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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 令和2年12月

独立行政法人における繰越欠損金の状況等について


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

1(3)のとおり、19年報告及び20年報告では、繰越欠損金を計上している独立行政法人や勘定については、その解消等に向けて計画的に取り組んでいく必要があることを所見として記述している。また、1(2)アのとおり、繰越欠損金を計上していて、その計画的解消が中期目標等に記載されている事業等を行っている独立行政法人(勘定)は、中長期の財務リスク(将来的に国民に予期せざる財務上の負担が生ずる可能性)が想定されており、繰越欠損金の解消は、中長期の財務リスクを低減することになる。しかし、1(4)のとおり、独立行政法人における繰越欠損金の総額は、23事業年度末から26事業年度末までの間に1兆5411億余円減少したものの、その後、令和元事業年度末までの減少額は673億余円にとどまっている。

さらに、1(3)のとおり、19年報告では、特殊法人等から独立行政法人への移行に際し、旧特殊法人等の繰越欠損金の処理のために政府出資金が充てられたことを、また、20年報告では、事業の廃止に伴い清算された勘定において、政府出資金を欠損金の処理に充てたため、政府出資金が回収されていないことをそれぞれ記述しており、政府出資が行われている勘定が廃止される時点で当該勘定に繰越欠損金を計上している場合には、当該勘定に係る政府出資金が回収されないおそれがある。

そこで、会計検査院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。

ア 繰越欠損金の計上状況等はどのようになっているか。また、繰越欠損金はどのような原因で計上されたか。

イ 勘定ごとの繰越欠損金の増減等の原因等はどのようになっているか。

ウ 廃止された勘定及び廃止が見込まれるなどしている勘定における政府出資金の状況等はどのようになっているか。

エ 繰越欠損金の計画的解消等に係る目標の設定及び目標に対する評価の状況はどのようになっているか。

(2) 検査の対象及び方法

平成23事業年度末から令和元事業年度末までに繰越欠損金を計上した事業年度がある前記43法人60勘定のうち、新型コロナウイルス感染症に関する法人の業務の状況等に鑑み、医療の提供や事業者等の資金繰り対策等を実施している13法人17勘定(別表1(参考)参照)を除いた30法人43勘定(以下「検査対象30法人43勘定」といい、これに係る30法人を「検査対象法人」という。検査対象30法人43勘定のうち政府出資が行われている24法人31勘定の元事業年度末の政府出資金の合計額4兆3636億余円(別表2参照)を対象として、検査対象法人及び検査対象法人の主務省8府省に対して、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき検査対象法人から提出された財務諸表等のほか、繰越欠損金の状況等に係る調書等の提出を求めて、これらを分析するとともに、検査対象法人のうち16法人及び主務省のうち経済産業省において会計実地検査を行った(図表0-7参照)。

(以下、各独立行政法人の名称中、「独立行政法人」及び「国立研究開発法人」は記載を省略した。)

h0-7図表0-7 検査対象法人(令和2年3月末現在)

図表0-7 検査対象法人(令和2年3月末現在)

主務省名
注(1)
法人名 勘定名 会計実
地検査
注(2)
主務省名
注(1)
法人名 勘定名 会計実
地検査
注(2)
内閣府 国立公文書館 厚生
労働省
医薬品医療機器総合機構 受託給付
総務省 情報通信研究機構 基盤技術研究促進
出資 農林
水産省
農業・食品産業技術総
合研究機構
民間研究特例業務
注(9)
通信・放送承継
注(3)
特例業務 注(10)
郵便貯金簡易生命保険
管理・郵便局ネット
ワーク支援機構
郵便局ネットワー
ク支援
注(4) 注(5)
水産研究・教育機構 海洋水産資源開発
注(11)
農畜産業振興機構 砂糖
外務省 国際交流基金 農業者年金基金 特例付加年金
文部
科学省
国立青少年教育振興機
農林漁業信用基金 林業信用保証
経済
産業省
工業所有権情報・研修
国立科学博物館
量子科学技術研究開発
機構 注(6)
製品評価技術基盤機構
新エネルギー・産業技
術総合開発機構
基盤技術研究促進
科学技術振興機構 文献情報提供
宇宙航空研究開発機構 情報処理推進機構 試験
日本スポーツ振興セン
ター
災害共済給付 事業化
地域事業出資業務
日本原子力研究開発機
電源利用 石油天然ガス・金属鉱
物資源機構
石油天然ガス等
注(12)
厚生
労働省
医薬基盤・健康・栄養
研究所
特例業務 注(7) 投融資等・金属鉱
産物備蓄 注(13)
承継 注(8)
勤労者退職金共済機構 一般の中小企業退
職金共済事業等
石炭経過 注(14)
国土
交通省
海技教育機構
林業退職金共済事
業等
航空大学校
自動車事故対策機構
財形 都市再生機構 都市再生
高齢・障害・求職者雇
用支援機構
高齢・障害者雇用
支援
宅地造成等経過
住宅金融支援機構 証券化支援
障害者職業能力開
既往債権管理
8府省 30法人 43勘定 16法人
  • 注(1) 「主務省名」欄は、主務省が複数ある法人については、主な主務省を記載している(以下、本報告書において同じ。)。
  • 注(2) 「会計実地検査」欄の「○」は、会計実地検査を行ったことを示している。
  • 注(3) 平成25年4月1日に当該勘定は廃止された。
  • 注(4) 平成30年8月20日に当該勘定が新設された。
  • 注(5) 平成30事業年度は郵便貯金・簡易生命保険管理機構(郵便局ネットワーク支援勘定)(以下、本報告書において同じ。)
  • 注(6) 平成27事業年度以前は放射線医学総合研究所(以下、本報告書において同じ。)
  • 注(7) 平成26事業年度以前は医薬基盤研究所(研究振興勘定)(以下、本報告書において同じ。)
  • 注(8) 平成26事業年度以前は医薬基盤研究所(承継勘定)(以下、本報告書において同じ。)
  • 注(9) 平成27事業年度以前は民間研究促進業務勘定(以下、本報告書において同じ。)
  • 注(10) 平成27年4月1日に当該勘定は廃止された。
  • 注(11) 平成27事業年度以前は水産総合研究センター(海洋水産資源開発勘定)(以下、本報告書において同じ。)
  • 注(12) 平成24年9月14日以前は石油天然ガス勘定(以下、本報告書において同じ。)
  • 注(13) 平成24年9月14日以前は金属鉱業備蓄・探鉱融資等勘定(以下、本報告書において同じ。)
  • 注(14) 平成24事業年度以前は新エネルギー・産業技術総合開発機構(石炭経過勘定)(以下、本報告書において同じ。)