内閣府は、原子力発電施設等による災害が発生した場合等の緊急時における住民の安全確保のためにあらかじめ講じられる措置に要する費用に充てるため、都道府県等に対して、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金(以下「交付金」という。)を交付している。このうち緊急事態応急対策等拠点施設整備事業は、緊急事態応急対策等拠点施設(以下「オフサイトセンター」という。)の整備又は維持に係る事業を行うものとされており、「原子力発電施設等緊急時安全対策交付金運用の手引き」(以下「手引」という。)によれば、緊急事態応急対策等拠点施設整備事業に係る交付金(以下「オフサイトセンターに係る交付金」という。)の交付の対象となる経費(以下「交付対象経費」という。)は、オフサイトセンターの設備等の保守点検、建物清掃等の維持管理費等(以下、これらを合わせて「維持管理等経費」という。)とされている。また、地方自治法(昭和22年法律第67号)に定める行政財産として管理しているオフサイトセンター内に原子力規制事務所が設置されている場合、行政財産を管理する地方公共団体以外の者にオフサイトセンターを使用させることになるため、当該地方公共団体は、原子力規制委員会に対して地方自治法に基づく行政財産の使用の許可(以下「使用許可」という。)を行っている。そして、各地方公共団体は、原子力規制委員会に対する使用許可に当たっては、原子力規制事務所の使用に係る行政財産の使用料(以下「事務所使用料」という。)を徴収している場合があるが、手引において、オフサイトセンターに係る交付金を算定する際の事務所使用料の取扱い等について示されていなかったなどのため、その取扱いが区々となっており、オフサイトセンターの一部については事務所使用料に相当する額を維持管理等経費から差し引くことなく交付対象経費が算定されている事態が見受けられた。しかし、行政財産使用料は、その行政財産の維持管理費等に充てられるべきものと解されていることから、事務所使用料を徴収している場合のオフサイトセンターに係る交付金の算定に当たっては、これを考慮する必要があると認められる。
したがって、内閣府において、オフサイトセンターに係る交付金の算定に当たり、オフサイトセンターの一部について使用許可を行って原子力規制委員会から事務所使用料を徴収している場合には、事務所使用料に相当する額を維持管理等経費から差し引いて交付対象経費を算定する必要があることを手引に明示するなどして事業主体に周知するよう、内閣総理大臣に対して令和3年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、内閣府本府において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、内閣府は、本院指摘の趣旨に沿い、4年4月に、オフサイトセンターに係る交付金の算定に当たり、オフサイトセンターの一部について使用許可を行って原子力規制委員会から事務所使用料を徴収している場合には、原則として事務所使用料に相当する額を維持管理等経費から差し引いて交付対象経費を算定することを手引に明示するなどして、事業主体に周知する処置を講じていた。