新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(以下「交付金」という。)は、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金制度要綱(令和2年府地創第127号等。以下「制度要綱」という。)等に基づき、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月閣議決定)、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」(令和2年12月閣議決定)等に掲げる新型コロナウイルス感染症の拡大防止策等についての対応として、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに効果的・効率的で必要な事業を実施できるよう、地方公共団体が作成し、内閣府に提出して確認を受けた新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金実施計画(以下「実施計画」という。)に基づく事業に要する費用のうち地方公共団体が負担する費用に充てるために、国が交付するものである。
制度要綱等によれば、交付金の交付対象事業は、実施計画を作成する地方公共団体が新型コロナウイルスの感染拡大の防止及び感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活の支援等を通じた地方創生に資する事業(経済対策に対応した事業)の実施に要する費用の全部又は一部を負担する事業であって、制度要綱に掲げる基準に適合する地方単独事業、国庫補助事業等とすることとされている。そして、当該地方公共団体が作成した実施計画に記載された交付金の交付対象事業が地方単独事業である場合等は総務省が交付行政庁となることとなっている。
内閣府地方創生推進室が令和2年5月に地方公共団体に発した「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金について」(令和2年5月事務連絡。以下「事務連絡」という。)によれば、地方単独事業に関する留意点として、貸付金等の経費については交付金を充当しないこととされている。
本院は、合規性等の観点から、交付金の算定が適切に行われているかなどに着眼して、24都道府県及び483市区町村において、2年度の実施計画に基づく事業を対象として、実績報告書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
その結果、山口県、山形県西置賜郡飯豊町及び高知県長岡郡本山町の3事業主体が交付金を受けて実施した事業において、交付金の交付対象事業費が過大に精算されるなどしていて、これらに係る交付金7,721,092円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、飯豊町において交付対象事業費等の確認が十分でなかったり、本山町において交付金の制度に対する理解が十分でなかったりしたこと、山形県において交付金の額の確定時の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
これを事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 |
交付金事業者 (事業主体) |
交付金事業 |
年度 |
交付対象事業費 |
左に対する交付金交付額 |
不当と認める交付対象事業費 |
不当と認める交付金相当額 |
摘要 |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(10) | 総務本省 |
山口県 |
新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金 |
2 | 3,000 | 1,000 | 3,000 | 1,000 | 補助の対象外 |
(11) | 山形県 |
西置賜郡飯豊町 |
同 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金 |
2 | 6,659 | 6,659 | 4,021 | 4,021 | 精算過大 |
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この交付金事業は、令和2年度に、新型コロナウイルス感染症による影響を事由として山形県による融資を利用した飯豊町内の事業者が山形県信用保証協会から信用保証を受けた際に、同協会に対して飯豊町が保証料を補給するものである。
同町は、本件交付金事業等が記載された実施計画に基づく交付申請書を総務省に提出して交付金の交付決定を受け、本件交付金事業の事業費及び交付金充当経費が6,659,180円であるなどとする実績報告書を山形県に提出し、交付金の交付を受けていた。
しかし、上記の実績報告書における本件交付金事業の事業費及び交付金充当経費の額は、本件交付金事業とは異なる中小企業者等の金利負担を軽減するための利子補給事業であって実施計画に記載されていないものに要した費用6,659,180円を誤って計上したものであり、本件交付金事業に実際に要した費用は2,638,088円であった。
したがって、本件交付金事業の適正な事業費は2,638,088円となり、前記の事業費及び交付金充当経費6,659,180円との差額4,021,092円が過大に精算されていた。
(12) | 高知県 |
長岡郡本山町 |
同 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金 |
2 | 2,700 | 2,700 | 2,700 | 2,700 | 事業不実施 |
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この交付金事業は、令和2年度に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための活動自粛により、本山町から貸与を受けた奨学金に係る返還の免除を受けるためのボランティア活動が実施できなくなった奨学生を対象として、同町が奨学金の返還金を奨学生に給付するものである。
同町は、本件交付金事業等が記載された実施計画に基づく交付申請書を総務省に提出して交付金の交付決定を受け、交付金172,047,000円の交付を受けていた。
しかし、同町は、活動自粛によりボランティア活動が実施できなくなったものであるかどうかを問わず同年度に免除申請を行った奨学生全員の奨学金の返還を免除しており、実際には、返還金を奨学生に給付していなかった。
なお、同町は、奨学金の返還金の給付に使用しなかった交付金2,700,000円の全額を、実施計画に記載がなく、また、事務連絡で交付金を充当しないこととされている新たな奨学金の貸付けに使用していた。
(10)―(12)の計 |
長岡郡本山町 |
新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金 |
6 | 12,359 | 10,359 | 9,721 | 7,721 |
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