厚生労働省は、スマートフォン向けの新型コロナウイルス接触確認アプリ(以下「COCOA」という。)の開発及びその後の保守を行うに当たり、COCOAの開発に先立ち、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社と締結した「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」の開発・保守等に関する契約を変更して、COCOAの開発・保守等に係る業務(以下「COCOA業務」という。)を追加することとした。COCOAは、新型コロナウイルス感染症の陽性判断が確定した者(以下「陽性者」という。)の同意の下で、陽性者と一定期間内におおむね1m以内の距離で継続して15分以上の近接状態が続いたCOCOAの利用者(以下、この接触状態を「陽性者近接状態」といい、これに該当する利用者を「接触確認者」という。)に対して、当該事実について通知を行うことを主要な機能としている。しかし、COCOA業務の実施に当たり、COCOAの主要な機能についてのテストが適切に実施されていない事態、厚生労働省が令和3年2月に公表したCOCOAを特定の端末で使用した場合に陽性者近接状態に該当した場合であっても接触確認者に通知が行われていない不具合(以下「本件不具合」という。)の発生を長期間にわたり認識できなかった事態及び受注者から本件不具合に係る修理費用等をCOCOA業務に係る費用と明確に区分するなどした適切な資料を提出させて、受注者からの請求額に本件不具合に係る修理費用が含まれていないことを検証していない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣に対して3年10月に、次のとおり是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 4年6月に、システムの調達仕様書の作成に関する留意事項等を示した手引(以下「手引」という。)を改定して、仕様書に定めるべきテストの実施対象項目、実施目的、実施内容等のテストの実施に当たっての具体的な事項を明確に定めたり、テストの実施状況を十分に把握するために受注者から報告を受けるべき内容を明確に定めたりするとともに、内部部局等に事務連絡を発出して、当該手引の内容を関係職員に周知徹底した。
イ 不具合等に関する外部からの指摘等を適切に管理し、これを業務に生かす方法を具体的に手引に定めて、アの事務連絡により関係職員に周知徹底した。
ウ 納品物が契約の内容に適合していない事態が発生した場合の取扱いについて、不具合に係る修理費用等の負担者を明確に確認するために、受注者に、当該不具合に係る修理費用等を明確に区分するなどした適切な資料を提出させて、請求額に修理費用等が含まれていないことを検証することを手引に定めて、アの事務連絡により関係職員に周知徹底した。