校、中学校、小学校及び特別支援学校を除く。)については、不法残留率(前年の外国人留学生在籍者数に占める不法残留者数の割合)が5%以内であること、「受入れに関する届出」等により受け入れた外国人留学生の在留状況が確認でき、その状況に問題がないことなどの基準を満たしているものを適正校、満たしていないものを非適正校とすることとしている。そして、適正校については入国手続等における申請を簡素化する一方、非適正校については簡素化せず、外国人留学生の在留期間を短縮するなどの措置を講ずることとしている。また、適正校等の選定作業を行う時期以外において基準を満たさないこととなり、その在籍管理状況から所属する外国人留学生について1年又は6月に一度在留状況を確認する必要があるものと認められた場合、当該教育機関は非適正校と同様の取扱いとなる選定停止校としている。

そして、元年度以降、同庁は適正校等の判断基準の見直しを行い、高等学校、中学校、小学校及び特別支援学校を除く教育機関について、従来の選定要素である不法残留者数に加えて、新たに、在留資格「留学」の在留期間更新許可申請が不許可となった者等を合計した数の在籍者数に占める割合が5%以内であることなどを選定基準とし、選定基準を満たさない大学等を慎重審査対象校とすることとしている。

適正校、非適正校等の選定状況を学校種別等ごとにみると、元年においては、いずれの学校種別等においても適正校が最も多くなっているが、専修学校(専門課程)及び日本語教育機関については、慎重審査対象校がそれぞれ55校、32校と、他の学校種別等と比べて多くなっていた(別図表1-9参照)。

ウ 文部科学省等における外国人留学生の在籍管理等に係る補助要件等の適用状況

文部科学省は、日本政府奨学金について、元年度から、当該年度の前年及び前々年の連続する2年間に外国人留学生総数の5%又は10名のいずれか少ない数を超える不法残留者がいた大学等からの推薦は受け付けないこととしていた。(注16)

また、JASSOは、「留学生受入れ促進プログラム推薦依頼数又は採用数の削減に係る取扱基準」(平成26年3月担当理事決裁)を策定し、これにより、次の場合に、それぞれ学習奨励費の推薦依頼数又は採用数を10%削減するなどしていた。

① 大学(大学院を含む。)、短期大学及び高等専門学校においては当該年度の前年及び前々年の連続する2年間に外国人留学生総数の5%又は10名のいずれか少ない数を超える不法残留者がいた場合

② 専修学校(専門課程)、準備教育課程を設置する教育施設及び日本語教育機関においては上記の連続する2年間に出入国在留管理庁が選定する適正校と認定されなかった場合

さらに、前記のとおり、同庁が慎重審査対象校等を選定する基準を見直したことから、JASSOは元年12月に同取扱基準を改訂し、次のとおり、削減の割合等を厳格化していた。

① 当該年度の前年及び前々年の連続する2年間において同庁から慎重審査対象校に選定された場合は50%削減

② 在籍管理等が不適切であると認められたことから同庁から「留学生を新たに受入れることが認められない教育機関」とされた場合は100%削減

そして、平成29年度から令和元年度までの間の同取扱基準の適用状況を確認したところ、JASSOは、平成29年度10校(大学1校、専修学校4校、日本語教育機関5校)、30年度16校(大学2校、専修学校9校、日本語教育機関5校)及び令和元年度24校(大学4校、専修学校14校、日本語教育機関6校)に対して学習奨励費の推薦依頼数等の削減を行っていた。

一方、私学事業団は、平成29年度から令和元年度までの間の経常費補助金のうち「海外からの学生の受入れ」「大学等の教育研究環境の国際化」等の特別補助について、各外国人留学生の出欠状況、学業成績、資格外活動の状況等を的確に把握し、長期欠席者や学業成績の良好でない者に対して連絡や指導を行い、出欠状況等の改善を図っているなど、外国人留学生の受入れにおいて在籍管理の体制を整備している大学等であることなどを要件としている。

しかし、私学事業団が交付した経常費補助金の交付先には、各大学等の不法残留者や在留資格「留学」の在留期間更新許可申請が不許可となった者の状況等により、1年に一度在留状況を確認する必要があるなどと判断して同庁が慎重審査対象校とした大学が含まれており、これに該当する平成29年度の1校に係る計1515万余円(海外からの学生の受入れ1459万余円、大学等の教育研究環境の国際化55万余円)及び令和元年度の3校に係る計5707万余円(海外からの学生の受入れ計3409万余円、大学等の教育研究環境の国際化計2298万円)の経常費補助金をそれぞれ減額することなく交付していた。

上記の事態は、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年文部大臣裁定)等に違反するものではないが、当該特別補助は外国人留学生に係る在籍管理の体制を整備していることを要件としていることから、文部科学省及び私学事業団は、慎重審査対象校等とされているかなど、大学等における外国人留学生に係る在籍管理の状況も考慮して経常費補助金を交付する仕組みを設けることなどを検討する必要がある。

(注16) 令和3年度については、「2019年度及び2018年度の連続する2年間において、出入国在留管理庁から『慎重審査対象校』に選定された大学は推薦できない(推薦を受け付けない)」こととしている。

エ 大学等における外国人留学生の在籍管理等の状況
(ア) 大学、専修学校等の外国人留学生の受入れの報告状況等

在留資格が「留学」となっている外国人留学生は、原則として就労を行うことはできず、出入国在留管理庁長官から資格外活動の許可を得ずに就労すると、在留期間を更新できなかったり、取り消されたりする可能性がある。また、出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和56年法務省令第54号)によれば、在留資格が「留学」となっている者が資格外活動許可を得た上で行うことができることとされている就労は、風俗営業等を除く、週に28時間以内(在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間中は1日について8時間以内)の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動であるとされている。このため、これに違反した就労を行った場合には、同様に、在留期間を更新できなかったり、取り消されたりする可能性がある。

そして、文部科学省は、在籍管理の徹底等通知等において、留学という口実のもと、我が国での就労を目当てに在留するような学生を安易に受け入れることは、大学等における学修の阻害要因となることなどが懸念され、また、受入れ機関である各大学等にとっては、教育活動や適切な在籍管理に支障をもたらすおそれがあるとしており、外国人留学生を受け入れている各大学等に対して、外国人留学生の増加によって不法残留者が増加することとならないように求めるとともに、引き続き、退学、除籍又は所在不明となった外国人留学生の届出をするよう求めている。また、外国人留学生の適切な在籍管理として学業成績、資格外活動の状況等を的確に把握し、長期欠席者や学業成績の良好でない者に対する連絡や指導を徹底するとともに、改善の見込みのない場合には退学等の適切な対応をするよう大学等に要請している。

そこで、検査対象大学等のうち元年度に正規生が在籍している29校及び非正規生が在籍している23校において、資格外活動許可の有無の把握等の状況をみたところ、在留カード等により外国人留学生の資格外活動許可の有無を把握している大学等は、正規生については26校(全29校の89.6%)、非正規生については20校(全23校の86.9%)と、多くの大学等が把握していた。一方、資格外活動先の名称及び業務内容を把握している大学等は、正規生については13校(全29校の44.8%)、非正規生については4校(全23校の17.3%)にとどまっていた。

(イ) 専修学校における外国人留学生の資格外活動の把握状況

文部科学省は、専修学校については、専修学校受入れ通知において、入学を許可して受け入れた外国人留学生について各専修学校が自ら責任を持って在籍管理等を行う必要があり、外国人留学生の出欠状況、学業成績、資格外活動の状況等を的確に把握するとともに、長期欠席者や学業成績の良好でない者に対する連絡や指導を徹底することなどとしている。また、専修学校管理徹底通知において、無断欠席者、長期欠席者に対する指導方針や除籍基準を策定し外国人留学生に対して周知徹底すること、退学・除籍させる外国人留学生についてはできる限り帰国するよう勧めること、資格外活動については労働の内容、就業場所、就業期間及び就業時間、雇用主の連絡先等を常時正確に把握することなどとしている。

そして、外国人留学生の資格外活動であるアルバイトの指導及び実態把握状況については、専修学校実態調査において調査を行っており、元年度の調査によると、回答を得た606専修学校における回答別の割合は、「規定時間の厳守等基本的な指導を行っている」が78.2%、「アルバイト先を把握している」が77.6%、「アルバイト先の紹介を行っている」が29.9%、「定期的にアルバイト先に連絡を取り状況把握をしている」が14.4%、「上記は行っていない」が9.4%となっていた(調査項目は複数選択可となっている。)

(5)外国人留学生の卒業、進路等の状況

ア 外国人留学生の卒業等の状況

大学等が文部科学省に提出している退学者等名簿をみると、平成29年度から令和元年度までの間に退学、除籍又は所在不明となった外国人留学生数は、図表1-10のとおりとなっており、退学者及び所在不明者は年々増加していた。

図表1-10 検査対象大学等における外国人留学生の卒業等の状況(平成29年度~令和元年度)

(単位:人)
年度 退学者 除籍者 所在不明者
平成29年度 2,624 2,254 13
  30年度 3,439 2,359 515
令和元年度 4,559 2,272 624
10,622 6,885 1,152

なお、図表1-10における所在不明者は、東京福祉大学の所在不明者が大半を占めており、同大学の所在不明者を除くと年度ごとの差はほとんどない状況となっていた。

そこで、検査対象大学等において、平成29年度から令和元年度までの間に、卒業・修了等及び退学・除籍により各大学等を離籍した外国人留学生(以下「離籍者」という。)計62,207人について卒業等の状況をみたところ、図表1-11のとおり、卒業・修了等者57,315人(92.1%)、退学者及び除籍者計4,892人(7.8%。うち退学者3,257人(5.2%)、除籍者1,635人(2.6%))となっており、各年度でみても構成比はほぼ同様となっていた(注17)

(注17) 所定の単位を取得した後に学位を取らずに退学した満期・単位取得退学者は、退学者及び除籍者ではなく、卒業・修了等者に含めている。以下同じ。

zuhyo1-11図表1-11 検査対象大学等における外国人留学生の卒業等の状況(平成29年度~令和元年度)

図表1-11 検査対象大学等における外国人留学生の卒業等の状況(平成29年度~令和元年度)

(単位:人、%)
年度 卒業・修了等 退学・除籍
退学 除籍
人数(A) 構成比
(A)/(E)
人数(B) 構成比
(B)/(E)
人数(C) 構成比
(C)/(E)
人数(D) 構成比
(D)/(E)
人数(E) 構成比
平成29年度 17,815 91.5 1,634 8.4 990 5.0 644 3.3 19,449 100
  30年度 19,013 91.8 1,684 8.1 1,165 5.6 519 2.5 20,697 100
令和元年度 20,487 92.8 1,574 7.1 1,102 4.9 472 2.1 22,061 100
57,315 92.1 4,892 7.8 3,257 5.2 1,635 2.6 62,207 100

検査対象大学等のうち2教育センターは、外国人が日本国内で進学するための教育機関でもあり、外国人留学生が在籍学生のほとんどを占めていることから、2教育センターを除いた29校における元年度の在籍学生数に占める外国人留学生数の割合をみたところ、平均で18.7%となっており、平均を上回っているのは6校(外国人留学生の割合は平均58.4%。以下、これらの6校を「外国人留学生高比率大学等」という。)となっていた。そして、平成29年度から令和元年度までの間の外国人留学生高比率大学等における離籍者計5,402人について卒業等の状況をみたところ、図表1-12のとおり、退学者及び除籍者は計1,752人(32.4%)となっており、その割合は全体の7.8%と比べて4倍以上の高率となっていた。また、退学者の人数が3年間で96人(5.6%)から245人(13.1%)に増加している一方、除籍者については523人(30.5%)から314人(16.9%)に減少していた。

zuhyo1-12図表1-12 外国人留学生高比率大学等における外国人留学生の卒業等の状況(平成29年度~令和元年度)

図表1-12 外国人留学生高比率大学等における外国人留学生の卒業等の状況(平成29年度~令和元年度)

(単位:人、%)
年度 卒業・修了等 退学・除籍
退学 除籍
人数(A) 構成比
(A)/(E)
人数(B) 構成比
(B)/(E)
人数(C) 構成比
(C)/(E)
人数(D) 構成比
(D)/(E)
人数(E) 構成比
平成29年度 1,091 63.8 619 36.1 96 5.6 523 30.5 1,710 100
  30年度 1,261 68.7 574 31.2 187 10.1 387 21.0 1,835 100
令和元年度 1,298 69.8 559 30.1 245 13.1 314 16.9 1,857 100
3,650 67.5 1,752 32.4 528 9.7 1,224 22.6 5,402 100

さらに、検査対象大学等において、平成29年度から令和元年度までの間に日本政府奨学金、学習奨励費等の文部科学省等の奨学金を受給したことのある者(以下「日本政府奨学金等受給者」という。)に係る離籍者計12,655人について卒業等の状況をみたところ、図表1-13のとおり、退学者及び除籍者は計516人(4.0%)となっており、その割合は全体の7.8%と比べて低くなっているが、毎年度150人以上の退学者及び除籍者が発生している状況となっていた。

zuhyo1-13図表1-13 検査対象大学等における日本政府奨学金等受給者の卒業等の状況(平成29年度~令和元年度)

図表1-13 検査対象大学等における日本政府奨学金等受給者の卒業等の状況(平成29年度~令和元年度)

(単位:人、%)
年度 卒業・修了等 退学・除籍
退学 除籍
人数(A) 構成比
(A)/(E)
人数(B) 構成比
(B)/(E)
人数(C) 構成比
(C)/(E)
人数(D) 構成比
(D)/(E)
人数(E) 構成比
平成29年度 4,165 96.4 152 3.5 143 3.3 9 0.2 4,317 100
30年度 4,106 95.6 186 4.3 180 4.1 6 0.1 4,292 100
令和元年度 3,868 95.6 178 4.3 152 3.7 26 0.6 4,046 100
12,139 95.9 516 4 475 3.7 41 0.3 12,655 100

そして、平成29年度から令和元年度までの間の退学又は除籍の主な理由について、検査対象大学等における状況を正規生、非正規生等別に確認したところ、正規生については、学費未納(642人、正規生の退学者及び除籍者全体に占める割合30.3%)、進路変更(520人、同24.5%)の順に多くなっていて、これらで全体の過半(54.9%)を占めていた。正規生のうち、日本政府奨学金等受給者についてみると、進路変更(78人)が最も多く、退学者及び除籍者(265人)の29.4%となっていた。また、正規生のうち、外国人留学生高比率大学等についてみると、学費未納(311人)が最も多く、退学者及び除籍者(549人)の過半(56.6%)を占めていた。一方、非正規生等については、退学又は除籍の理由は、その他としている者を除いて、学費未納(370人、非正規生等の退学者及び除籍者全体に占める割合13.3%)、進路変更(333人、同11.9%)の順に多くなっていた。その他としている者は、学内での進学による者が多数となっていた(別図表1-10参照)。

また、平成29年度から令和元年度までの間に退学又は除籍となった日本政府奨学金等受給者516人に対して平成29年度から令和元年度までの間に支給された日本政府奨学金等の支給額について、正規生、非正規生等別に集計したところ、図表1-14のとおり、計6億0085万余円となっていた。このうち退学又は除籍の主な理由別に奨学金等支給額が多額となっているものについてみると、正規生における退学では進路変更(3か年度計9411万余円)、経済的な理由(同4921万余円)等、除籍では学費未納(同2252万余円)、成績不良(同524万余円)等となっており、非正規生等における退学ではその他(同2億5325万余円)のほか進路変更(同1912万余円)等、除籍ではその他(同168万円)のほか病気・怪我(同72万円)等となっていた。

zuhyo1-14図表1-14 退学又は除籍した日本政府奨学金等受給者に係る奨学金等支給額(平成29年度~令和元年度)

図表1-14 退学又は除籍した日本政府奨学金等受給者に係る奨学金等支給額(平成29年度~令和元年度)

(単位:人、千円)
区分 受給者数
・支給額
平成29年度 30年度 令和元年度
退学 除籍 退学 除籍 退学 除籍 退学 除籍


受給者数 59 8 67 78 3 81 95 22 117 232 33 265
支給額 50,464 2,760 53,224 95,427 5,410 100,837 136,548 25,066 161,615 282,440 33,236 315,677
平成29年度
支給額
50,464 2,760 59,278 95,427 4,392 63,670 38,119 10,741 48,861 147,862 17,893 165,756
30年度
支給額
      36,149 1,018 37,167 54,670 9,042 63,712 90,820 10,060 100,880
令和元年度
支給額
            43,757 5,283 49,040 43,757 5,283 49,040




受給者数 84 1 86 102 3 105 57 4 61 243 8 251
支給額 91,606 400 92,006 117,106 800 117,906 73,420 1,840 75,260 282,133 3,040 285,173
平成29年度
支給額
91,606 400 92,006 19,075 - 19,075 - - - 110,682 400 111,082
30年度
支給額
      98,031 800 98,831 7,860 - 7,860 105,891 800 106,691
令和元年度
支給額
            65,560 1,840 67,400 65,560 1,840 67,400
受給者数 143 9 152 180 6 186 152 26 178 475 41 516
支給額 142,070 3,160 145,230 212,534 6,210 218,744 209,968 26,906 236,875 564,573 36,276 600,850
平成29年度
支給額
142,070 3,160 145,230 78,354 4,392 82,746 38,119 10,741 48,861 258,544 18,293 276,838
30年度
支給額
      134,180 1,818 135,998 62,530 9,042 71,572 196,711 10,860 207,571
令和元年度
支給額
            109,318 7,123 116,441 109,318 7,123 116,441

また、検査対象大学等が文部科学省に提出した退学者等名簿における所在不明者についてみると、平成29年度2人、30年度3人、令和元年度22人、計27人となっており、このうち日本政府奨学金等受給者は平成30年度1人、令和元年度4人、計5人となっていて、これらの者に対する平成29年度から令和元年度までの間の日本政府奨学金等の支給額は計1280万余円となっていた。

イ 外国人留学生の進路の状況

図表1-11における卒業・修了等者57,315人のうち正規生及び非正規生の計53,849人について、卒業・修了等時点での進路状況及び就職希望者数等についてみたところ、図表1-15のとおりとなっており、元年度の正規生9,476人についてみると、日本国内での就職2,901人(30.6%)、日本国内での進学1,583人(16.7%)、国外での就職1,271人(13.4%)等となっていた (注18)。そして、卒業・修了等者のうち国内での就職者の割合は、27.6%から30.6%までの間で推移しており、国内での就職希望者のうち元年度は69.7%が国内で就職していた(別図表1-11参照)。

また、非正規生は、大学院等への進学を目的とした研究生等が多数であることから就職することは想定されないことを理由として、就職希望者数等を把握していない大学等が多く見受けられた。そのため、元年度における非正規生の進路状況をみると、図表1-15のとおり、大学等が進路状況を把握していないことから不明となっている者が4,547人(45.6%)、非正規生が本国の原籍大学等へ戻ることなどから国外のその他が3,136人(31.4%)となっており、大学等が把握している範囲において確認したところ日本国内での進学は1,769人(17.7%)等となっていた。

(注18) 国外の「その他」が1,968人(20.7%)となっているのは、国外で就職活動中の者が878人、大学等が国外にいることは把握しているが進路を把握していないなどの者が708人いるなどのためである。

zuhyo1-15図表1-15 外国人留学生の進路状況(平成29年度~令和元年度)

図表1-15 外国人留学生の進路状況(平成29年度~令和元年度)

(単位:人、%)
年度 区分 国内 国外 不明 合計
就職 進学 その他 就職 進学 その他
平成
29
年度
正規生 人数 2,095 1,270 662 4,027 1,013 320 1,457 2,790 708 7,525
構成比 28 17 9 54 13 4 19 37.0 9 100
不正規生 人数 8 1,621 373 2,002 20 66 2,849 2,935 4,193 9,130
構成比 0.0 17.7 4.0 21.9 0.2 0.7 31.2 32.1 45.9 100
人数 2,103 2,891 1,035 6,029 1,033 386 4,306 5,725 4,901 16,655
構成比 12.6 17.3 6.2 36.1 6.2 2.3 25.8 34.3 29.4 100
30
年度
正規生 人数 2,358 1,427 1,071 4,856 1,294 350 1,350 2,994 688 8,538
構成比 27.6 16.7 12.5 56.8 15.1 4.0 15.8 35.0 8.0 100
不正規生 人数 20 1,511 441 1,972 14 49 3,066 3,129 4,122 9,223
構成比 0.2 16.3 4.7 21.3 0.1 0.5 33.2 33.9 44.6 100
人数 2,378 2,938 1,512 6,828 1,308 399 4,416 6,123 4,810 17,761
構成比 13.3 16.5 8.5 38.4 7.3 2.2 24.8 34.4 27.0 100
令和

年度
正規生 人数 2,901 1,583 793 5,277 1,271 349 1,968 3,588 611 9,476
構成比 30.6 16.7 8.3 55.6 13.4 3.6 20.7 37.8 6.4 100
不正規生 人数 27 1,769 397 2,193 11 70 3,136 3,217 4,547 9,957
構成比 0.2 17.7 3.9 22.0 0.1 0.7 31.4 32.3 45.6 100
人数 2,928 3,352 1,190 7,470 1,282 419 5,104 6,805 5,158 19,433
構成比 15.0 17.2 6.1 38.4 6.5 2.1 26.2 35.0 26.5 100
正規生 人数 7,354 4280 2526 14160 3578 1019 4775 9372 2007 25539
構成比 28.7 16.7 9.8 55.4 14 3.9 18.6 36.6 7.8 100
不正規生 人数 55 4,901 1,211 6,167 45 185 9,051 9,281 12,862 28,310
構成比 0.1 17.3 4.2 21.7 0.1 0.6 31.9 32.7 45.4 100
人数 7,409 9,181 3,737 20,327 3,623 1,204 13,826 18,653 14,869 53,849
構成比 13.7 17 6.9 37.7 6.7 2.2 25.6 34.6 27.6 100

(注) 「その他」欄には就職活動中の者、進学準備中の者、大学等が進路を把握していない者等を計上している。また、「不明」欄には国内に在留する又は国外へ出国するということを含めて大学等が進路状況を全く把握していない者を計上している。

ウ 外国人留学生の日本国内での就職及び進学の状況

前記のとおり、「日本再興戦略2016」において、外国人留学生の日本国内での就職率を当時の3割から5割に向上させることを目指すとされている。

そこで、外国人留学生の就職状況等について、JASSOが公表している「外国人留学生進路状況・学位授与状況調査結果」(以下「進路状況調査」という。)を基に、平成27年度から30年度までの間の日本国内での学校種別等ごとの就職及び進学の状況をまとめたところ、図表1-16のとおり、外国人留学生が日本国内で就職する割合は年々増加しているものの、30年度においても35.0%にとどまっている状況となっていた(注19)

(注19) 就職又は進学の割合を算出するに当たり、卒業(修了)外国人留学生総数から進路不明者を除いている。

zuhyo1-16図表1-16 日本国内での就職及び進学の状況(平成27年度~30年度)

図表1-16 日本国内での就職及び進学の状況(平成27年度~30年度)

(単位:人、%)
区分 就職 進学
平成
27年度

28年度

29年度

30年度

27年度

28年度

29年度

30年度


博士課程 539 534 677 659 75 49 83 86
修士課程 2,917 3,205 3,215 3,584 1,474 1,559 1,693 1,840
専門職学位課程 257 321 313 346 18 56 17 18
大学 4,654 4,550 4,418 4,741 2,081 1,871 1,982 2,075
(大学院、大学の計) 8,367 8,610 8,623 9,330 3,648 3,535 3,775 4,019
短期大学 131 221 272 338 130 113 115 104
高等専門学校 9 17 9 5 83 128 129 121
専修学校(専門課程) 3,725 5,532 7,246 10,613 6,658 8,632 9,047 10,912
準備教育課程を設置する教育施設 93 113 92 116 1,746 1,860 1,802 2,015
合計(A) 12,325 14,493 16,242 20,402 12,265 14,268 14,868 17,171
卒業(修了)外国人留学生総数(B) 40,879 46,559 50,054 58,174 40,879 46,559 50,054 58,174
就職又は進学の割合(A)/(B) 30.1 31.1 32.4 35.0 30.0 30.6 29.7 29.5

また、文部科学省は、学校教育行政に必要な学校に関する基本的事項を明らかにすることを目的として学校基本調査を毎年度実施している。この中で、大学、大学院、短期大学及び高等専門学校における外国人留学生を含めた全ての学生の就職、進学等の卒業後の進路状況(国内外を問わない。)を調査している。そこで、JASSOの進路状況調査と文部科学省の学校基本調査を基に、30年度の外国人留学生と外国人留学生を含めた全ての学生の進路状況を比較したところ、就職の割合については、外国人留学生が少ない高等専門学校を除いて、学生全体は66.2%から81.9%までであるのに対して、外国人留学生は48.7%から59.4%までと学生全体よりも低くなっている一方、進学の割合については、どの区分においても外国人留学生の方が学生全体よりも高くなっていた(別図表1-12参照)。

エ 外国人留学生の就職等に係る支援の状況

厚生労働省は、総合的対応策を受けて、外国人雇用サービスセンター及び留学生コーナーを増設し、未内定外国人留学生の把握等を行うほか、国内就職希望の外国人留学生に対して在籍の早い段階から就職ガイダンスを実施するなど、外国人留学生に対する就職支援の強化を図っている。

文部科学省は、総合的対応策等を受けて、各大学等に対して通知(注20)を発して、日本国内での就職を希望している外国人留学生に資するよう、卒業者(修了者)数、就職希望者数、就職者数、就職希望者数に対する就職率等を公表するよう依頼するなどしている。また、同省は、日本政府奨学金について、卒業後に日本国内で就職することを希望している外国人留学生を優先配分枠や要件に加えるなどのプログラムを令和元年度から実施している。

JASSOは、外国人留学生の日本国内への定着促進を目的として、外国人留学生の就職支援の取組として外国人留学生を主な対象とした就職ガイダンス、外国人留学生に配慮した合同企業説明会等の全てを実施している大学等に対して平成30年度から学習奨励費を重点配分するために、新たに就職支援特別枠を設けている。そして、令和元年度の就職支援特別枠の配分に当たっては、上記文部科学省の通知に基づき、外国人留学生の就職率の公表を行っている大学等に対して重点的に配分するとともに、各大学等における外国人留学生の日本国内における就職実績等を考慮するとしている。

そこで、検査対象大学等のうち正規生が在籍している29校について、元年度における正規生に係る就職支援の実施状況、就職割合等をみたところ、図表1-17のとおり、外国人留学生の就職率の公表及び外国人留学生の就職に係る情報の公表については、実施率がそれぞれ44.8%、58.6%と相対的に低くなっている一方、これら以外の項目については、実施率はおおむね80%以上となっていた。そして、いずれの項目についても、実施している大学等は実施していない大学等に比べて就職割合がおおむね高くなっていた。

(注20)通知「外国人留学生数及び留学生の就職率等の公表について(依頼)」(平成31年31高学留第5号文部科学省高等教育局学生・留学生課長通知)

zuhyo1-17図表1-17 正規生に係る就職支援の実施状況、就職割合等(令和元年度)

図表1-17 正規生に係る就職支援の実施状況、就職割合等(令和元年度)

(単位:校、人、%)
区分 実施状況 大学等数 卒業・
修了等者(A)
国内
就職者(B)
就職割合
(B)/(A)
外国人留学生の就職率の公表 実施している 13(44.8) 4,089 1,308 31.9
実施していない 16 5,387 1,593 29.5
外国人留学生の就職に係る情報の公表 実施している 17(58.6) 6,510 2,028 31.1
実施していない 12 2,966 873 29.4
外国人留学生の就職に係る相談窓口の設置
や相談員の配置
実施している 26(89.6) 9,322 2,864 30.7
実施していない 3 154 37 24
外国人留学生受入企業の情報収集・提供 実施している 26(89.6) 9,422 2,886 30.6
実施していない 3 54 15 27.7
外国人留学生を主な対象とした就職ガイダ
ンスの実施
実施している 26(89.6) 9,322 2,864 30.7
実施していない 3 154 37 24
外国人留学生に配慮した合同企業説明会の
実施
実施している 23(79.3) 8,663 2,650 30.5
実施していない 6 813 251 30.8
全体 29 9,476 2,901 30.6
  • 注(1) 「大学等数」欄の括弧書きは、検査対象大学等のうち正規生が在籍している29校における実施率を示す。
  • 注(2) 令和元年度において卒業・修了者がいない大学等も含めている。

(6) 総合的対応策等における外国人留学生に係る施策の状況

前記のとおり、平成30年12月及び令和元年12月に公表された総合的対応策及び総合的対応策(改訂)は、外国人材の受入れ・共生のための取組をより強力に、かつ、包括的に推進する観点から取りまとめられたもので、必ずしも、外国人留学生に係る施策のみを取りまとめたものではない。そこで、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)において、法務省、文部科学省及び厚生労働省が担当省となっている施策のうち、外国人留学生の就職等の支援及び在籍管理の徹底として位置付けられている具体的施策数及び事業数をみると、42施策65事業となっていた(別図表1-13(事業数の計上方法は第2の3)参照。主な施策の実施状況等は別図表1-14参照)。

なお、第2の1(2)及び(3)で記述した、国立大学法人運営費交付金等を用いた外国人留学生の受入体制の整備、外国人留学生に対する日本政府奨学金及び協定受入奨学金の支給、スーパーグローバル大学創成支援事業等の補助事業、JASSOが実施している留学生借り上げ宿舎支援事業等は、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)の施策による事業とされていないが、これらについては、第2の1(2)及び(3)で記述したとおり、外国人留学生の受入れに当たって国立大学法人運営費交付金、日本政府奨学金、文部科学省からの補助金等が大学等に対して交付等されている。

2 技能実習制度の適正化に係る取組の状況

第1の3(3)イのとおり、技能実習機構は、平成29年1月に、資本金の全額を政府が出資する認可法人として設立された。そして、技能実習機構は、技能実習法等に基づき、技能実習計画の認定、技能実習生の保護、実習実施者及び監理団体に対する機構実地検査等の業務を行っており、これらの業務を実施するために、毎年度、主務大臣から機構交付金の交付を受けている。なお、実習実施者及び監理団体については、技能実習に係る国庫補助金等は交付されていない。

技能実習機構の主な業務の実施状況等についてみたところ、次のとおりとなっていた。

(1)技能実習機構の予算、決算等の状況

ア 技能実習機構の予算及び決算の状況

技能実習機構は、技能実習法によれば、毎事業年度、予算等を作成し、当該年度の開始前に、主務大臣の認可を受けなければならないこと、毎事業年度、財務諸表を作成し、当該年度の終了後3月以内に、決算報告書等とともにこれを主務大臣に提出し、その承認を受けなければならないことなどとされている。また、技能実習機構の資本金1億9304万円の全額が政府出資金となっている。

技能実習機構の収入は、28年度(注21)から令和元年度までの間の実績をみると、機構交付金に係る収入である「(項)国庫補助金等収入」の収入決定済額が、平成28年度8億4268万余円、29年度31億0330万余円、30年度34億5181万余円、令和元年度62億1141万余円となっており、元年度は収入の80.3%を占めていた(別図表2-1参照)。

技能実習機構の支出は、平成28年度から令和元年度までの間の実績をみると、技能実習計画の認定、実習実施者届出書等の受理、実習実施者及び監理団体に対する機構実地検査等に係る経費である「(目)技能実習事業費」の支出決定済額が、平成28年度755万余円、29年度13億4550万余円、30年度28億4802万余円、令和元年度33億0048万余円となっており、元年度は支出の53.3%を占めていた(別図表2-2参照)。

そして、前記の「(項)国庫補助金等収入」に計上された機構交付金の執行状況についてみると、額の確定額は、平成28年度4億3858万余円、29年度26億8160万余円、30年度29億2082万余円、令和元年度47億9151万余円となっていた。また、技能実習機構は、額の確定額を超える機構交付金の交付を受けている場合には、その超えた額を毎年度国庫に返還することとなっており、国庫返還額は、平成28年度4億0409万余円、29年度4億2169万余円、30年度5億3099万余円、令和元年度14億1989万余円となっていた(別図表2-3参照)。

(注21)
28年度  平成29年2月1日の本部(仮事務所)の設置日から同年3月末までの間をいう。以下、第2の2(1)において同じ。
イ 技能実習機構の職員数等

平成28年度から令和元年度までの間の技能実習機構の職員数等をみると、定員数については、総合的対応策において、技能実習機構の体制強化が盛り込まれたことなどを踏まえて、元年度には346人から587人へと増員されていた。また、職員数については、年々増加していたが、元年度の定員数は587人であるのに対して、年度当初時点の職員数は481人、年度末時点の職員数は582人となっており、定員数を充足していなかった(別図表2-4参照)。この理由について、技能実習機構は、随時募集を行っていたが、応募者数が少なく、応募があったとしても選考の結果、採用に至らなかった場合があったためとしている。なお、技能実習機構は、元年度中に採用条件の一部を緩和するなどして、職員の確保に努めていた。

(2)技能実習機構の主な業務の実施状況

前記のとおり、技能実習機構は、技能実習計画の認定、実習実施者届出書の受理等の業務を行っており、当該業務の実施に当たり、実習実施者等から技能実習計画、実習実施者届出書等の提出を受けている。そして、技能実習機構は、提出を受けた技能実習計画、実習実施者届出書等の審査を行うとともに、これらをスキャナで電子化して業務システム内に保存したり、審査の際の検索等に資するため必要に応じて技能実習計画、実習実施者届出書等の記載事項の一部を業務システムに入力したりして、技能実習計画等に関する情報を業務システムに集約している。

会計検査院が、技能実習機構の主な業務の実施状況について、業務システムに集約されている情報を活用するなどして分析するなどしたところ、次のとおりとなっていた(注22) 。

(注22)  検査に当たっては、業務システムに集約されている情報を活用するなどして技能実習機構が可能な範囲で作成した調書等を基に業務の実施状況を確認した。当該調書には、技能実習機構がウェブサイト上で公表している技能実習計画の認定件数等の集計後に業務システムに追加されるなどした情報が含まれていることから、図表中の数値には当該公表値と一致しないものがある。

ア 技能実習計画の認定、監理団体の許可等の状況
(ア) 技能実習計画の認定等の状況

技能実習基本方針によれば、技能実習制度の趣旨・目的は、開発途上地域等への技能等の移転による国際協力の推進とされており、この趣旨・目的に従って技能等の移転を図るためには、実習実施者において行われる技能実習が、技能実習生が適切に技能等を修得等することができるものでなければならないとされている。

前記のとおり、技能実習法によれば、技能実習を行わせようとする者は、技能実習計画を作成し、その技能実習計画が適当である旨の認定を受けることができることとされており、技能実習計画の認定に関する事務は技能実習機構が行うこととなっている。

また、技能実習計画には、技能実習を行わせようとする者の氏名又は名称、技能実習生の氏名及び国籍、技能実習の目標、内容及び期間等を記載し、所定の要件を証する書面等を添付しなければならないこととされている。

そして、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、技能実習計画が、次の所定の要件のいずれにも適合すると認めるときは、その認定をすることとされている。

① 技能実習生に修得等させる技能等が本国において修得等が困難なものであること

② 技能実習の目標が技能実習の区分に応じた技能検定等の合格等を掲げるものであること

③ 技能実習生が制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること及び本国に帰国後我が国において修得等した技能等を要する業務に従事すること が予定されていること

④ 技能実習生が修得等した技能等の評価を技能検定等により行うこと 等

技能実習機構は、前記の技能実習計画に添付する書面等として、技能実習を行わせようとする者から申告書、理由書等の提出を受けて、技能実習計画が上記の認定に係る要件に適合するかの審査を行っている。また、技能実習機構は、技能実習計画の認定をした場合、技能実習計画に認定番号を付与して、技能実習を行わせようとする者に認定番号を通知している。

平成29年度から令和元年度までの間の技能実習計画の申請、認定等の件数等についてみると、図表2-1のとおり、申請件数は、計約85.5万件となっていた。そして、申請件数のうち、元年度末までに認定等の措置が行われた計約82.9万件についてみると、全体の98.7%に当たる計約81.8万件が認定されていた。一方、技能実習の内容等が技能実習の区分に応じて技能実習規則で定める基準に適合していないなどの理由から不認定とされたものが計283件、前段階の技能実習の区分に応じた技能検定の合格等が達成できないなどの理由から申請が取り下げられたものが計9,892件となっていた。

zuhyo2-1図表2-1 技能実習計画の申請、認定等の件数等(平成29年度~令和元年度)

図表2-1 技能実習計画の申請、認定等の件数等(平成29年度~令和元年度)

(単位:件、%)
年度 申請件数 措置件数  
認定 不認定 取下げ その他
平成29年度 117,722 65,160 64,048 7 1,025 80
(100) (98.2) (0.0) (1.5) (0.1)
30年度 367,797 393,268 389,039 139 3,973 117
(100) (98.9) (0.0) (1.0) (0.0)
令和元年度 370,250 371,169 365,912 137 4,894 226
(100) (98.5) (0.0) (1.3) (0.0)
855,769 829,597 818,999 283 9,892 423
(100) (98.7) (0.0) (1.1) (0.0)
  • 注(1) 「申請件数」は、技能実習機構が受理した年度で区分している。
  • 注(2) 「措置件数」は、措置年月日が入力されていないなどのデータを除いて算出している。
  • 注(3) 「措置件数」が「申請件数」を上回っている年度があるのは、前年度に受理した申請に対して当該年度に措置した件数が含まれていることによる。
  • 注(4) 下段の括弧書きは、「措置件数」に占める割合である。
  • 注(5) 平成29年度については、「申請件数」は29年7月から30年3月までの間に技能実習機構が受理した件数であり、「措置件数」は29年11月から30年3月までの間に技能実習機構等が認定するなどした件数である。

認定された計約81.8万件を技能実習の区分別にみると、第1号技能実習が計約40.5万件(認定件数の合計に占める割合49.5%)、第2号技能実習が計約37.2万件(同45.4%)となっており、第1号技能実習と第2号技能実習の認定件数を合わせた数は全体の94.9%を占めていて、第3号技能実習は計約4.1万件(同5.0%)と大幅に少ない状況となっていた。また、技能実習生の受入れ方式別にみると、企業単独型が計約2.3万件(同2.8%)、団体監理型が計約79.5万件(同97.1%)となっており、ほとんどが団体監理型となっていた(別図表2-5参照)。

そして、認定された計約81.8万件を国・地域別にみると、ベトナムが計約42.0万件(同51.2%)、中国が計約17.8万件(同21.7%)、フィリピンが計約7.2万件(同8.8%)、インドネシアが計約6.9万件(同8.5%)となっていた(別図表2-6参照)。また、職種別にみると、建設が計約15.6万件(同19.0%)、食品製造が計約15.1万件(同18.5%)、機械・金属が計約14.4万件(同17.6%)、溶接、プラスチック成形等のその他が計約21.7万件(同26.6%)となっていた(別図表2-7参照)。

(イ) 実習実施者届出書の提出等の状況

前記のとおり、技能実習計画には、技能実習の期間を記載しなければならないこととされているが、当該期間は申請時点において技能実習を予定していた期間であり、技能実習機構が技能実習計画を認定した後、入国手続や実習実施者の都合等により技能実習の予定期間が変更される場合がある。そのため、技能実習機構は、技能実習計画を認定しただけでは実際に技能実習が行われているかを把握することはできない。

また、前記のとおり、技能実習法によれば、実習実施者が技能実習を開始したときは、遅滞なく、実習実施者届出書を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出しなければならないこととされており、実習実施者届出書の受理に係る事務は技能実習機構が行うこととなっている。なお、実習実施者届出書は、実習実施者が初めて技能実習を開始したときのみ、提出することとなっている。

そこで、平成29年度から令和元年度までの間の実習実施者届出書の提出件数についてみると、図表2-2のとおりとなっており、技能実習機構は、元年度までに計約6.6万件の実習実施者届出書を受理していた。

zuhyo2-2図表2-2 実習実施者届出書の提出件数等(平成29年度~令和元年度)

図表2-2 実習実施者届出書の提出件数等(平成29年度~令和元年度)

(単位:件、%)
年度 提出件数  
技能実習開始日から実習実施者届出書の受理日までの期間
2週間以内
(14日以内)
2週間超
1か月以内
(15日~31日)
1か月超
2か月以内
(32日~62日)
2か月超
3か月以内
(63日~92日)
3か月超
1年以内
(93日~366日)
1年超
(367日以上)
平成
29年度
4,490 1,462 729 277 22 0 0
(58.7) (29.2) (11.1) (0.8) (0) (0)
30年度 45,064 11,721 7,081 6,003 2,086 2,138 8
(40.3 (24.3) (20.6) (7.1) (7.3) (0.0)
令和
元年度
16,675 33,446 1,790 2,603 781 1,485 60
(33.9) (17.6) (25.6) (7.6) (14.6) (0.5)
66,240 16,629 9,600 8,883 2,889 3,623 68
(39.8) (23.0) (21.3) (6.9) (8.6) (0.1)
  • 注(1) 「提出件数」は、技能実習機構が受理した年度で区分している。
  • 注(2) 「技能実習開始日から実習実施者届出書の受理日までの期間」欄の件数は、技能実習開始日が入力されていないなどのデータを除いて算出していることから、「技能実習開始日から実習実施者届出書の受理日までの期間」の各欄の件数を合計しても「提出件数」とは一致しない。
  • 注(3) 下段の括弧書きは、「提出件数」のうち技能実習開始日が入力されていないなどのデータを除いた件数に占める割合である。
  • 注(4) 平成29年度の「提出件数」は、29年12月から30年3月までの間に技能実習機構が受理した件数である。

また、実習実施者が実際に技能実習を開始した日から技能実習機構が実習実施者届出書を受理するまでの期間についてみると、3か年度の合計で2週間以内が計約1.6万件(全体の39.8%)、2週間超1か月以内が計約0.9万件(同23.0%)となっており、1か月以内に受理されたものが全体の62.9%となっていた。一方で、3か月超1年以内が計約0.3万件(同8.6%)、1年超が計68件(同0.1%)となっていて、技能実習開始日から実習実施者届出書の受理日までの期間が3か月を超えているものが全体の8.8%見受けられた。

技能実習機構は、出入国在留管理庁及び厚生労働省が制定した技能実習制度運用要領を技能実習機構のウェブサイトに掲載するなどして、実習実施者が技能実習を開始したときは遅滞なく実習実施者届出書を提出するよう周知しているとしているが、上記のように遅滞が生じている理由については、実習実施者又は監理団体の技能実習制度に対する理解が十分でないなどのためであるとしている。

また、技能実習機構から実習実施者届出書の提出の督促状況を聴取したところ、技能実習機構は、前記のとおり、技能実習計画を認定しただけでは実際に技能実習が行われているかを把握することができないことから、実習実施者届出書を提出していない実習実施者から2回目以降の技能実習計画認定申請を受理して既に技能実習を開始していることが確認できた場合等に、実習実施者届出書を速やかに提出するよう実習実施者又は監理団体に対して指導を行っているとしている。そして、技能実習機構は、技能実習生が実際に入国しているかなどを把握できないため、業務システムに集約している技能実習計画等に関する情報を活用して、技能実習を開始しているのに実習実施者届出書を提出していないおそれのある実習実施者を把握して督促することは行っていないとしている。

しかし、技能実習機構と出入国在留管理庁との情報連携の状況を確認したところ、技能実習機構は、出入国在留管理庁から「在留資格「技能実習」の上陸許可を受けた外国人に係る情報」及び「入管法第20条又は第21条の規定に基づく在留資格「技能実習」の申請をした外国人に係る情報」(以下、これらを合わせて「入国情報」という。)の提供を受けており、入国情報の具体的な項目は、技能実習計画の認定番号、実習実施者名、技能実習生の氏名、国籍、入国年月日、在留期間更新許可年月日等となっていて、技能実習機構が業務システムに集約している技能実習計画等に関する情報と同一の項目が含まれていた。

そして、技能実習機構は、基本的に1か月分の入国情報について出入国在留管理庁から毎月提供を受けているとしていることから、入国情報の提供を受けた時点で、技能実習機構が業務システムに集約している技能実習計画等に関する情報と入国情報とを突合することにより、技能実習生が実際に入国しているかなどを把握することが可能であったと認められる。

現に、会計検査院において確認したところ、技能実習計画等に関する情報と入国情報は、それぞれ一般的な表計算ソフトを用いて突合することが可能であった。そして、元年度に技能実習機構が受理して技能実習開始日から実習実施者届出書の受理日までの期間が1年を超えていた実習実施者届出書60件のうち5件(5実習実施者)について、会計検査院の依頼に基づき、技能実習機構が技能実習計画等に関する情報と入国情報とを突合したところ、それぞれの実習実施者における新制度での1人目の技能実習生の入国年月日等は平成29年12月から30年8月までの間であったことが把握できた。

このように、実習実施者届出書の提出が遅滞していて、技能実習を開始した実習実施者を適時適切に把握することができていない場合には、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣が実習実施者に対して適切に指導監督を行うことができないことになる。

したがって、実習実施者届出書の受理に係る事務を行う技能実習機構は、出入国在留管理庁から提供を受けている入国情報を活用して、技能実習を開始しているのに実習実施者届出書を提出していないおそれのある実習実施者を適時適切に把握することが必要である。そして、実習実施者又は監理団体に対して実習実施者届出書の提出の督促を効率的に行うことが必要である。

(ウ) 監理団体の許可に関する調査等の状況

技能実習基本方針によれば、監理団体は、団体監理型技能実習の実習監理を担う存在であり、団体監理型実習実施者や団体監理型技能実習生へ強い影響力を有しているとされている。

前記のとおり、技能実習法によれば、監理事業を行おうとする者は、主務大臣の許可を受けなければならないこととされており、監理団体の許可は、技能実習機構が事実関係について調査を行い、当該調査結果を主務大臣に報告し、主務大臣が当該調査結果を考慮して行うこととなっている。

また、監理団体の許可の申請書には、監理事業を行おうとする者の名称等を記載し、次の所定の要件を証する書面等を添付しなければならないこととされている。

① 我が国に所在する営利を目的としない法人であること

② 実習実施者に対して、3月に1回以上の頻度で監査を適切に行うことなど、監理事業を技能実習規則で定める基準に従って適正に行うに足りる能力を有するものであること

③ 監理事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有するものであること 等

そして、技能実習機構は、上記の申請書に添付する書面等として、監理事業を行おうとする者から概要書、誓約書等の提出を受けて、監理団体の許可の申請書が上記の許可に係る要件に適合するかの事実関係の調査を行っている。

29年度から令和元年度までの間の監理団体の申請、許可等の件数についてみると、申請件数は計3,224件となっており、技能実習機構はそれらの事実関係の調査を行った上で、申請件数のうち計3,071件を主務大臣へ報告していた。そして、報告件数のうち、元年度末までに主務大臣が計2,942件を許可していた。一方、監理事業を適正に遂行することができる能力を有するものであると認められないなどの理由から不許可としたものが計3件、法人の解散等の理由から申請が取り下げられたものが計39件となっていた(別図表2-8参照)。

(エ) 監査報告書の提出等の状況

前記のとおり、監理団体は団体監理型技能実習の実習監理を担う存在であり、団体監理型技能実習の進捗状況や技能実習計画どおりに技能実習が行われているかを、次のとおり定期的な監査において確認することとなっている。

すなわち、技能実習法等によれば、監理団体は、その実習監理を行う実習実施者に対して、3月に1回以上の頻度等で監査を行うこととされており、監査を行ったときは、その終了後遅滞なく、監査実施日、監査結果等を記載した監査報告書を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出しなければならないこととされている。そして、監査報告書の受理に係る事務は技能実習機構が行うこととなっている。

また、出入国在留管理庁及び厚生労働省は、技能実習制度運用要領において、監査報告書の提出期限を、事務処理に必要な期間を考慮して、監査実施日から2か月以内と定めている。

平成29年度から令和元年度までの間の監査報告書の提出件数についてみると、図表2-3のとおりとなっており、技能実習機構は、元年度までに計約37.6万件を受理していた。

zuhyo2-3図表2-3 監査報告書の提出件数等(平成29年度~令和元年度)

図表2-3 監査報告書の提出件数等(平成29年度~令和元年度)

(単位:件、%)
年度 提出件数



(A)
 
監査実施日から監査報告書の受理日までの期間
監査実施日から2か月以内
(62日以内)
監査実施日から2か月超
(63日以上)
件数
(B)
割合
(B)/((B)+(C))
件数
(c)
割合
(c)/((B)+(C))
平成29年度 283 228 99.5 1 0.4
30年度 117,433 85,437 82.5 18,051 17.4
令和元年度 259,133 173,959 78.3 48,164 21.6
376,849 259,624 79.6 66,216 20.3
  • 注(1) 「提出件数(A)」は、技能実習機構が受理した年度で区分している。
  • 注(2) 「監査実施日から監査報告書の受理日までの期間」欄の件数は、監査実施日が入力されていないなどのデータを除いて算出していることから、件数((B)、(C))を合計しても「提出件数(A)」とは一致しない。
  • 注(3) 平成29年度の「提出件数(A)」は、29年11月から30年3月までの間に技能実習機構が受理した件数である。

また、元年度末時点の監査実施日の間隔等についてみると、図表2-4のとおり、技能実習法等で規定された頻度の3月に1回以上となる3か月以内が全体の74.9%とおおむね規定された頻度で実施されていたものの、6か月超が同1.2%となっているなど間隔が長期間となっているものも見受けられた。

図表2-4 監査実施日の間隔等(令和元年度末時点)

図表2-4 監査実施日の間隔等(令和元年度末時点) 画像

監査実施日から監査報告書の受理日までの期間についてみると、提出期限である2か月以内が3か年度の合計で計約25.9万件(全体の79.6%)、2か月超が計約6.6万件(同20.3%)となっていた。

技能実習機構は、技能実習制度運用要領を技能実習機構のウェブサイトに掲載するなどして、監理団体に提出期限等を周知しているとしているが、上記のように提出期限の超過が生じている理由については、監理団体の技能実習制度に対する理解が十分でないなどのためであるとしている。

また、技能実習機構から監査報告書の提出の督促状況を聴取したところ、技能実習機構は、機構実地検査等において監査の実施状況や監査報告書の提出状況に問題があった場合には、監査報告書を速やかに提出するよう監理団体に対して指導を行っているとしている。なお、技能実習機構は、今後、監査の実施状況や監査報告書の提出状況に問題があるおそれのある監理団体を自動的に抽出する機能を業務システムに追加する予定であるとしている。

(オ) 技能実習実施困難時届出書の提出等の状況

技能実習基本方針によれば、実習実施者には認定を受けた技能実習計画に定める技能実習期間の終期まで技能実習を行わせる義務があり、団体監理型技能実習における監理団体には当該義務が適切に履行されるよう監理する義務があるとされており、倒産等のやむを得ない場合を除いては、実習実施者や監理団体の一方的な都合により、技能実習生が技能実習期間の途中でその意に反して帰国させられることはあってはならないとされている。

そのため、技能実習法において、実習実施者又は監理団体は、技能実習を行わせることが困難となったときは、遅滞なく、技能実習生の氏名、技能実習を行わせることが困難となった事由、その発生時期、技能実習継続意思の有無等を記載した技能実習実施困難時届出書を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出しなければならないこととなっており、技能実習実施困難時届出書の受理に係る事務は技能実習機構が行うこととなっている。

a 技能実習実施困難時届出書の提出件数等の状況

平成29年度から令和元年度までの間の技能実習実施困難時届出書の提出件数についてみると、図表2-5のとおりとなっており、技能実習機構は、元年度までに計約6.7万件を受理していた(技能実習生の受入れ方式別の提出件数は別図表2-9参照)。

zuhyo2-5図表2-5 技能実習実施困難時届出書の事由別の提出件数(平成29年度~令和元年度)

図表2-5 技能実習実施困難時届出書の事由別の提出件数(平成29年度~令和元年度)

(単位:件)
年度 提出件数  
監理団体
都合
実習実施者
都合
技能実習生
都合
 
行方不明
平成29年度 236 2 12 222 38
30年度 22,658 920 3,286 18,452 5,590
令和元年度 44,775 4,045 5,968 34,762 8,334
67,669 4,967 9,266 53,436 13,962
  • 注(1) 「提出件数」は、技能実習機構が受理した年度で区分している。
  • 注(2) 平成29年度の「提出件数」は、29年12月から30年3月までの間に技能実習機構が受理した件数である。

困難となった事由別の提出件数についてみると、病気・怪我(けが)等の「技能実習生都合」が計約5.3万件となっていて、経営上・事業上の理由等の「実習実施者都合」や監理事業の廃止等の「監理団体都合」よりも多くなっており、このうち技能実習生の行方不明を事由とした提出件数は計約1.3万件となっていた。

なお、技能実習機構は、3年3月19日時点で、新型コロナの影響を主な事由とする技能実習実施困難時届出書を11,842件受理していた(事由別の提出件数等は別図表2-10参照)。

そして、平成29年度から令和元年度までの間の技能実習生の行方不明を事由とする技能実習実施困難時届出書の行方不明者発生日から技能実習機構が技能実習実施困難時届出書を受理するまでの期間についてみると、図表2-6のとおり、2週間以内が計8,066件(全体の57.9%)、2週間超1か月以内が計3,904件(同28.0%)となっており、ほとんどが1か月以内(同86.0%)となっていた。一方で、3か月超1年以内が計352件(同2.5%)、1年超が計92件(同0.6%)となっていて、行方不明者発生日から技能実習実施困難時届出書の受理日までの期間が3か月を超えているものが全体の3.1%見受けられた。

zuhyo2-6図表2-6 行方不明を事由とする技能実習実施困難時届出書の提出件数等(平成29年度~令和元年度)

図表2-6 行方不明を事由とする技能実習実施困難時届出書の提出件数等(平成29年度~令和元年度)

(単位:件、%)
年度 行方不明を事由とする提出件数  
行方不明者発生日から技能実習実施困難時届出書の受理日までの期間
2週間以内
(14日以内)
2週間超
1か月以内
(15日~31日)
1か月超
2か月以内
(32日~62日)
2か月超
3か月以内
(63日~92日)
3か月超
1年以内
(93日~366日)
1年超
(367日以上)
平成
29年度
38 22 11 4 1 0 0
(57.8) (28.9) (10.5) (2.6) (0) (0)
30年度 5,590 3,171 1,620 574 105 112 2
(56.7 (29.0) (10.2) (1.8) (2.0) (0.0)
令和
元年度
8,334 4,873 2,273 683 136 240 90
(58.7) (27.4) (8.2) (1.6) (2.8) (1.0)
13,962 8,066 3,904 1,261 242 352 92
(57.9) (28.0) (9.0) (1.7) (2.5) (0.6)
  • 注(1) 「行方不明を事由とする提出件数」は、技能実習機構が受理した年度で区分している。
  • 注(2) 「行方不明者発生日から技能実習実施困難時届出書の受理日までの期間」欄の件数は、行方不明者発生日よりも技能実習実施困難時届出書の受理日の方が早くなっているデータを除いて算出していることから、「行方不明者発生日から技能実習実施困難時届出書の受理日までの期間」の各欄の件数を合計しても「行方不明を事由とする提出件数」とは一致しないものがある。
  • 注(3) 下段の括弧書きは、「行方不明を事由とする提出件数」のうち行方不明者発生日よりも技能実習実施困難時届出書の受理日の方が早くなっているデータを除いた件数に占める割合である。
  • 注(4) 平成29年度の「行方不明を事由とする提出件数」は、30年1月から3月までの間に技能実習機構が受理した件数である。

b 行方不明者の発生状況

前記のとおり、技能実習制度は、我が国で培われた技能等の開発途上地域等への移転を図り、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度であり、技能実習基本方針によれば、技能実習法の基本理念を実習実施者、監理団体、技能実習生等の技能実習の全ての関係者が共有し、その上で、それぞれ技能実習法に規定された責務を全うすることが必要であるとされている。

また、技能実習基本方針によれば、実習実施者及び監理団体は、技能実習生が我が国に適正に在留するよう、送出機関とも連携して制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者を選定し、入国後の講習等を通じて、入管法等に違反しないことはもとより、不法就労を行うなどした場合の入管法上の取扱いを技能実習生に教示することなどにより、行方不明者を発生させないための取組を講ずる必要があるとされている。

しかし、前記のとおり、技能実習PT報告書によれば、技能実習生数の増加とともに技能実習生の行方不明者数が技能実習法の施行後も増加しているところである。

そこで、技能実習PT報告書の公表後の状況について、元年の行方不明者数等をみたところ、図表2-7のとおり、8,796人となっており、前年末に在留していた技能実習生数に占める行方不明者数の割合は2.6%、前年末に在留していた技能実習生数と当年に新規入国した技能実習生数との計に占める行方不明者数の割合は1.7%となっていた。なお、上記8,796人のうち、新制度の技能実習生は8,695人となっていた。

zuhyo2-7図表2-7 行方不明者数等の推移(平成27年~令和元年)

図表2-7 行方不明者数等の推移(平成27年~令和元年)

(単位:人、%)
行方不明者数 前年末の在留技能実習生数 割合 前年末の在留技能実習生数と当年新規入国した技能実習生数との計 割合
(A)
旧制度 新制度 (B) (A)/(B) (C) (A)/(C)
平成27年 5,803 5,803 167,626 3.4 264,630 2.1
28年 5,058 5,058 192,655 2.6 298,786 1.6
29年 7,089 7,089 0 228,588 3.1 356,276 1.9
30年 9,052 5,664 3,388 274,233 3.3 424,394 2.1
令和元年 8,796 101 8,695 328,360 2.6 517,232 1.7
  • 注(1) 本図表は技能実習PT報告書を基にするなどして会計検査院が作成した。
  • 注(2) 「行方不明者数(A)」は、当該行方不明者発生の旨を技能実習機構等が把握した年で区分している。
  • 注(3) 「旧制度」とは、行方不明者発生時点で旧制度の適用を受けていた技能実習生、「新制度」とは、行方不明者発生時点で新制度の適用を受けていた技能実習生である。

そして、出入国在留管理庁は、技能実習PT報告書において、行方不明者の発生等をより効果的に防止し、行方不明者の発生等が生じた場合に、より迅速かつ適切な対応を行う観点からも、実効性のある改善方策を講ずる必要があるとされたことを受けて、初動対応の強化、技能実習規則の改正(令和2年4月施行)による行方不明者の発生に帰責性のある実習実施者の一定期間新規受入れの停止及び口座振込みなどによる報酬支払を求める措置の導入、技能実習機構の職員数の増員(元年度から定員数241人増加)等の対策を講じていた。

さらに、元年12月に、追加的な対策として、行方不明者を就労させた企業の告発等の更なる措置を執ることとした旨の周知文書を監理団体に直接送付するとともに、当該文書を公表していた。

イ 技能実習生の保護の状況

前記のとおり、技能実習生に対する人権侵害行為等から技能実習生を保護するために、実習監理を行う者等が技能実習の強制、違約金の設定、旅券又は在留カードの保管等を行うことは禁止されているほか、技能実習機構は、技能実習生の保護に資する施策として、技能実習生からの申告及び相談(以下、これらを合わせて「相談等」という。)対応や技能実習継続のための支援等を行っている。

(ア) 技能実習生からの相談等の状況

技能実習法によれば、技能実習生は、実習実施者、監理団体等に技能実習法の規定に違反する事実がある場合には、その事実を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に申告することができることとされており、また、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、技能実習生からの相談に応じて、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うこととされている。そして、相談等に係る業務は技能実習機構が行うこととなっている。

技能実習機構は、相談等の受付窓口として、本部に母国語相談窓口を、地方事務所等に相談窓口をそれぞれ設けており、技能実習生の入国時に技能実習生手帳を配布するなどして技能実習生に対して相談窓口の連絡先を周知していた。そして、母国語相談窓口では、電話、電子メール等により母国語での相談等を受け付けており、平成29年度における対応言語は6言語(ベトナム語、中国語、インドネシア語、フィリピノ語、英語、タイ語)であったところ、30年度から2言語(カンボジア語、ミャンマー語)が追加され、令和元年度からベトナム語の対応曜日が追加されていた。また、地方事務所等の相談窓口では、電話、対面等により相談等を受け付けており、その対応言語は基本的に日本語であるが、必要に応じて通訳人を活用していた。

相談等の受付窓口においては、相談等が、①技能実習生からのものであること、②出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に対するものであること、③実習実施者、監理団体等による技能実習法の規定に違反する事実についてのものであること、という要件のいずれにも該当する場合には、申告として受理し、①、②又は③のいずれかに該当しない場合には、技能実習生等からの相談として、一般的な情報提供があったものとして取り扱っている。そして、技能実習機構は、相談等の内容に応じて、必要な情報の提供その他の援助等を行ったり、機構実地検査を実施したりしていた。

平成29年度から令和元年度までの間の申告の受理件数についてみると、技能実習機構は、平成30年度及び令和元年度に計222件の申告を受理していた。

申告の内容についてみると、技能実習計画に関することが計131件、技能実習の職種に関することが計105件等となっていた(別図表2-11参照)。

そして、申告に対する機構実地検査の元年度末時点の実施状況についてみると、図表2-8のとおり、受理した申告計222件のうち計217件に対して機構実地検査が実施されていた。また、機構実地検査を実施していない計5件は、機構実地検査を実施せずに技能実習機構が技能実習生を保護したなどのものであり、申告の全件について技能実習機構は何らかの対応を実施していた。

zuhyo2-8図表2-8 申告に対する機構実地検査の実施状況(令和元年度末時点)

図表2-8 申告に対する機構実地検査の実施状況(令和元年度末時点)

(単位:件、%)
年度    
 
受理件数
機構実地検査 申告受理日から機構実地検査実施日までの期間
1ヶ月以内
(31日以内)
1か月超
2か月以内
(32~62日)
2か月超
3か月以内
(63~92日)
3か月超
(93日以上)
実施件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
(A) (B) (B)/(A) (C) (C)/(B) (D) (D)/(B) (E) (E)/(B) (F) (F)/(B)
平成
30年度
89 85 95.5 73 85.8 8 9.4 3 3.5 1 1.1
令和
元年度
133 132 99.2 84 63.6 28 21.2 7 5.3 12 9.0
222 217 97.7 157 72.3 36 16.5 10 4.6 13 5.9
  • 注(1) 「受理件数(A)」のうち、機構実地検査を実施していないものは、機構実地検査を実施せずに技能実習機構が技能実習生を保護したもの及び技能実習生が申告を取り下げたものである。
  • 注(2) 令和元年度分について、「申告受理日から機構実地検査実施日までの期間」の各欄の件数を合計しても、「実施件数(B)」と一致しないのは、相談として受け付けて、機構実地検査を実施した後に、申告として受理したものが1件あるためである。
  • 注(3) 平成29年度については、申告の受理実績がない。

技能実習機構が申告を受理した日から機構実地検査を実施するまでの期間についてみると、1か月以内が計157件(機構実地検査実施件数全体の72.3%)、1か月超2か月以内が計36件(同16.5%)となっており、ほとんどが2か月以内(同88.9%)となっていた。

また、平成29年度から令和元年度までの間の相談の受付件数についてみると、技能実習機構は、元年度までに計7,476件の相談を受け付けていた。

そして、相談の内容についてみると、不適切な管理に関することが計2,261件、賃金・時間外労働等の労働条件に関することが計2,143件等となっていた(別図表2-12参照)。

なお、技能実習機構は、3年4月末時点で、新型コロナの影響により技能実習修了後に帰国できない技能実習生の処遇に関すること、実習実施者の業務縮小等に関することなど、新型コロナの影響に関連する計9,153件の相談を受け、それに対して技能実習制度に係る手続等を説明していた。

(イ) 実習先変更支援、宿泊支援等の状況

前記のとおり、技能実習法によれば、実習実施者及び監理団体が、技能実習実施困難時届出書の提出等をしようとするときは、引き続き技能実習を行うことを希望する技能実習生が技能実習を継続できるよう、当該技能実習生の実習先を他の実習実施者へ変更させるなど必要な措置を講じなければならないこととされている。また、その措置の円滑な実施のために必要があると認めるときは、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は実習実施者等に対して、主務大臣は監理団体等に対して、それぞれ指導及び助言を行うことができることとされている。そして、技能実習機構は、技能実習を行うことが困難となった技能実習生であって引き続き技能実習を行うことを希望する者が技能実習を行うことができるよう、技能実習生からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うとともに、実習実施者、監理団体等に対する必要な指導及び助言を行うこととなっている。

技能実習機構は、技能実習機構のウェブサイトにおいて、技能実習生の実習先変更を支援するための実習先変更支援サイトを開設しており、同サイトに、実習先変更を希望する技能実習生を新たに受け入れることができる監理団体の情報等を掲載している。

平成29年度から令和元年度までの間の実習先変更支援サイトの新規登録件数についてみると、元年度までに利用者登録件数は計1,934件、技能実習生の募集情報登録件数は計713件となっていた(別図表2-13参照)。

また、技能実習機構は、実習先変更支援サイトを利用しても新たな実習先が見つからない場合等には、前記のとおり、監理団体、技能実習生等に対して個別支援を行っている。

平成29年度から令和元年度までの間の個別支援の実施状況についてみると、個別支援の支援件数は元年度までに計108件となっており、そのうち実習先が決定したものは計46件(支援件数全体に占める割合42.5%)となっていた(別図表2-14参照)。

また、技能実習機構は、前記のとおり、宿泊支援や、宿泊支援を受ける技能実習生であって食費、実習先変更を行うための交通費等の必要性が高いものに充てる当座の金銭を所持していない技能実習生に対して支援金を支給する支援(以下、この支援を「生活支援」という。)を実施している。

平成29年度から令和元年度までの間の宿泊支援及び生活支援の実施状況についてみると、平成30年度及び令和元年度に、宿泊支援は計71人、計1482万余円、生活支援は計60人、計190万余円となっており、支援期間中に計31人の実習先が決定していた(別図表2-15参照)。

ウ 機構実地検査の状況

実習実施者における技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るためには、監理団体による実習監理が適切に行われることが重要であるとして、監理団体に対する機構実地検査は1年に1回程度の頻度で実施することになっている。一方、実習実施者に対しては、基本的に、許可を受けた監理団体による実習監理が行われていることから、実習実施者に対する機構実地検査については、受け入れることとなった技能実習生が第2号技能実習を修了するまでの期間である3年に1回程度の頻度で実施することになっている。そして、技能実習機構は、法令違反等の疑義があるとの情報提供を受けた場合、技能実習生から申告があった場合等には、必要に応じて、直ちに機構実地検査を実施することにしている(注23)。

(注23) その結果、同一の実習実施者、監理団体等に対して同年度に複数回の機構実地検査が実施されることがある。

(ア) 機構実地検査の実施状況等の概要

前記のとおり、技能実習機構は、平成28年度に設立されて以降、必ずしも定員数を充足していないものの、職員数は年々増加していた。また、技能実習機構は、令和元年度中に採用条件の一部を緩和するなどして、職員の確保に努めていた。そして、平成29年度から令和元年度までの間の機構実地検査の実施体制についてみると、機構実地検査に従事する職員数は、年々増加していた(別図表2-16参照)。

また、平成29年度から令和元年度までの間の機構実地検査の実施状況についてみると、元年度までに実施件数は計約2.8万件となっていた。これを実習実施者及び監理団体別にみると、実習実施者については計約2.2万件、監理団体については計約0.5万件となっていた。そして、技能実習機構が技能実習法違反に対する指導(以下、この指導を「改善勧告」という。)を行った機構実地検査の件数についてみると、元年度までに計約1.0万件となっており、機構実地検査が実施された計約2.8万件のうち36.6%で改善勧告が行われていた。そのうち、実習実施者及び監理団体に対して改善勧告が行われた機構実地検査の件数は、元年度までにそれぞれ計7,674件、計2,748件となっており、機構実地検査が実施され実習実施者及び監理団体に改善勧告が行われた割合はそれぞれ33.5%、49.3%となっていた(別図表2-17参照)。

また、平成30年度及び令和元年度に行われた実習実施者及び監理団体に対する改善勧告について、関係する技能実習法の規定別にみると、実習実施者については、認定を受けた技能実習計画の履行状況に係る管理簿の不備等の技能実習法第20条違反の行為が計4,162件(改善勧告件数全体に占める割合32.8%)と最も多く、次いで技能実習生の宿泊施設の不備等の技能実習法第9条違反の行為が計3,834件(同30.2%)、認定を受けた技能実習計画に従った賃金の不払等の技能実習法第16条違反の行為が計3,139件(同24.7%)と多くなっていた。監理団体については、監理費に係る管理簿の不備等の技能実習法第41条違反の行為が計2,942件(同45.0%)と最も多く、次いで監理団体の業務運営規程の掲示の不備等の技能実習法第39条違反の行為が計1,819件(同27.8%)、外部監査の不備等の技能実習法第25条違反の行為が計578件(同8.8%)と多くなっていた(別図表2-18参照)。

(イ) 機構実地検査の実施頻度

a 監理団体に対する機構実地検査

前記のとおり、監理団体に対する機構実地検査は1年に1回程度の頻度で実施することになっている。

そこで、平成29年度から令和元年度までの間の監理団体に対する機構実地検査の実施状況について、監理団体が許可を受けた年度別に区分すると、図表2-9のとおり、平成29年度に許可を受けた2,034団体については、29年度に1団体、30年度に1,975団体(年度別の許可件数に占める割合97.0%)、令和元年度に1,941団体(同95.4%)に対して、それぞれ機構実地検査が実施されていたが、許可から少なくとも2年が経過した元年度末までに一度も機構実地検査が実施されていない団体が16団体(同0.7%)となっていた。

また、平成30年度に許可を受けた486団体については、30年度に223団体(同45.8%)、令和元年度に421団体(同86.6%)に対して、それぞれ機構実地検査が実施されていたが、許可から少なくとも1年が経過した元年度末までに一度も機構実地検査が実施されていない団体が51団体(同10.4%)となっていた。

技能実習機構は、前記の元年度末までに一度も機構実地検査が実施されていない16団体及び51団体、計67団体のうち15団体については、監理事業の実績がなかったことから、機構実地検査の対象とする必要がない団体であるとしている。一方、残りの52団体については、監理事業の実績があることから機構実地検査の対象となる団体であるが、人員の制約等のため機構実地検査が実施されていないとしている。

zuhyo2-9図表2-9 監理団体に対する機構実地検査の実施状況(平成29年度~令和元年度)

図表2-9 監理団体に対する機構実地検査の実施状況(平成29年度~令和元年度)

(単位:団体、%)
機構実地検査の実施年度 令和元年度末までに一度も機構実地検査が実施されていない監理団体数
年度 監理
団体数
平成29年度 30年度 令和元年度
機構実地検査実施団体数 割合 機構実地検査実施団体数 割合 機構実地検査実施団体数 割合 割合
(A) (B) (B)/(A) (C) (C)/(A) (D) (D)/(A) (E) (E)/(A)
平成
29年度
2,034 1 0.0 1,975 97.0 1,941 95.4 16 0.7
30年度 486 223 45.8 421 86.6 51 10.4
令和
元年度
422 77 18.2 345 81.7

(注) 「監理団体数(A)」は、監理団体ごとに、当該監理団体が初めて提出した事業報告書の対象年度別に区分している。

b 実習実施者に対する機構実地検査

前記のとおり、実習実施者に対する機構実地検査は3年に1回程度の頻度で実施することになっている。

そこで、平成29年度から令和元年度までの間の実習実施者に対する機構実地検査の実施状況について、実習実施者が実習実施者届出書を提出した年度等別に区分すると、図表2-10のとおり、平成29年度の4,492実習実施者及び30年度の45,098実習実施者のうち、令和元年度までに機構実地検査が実施されたのは、それぞれ3,186実習実施者(年度別の実習実施者届出書の提出者数に占める割合70.9%)及び15,202実習実施者(同33.7%)となっており、元年度末までに一度も機構実地検査が実施されていない実習実施者は、それぞれ1,306実習実施者(同29.0%)及び29,896実習実施者(同66.2%)となっていた。

仮に、3年間に均等に分けて機構実地検査を実施するとすれば、1年間で3分の1、2年間で3分の2の実習実施者について実施することとなる。そして、上記の実施状況は、平成30年度が33.7%、29年度が70.9%となっており、おおむねそれに見合うものとなっていた。

zuhyo2-10図表2-10 実習実施者に対する機構実地検査の実施状況(平成29年度~令和元年度)

図表2-10 実習実施者に対する機構実地検査の実施状況(平成29年度~令和元年度)

(単位:実習実施者、%)
年度 機構実地検査の実施年度 令和元年度末までに一度も機構実地検査が実施されていない実収実施者数
実収実施者数 平成29年度 30年度 令和元年度
機構実地検査実施者数 割合 機構実地検査実施者数 割合 機構実地検査実施者数 割合 割合
(A) (B) (B)/(A) (C) (C)/(A) (D) (D)/(A) (E) (E)/(A)
平成
29年度
4,492 5 0.1 1,690 37.6 1,837 40.8 1,306 29.0
(1,695) (37.7) (3,186) (70.9)
30年度 45,098 5,589 12.3 10,827 24.0 29,896 66.2
(15,202) (33.7)
令和
元年度
16,640 847 5.0 15,793 94.9
  • 注(1) 「実習実施者数(A)」は、実習実施者が提出した実習実施者届出書の受理日が属する年度等で区分している。
  • 注(2) 下段の括弧書きは、実習実施者届出書の受理日が属する年度等から当該年度までの間の機構実地検査実施者数の計(実習実施者の純計)及び割合である。
(ウ)  行方不明事案又は死亡事案に対する機構実地検査等の実施状況

技能実習機構本部は、出入国在留管理庁及び厚生労働省からの通知を受けて、地方事務所等に対して、31年4月1日以降に発生した技能実習生の行方不明又は死亡を事由として技能実習実施困難時届出書が提出された全ての事案を対象に、死亡事案については死亡事案が発生した実習実施者に対する機構実地検査を速やかに実施すること、行方不明事案については行方不明事案が発生した実習実施者に対する機構実地検査を優先的に実施すること、体制その他の事情により速やかに機構実地検査を実施することが困難である場合には賃金台帳、タイムカード等の客観的資料を早期に確認し、保全するために、これらの実習実施者等に対して客観的資料の提出を求めて、その後の機構実地検査の基礎資料として活用することなどを令和元年6月に指示している。

そして、平成31年4月から令和元年12月までの間に発生した死亡事案のうち、入国前(技能実習開始前)であるなど技能実習との関連性がないと技能実習機構が判断した事案を除いた40件については、その発生から少なくとも3か月が経過した時点である元年度末までに、その全件について、死亡事案が発生した実習実施者に対する機構実地検査が実施されていた。

また、平成31年4月から令和元年9月までの間に発生した行方不明事案3,639件について、その発生から少なくとも6か月が経過した時点である元年度末時点での機構実地検査等の実施状況をみたところ、図表2-11のとおり、機構実地検査が実施されていたのは2,884件(機構実地検査の対象件数に占める割合79.2%)となっていた。そして、機構実地検査が実施されていなかった755件(同20.7%)のうち客観的資料が入手されていたのは198件(機構実地検査の未実施件数に占める割合26.2%)となっており、557件(同73.7%)が元年度末までに客観的資料が入手されていなかった。

このように、前記のとおり、1年に1回程度又は3年に1回程度の頻度でそれぞれ実施することになっている監理団体又は実習実施者に対する機構実地検査については、おおむねそれに見合う頻度で実施されていたが、行方不明事案に対する機構実地検査又は客観的資料の入手については、実施されていないものが見受けられた。

図表2-11 平成31年4月から令和元年9月までの間に発生した行方不明事案に対する機構実地検査等の実施状況(令和元年度末時点)

図表2-11 平成31年4月から令和元年9月までの間に発生した行方不明事案に対する機構実地検査等の実施状況(令和元年度末時点) 画像

技能実習機構は、行方不明事案に対する機構実地検査を実施していないものがある理由及び機構実地検査を実施していないもののうち客観的資料を入手していないものがある理由について、行方不明事案の件数が膨大であるためなどとしている。

しかし、人員の制約等の実施体制の事情はあるものの、前記のとおり、技能実習PT報告書において、行方不明事案が発生した場合に、より迅速かつ適切な対応を行う観点から実効性のある改善方策を講ずる必要があるなどとされたところである。また、客観的資料を入手していない場合は、当該資料が散逸等するおそれがあるとともに、優先的に機構実地検査を実施する必要がある実習実施者を適切に判断できないおそれがある。

したがって、技能実習機構は、技能実習生の行方不明事案が発生した実習実施者に対する機構実地検査を速やかに実施できない場合には、速やかに客観的資料を入手することが必要である。

エ 技能検定等の合格率の状況

出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、技能実習計画の認定に当たり、技能実習を行わせようとする者に対して、技能実習の目標として、第1号技能実習については基礎級の技能検定等の実技試験及び学科試験の合格等、第2号技能実習又は第3号技能実習については3級又は2級の技能検定等の実技試験の合格を技能実習計画に掲げることを求めている。そして、第3号技能実習を実施できるのは、技能実習規則で定められた基準に適合していると認められた優良な実習実施者に限られており、技能検定等の合格率が当該基準の一つとなっている。

また、技能実習法によれば、実習実施者は、技能実習を行わせたときは、年度ごとに、技能実習生数、技能検定等受検状況等を記載した実施状況報告書を、翌年度の5月31日までに出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出しなければならないこととされており、実施状況報告書の受理に係る事務は技能実習機構が行うこととなっている。

そこで、平成29年度分から令和元年度分までの技能検定等の実習実施者別の合格率の状況についてみると、基礎級程度及び3級程度については、各年度の実習実施者別の合格率の平均は、3級程度の平成29年度分を除いて90%以上と高いものとなっており、実習実施者の分布をみても合格率95%又は80%以上の実習実施者が多数を占めていた。それに対して、2級程度については、各年度の実習実施者別の合格率の平均は、30年度分は86.9%だったものの、令和元年度分は73.7%に低下しており、実習実施者の分布をみても元年度分については合格率80%以上の実習実施者が69.4%となっていた(別図表2-19参照)。

(3)技能実習生の技能実習修了後の状況

ア フォローアップ調査の結果の状況
(ア) 調査の概要

技能実習機構は、帰国後技能実習生に関して、帰国後の就職状況、職位の変化、我が国で修得した技術・技能・知識の活用状況等を把握することにより、帰国後技能実習生の実態を明らかにすることなどを目的として、毎年、「帰国後技能実習生フォローアップ調査」を実施している。なお、平成29年度までは、厚生労働省により、同フォローアップ調査と同様の調査が実施されていた(以下、これらを合わせて「フォローアップ調査」という。)。

フォローアップ調査(注24)の調査内容は、主に調査対象年度中に帰国した技能実習生に関する帰国後の技能活用状況等について、アンケート調査を行うものである。調査対象は、技能実習を修了した全ての技能実習生(30年度までは第2号技能実習を修了した技能実習生)のうち、調査対象年度の8月から11月まで(27年度から29年度までは7月から11月まで)の間に帰国した技能実習生であって、国籍(出身地)が中国、インドネシア、フィリピン、タイ及びベトナムの5か国の者としている。

(注24) 調査に当たっては、調査対象者が所属する実習実施者又は監理団体に対して、受託業者から調査対象者の母国語別に用意した調査票を送付し、実習実施者又は監理団体から帰国前に調査対象者に調査票が配布され、調査対象者は帰国後、期限までに調査票に回答し、受託業者に調査票を返送することとされている。回答は無記名、多肢選択方式(一部記述式)が採用されている。

(イ) 実習により得られた効果

フォローアップ調査の結果を整理したところ、帰国後技能実習生の実習により得られた効果(複数回答)については、27年度から令和元年度までの間の合計でみると、「修得した技能」との回答が「日本語能力の修得」「日本での生活経験」及び「日本で貯めたお金」との回答よりも多く、得られた効果の一つとして「修得した技能」と回答している者は71.5%となっていた。そして、国別にみると、中国の帰国後技能実習生は、各調査年度を通じて一貫して「修得した技能」が最多となっており、フィリピン及びタイの帰国後技能実習生も「修得した技能」が最多となっている年度が多くなっていた(別図表2-20参照)。

(ウ) 帰国後の就職状況及び仕事内容

フォローアップ調査の結果により、帰国後技能実習生の帰国後の就職状況について整理すると図表2-12のとおり、5か国の5か年度の合計では、就職していると回答した者がそれ以外の回答をした者を僅かに上回る程度となっていた。

zuhyo2-12図表2-12 国別及び年度別の就職状況(平成27年度~令和元年度)

図表2-12 国別及び年度別の就職状況(平成27年度~令和元年度)

(単位:人、%)
国名 年度 回答者数(A)
就職していると
回答した者
左記以外の
回答をした者
無回答
回答者(B) (A)に占める
割合(B)/(A)
回答者(C) (A)に占める
割合(C)/(A)
回答者(D) (A)に占める
割合(D)/(A)
中国 平成27年度 1,405 779 55.4 586 41.7 40 2.8
28年度 1,765 1,037 58.7 628 35.5 100 5.6
29年度 1,970 1,264 64.1 610 30.9 96 4.8
30年度 1,699 1,059 62.3 580 34.1 60 3.5
令和元年度 2,085 1,249 59.9 695 33.3 141 6.7
8,924 5,388 60.3 3,099 34.7 437 4.8
インドネシア 平成27年度 208 81 38.9 123 59.1 4 1.9
28年度 452 220 48.6 221 48.8 11 2.4
29年度 895 407 45.4 433 48.3 55 6.1
30年度 1,013 415 40.9 561 55.3 37 3.6
令和元年度 1,335 519 38.8 742 55.5 74 5.5
3,903 1,642 42.0 2,080 53.2 181 4.6
フィリピン 平成27年度 142 84 59.1 55 38.7 3 2.1
28年度 268 162 60.4 89 33.2 17 6.3
29年度 677 310 45.7 295 43.5 72 10.6
30年度 420 221 52.6 186 44.2 13 3.0
令和元年度 723 387 53.5 297 41.0 39 5.3
2,230 1,164 52.1 922 41.3 144 6.4
タイ 平成27年度 95 45 47.3 48 50.5 2 2.1
28年度 167 58 34.7 94 56.2 15 8.9
29年度 312 124 39.7 169 54.1 19 6.0
30年度 253 76 30.0 159 62.8 18 7.1
令和元年度 459 272 59.2 175 38.1 12 2.6
1,286 575 44.7 645 50.1 66 5.1
ベトナム 平成27年度 221 71 32.1 138 62.4 12 5.4
28年度 499 265 53.1 215 43.0 19 3.8
29年度 1,505 680 45.1 716 47.5 109 7.2
30年度 1,872 660 35.2 1,131 60.4 81 4.3
令和元年度 2,494 667 26.7 1,698 68.0 129 5.1
6,591 2,343 35.5 3,898 59.1 350 5.3
平成27年度 2,071 1,060 51.1 950 45.8 61 2.9
28年度 3,151 1,742 55.2 1,247 39.5 162 5.1
29年度 5,359 2,785 51.9 2,223 41.4 351 6.5
30年度 5,257 2,431 46.2 2,617 49.7 209 3.9
令和元年度 7,096 3,094 43.6 3,607 50.8 395 5.5
合計 22,934 11,112 48.4 10,644 46.4 1,178 5.1

(注) 本図表はフォローアップ調査の結果を基に会計検査院が作成した。

就職していると回答した者の回答者全体に占める割合をみると、中国の帰国後技能実習生は60.3%、フィリピンの帰国後技能実習生は52.1%となっており、他の国に比べて高くなっていた。一方、ベトナム、インドネシア及びタイの帰国後技能実習生は、就職しているとの回答以外の回答をした者の割合がそれぞれ59.1%、53.2%、50.1%と過半数になっており、上記の両国と比較して高い傾向となっていた。

そして、就職していると回答した者の仕事内容に関して整理すると、5か国の5か年度の合計では、「技能実習と同じ又は同種の仕事」に就いていると回答した者が、就職していると回答した者全体の70.2%を占めており、回答者全体に占める割合では34.0%となっていた。また、就職していると回答した者の中で、「技能実習と異なる仕事」に就いていると回答した者は、就職していると回答した者全体の21.1%を占めており、回答者全体に占める割合では10.2%となっていて、5か国の帰国後技能実習生のうちには、技能実習で身に付けた技能が必ずしもいかせていないと思料される者も見受けられる状況となっていた(別図表2-21参照)。

仕事内容に関する回答別の回答者全体に占める割合をみると、インドネシアの帰国後技能実習生のうち「技能実習と同じ仕事」に就いていると回答した者は12.8%となっており、「技能実習と同種の仕事」に就いていると回答した者を含めても19.4%となっていた。また、ベトナムの帰国後技能実習生のうち、「技能実習と同じ仕事」に就いていると回答した者は17.0%、「技能実習と同種の仕事」に就いていると回答した者を含めても24.7%となっており、インドネシアと同様に他の国に比べて低くなっていた。

なお、平成29年度の技能実習制度の適正化以降、技能実習3号が新たに創設されたことに伴い、30年度以降は就職しているとの回答以外の回答をした者のうちには「技能実習3号で日本に戻る」と回答している者が一定数含まれており、その回答者全体に占める割合は、インドネシアについては30年度は10.8%、令和元年度は11.6%、ベトナムについては平成30年度は20.9%、令和元年度は29.9%となっていた(別図表2-22参照)。

イ 技能実習修了後の新たな在留資格「特定技能」への移行状況

平成31年4月に新たに創設された在留資格「特定技能」に関しては、その在留資格を得られる複数のルートがあり、主なものとしては次のようなものがある。

① 業務に必要な技能水準及び日本語能力水準を評価するための試験に合格するルート

② 第2号技能実習修了者から移行するルート(以下「技能実習ルート」という。)

③ EPA介護福祉士候補者として在留期間を満了した者からの移行ルート

④ 一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を確認するための検定試験及び日本語能力水準を評価するための試験に合格するルート

出入国在留管理庁は、制度実施以降の5年間の受入れ見込数を約35万人(初年度である令和元年度の受入れ見込数は、最大47,550人)としており、これを受入れの上限として運用している。

そこで、在留資格「特定技能」による在留状況をみると、2年12月末時点において在留資格「特定技能」をもって在留する外国人は計15,663人となっており、初年度の最大受入人数として想定した47,550人を大きく下回っている状況となっていた。一方、ルート別の割合をみると、技能実習ルートによるものが全体の約85%に当たる13,344人と大半を占めていた。なお、2年12月末時点において、在留資格「特定技能2号」をもって在留する外国人はいないため、在留資格「特定技能」で在留する外国人は全て在留資格「特定技能1号」をもって在留する外国人となっている(別図表2-23参照)。

上記のように在留資格「特定技能」をもって働く外国人の受入れが想定を大きく下回っているのは、新型コロナの感染拡大により試験に合格した者が予定どおり来日できなかったり、国内外で予定していた試験が実施できなかったりしていることなどが影響していると考えられるが、出入国在留管理庁は、新型コロナの収束を見据えて、人手不足解消策として在留資格「特定技能」の制度が効果的な役割を果たせるよう、制度周知に向けた取組等を行っているとしている。

(4)総合的対応策(改訂)等における技能実習制度の更なる適正化に係る施策の状況

前記のとおり、平成30年12月及び令和元年12月に公表された総合的対応策及び総合的対応策(改訂)は、外国人材の受入れ・共生のための取組をより強力に、かつ、包括的に推進する観点から取りまとめられたもので、必ずしも、技能実習生に係る施策のみを取りまとめたものではない。そこで、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)において、法務省及び厚生労働省が担当省となっている施策のうち、技能実習制度の更なる適正化として位置付けられている具体的施策数及び事業数をみると、7施策12事業となっていた(別図表2-24(事業数の計上方法は第2の3)参照。各施策の実施状況等は別図表2-25参照)。

なお、第2の2(1)で記述した機構交付金のうち法務省分は、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)の関連予算とされていないが、前記のとおり、技能実習生の保護等の業務を技能実習機構が実施するために機構交付金が交付されている。

3 外国人材の受入れに係る国の支援の状況

平成30年6月に骨太方針2018が示され、外国人材の受入れを拡大するために新たな在留資格を創設するとともに、外国人留学生の日本国内での就職を更に円滑化するなど従来の専門的・技術的分野における外国人材受入れの取組を更に進めるほか、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組むこととされた。このような方針を受けて、政府として外国人材の受入れ・共生のための取組をより強力に、かつ、包括的に推進する観点から取りまとめられた複数の具体的施策から成る総合的対応策が示され、数次の改訂を経て充実が図られている。

このように、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)は、各府省庁等が取り組む外国人材の受入れ及び共生に係る国の施策を総合的に取りまとめたものである。

そして、会計検査院は、外国人材の受入れに係る国の支援の状況の検査に当たり、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)に示された各種の施策に係る予算の執行状況や事業の実施状況等をみることとした。

本項で記述する総合的対応策等の概要を示すと図表3-1のとおりとなっている。なお、第2の1及び第2の2で記述した国立大学法人運営費交付金、機構交付金等と総合的対応策及び総合的対応策(改訂)との関係を示すと図表3-2のとおりとなっている。

zuhyo3-1図表3-1 総合的対応策等の概要(平成30年度~令和2年度)

図表3-1 総合的対応策等の概要(平成30年度~令和2年度)

項目 関係府省庁等 金額 記載箇所
(見出し符号)
総合的対応策 内閣官房等
16府省庁等
210億6497万余円
平成30年度第2次補正予算
令和元年度当初予算
第2
3(1)
総合的対応策(改訂) 内閣官房等
17府省庁等
244億5788万余円
令和元年度補正予算
令和2年度当初予算
第2
3(1)
新型コロナの感染拡大に伴う外国人に対する国の支援等 法務省、
文部科学省、
厚生労働省
15億1754万円
    -
67億3421万余円
令和2年度第1次補正予算
令和2年度第2次補正予算
令和2年度第3次補正予算
第2
3(2)ア(ア)、
3(2)イ(ア)、
3(2)ウ(ア)
zuhyo3-2図表3-2 総合的対応策等と国立大学法人運営費交付金、機構交付金等との関係(令和元年度)

図表3-2 総合的対応策等と国立大学法人運営費交付金、機構交付金等との関係(令和元年度)

項目 関係省 金額 記載箇所
(見出し符号)
一部が総合的対応策等に含まれるもの 経常費補助金 文部科学省 (3159億4061万余円)
支出済歳出額
(注) 第2
1(2) ア
独立行政法人日本学生支援機構一般勘定運営費交付 文部科学省 (131億3268万余円)
支出済歳出額
(注) 第2
1(2) ア
新型コロナの感染拡大に伴う外国人に対する国の支援等 文部科学省 240億7226万余円
支出済歳出額等
第2
1(2) ア
補助金等(文部科学省) 文部科学省 (52億5747万余円)
支出済歳出額等
(注) 第2
1(2) ア
技能実習機構に対する機構交付 厚生労働省 61億7141万余円
支出済歳出額
第2
2(1) ア
総合的対応策等に
含まれないもの
国立大学法人運営費交付 文部科学省 (1兆0975億0081万余円)
支出済歳出額
(注) 第2
1(2) ア
独立行政法人国立高等専門学校機構運営費交付 文部科学省 (625億6738万余円)
支出済歳出額
(注) 第2
1(2) ア
技能実習機構に対する機構交付 法務省 3999万余円
支出済歳出額
第2
2(1) ア

(注) 当該項目は、外国人材の受入れ及び共生以外の事業にも充てられるものであり、外国人材の受入れ及び共生に係る金額を他と区分して正確に把握することが困難であることなどから、金額は総額を記載している。

そして、総合的対応策等に係る予算の執行状況及び事業の実施状況についてみると、次のとおりである。

(1)総合的対応策及び総合的対応策(改訂)の予算の執行状況等

前記のとおり、政府は、30年12月に、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実を図ることにより、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するための目指すべき方向性を示すものとして、総合的対応策を公表した。総合的対応策の施策は、図表3-3のとおり、①外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等、②生活者としての外国人に対する支援、③外国人材の適正・円滑な受入れの促進に向けた取組及び④新たな在留管理体制の構築の4項目に大きく分類されていて、これら施策の中には様々な具体的施策があり、その総数は125施策248事業(注25)となっていた。

総合的対応策において関係府省庁等として掲げられている府省庁等は、法務省、文部科学省、厚生労働省等の16府省庁等と多くの府省庁等に及んでいた。このうち法務省は、外国人受入れ基本方針により、外国人の受入れ環境の整備に関して行政各部の施策の統一を図るために必要となる総合調整等を行うこととされており、関係閣僚会議を開催したり、各府省庁等で実施される施策の進捗状況を確認したりなどしている。

(注25) 本報告書における各施策に係る事業数は、会計検査院が、関係府省庁等へ依頼し、提出を受けた調書において関係府省庁等が総合的対応策及び総合的対応策(改訂)に盛り込まれている具体的施策に該当するとされた事業に係る事業概要を把握して、①関係府省庁等が全省庁等であるものについては1事業、②関係府省庁等が複数であるものについては関係府省庁等ごとに1事業、③関係府省庁等において同一の事業が複数の施策の実施のために取り組まれているものについては施策ごとに1事業として計上するなどして集計している。

zuhyo3-3図表3-3 総合的対応策における項目別の具体的施策の実施数

図表3-3 総合的対応策における項目別の具体的施策の実施数

(単位:施策、事業)
項目 関係府省庁等 具体的
施策数
事業数
1 外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等 警察庁、法務省、外務省、厚生労働省 6 9
2 生活者としての外国人に対する支援 内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、外務省、財務省、国税庁、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、観光庁 92 180
3 外国人材の適正・円滑な受入れの促進に向けた取組 警察庁、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省 14 33
4 新たな在留管理体制の構築 警察庁、法務省、外務省、厚生労働省 14 27
126 249
純計 125 248

(注) 「関係府省庁等」欄に記載の府省庁等は、総合的対応策において具体的に掲げられている府省庁等名を記載している。

そして、前記のとおり、政府は、令和元年12月に、これまでの関連施策の実施状況を踏まえるなどして、総合的対応策(改訂)を公表した。総合的対応策(改訂)の施策は、図表3-4のとおり、①外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等、②外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組、③生活者としての外国人に対する支援及び④新たな在留管理体制の構築の4項目に大きく分類されていて、これら施策の中には、総合的対応策では掲げられていなかった新規の具体的施策もあり、その総数は172施策374事業と増加していた。

zuhyo3-4図表3-4 総合的対応策(改訂)における項目別の具体的施策の実施数

図表3-4 総合的対応策(改訂)における項目別の具体的施策の実施数

(単位:施策、事業)
項目 関係府省庁等 具体的
施策数
事業数
1 外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等 警察庁、法務省、外務省、厚生労働省 7 10
2 外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組 内閣官房、内閣府、公正取引委員会、警察庁、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省 31 87
3 生活者としての外国人に対する支援 内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、外務省、財務省、国税庁、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、観光庁 107 225
4 新たな在留管理体制の構築 警察庁、総務省、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省 14 27
178 387
純計 172 374

(注) 「関係府省庁等」欄に記載の府省庁等は、総合的対応策(改訂)において具体的に掲げられている府省庁等名を記載している。

総合的対応策及び総合的対応策(改訂)における関連予算額(注26)は、平成30年12月及び令和2年1月に公表されているが、上記公表された関連予算額の詳細を確認したところ、総合的対応策の関連予算額については、計210億6497万余円(平成30年度第2次補正予算額60億6495万余円及び令和元年度当初予算額150億0001万余円)となっていた。また、今回、会計検査院が関係府省庁等から提出を受けた調書を基に総合的対応策及び総合的対応策(改訂)における関連予算額を集計したところ、一部の関係府省庁等において、関連予算額のうち、具体的施策に関連する部分を改めて集計し直したことから、図表3-5のとおり、公表された関連予算額と会計検査院が集計した関連予算額は異なっていた。

zuhyo3-5図表3-5 公表された関連予算額と会計検査院が集計した関連予算額(平成30年度~令和2年度)

図表3-5 公表された関連予算額と会計検査院が集計した関連予算額(平成30年度~令和2年度)

(単位:千円)
予算額
区分
総合的対応策 総合的対応策(改訂)
平成30年度 令和元年度 元年度 2年度
第2次補正予算額 当初予算額 補正予算額 当初予算額
公表された関連予算額(A) 6,100,000 15,000,000 21,100,000 4,336,240 20,121,642 24,457,882
上記(A)に係る詳細な関連予算額(B) 6,064,956 15,000,019 21,064,975 4,336,240 20,121,642 24,457,882
会計検査院が集計した関連予算額(C) 3,682,372 13,753,172 17,435,544 3,703,699 20,055,623 23,759,322
差引(差額)((B)-(C)) 2,382,584 1,246,847 3,629,431 632,541 66,019 698,560

(注1) 具体的施策に関連する事業ごとに算出することが可能な予算額を集計している。

(注2) 「公表された関連予算額(A)」欄のうち、総合的対応策に係る金額については、法務省が公表した金額は、平成30年度第2次補正予算額「61億円」及び令和元年度当初予算額「150億円」、計「211億円」となっている。

そして、複数の事業に係る経費が含まれているため事業ごとに支出額等を算出することが困難であるなどの事業を除いた予算の執行状況についてみると、平成30年度については、第2次補正予算額23億3002万余円に対して支出額が5億0813万余円、翌年度繰越額が17億9802万余円、不用額が2386万余円となっていた。また、令和元年度については、当初予算額99億3418万余円、前年度繰越額17億9802万余円及び補正予算額33億1603万余円の計150億4824万円に対して、支出額が81億4848万余円、翌年度繰越額が27億5817万余円、不用額が41億4157万余円となっていた(別図表3-1参照)。

(注26) 法務省は、総合的対応策における関連予算額のうち、令和元年度当初予算額について、関係府省庁等の該当施策の予算案の額を集計した際の誤りにより、平成31年1月に、163億円から150億円に修正している。

(2)総合的対応策及び総合的対応策(改訂)において関連予算額が多額となっている3省における主な事業の実施状況等

平成30年度から令和2年度までの間の総合的対応策及び総合的対応策(改訂)の予算額のうち、関係府省庁等が実施する具体的施策の予算額についてみると、厚生労働省の183億5192万余円が最も多額となっており、次いで法務省の138億6050万余円、文部科学省の51億8252万余円となっていて、これらの上位3省で全体の90.7%を占めていた(別図表3-2参照)。

そこで、会計検査院は、総合的対応策又は総合的対応策(改訂)に盛り込まれている具体的施策のうち、これら3省が所掌する各具体的施策を対象として、事業の実施状況について分析を行った。分析に当たっては、各省の具体的施策の実施状況の概要を整理するとともに、3省がそれぞれ単独で実施している具体的施策に係る事業のうち、第2の1の「大学等への外国人留学生受入れに係る施策の状況」及び第2の2の「技能実習制度の適正化に係る取組の状況」において取り上げたものを除いた上で、予算額及び支出額が事業ごとに算出でき、かつ、事業全体の実施状況を確認することができる事業の中から、予算額が最も多額となっている事業を各省1件ずつ選定して分析を行った。

ア 法務省における主な事業の実施状況等
(ア) 具体的施策の実施状況の概要

総合的対応策及び総合的対応策(改訂)における法務省の具体的施策について、施策の内容ごとに施策数及び事業数をみると、生活者としての外国人に対する支援の項目に係る具体的施策が、総合的対応策については34施策35事業、総合的対応策(改訂)については37施策43事業となっており、いずれにおいても最も多くなっていた(別図表3-3参照)。

そして、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)に盛り込まれている施策の中には、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)の策定以前から法務省の予算に計上され実施されていたものがあり、これらについて、複数の事業に係る経費が含まれているため事業ごとに支出額等を算出することが困難である事業を除いた総合的対応策及び総合的対応策(改訂)における予算の執行状況をみると、元年度については、予算額53億3060万余円及び前年度繰越額9億8031万余円の計63億1091万余円に対して、支出額が25億3635万余円、翌年度繰越額が26億5254万余円、不用額が11億2201万余円となっていた(別図表3-4参照)。

なお、同省における総合的対応策等に関連した施策のうち、新型コロナの感染拡大に伴い、予算が追加された施策に関する事業は、図表3-6のとおりとなっており、「外国人材受入支援体制の強化事業」等の4事業となっていた。

zuhyo3-6図表3-6 法務省における総合的対応策等に関連した施策のうち、新型コロナの感染拡大に伴い、予算が追加された施策に関する事業(令和3年3月末現在)

図表3-6 法務省における総合的対応策等に関連した施策のうち、新型コロナの感染拡大に伴い、予算が追加された施策に関する事業(令和3年3月末現在)

(単位:千円)
事業等名 事業概要 令和2年度補正予算額
外国人材受入支援体制の強化事業 特定技能に係る各種手続案内、新型コロナに係る特例措置の問合せ等に対応する臨時の相談窓口を設置し、丁寧な相談対応、制度説明等を実施することにより、中小・小規模事業者等が必要とする外国人材の円滑な受入れを支援する。 841,045
日本語教育機関の告示基準に基づく各種報告の電子化 地方出入国在留管理局において、報告窓口の混雑緩和を図り、新型コロナの感染拡大を防止するとともに、報告側(学校)の負担を削減し、また、一元的な報告拠点の整備による報告内容の適切な管理及び情報の分析を目的とし、「日本語教育機関の告示基準」に基づく各種報告の電子化を実施する。 442,640
外国人受入環境整備交付金 地方公共団体が設置する情報提供及び相談を多言語で行うワンストップ型の相談窓口において、在留外国人に対して新型コロナに関する情報提供や相談対応を多言語で行うための臨時に特別な体制を執る場合に要する経費について支援する。 144,000
特定技能試験実施費補
助金
新型コロナの影響の拡大により解雇等され、実習が継続困難となった技能実習生、特定技能外国人等が我が国で継続的に就労を希望する場合に、これらの外国人が技能試験を受験する際の金銭的負担を軽減する。 89,855
4事業 11,517,540
(イ) 外国人受入環境整備交付金事業の実施状況

前記分析の対象の考え方に基づき法務省について選定した事業は、「外国人受入環境整備交付金事業」(以下「交付金事業」という。)である。

交付金事業は、総合的対応策(改訂)における「行政・生活情報の多言語化、相談体制の整備」の一つである「外国人が、在留手続、雇用、医療、福祉、出産・子育て・子供の教育等の生活に関わる様々な事柄について疑問や悩みを抱いた場合に、適切な情報や相談場所に迅速に到達することができるよう、地方公共団体が情報提供及び相談を行う一元的な窓口を整備するための支援」等に係る具体的施策を行うものである。同省は、交付金事業として、情報提供及び相談を多言語で行うワンストップ型の相談窓口(以下「一元的相談窓口」という。)の設置・拡充又は運営のための取組を行う都道府県等に対して、平成30年度から外国人受入環境整備交付金(以下「交付金」という。)を交付している。

a 交付金事業の概要

交付金は、在留外国人が在留手続、雇用、医療、福祉、出産・子育て・子供の教育等の生活に係る適切な情報や相談場所に迅速に到達することができるよう、都道府県及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)が一元的相談窓口の設置・拡充又は運営のためにその経費の全部又は一部を負担する場合、法務省が必要な経費の一部を交付し、もって、地域における外国人の受入環境整備を促進し、多文化共生社会の実現に資することを目的として交付するものである。

外国人受入環境整備交付金(整備)交付要綱(平成31年2月制定)及び外国人受入環境整備交付金(運営)交付要綱(平成31年3月制定。以下、これらの交付要綱を合わせて「交付金交付要綱」という。)等によれば、交付金の交付の対象となる事業は、一元的相談窓口の設置・拡充に係る事業(以下「整備事業」という。)及び一元的相談窓口の運営に係る事業(以下「運営事業」という。)とされている。

また、交付金交付要綱等によれば、交付金の交付対象は、令和元年9月までは、都道府県、指定都市及び外国人が集住する市町村(注27)とされていた。その後、元年9月に交付金交付要綱等が改正され、交付対象は全ての都道府県及び市町村に拡大されている。

交付金の交付額は、交付を受けようとする地方公共団体からの申請内容を踏まえて、予算の範囲内で一元的相談窓口の設置又は体制拡充等のために必要となる経費について法務大臣が決定するとされている。また、各交付対象への交付金の交付額については、交付を受けようとする地方公共団体に居住する外国人住民の人数に基づき、交付限度額を超えない範囲で、整備事業に対しては必要とする経費の10分の10の額、運営事業に対しては必要とする経費の2分の1の額とされている(別図表3-5参照)。

(注27)
外国人が集住する市町村  総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」による外国人住民が1万人以上の市町村又は外国人住民が5,000人以上で住民に占める割合が2.0%以上の市町村(ただし、特別区については、それぞれ1万人以上かつ6.0%以上の区とする。)等111地方公共団体をいう。

なお、新型コロナに関する情報提供や相談対応を多言語で行うに当たって、一元的相談窓口を活用することが効果的であると考えられたことから、法務省は地方公共団体が設置する一元的相談窓口において、在留外国人に対して新型コロナに関する情報提供や相談対応を多言語で行うため臨時に特別な体制を執る場合に要する経費について、2年3月から特例措置として交付限度額を倍増する措置を執っていて、3年2月現在、24事業主体が交付決定を受けていた。

b 交付金の交付状況

交付金事業は、平成30年度から整備事業、令和元年度からは整備事業に加えて運営事業が実施されており、交付決定を受けたものの交付対象経費の執行がないなどした事業主体を除いて、平成30年度及び令和元年度に整備事業及び運営事業の両方、又は、いずれか一方の交付決定を受けた事業主体は145事業主体となっていた。

予算の執行状況についてみると、平成30年度は整備事業1億6317万余円、令和元年度は整備事業2億2275万余円及び運営事業4億4667万余円となっており、平成30年度は交付金の予算額が10億円であるのに対してその執行が上記のとおり1億6317万余円と低調になっていた(別図表3-6参照)。法務省はその理由について、交付金の予算額10億円が年度末に成立した平成30年度第2次補正予算において措置されたものであったため交付申請が間に合わなかったことなどによるとしている。

そして、前記の145事業主体に設置されている一元的相談窓口は、整備事業及び運営事業の純計で191窓口となっていた。

c 整備事業の実施状況

整備事業を実施している119事業主体について、交付金の交付を受けて整備事業を実施した158窓口の整備事業の実施状況をみたところ、新たに一元的相談窓口の整備を行った窓口が46窓口、既存の相談窓口等の拡充を行った窓口が112窓口となっており、約70%が既存の相談窓口等の拡充を行ったものとなっていた(別図表3-7参照)。

そして、整備事業により購入した機器等について窓口ごとにみると、新規に一元的相談窓口を整備した窓口及び既存の相談窓口等を拡充した窓口のいずれもタブレット端末等翻訳機器の購入が最も多く計133窓口となっていた(別図表3-8参照)。

d 運営事業の実施状況

運営事業を実施している126事業主体が開設している151窓口について、使用言語別の相談件数をみると、ポルトガル語が最も多く、次いで日本語、英語、スペイン語となっていた(別図表3-9参照)。

使用言語のうち、相談件数62,533件の実績があるポルトガル語については、外部通訳人に依頼した件数508件(相談件数に占める割合0.8%)、翻訳機を利用した件数363件(同0.5%)、相談員等が対応した件数61,662件(同98.6%)となっていた。同様に、相談件数26,690件の実績がある英語については、外部通訳人に依頼した件数358件(同1.3%)、翻訳機を利用した件数204件(同0.7%)、相談員等が対応した件数26,128件(同97.8%)、相談件数21,463件の実績があるスペイン語については、外部通訳人に依頼した件数274件(同1.2%)、翻訳機を利用した件数165件(同0.7%)、相談員等が対応した件数21,024件(同97.9%)となっており、ほとんどの言語について、相談員等による対応が大部分を占めていた。

また、相談内容別の相談件数をみると、年金・税金が29,114件と最も多く、次いで社会保険・医療関係が21,531件、身分関係(婚姻等)が16,438件となっていた(別図表3-10参照)。

イ 文部科学省における主な事業の実施状況等
(ア) 具体的施策の実施状況の概要

総合的対応策及び総合的対応策(改訂)における文部科学省の具体的施策について、施策の内容ごとに施策数及び事業数をみると、生活者としての外国人に対する支援の項目に係る具体的施策が、総合的対応策については26施策32事業、総合的対応策(改訂)については25施策37事業となっており、いずれにおいても最も多くなっていた(別図表3-11参照)。

そして、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)に盛り込まれている施策の中には、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)の策定以前から文部科学省の予算に計上され実施されていたものがあり、これらについて、複数の事業に係る経費が含まれているため事業ごとに支出額等を算出することが困難であるなどの事業を除いた総合的対応策及び総合的対応策(改訂)における予算の執行状況をみると、令和元年度については、予算額22億6333万余円に対して、支出額が16億7981万余円、不用額が5億8351万余円となっていた(別図表3-12参照)。

なお、同省における総合的対応策等に関連した施策のうち、新型コロナの感染拡大に伴い、執行額が影響を受けるなどした施策に関する事業は、図表3-7のとおりとなっており、新型コロナの影響により一部の実施時期が変更されたり、一部が中止となったりしたものが「外国人児童生徒等に対する日本語指導指導者養成研修」等の4事業となっていた。

zuhyo3-7図表3-7 文部科学省における総合的対応策等に関連した施策のうち、新型コロナの感染拡大に伴い、執行額が影響を受けるなどした施策に関する事業(令和3年3月末現在)

図表3-7 文部科学省における総合的対応策等に関連した施策のうち、新型コロナの感染拡大に伴い、執行額が影響を受けるなどした施策に関する事業(令和3年3月末現在)

事業等名 影響区分 事業概要 変更又は中止の概要
外国人児童生徒等に対する日本語指導指導者養成研修 変更及び
中止
新学習指導要領に基づいて、地方公共団体や学校全体での外国人児童生徒等の受入体制の整備、関係機関との連携、特別な教育課程の編成や通級による指導を含めた日本語指導の方法等について、必要な知識等を習得するための研修を実施する。 研修の一部を中止、一部をオンラインにより実施
「生活者としての外国人」のための日本語教育事業(地域日本語教育コーディネーター研修) 中止 地方公共団体、国際交流協会、地域の日本語教室等で日本語教育プログラムの編成・実施及び日本語教育プログラムの実施に必要な地域の関係機関との連携・調整に携わっている者を対象に「地域日本語教育コーディネーター」に必要な資質・能力について理解を深め、その向上を図ることを目的とした研修を実施する。 研修を中止
地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業 変更及び
中止
外国人を日本社会の一員として受け入れる社会包摂を念頭に置き、日本語能力が十分でない外国人が生活等に必要な日本語能力を身に付けられるよう、地方公共団体が関係機関等と有機的に連携しつつ行う日本語教育環境を強化するための総合的な体制づくりなどを行う事業に対して、当該事業を実施するために必要とする経費の一部を補助することにより、「生活者としての外国人」の日本語学習機会の確保を図っていく。 ・令和2年度都道府県・市区町村等日本語教育担当者研修を中止
・令和2年度都道府県・政令指定都市日本語教育担当者連絡会議をオンラインにより実施
日本語教育研究協議会 変更 各地の日本語教育指導者等に対し、一連の成果物の先進的な活用事例を共有し、地域の日本語教育の内容・方法の一層の充実及び改善につなげることを目的としたワークショップを開催することにより、日本語教育の充実と推進に資する。 令和2年度文化庁日本語教育大会について、WEB大会形式により実施
4事業
(イ) 公立学校における帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業の実施状況

前記分析の対象の考え方に基づき文部科学省について選定した事業は、「公立学校における帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業」(以下「きめ細かな支援事業」という。)である。

きめ細かな支援事業は、総合的対応策(改訂)における「外国人の子供に係る対策」の一つである「日本語指導補助者や母語支援員の活用等の指導体制の構築や、日本人と外国人が共に学び理解し合える授業の実施」等に係る具体的施策を行うものである。同省は、きめ細かな支援事業として、公立学校に在籍する帰国・外国人児童生徒等(日本語指導を必要とする幼児や日本国籍であっても日本語指導を必要とする児童生徒を含む。)及び不就学等の外国人の子供に対する教育支援事業を行う都道府県、市町村等の自治体に対して、教育支援体制整備事業費補助金を交付している。

a きめ細かな支援事業の概要

教育支援体制整備事業費補助金は、公立学校に在籍する帰国・外国人児童生徒等及び不就学等の外国人の子供に対する教育支援事業を行う自治体に対して、公立学校、地方自治体その他団体等で連携した指導・支援体制の構築を図ることを目的として当該事業を実施するために必要とする経費の一部を補助するものである。

そして、文部科学省は、帰国・外国人児童生徒等の受入れから卒業後の進路まで一貫した指導・支援体制の構築を図るために、各自治体が実施する実施項目として、運営協議会・連絡協議会の実施、拠点校の設置等による指導体制の構築、日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施、「特別の教育課程」による日本語指導の実施等を毎年度示している(別図表3-13参照)。

また、教育支援体制整備事業費補助金交付要綱(帰国・外国人児童生徒等教育の推進支援事業)(平成25年文部科学大臣裁定。以下、この交付要綱に基づき交付される補助金のうち、きめ細かな支援事業に係るものを「きめ細かな支援事業補助金」という。)等によれば、きめ細かな支援事業補助金の補助対象は、都道府県、指定都市及び中核市とされ、市町村(特別区及び市町村の組合を含む。)が、間接補助事業として行う場合も含まれるとされている。

b きめ細かな支援事業補助金の交付状況

きめ細かな支援事業は、平成25年度から実施されており、検査対象期間とした27年度から令和元年度までの間に交付決定を受けた事業主体(間接補助事業者を含む。)は、交付決定を受けたものの交付対象経費の執行がないなどした事業主体を除いて、平成27年度53事業主体、28年度61事業主体、29年度62事業主体、30年度63事業主体、令和元年度67事業主体となっていて、きめ細かな支援事業を実施する事業主体は年々増加している(別図表3-14参照)。

また、これらの事業主体に対して交付されたきめ細かな支援事業補助金の交付額は、平成27年度1億0515万円、28年度1億5477万余円、29年度1億9028万余円、30年度1億6453万円、令和元年度3億7964万余円となっていた。文部科学省は、元年度に交付額が増加した理由について、総合的対応策が策定されたことを踏まえて、自治体が行う支援に対する補助事業を強力に推進するためであるとしている。

c きめ細かな支援事業の対象となる児童生徒の状況

(a)きめ細かな支援事業の実施地域における児童生徒数等の状況

前記の事業主体における平成27年度から令和元年度までの間の学校種別ごとの児童生徒数及び学校数は、図表3-8のとおりとなっており、児童生徒数、学校数共に年々増加していた。

zuhyo3-8図表3-8 きめ細かな支援事業の実施地域における児童生徒数等(平成27年度~令和元年度)

図表3-8 きめ細かな支援事業の実施地域における児童生徒数等(平成27年度~令和元年度)

(単位:人、校)
年度 区分 学校種別
小学校 中学校 義務教育
学校
高等学校 中等教育
学校
特別支援
学校
平成
27年度
児童
生徒数
257,054 109,677 0 326 0 0 367,057
学校数 614 228 0 1 0 0 843
28年度 児童
生徒数
484,034 238,202 970 14,606 0 0 737,812
学校数 1,174 557 1 22 0 0 1,754
29年度 児童
生徒数
1,517,461 686,029 2,966 112,231 0 6,951 2,325,638
学校数 4,081 1,893 5 258 0 75 6,312
30年度 児童
生徒数
1,671,368 770,114 6,615 115,868 0 6,664 2,570,629
学校数 4,418 2,148 17 264 0 71 6,918
令和
元年度
児童
生徒数
1,759,677 812,112 11,395 267,252 0 6,668 2,857,104
学校数 4,758 2,280 21 501 0 71 7,631
  • 注(1) 事業主体において正確な計数が把握できないものは集計の対象としていない。
  • 注(2) 公立の幼稚園等についても事業の対象となっているが、文部科学省や各事業主体による調査の対象外となっているため、集計の対象としていない。
  • 注(3) 平成27年度及び28年度については、きめ細かな支援事業の実績報告書において児童生徒数、学校数等を報告することとされていなかったため、児童生徒数、学校数等を事業主体が把握していたもののみを集計している。

(b)日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数等の状況

(a)のうち、公立学校における外国籍の児童生徒数及び当該児童生徒が在籍する学校数は、図表3-9のとおりとなっており、外国籍の児童生徒数、学校数共に年々増加していた。

また、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数(注28)及び当該児童生徒が在籍する学校数は、図表3-9のとおりとなっており、外国籍の児童生徒数、学校数共に年々増加していた。

(注28)   
 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒  日本語指導が必要な外国籍の児童生徒日本語で日常会話が十分にできない又は日常会話ができても、学年相当の学習言語能力が不足し、学習活動への参加に支障が生じている外国籍の者
zuhyo3-9図表3-9 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数等(平成27年度~令和元年度)

図表3-9 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数等(平成27年度~令和元年度)

(単位:人、校)
年度 区分 学校種別
小学校 中学校 義務教育
学校
高等学校 中等教育
学校
特別支援
学校
平成
27年度
在籍する外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
2,739 1,281 0 62 0 0 4,082
学校数 393 176 0 1 0 0 570
日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
1,493 603 0 62 0 0 2,158
学校数 196 88 0 1 0 0 285
28年度 在籍する外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
6,317 3,218 11 204 0 0 9,750
学校数 840 408 1 22 0 0 1,271
日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
2,791 1,240 7 74 0 0 4,112
学校数 390 194 1 4 0 0 589
29年度 在籍する外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
16,875 7,480 46 318 0 17 24,736
学校数 2,246 1,030 4 37 0 6 3,323
日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
9,179 3,533 31 99 0 12 12,854
学校数 1,304 568 4 10 0 3 1,889
30年度 在籍する外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
21,496 9,154 97 350 0 18 31,115
学校数 2,687 1,209 11 51 0 6 3,964
日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
11,207 4,330 30 111 0 8 15,686
学校数 1,589 722 9 11 0 5 2,336
令和
元年度
在籍する外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
26,278 10,813 215 2,329 0 17 39,652
学校数 2,946 1,345 15 225 0 6 4,537
日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数、学校数 児童
生徒数
13,496 4,982 110 674 0 16 19,278
学校数 1,768 793 13 68 0 5 2,647
  • 注(1) 事業主体において正確な計数が把握できないものは集計に含めていない。
  • 注(2) 公立の幼稚園等についても事業の対象となっているが、文部科学省や各事業主体による調査の対象外となっているため、集計の対象としていない。
  • 注(3) 平成27年度及び28年度については、きめ細かな支援事業の実績報告書において児童生徒数、学校数等を報告することとされていなかったため、児童生徒数、学校数等を事業主体が把握していたもののみを集計している。

(c)日本語指導を受けた外国人児童生徒等数の状況

(a)のうち、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒及び日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒(以下、これらを合わせて「外国人児童生徒等」という。)の人数についてみると、図表3-10のとおり、平成27年度2,766人、28年度5,330人、29年度16,352人、30年度19,962人、令和元年度23,785人と年々増加していた。

そして、外国人児童生徒等のうち、日本語指導等特別な指導を受けた外国人児童生徒等数についてみると、図表3-10のとおり、平成27年度1,466人(外国人児童生徒等数の計に占める割合53.0%)、28年度4,148人(同77.8%)、29年度12,257人(同74.9%)、30年度15,087人(同75.5%)、令和元年度21,167人(同88.9%)となっていて、直近年度では、外国人児童生徒等の多くは日本語指導を受けることができる状況となっていた。

zuhyo3-10図表3-10 日本語指導等特別な指導を受けた外国人児童生徒等数(平成27年度~令和元年度)

図表3-10 日本語指導等特別な指導を受けた外国人児童生徒等数(平成27年度~令和元年度)

(単位:人、%)
年度 区分 小学校 中学校 義務
教育
学校
高等
学校
中等
教育
学校
特別
支援
学校
平成
27年度
日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数 2,158 1,493 603 0 62 0 0
日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数 608 473 135 0 0 0 0
2,766 1,966 738 0 62 0 0
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数 1,466 1,077 327 0 62 0 0
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数の割合 53.0 54,7 44.3 0 100 0 0
28年度 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数 4,112 2,791 1,240 7 74 0 0
日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数 1,218 978 238 0 2 0 0
5,330 3,769 1,478 7 76 0 0
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数 4,148 2,901 1,164 2 81 0 0
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数の割合 77.8 76.9 78.7 28.5 106.5 0 0
29年度 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数 12,854 9,179 3,533 31 99 0 12
日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数 3,498 2,771 699 15 12 0 1
16,352 11,950 4,232 46 111 0 13
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数 12,257 8,970 3,124 38 111 0 14
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数の割合 74.9 75.0 73.8 82.6 100 0 107.6
30年度 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数 15,686 11,207 4,330 30 111 0 8
日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数 4,276 3,306 931 32 7 0 0
19,962 14,513 5,261 62 118 0 8
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数 15,087 10,780 4,155 40 105 0 7
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数の割合 75.5 74.2 78.9 64.5 88.9 0 87.5
令和
元年度
日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数 19,278 13,496 4,982 110 674 0 16
日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数 4,507 3,424 1,029 31 16 0 7
23,785 16,920 6,011 141 690 0 23
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数 21,167 15,033 5,641 121 364 0 8
特別な指導を受けた外国人児童生徒等数の割合 88.9 88.8 93.8 85.8 52.7 0 34.7

(注1) 事業主体において正確な計数が把握できないものは集計の対象としていない。

(注2) 公立の幼稚園等についても事業の対象となっているが、文部科学省や各事業主体による調査の対象外となっているため、集計の対象としていない。

(注3) 「特別な指導を受けた外国人児童生徒等数の割合」欄は、事業主体において、日本語指導が必要な外国籍又は日本国籍の児童生徒数と特別な指導を受けた外国人児童生徒等数の把握時点が異なることなどから100%を超える場合がある。

d きめ細かな支援事業の実施状況

きめ細かな支援事業において、各自治体が実施すべき実施項目は、その内容が毎年度変更されている(年度別の実施項目及び各実施項目を実施した事業主体数については、別図表3-13参照)。このうち、主な実施項目の実施状況についてみると次の(a)及び(b)のとおりであり、その他の実施項目の実施状況についてみると(c)のとおりである。

(a)特別の教育課程による日本語指導の実施

帰国・外国人児童生徒等教育の推進支援事業実施要領(平成25年初等中等教育局長裁定。以下「補助金実施要領」という。)によれば、事業主体は、平成26年1月の学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)の改正による日本語の能力に応じた特別の指導のための「特別の教育課程」の編成・実施に必要な、個別の指導計画の作成・指導・学習評価等の実践研究を行うこととされている。

「特別の教育課程」は、学校教育法施行規則等に基づき、26年度から小学校、中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部において行われる児童生徒が学校生活を送る上や教科等の授業を理解する上で必要な日本語の指導を在籍学級の教育課程の一部の時間に替えて、在籍学級以外の教室で行う教育の形態とされている。

そして、外国人児童生徒等のうち、特別の教育課程で指導を受けた外国人児童生徒等の割合についてみると、図表3-11のとおり、27年度32.9%、28年度46.0%、29年度48.0%、30年度52.9%、令和元年度61.4%となっていて、年々増加していた。

zuhyo3-11図表3-11 特別の教育課程による日本語指導の実施状況(平成27年度~令和元年度)

図表3-11 特別の教育課程による日本語指導の実施状況(平成27年度~令和元年度)

(単位:人、%)
年度 きめ細かな支援事業の事業主体数(A) 特別の教育課程による日本語指導を実施した事業主体数(B) 割合
(B)/(A)
区分 学校種別
小学校 中学校 義務
教育
学校
中等
教育
学校
特別
支援
学校
平成
27年度
53 53 100 外国人児童生徒等数(C) 2,704 1,966 738 0 0 0
特別の教育課程で指導を受けた外国人児童生徒等数(D) 890 671 219 0 0 0
割合 (D)/(C) 32.9 34.1 29.6 0.0 0.0 0.0
28年度 61 61 100 外国人児童生徒等数(C) 5,254 3,769 1,478 7 0 0
特別の教育課程で指導を受けた外国人児童生徒等数 (D) 2,417 1,730 685 2 0 0
割合 (D)/(C) 46.0 45.9 46.3 28.5 0.0 0.0
29年度 62 62 100 外国人児童生徒等数(C) 16,241 11,950 4,232 46 0 13
特別の教育課程で指導を受けた外国人児童生徒等数(D) 7,810 5,788 2,011 11 0 0
割合 (D)/(C) 48.0 48.4 47.5 23.9 0.0 0.0
30年度 63 63 100 外国人児童生徒等数(C) 19,844 14,513 5,261 62 0 8
特別の教育課程で指導を受けた外国人児童生徒等数(D) 10,505 7,512 2,964 24 0 5
割合 (D)/(C) 52.9 51.7 56.3 38.7 0.0 62.5
令和
元年度
67 67 100 外国人児童生徒等数(C) 23,095 16,920 6,011 141 0 23
特別の教育課程で指導を受けた外国人児童生徒等数(D) 14,192 10,465 3,642 78 0 7
割合 (D)/(C) 61.4 61.8 60.5 55.3 0.0 30.4
  • 注(1) 事業主体において正確な計数が把握できないものは集計の対象としていない。
  • 注(2) 「学校種別」欄における各学校種別の外国人児童生徒等数は、「きめ細かな支援事業の事業主体数(A)」欄に対応する事業主体に係る人数について集計している。
  • 注(3) 平成27年度及び28年度については、きめ細かな支援事業の実績報告書において児童生徒数等を報告することとされていなかったため、児童生徒数を事業主体が把握していたもののみを集計している。

(b)日本語指導ができる又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣

補助金実施要領によれば、支援員は、児童生徒等が在籍する公立学校等への派遣による適応指導・日本語指導の補助(母語によるものを含む。)や学校管理職等の管理の下、個別の指導計画に基づいた活動を行うこととされている。

この実施項目を実施した事業主体数は、図表3-12のとおり、平成27年度49事業主体、28年度58事業主体、29年度58事業主体、30年度60事業主体、令和元年度63事業主体となっており、きめ細かな支援事業を実施する事業主体における実施率は、平成27年度92.4%、28年度95.0%、29年度93.5%、30年度95.2%、令和元年度94.0%といずれの年度も高い水準となっていた。

zuhyo3-12図表3-12 日本語指導ができる又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣の実施状況(平成27年度~令和元年度)

図表3-12 日本語指導ができる又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣の実施状況(平成27年度~令和元年度)

(単位:事業主体、%)
年度 きめ細かな支援事業
の事業主体数(A)
該当する支援員の派遣を実施
した事業主体数(B)
実施率(A)/(B)
平成27年度 53 49 92.4
28年度 61 58 95.0
29年度 62 58 93.5
30年度 63 60 95.2
令和元年度 67 63 94.0

支援員の支援状況について、支援員の人数の推移をみると、図表3-13のとおり、年々増加しており、言語別にみると、中国語による支援が最も多くなっていた。

zuhyo3-13図表3-13 支援員の言語別人数(平成27年度~令和元年度)

図表3-13 支援員の言語別人数(平成27年度~令和元年度)

(単位:人)
年度 中国語 英語 フィリピノ語 インドネシア語 韓国・朝鮮語 ネパール語 ポルトガル語 スペイン語 タイ語 ベトナム語 その他
平成27年度 284 113 134.0 10 26 12 155 87 16 36 304 1,177
28年度 293 135 141.0 22 42 14 177 80 21 48 304 1,277
29年度 332 175 175.0 19 41 17 191 102 28 50 463 1,593
30年度 345 184 171.0 30 41 19 204 106 17 62 466 1,645
令和元年度 425 260 213.0 29 39 32 273 149 28 101 548 2,097

また、支援員の支援内容をみると、図表3-14のとおりとなっており、日本語指導のための支援員が最も多くなっていた。

zuhyo3-14図表3-14 支援員の支援内容(平成27年度~令和元年度)

図表3-14 支援員の支援内容(平成27年度~令和元年度)

(単位:人)
年度 母語学習のため
の支援員
日本語指導のため
の支援員
通訳のみ
の支援員
平成27年度 115 727 335 1,177
28年度 104 778 395 1,277
29年度 140 1027 426 1,593
30年度 148 1050 447 1,645
令和元年度 174 1398 525 2,097

(c)その他の実施項目

文部科学省は、総合的対応策等に沿って、外国人児童生徒等の受入れを推進するために、平成30年度以降は次の①から③までを、令和元年度以降はこれらに加えて④及び⑤を、それぞれ各自治体が実施する重点実施項目として示している。

① 小学校入学前の幼児や保護者を対象として、入学後の学校生活への円滑な適応につなげるための教育・支援や母語・母文化を学ぶプレスクール等の取組

② 多言語翻訳アプリや高度情報通信技術等のICTを活用して児童生徒等や保護者に対する効果的な教育・支援を行う取組

③ 高等学校等における日本語指導・教科指導の充実(元年度からは高校生等に対するキャリア教育(学力保障やインターンシップ等を含む。)や進路指導の充実等の高校生等に対する包括的な教育・支援)

④ 児童生徒等の多様な見方・考え方や特性等を各教科等の学習に生かし、日本人の児童生徒を含む全ての児童生徒等が多様な価値観を受容しながら共に学ぶ授業の在り方に関し、有識者等の協力を得て行う調査研究

⑤ 家庭での親子間及び保護者と教員のコミュニケーション活性化、地域コミュニティへの参画等を目的とした親子日本語教室の実施(母語・母文化の学びに関する取組を含む。)

文部科学省によれば、これらの重点実施項目は、総合的対応策等で記載されていて、実施することが望ましい事項とされている。

そして、これらの実施状況についてみると、図表3-15のとおり、重点実施項目②の実施率が最も高くなっていた。

zuhyo3-15図表3-15 重点実施項目の実施状況(平成30年度及び令和元年度)

図表3-15 重点実施項目の実施状況(平成30年度及び令和元年度)

(単位:事業主体、%)
実施項目 年度 きめ細かな
支援事業の
事業主体数
(A)
重点実施項目を実施した
事業主体数(B)
実施率
(B)/(A)
重点実施項目① 平成30年度 63 19 30.1
令和元年度 67 21 31.3
重点実施項目② 平成30年度 63 24 38.0
令和元年度 67 31 46.2
重点実施項目③ 平成30年度 63 8 12.6
令和元年度 67 8 11.9
重点実施項目④ 平成30年度
令和元年度 67 15 22.3
重点実施項目⑤ 平成30年度
令和元年度 67 6 8.9

(注) 本図表中の重点実施項目の①から⑤までの番号は本文の①から⑤までに記述した内容に対応している。

また、「外国人児童生徒等の教育の充実について(報告)」(令和2年3月外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議)によれば、中学生・高校生の進学・キャリア支援の充実については、「外国人児童生徒等が自己肯定感を高め、将来のキャリアや職業、生活などに夢や希望を持って学習を続けられるようにするためには、高等学校・大学等への進学や就職等の進路選択を支援することが重要である。」等とされている。

そこで、これに関連する重点実施項目である前記重点実施項目③の実施状況についてみたところ、平成30年度は、8事業主体(実施率12.6%)、令和元年度は8事業主体(実施率11.9%)となっていて、企業見学の実施や就職支援等を実施するコーディネーターを任用するなどしていた。

ウ 厚生労働省における主な事業の実施状況等
(ア) 具体的施策の実施状況の概要

総合的対応策及び総合的対応策(改訂)における厚生労働省の具体的施策について、施策の内容ごとに施策数及び事業数をみると、生活者としての外国人に対する支援の項目に係る具体的施策が、総合的対応策については31施策50事業、総合的対応策(改訂)については45施策69事業となっており、いずれにおいても最も多くなっていた(別図表3-15参照)。

そして、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)に盛り込まれている施策の中には、総合的対応策及び総合的対応策(改訂)の策定以前から厚生労働省の予算に計上され実施されていたものがあり、これらについて、複数の事業に係る経費が含まれているため事業ごとに支出額等を算出することが困難であるなどの事業を除いた総合的対応策及び総合的対応策(改訂)における予算の執行状況をみると、元年度については、予算額51億8771万余円に対して、支出額が29億5640万余円、不用額が22億3130万余円となっていた(別図表3-16参照)。

なお、同省における総合的対応策等に関連した施策のうち、新型コロナの感染拡大に伴い、予算が追加された施策又は執行額が影響を受けるなどした施策に関する事業は、図表3-16のとおりとなっており、新型コロナ対応のために予算が追加されたものが「生活困窮者就労準備支援事業等」等の4事業、新型コロナの影響により実施時期が変更されたものが「地域外国人材受入れ・定着モデル事業」の1事業、計5事業となっていた。

zuhyo3-16図表3-16 厚生労働省における総合的対応策等に関連した施策のうち、新型コロナの感染拡大に伴い、予算が追加された施策又は執行額が影響を受けるなどした施策に関する事業(令和3年3月末現在)

図表3-16 厚生労働省における総合的対応策等に関連した施策のうち、新型コロナの感染拡大に伴い、予算が追加された施策又は執行額が影響を受けるなどした施策に関する事業(令和3年3月末現在)

(単位:千円)
事業等名 影響区分 事業概要 変更又は中止の概要 令和2年度補正
予算額
生活困窮者就労準備支
援事業等
追加 新型コロナの影響により、生活に困窮される方への支援の強化に向け、自立相談支援機関の自立相談員の加配等による体制強化や、多言語対応のための機器購入、通訳配置等による外国籍の方への生活困窮者自立支援の実施等、現下の情勢において必要な支援を実施する。 - 6,049,969
外国人労働者に係る相
談支援体制等の強化
追加 外国人を雇用する事業所の雇用維持支援及び離職を余儀なくされた外国人労働者に対する就職支援等のため、外国人労働者が特に多い地域のハローワークを中心に外国人労働者に係る相談支援体制等を強化する。 - 497,091
外国人労働者労働条件
相談員の配置等及び
「労働条件相談ほっと
ライン」の多言語での
相談対応
追加 ・都道府県労働局や労働基準監督署に設置している「外国人労働者相談コーナー」に配置している外国人労働者労働条件相談員を増置する。
・労働基準監督署の閉庁時間に労働相談を受け付ける「労働条件相談ほっとライン」の通訳員を増員する。
- 113,483
希少言語に対応した遠
隔通訳サービス事業
追加 新たに新型コロナの感染拡大防止の観点から緊急的な措置として、主要5言語の電話医療通訳サービス事業を実施する。 - 73,676
地域外国人材受入れ・
定着モデル事業
変更 外国人材が職場や地域で円滑に定着できることを目的として、外国人材の受入れ・定着に積極的な都道府県をモデル地域として選定し、当該モデル地域と都道府県労働局が連携し、働きやすい職場等を作ることで、外国人材が円滑に職場に定着できるための施策を実施する。 契約締結時期を調整 -
5事業 6,734,219
(イ) 外国人就労・定着支援研修事業の実施状況

前記分析の対象の考え方に基づき厚生労働省について選定した事業は、「外国人就労・定着支援研修事業」(以下「研修事業」という。)である。

研修事業は、総合的対応策(改訂)における「適正な労働環境等の確保」の一つである「外国人雇用サービスコーナー等において、専門相談員の配置による職業相談や、定住外国人等が応募しやすい求人情報の提供、地方公共団体が設置する一元的な窓口との連携等により、安定的な就労の促進及び職場定着を図る。また、定住外国人等を対象とした、日本の職場におけるコミュニケーション能力の向上やビジネスマナー等に関する知識の習得を目的とした研修事業(外国人就労・定着支援研修事業)について、実施地域及び対象者数の拡充を図る」等に係る具体的施策のうち、定住外国人(注29)を対象とした研修等の事業を行うものである。

a 研修事業の概要

研修事業は、定住外国人を対象として、日本語コミュニケーション能力の向上、我が国の労働法令、雇用慣行、労働・社会保険制度等に関する知識の習得に係る講義・実習等を内容とした就労及び定着に資する研修を、厚生労働省が、専門的なノウハウを有する機関に委託して実施するものである。そして、研修事業は、日本語の到達度に応じて、平成27年度から30年度までの間は8コース(基本コース(レベル1からレベル3まで)、日本語資格準備コース(N3、N2)、専門コース(介護コース、就労準備コース、職業訓練準備コース))、令和元年度は5コース(レベル1からレベル5まで)に区分されている(各コースの概要は別図表3-17及び別図表3-18参照)。

(注29)
定住外国人  入管法に規定する在留資格のうち、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」を有する外国人をいう。

そして、各年度に実施されたコース数は、平成30年度を除いて増加傾向にあり、コース別にみると、27年度から令和元年度までの間の毎年度においてレベル1コースが最も多い状況となっていた(別図表3-19及び別図表3-20参照)。

b 研修事業に係る受託業者への支払額

研修事業は、全て厚生労働本省の委託事業として実施されており、受託業者への支払額は、平成27年度が4億9338万余円、28年度が5億2924万余円、29年度が4億5471万余円、30年度が4億8756万余円、令和元年度(注30)が7億6180万余円、計27億2671万余円となっていた。

(注30) 他の年度と異なり、定住外国人に対する研修等のほか、外国人留学生に対する研修等を実施しており、外国人留学生に対する研修等に係る支払相当額を含んでいる。

c 研修事業の研修対象者

研修事業の研修対象者は、平成27年度から30年度までの間は、定住外国人であって、公共職業安定所(以下「ハローワーク」という。)に求職登録を行っている者のうち、次の所定の要件に該当するかなどを勘案して、公共職業安定所長が必要と認める者となっている。

① 今後我が国に長期にわたって在留する予定があり、安定した就労の必要性が高い者

② ハローワークの職業紹介・就業支援業務等により把握した者のうち、安定した就労の必要性が高い者

③ ハローワークへの求職申込後、自ら進んでハローワークを訪れて職業相談を受けるなど就職への意欲が高いと認められるにもかかわらず、日本語コミュニケーション能力や我が国の雇用慣行、労働法令等に関する知識等、就労に必要な知識やスキルが十分ではないことなどが原因で安定的な雇用に就くことが困難である者

また、令和元年度は、定住外国人であって、ハローワークに求職登録を行っている者のうち、次の所定の要件に該当するかなどを勘案して、公共職業安定所長が必要と認める者となっている。

① 就業中の者で、本コースの受講により安定した就労への移行が見込める者

② 失業中を含む未就業の者で、ハローワークの利用等により就職への意欲が高いと認められるにもかかわらず、日本語能力やビジネスマナー、我が国の雇用慣行等に関する知識が不十分であることから安定的な雇用に就くことが困難である者

d 研修事業の実施地域の選定

厚生労働本省は、実施地域の選定については、ハローワークにおける定住外国人の求職登録状況等を踏まえて決定しているとしており、平成27年度15都府県、28年度16都府県、29年度18都府県、30年度17都府県、令和元年度19都府県が選定されていた。

e 就職支援のための取組

研修事業の受講者に対する就職支援のため、平成27年度から30年度までの間の研修事業では、受託業者は、仕様書に定められた「外国人就労・定着支援研修受講者の就職支援マニュアル」(以下「就職支援マニュアル」という。)に基づき、受講者の求職情報を掲載した求職情報誌を活用するなどして労働局及びハローワークと連携して就職支援に対応することとされている(図表3-17参照)。

図表3-17 就職支援マニュアルに基づく求職情報誌発行から面接に至るまでの主な流れ(平成27年度~30年度)

図表3-17 就職支援マニュアルに基づく求職情報誌発行から面接に至るまでの主な流れ(平成27年度~30年度) 画像

そして、受託業者は、受講者が提出した求職情報シートをハローワークに提出したり、事業所からハローワークを経由して提出を受けた面接希望シート等に基づき受講者に対して面接希望の意向確認を行ったりすることなどとされており、労働局及びハローワークと連携して就職支援の一部を行うこととされている。

また、厚生労働省によると、令和元年度は、事業開始から一定期間を経て、ハローワークと受託業者との連携が円滑に図られるようになったため、委託事業の仕様書において、受託業者が就職支援マニュアルに基づき就職支援を行うことは定められていないが、「平成31年度外国人就労・定着支援研修事業業務実施要領」(平成31年職外発0417第1号)によれば、研修事業の実施地域を管轄する労働局等は、受託業者との連携を図り、研修事業の円滑な実施に協力することとされている。そして、仕様書によれば、国内企業における安定的な就職及び職場定着の促進を図るなどのために受託業者はハローワーク等の関係機関との連携を密にすることとされていて、元年度においても平成30年度までと同様にハローワーク等と連携して就職支援を行うこととされている。

そこで、上記就職支援の実施状況について厚生労働省に確認したところ、27年度から30年度までの間は受託業者からハローワークに提出された求職情報シートに基づく求職や、受託業者が行うこととされている受講者に対する面接希望の意向確認の状況について、事業実施結果報告書等により厚生労働本省に報告することとなっておらず、同本省は、各ハローワークにおける上記就職支援の実施状況について、把握していなかった。このため、同本省は求職情報誌による就職支援の実施状況を十分に確認しておらず、就職支援について改善を図ることの検討が十分にできない状況となっていた。また、令和元年度も、同本省は平成27年度から30年度までの間と同様に受託業者等が実施した就職支援の実施状況を十分に確認しておらず、就職支援について改善を図ることの検討が十分にできない状況となっていた。

したがって、厚生労働本省において、研修事業における就職支援の実施状況を適切に把握して翌年度以降の研修事業に活用できるよう、受託業者とハローワーク等における就職支援の実施状況について事業実施結果報告書等により報告させて把握する必要がある。

f 研修修了後の就労状況

仕様書によれば、受託業者はコース別の実施状況を長くとも1か月を超えない周期で厚生労働本省に報告することとされているほか、受託業者は、研修修了時、研修修了後1か月及び研修修了後3か月のそれぞれの時点について、コース別の修了者の就労状況を報告している(27年度から令和元年度までの間の各年度の修了者の就労状況については別図表3-21別図表3-22別図表3-23参照)。