農林水産省は、担い手への農地集積・集約化を促進することなどを目的として、農業委員会(農業委員会が置かれていない市町村にあっては市町村。以下、これらを合わせて「農業委員会等」という。)が農地台帳に記録される農地情報及び農地の地図情報(以下、これらを合わせて「農地情報等」という。)のインターネットを通じた公表等を行うためのシステム(以下「農地情報公開システム」という。)の開発等を実施する農地情報公開システム整備事業を、一般社団法人全国農業会議所(以下「会議所」という。)を事業実施主体として実施している。そして、農地情報公開システムの開発は、新たに農業への参入を志向する者等(以下「一般利用者等」という。)に対して全国の農業委員会等が保有する農地情報等をインターネットを通じて公表するなどのためのシステム(以下「全国農地ナビ」という。)を設計して開発するフェーズ1及び農地情報等の一元管理・利用等が可能なシステムを構築するために必要な機能を有する各農業委員会等利用システム(以下「農委システム」という。)や都道府県農業会議等の業務効率の向上を図るための機能を有する格納システム等の複数のシステムを開発するフェーズ2の2段階に分けて行われている。しかし、農業委員会等が農委システムにおいて農地情報等を適時に更新していないため、最新の農地情報等が公表されていない事態、都道府県農業会議等により格納システムが利用されていない事態及び農地法(昭和27年法律第229号)等でインターネットの利用その他の方法により公表することとされた項目が農委システムに登録されておらず全国農地ナビで公表されていない事態が見受けられた。
したがって、農林水産大臣に対して令和3年10月に、次のとおり意見を表示し及び改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、3年11月に会議所に対して通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 会議所に対して、農委システムの更新状況や操作性等の課題について農業委員会等を調査して把握し、当該課題に対する必要な改修等の措置を検討するとともに、それらの内容を四半期ごとに同省に報告するよう指導した。また、4年5月に開催された後掲エの運用報告会議において、農委システムを利用した農地情報等の適時の更新が法定化された農地情報等の一般利用者等への公表義務を果たす役割を担うものであることや、農委システムの利用上の問題に対して会議所がこれまで実施した支援措置の内容等について農業委員会等に十分に周知するよう指導した。
イ 会議所に対して、都道府県農業会議等が格納システムを利用してこなかった要因を分析するとともに、同会議等の意見等を踏まえた上で必要な改善等を図り、その結果を速やかに同省に報告するよう指導した。また、4年4月に会議所が実施した同会議等を対象とする格納システムの利用に関する調査において、格納システムが有する業務効率の向上のための機能についての項目を調査票に設定して回答させることを通じて、当該機能の存在を認識させることなどにより、当該機能を同会議等に十分に周知するよう指導した。
ウ 会議所に対して、農地法等で農地台帳に記録することとされている項目に係るチェックリストを作成して農業委員会等ごとの登録状況を把握した上で、未登録項目がある農業委員会等に対して全ての項目について速やかに農委システムに登録させるよう指導した。
エ 農林水産省、農業委員会、都道府県農業会議等で構成する運用報告会議を会議所に設置させて、同省が農地情報公開システムに係る運営状況を適時適切に把握するとともに、必要な対策や運用の見直しを会議所に対して指示するための体制を整備した。