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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2) 過剰木材在庫利用緊急対策事業と同様の要件を規定する事業について、工務店等の事業主体が事業申請を行うに当たり、地方公共団体の補助金等の財源として国庫補助金等が含まれていないことを確実に確認する仕組みを構築して、これを規程に反映させるよう事業実施主体を指導等することとするとともに、今後木材製品の利用促進を支援する事業を実施する場合に備えて、過剰木材在庫利用緊急対策事業を改めて検証して、その結果を制度設計に活用する方法を検討するよう意見を表示したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省
(項)国産農産物消費拡大対策費
部局等
林野庁
補助の根拠
予算補助
補助事業者(事業実施主体)
一般社団法人全国木材組合連合会
間接補助事業者(事業主体)
147取組事業者
補助事業
過剰木材在庫利用緊急対策事業
補助事業の概要
新型コロナウイルス感染症の影響による輸出の停滞等により、輸出できずに行き場のなくなった原木在庫の解消に貢献するために、公共建築物等の構造材、内装材及び外構材への木材製品の利用促進を緊急的に支援するもの
対象建築物が対策事業以外に国庫補助金等を財源に含む地方公共団体の補助金等の交付を受けていた事業主体数、事業件数及びこれに係る国庫補助金相当額(1)
24取組事業者 25件 3億6950万円(令和2年度)
対策事業助成金の交付が木材製品の利用促進のために効率的に行われていない事業主体数、事業件数及びこれに係る国庫補助金相当額(2)
129取組事業者 139件 21億1055万円(令和2年度)
(1)及び(2)の純計
147取組事業者 158件 23億8515万円

【意見を表示したものの全文】

過剰木材在庫利用緊急対策事業の実施について

(令和4年10月25日付け 林野庁長官宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 過剰木材在庫利用緊急対策事業の概要等

(1) 過剰木材在庫利用緊急対策事業の概要

貴庁は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受けて、林業・木材産業において、中国等への輸出の停滞や経済活動全体の停滞等により、国内外での木材需要の減少やこれに伴う丸太・木材製品の在庫量の増加、価格の下落等といった影響が生じていることから、公共建築物等の構造材、内装材及び外構材への木材製品の利用促進を緊急的に支援することにより、輸出できずに行き場のなくなった原木在庫(以下「過剰木材在庫」という。)の解消に貢献することを目的とし、令和2年度限りの事業として、過剰木材在庫利用緊急対策事業(以下「対策事業」という。)を実施している。

貴庁は、対策事業の実施に当たり、一般社団法人全国木材組合連合会(以下「全木連」という。)を事業実施主体とし、過剰木材在庫利用緊急対策事業実施要領(令和2年2林政利第38号林野庁長官通知。以下「実施要領」という。)等に基づき、木材製品の利用促進を行う工務店等(以下「取組事業者」という。)の公募、審査、選定、助成金の交付等の業務に要する経費について、国庫補助金を交付している。

全木連は、対策事業を実施した後、貴庁に実績報告書及び事業報告書を提出しており、実績報告書等によれば、全木連は取組事業者に71億4132万余円を助成し(以下、対策事業において取組事業者へ交付する助成金を「対策事業助成金」という。)、これにより利用された木材製品は44,986m³であるとされている。

(2) 対策事業の事業内容及び対象となる建築物等の要件

実施要領によれば、対策事業の対象となる木材は、平時において輸出に供されているものの、新型コロナウイルス感染症の影響による輸出の停滞等によって生じた過剰木材在庫及び当該在庫を国内で有効活用するに当たり整理が必要な木材製品とされている。そして、対策事業助成金は、取組事業者が幼稚園、保育所等の公共建築物等の構造材等に上記の木材製品を利用して新築等する場合に交付されることとされている。

全木連は、対策事業助成金の交付に必要な要件や手続等を定めた「令和2年度過剰木材在庫利用緊急対策事業助成金交付規程」(2全木連発第32号。以下「交付規程」という。)を作成し、林野庁長官の承認を受けるとともに、対策事業に応募する取組事業者向けに「令和2年度過剰木材在庫利用緊急対策事業助成金公募要領」(2全木連発第37号。以下「公募要領」といい、交付規程と合わせて「交付規程等」という。)を作成し、2年6月1日に公表している。

交付規程等によれば、対策事業の対象とすることができる建築物等は、対策事業以外に国からの助成を受けていないことなどが要件とされており、この国からの助成とは、建物の整備等に係る国庫補助金等となっている。この要件を設けた理由について、貴庁は、建築主等が他に国からの助成を受けた建築物等に対して対策事業による助成を更に実施することは、国庫補助金等の効率的な利用の観点及び事業の公平な実施の観点から問題があるためとしている。ただし、建築物等が当該要件を満たしていることを確認する方法については交付規程等に規定されていない。

(3) 対策事業の申請手続等

交付規程等によれば、取組事業者は、建築確認申請、工事請負契約書等により対策事業の対象となる建築物の施工者等として確認できる者であることとされており、取組事業者による対策事業の申請手続等は、次のとおりとされている。

① 取組事業者は、2年6月1日から同年10月30日までの間に、事業申請書及びその付属資料として建築確認の申請書等を全木連に提出する。

② 全木連は、事業申請書について、前記対策事業の要件との整合を審査した上で採択を決定し、当該取組事業者に対して審査結果通知書を通知する。

③ 取組事業者は、事業完了後、交付金額の査定に必要となる資料等を添付した助成金交付申請書を全木連に提出する。

④ 全木連は、助成金交付申請書等を審査して、対策事業の内容等に適合すると認めたときは対策事業助成金の額を確定し、当該取組事業者に対して助成金交付決定通知書を通知する。

また、交付規程等によれば、対策事業助成金の額は、木工事費等から算出した木材製品の利用費に2分の1を乗ずるなどして算定した額とされているが、審査結果通知書に記載された日付より前において現場の工事に着手しているものに係る経費は助成対象外とすることとされている。

なお、①について、全木連は、事業申請書の提出期限である2年10月30日が到来する前に対策事業助成金の交付見込額が予算額に達することが見込まれたため、事業申請書の提出期限を同年9月25日に変更している。

(4) 対策事業と同様の要件を規定する事業

貴庁は、これまで木材利用が低位であった非住宅分野を中心とする建築物における木材利用を促進するために、JAS規格の格付を受けた木材であるJAS構造材等の消費拡大に向けた普及・実証の取組等に対して助成を行う実証支援事業等(以下「実証支援事業」という。)を平成30年度以降実施してきており、対策事業は、実証支援事業を参考に、全木連を事業実施主体、工務店等を助成対象者とした上で実施している。そして、全木連が作成して林野庁長官の承認を受けた規程によれば、実証支援事業の対象とすることができる建築物の要件として、実証支援事業以外に国からの助成を受けていないものとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、効率性等の観点から、対策事業の対象とした建築物等(以下「対象建築物」という。)は対策事業以外に国からの助成を受けていないか、取組事業者への対策事業助成金の交付は木材製品の利用促進のために効率的に行われているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、487取組事業者が47都道府県において実施した対策事業648件(助成対象事業費計148億0799万余円、対策事業助成金計71億4132万余円(国庫補助金相当額同額。以下同じ。))を対象として、貴庁本庁、全木連及び44取組事業者において、事業申請書、建築確認の申請書、工事請負契約書、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、上記の44取組事業者を含む487取組事業者について、対策事業の実施状況等に関する調書等の提出を受けて、その内容を確認するなどして検査した。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 建築物等が対策事業以外に国庫補助金等を財源に含む地方公共団体の補助金等の交付を受けているか確認する仕組みが構築されていないなどの事態

前記のとおり、対策事業の対象とすることができる建築物等は、対策事業以外に国からの助成を受けていないことが要件とされている。貴庁は、「国からの助成」について、地方公共団体から建築主に交付した補助金等の財源として国庫補助金等が含まれる場合に、当該国庫補助金等の使途が建物の整備等に係るのであれば、当該地方公共団体の補助金等はこれに該当するとしている。そして、建築主が建築物等の整備に当たり国からの助成を受けていないかについては、取組事業者が建築主に確認した上で、対策事業の事業申請を行う必要があるとしている。

しかし、貴庁は、全木連に対して、取組事業者が対策事業の事業申請を行うに当たり、建築主に対して「通常の照会」を行い、国からの助成がないことを確認できれば十分であると説明していた。これを受けて、全木連は、地方公共団体の補助金等については、建築主だけでなく地方公共団体にも照会しない限り、必ずしも国庫補助金等の有無を確認することはできないことから、工務店等を対象とした地域ごとの事業説明会等において、国からの助成に該当しないと誤った説明をしていた。

そこで、本院が、全木連及び取組事業者を通じて、対象建築物の整備に係る国からの助成を受けていないかについて建築主に確認したところ、24取組事業者が実施した対策事業計25件(助成対象事業費計7億5801万余円、対策事業助成金計3億6950万余円)において、建築主である社会福祉法人、株式会社等は、地方公共団体から、対象建築物の整備の財源として保育所等整備交付金、医療介護提供体制改革推進交付金等の国庫補助金等を含む地方公共団体の補助金等の交付を受けていた(図参照)。

図 対象建築物が対策事業以外に国庫補助金等を財源に含む地方公共団体の補助金等の交付を受けていた状況の概念図

株式会社等は、地方公共団体から、対象建築物の整備の財源として保育所等整備交付金、医療介護提供体制改革推進交付金等の国庫補助金等を含む地方公共団体の補助金等の交付を受けていた。

そして、上記の25件について、取組事業者が事業申請を行った際に国からの助成の有無を確認したかについて検査したところ、13件については、取組事業者が国からの助成の有無を確認し、対象建築物の整備に当たり、建築主が地方公共団体の補助金等を受けていることを認識していた。しかし、建築主が当該地方公共団体の補助金等の財源に建物の整備等に係る国庫補助金等が含まれていることを認識していなかったり、前記のとおり、全木連が事業説明会等において地方公共団体の補助金等は国からの助成に該当しないと説明したりなどしていたことから、取組事業者は、対象建築物は対策事業の要件を満たすものとして全木連に事業申請を行っていた。また、残りの12件の取組事業者は、国からの助成の有無を確認していなかったり、確認したか不明であるとしたりしていたが、仮に、建築主が地方公共団体の補助金等を受けていることを確認していた場合であっても、上記と同様の理由で、対象建築物は対策事業の要件を満たすものとして全木連に事業申請を行っていたおそれがあると思料される。

このように、地方公共団体の補助金等については取組事業者が国からの助成に関する要件を満たしていることを確認した上で事業申請をすることは困難な場合があり、対策事業においては、全木連に対して適切な説明を行うことはもとより、上記の確認を行う仕組みを構築することが必要であったと認められる。

(2) 対策事業助成金の交付が木材製品の利用促進のために効率的に行われていない事態

前記のとおり、対策事業は、公共建築物等の構造材等への木材製品の利用促進を緊急的に支援することにより、過剰木材在庫の解消に貢献することを目的としている。そして、貴庁は、審査結果通知書に記載された日付より前において現場の工事に着手しているものに係る経費は助成対象外とするとしていた一方で、木材製品を利用することが決定された時期についての制限は設けていなかった。

そこで、助成対象とした木材製品の利用に係る設計が行われた時期について検査したところ、129取組事業者が実施した対策事業計139件(助成対象事業費計43億5133万余円、対策事業助成金計21億1055万余円、これに係る木材製品利用量13,114m³)は、公募要領が公表された日である令和2年6月1日より前に、対象建築物の設計等が建築基準関係規定に適合しているかについて確認する建築確認申請が行われていたり、建築主が設計を行った上で工事請負契約や入札公告が行われていたりなどしていて、既に木材製品を利用することが決定していた。また、公募要領が公表された日以降に木材製品の利用量を増加させる設計変更も行われていなかった。

このように、上記の139件に係る木材製品44,986m³のうち29.1%に相当する13,114m³は、対策事業が実施されなくても利用されることが見込まれたものである一方で、前記のとおり、予算の制約により事業申請書の提出期限が当初よりも1か月以上も前に変更され、公募要領の公表を掲機に新たに木材製品を利用しようとする工務店等が事業申請を行うための期間が短縮されたことを考慮すると、対策事業助成金の交付は木材製品の利用促進のために効率的に行われたとは認められない。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

取組事業者Aは、福井県越前市において、木造2階建ての居宅介護施設を新築するに当たり、令和2年6月8日に対策事業の事業申請を行い、構造材24.91m³(助成対象事業費714万余円)を利用したとして、対策事業助成金357万円の交付を受けていた。

しかし、本件建築物の建築主は、公募要領が公表された同月1日より前の同年3月27日に対象建築物に係る建築確認申請を行っており、この時点で、木材製品を利用することが決定していた。また、建築確認申請後に木材製品の利用量を増加させる設計変更も行っていなかった。このため、対策事業の対象とした木材製品24.91m³は、対策事業の実施がなくとも利用されることが見込まれたものであった。

(1)及び(2)の事態について、重複分を除くと、計147取組事業者における対策事業計158件(助成対象事業費計49億1953万余円、対策事業助成金計23億8515万余円)となる。

(改善を必要とする事態)

建築物等が対策事業以外に国庫補助金等を財源に含む地方公共団体の補助金等の交付を受けているか確認することについて全木連に対して適切な説明が行われていなかったり、当該確認を行う仕組みが構築されていなかったりする事態及び対策事業助成金の交付が木材製品の利用促進のために効率的に行われていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴庁において、次のことなどによると認められる。

  • ア 建築物等が対策事業以外に国庫補助金等を財源に含む地方公共団体の補助金等の交付を受けているか確認することについて、全木連に対して適切な説明を行う必要性についての認識が欠けていたこと、また、当該確認を行う仕組みを構築することについての検討が十分でないこと
  • イ 木材製品の利用に係る設計が行われる時期等により助成の対象外とする制限を設けていないなど、対策事業助成金の交付を木材製品の利用促進のために効率的に行うことについての検討が十分でないこと

3 本院が表示する意見

建築物における木材利用については、3年10月に、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和3年法律第77号)が施行され、木材利用の促進の対象が公共建築物から建築物一般に拡大されるなどしており、実証支援事業を含めて今後も木材利用の促進に関する施策のための事業が実施されることが見込まれる。

また、前記のとおり、対策事業は2年度限りの事業として終了しているものの、対策事業と同様に、他に国からの助成を受けていないことが要件とされている実証支援事業は、平成30年度以降毎年度実施されていて、貴庁によれば、実証支援事業における上記要件の確認については、対策事業と同様、全木連が工務店等に対して誤った説明をしていたなどとしている。そして、貴庁は、対策事業に対する本院の指摘を踏まえて、全木連に対して、令和4年度の実証支援事業の実施に当たり、工務店等の事業主体が事業申請を行う際には、建築主が地方公共団体の補助金等を含めて国からの助成を受けていないことを建築主に書面で回答を求め、当該書面を提出させるよう規程に反映させる措置を講じている。

ついては、貴庁において、対策事業と同様に他に国からの助成を受けていないことを要件とする事業を適正に行うよう、また、木材製品の利用促進を支援する事業を効率的に行うよう、次のとおり意見を表示する。

  • ア 今後実証支援事業を含めて対策事業と同様に他に国からの助成を受けていないことを要件とする事業を実施する場合、当該要件を確認する措置を講じた4年度の実証支援事業の実施状況を踏まえ、工務店等の事業主体が事業申請を行うに当たり、国からの助成の有無について、建築主から地方公共団体に照会するなどして地方公共団体の補助金等の財源として国庫補助金等が含まれていないことを確実に確認する仕組みを構築すること。また、事業実施主体に対して、地方公共団体の補助金等の財源として国庫補助金等が含まれているか確認することについて適切な説明を行うこととするとともに、当該構築した仕組みを規程に反映させるよう指導することとすること
  • イ 今後木材製品の利用促進を支援する事業を実施する場合に備えて、木材製品の利用促進のために対策事業助成金の交付が効率的に行われるためには、どのような方法で事業を実施するべきであったかについて、今回の対策事業を改めて検証するとともに、その結果を制度設計に活用する方法を検討すること