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  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 経済産業省|
  • 令和2年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

石油製品安定供給確保支援事業等の実施及び災害時情報収集システムの運用について


令和2年度決算検査報告参照

1 本院が要求した適宜の処置及び求めた是正改善の処置並びに要求した改善の処置及び表示した意見

資源エネルギー庁は、災害時におけるガソリン、軽油等の石油製品の安定供給の確保を目的として、地域の燃料供給拠点となる自家発電設備を備えた給油所である住民拠点サービスステーション(以下「住民拠点SS」という。)を全国に整備するため、石油製品安定供給確保支援事業及び災害時に備えた地域におけるエネルギー供給拠点の整備事業(以下「石油製品安定供給確保支援事業等」という。)を実施している。そして、資源エネルギー庁は、自家発電設備等を設置して住民拠点SSを運営する揮発油販売業者等(以下「事業主体」という。)に対して、一般社団法人全国石油協会(以下「石油協会」という。)を通じて石油製品販売業構造改善対策事業費補助金等(以下、「国庫補助金」といい、国庫補助金により事業主体が実施する事業を「補助事業」という。)を交付するとともに、的確に補助事業を行えるよう「住民拠点SSにおける災害対応ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を定めて周知している。補助事業の交付要綱等によれば、自家発電設備等の取得価格が50万円以上の機械等は処分を制限する財産とされており、事業主体は処分制限期間内にその使用を中止しようとするときなどには、石油協会による財産処分に係る承認を得なければならず、承認に当たっては、残存簿価相当額に国庫補助率を乗じた金額を石油協会を通じて国庫に納付するなどの条件が付されることなどとされている。また、資源エネルギー庁は、石油製品安定供給確保支援事業等の実施に併せて、災害時における住民拠点SSの営業状況等を迅速かつ効率的に把握して公表できるようにするためのシステムである災害時情報収集システム(以下「災害情報システム」という。)の整備及び運用を行っている。交付要綱等によれば、事業主体は、国庫補助金の交付を受けるに当たって、当該事業主体が運営する住民拠点SSとしての基礎情報(運営会社、給油所名、電話番号、住所等)を災害情報システムに登録し、当該基礎情報の一覧を平時から資源エネルギー庁において公表(以下、災害情報システム上における住民拠点SSの基礎情報を「マスタデータ」といい、住民拠点SSの基礎情報の一覧を「住民拠点SS一覧」という。)することに同意するとともに、災害時には災害情報システムにより速やかに営業状況等の報告を資源エネルギー庁に対して行うこととされている。しかし、災害時に自家発電設備が速やかに活用されておらず、一部の住民拠点SSが地域の燃料供給拠点として機能していない事態、一部の住民拠点SSにおいて、財産処分手続が適正にとられていない事態及び住民拠点SSの基礎情報が事業主体の廃止、事業譲渡、合併等により変更されているにもかかわらず、住民拠点SS一覧に反映されておらず、台風等による大規模な停電が発生した場合に、災害情報システムを活用して住民拠点SSの営業状況等の情報収集や公表が行われていない事態が見受けられた。

したがって、資源エネルギー庁長官に対して令和3年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに改善の処置を要求し及び意見を表示した。

  • ア 事業主体に対して、災害による停電時に住民拠点SSが地域の燃料供給拠点として機能するよう、住民拠点SSの役割を踏まえて、給油所設備の損傷、従業員の負傷等がなく給油できる環境が整った場合には、速やかに自家発電設備を活用して営業を再開等することの重要性について、改めて石油協会を通じて通知するなどして周知徹底を図ること(会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求したもの)
  • イ 石油協会に対して、25事業主体の自家発電設備について、速やかに所要の財産処分手続をとらせるとともに、このうち9事業主体については財産処分時点における自家発電設備の残存簿価相当額の石油協会を通じての国庫への納付を行わせるよう求めること(同法第34条の規定により是正の処置を要求したもの)
    また、揮発油販売業者から揮発油等の品質の確保等に関する法律(昭和51年法律第88号。以下「品確法」という。)に基づく届出がされた場合に、当該給油所が住民拠点SSであるかどうか照合するなど適時に石油協会と情報共有を行い、必要に応じて財産処分手続を行わせるとともに、事業主体に対して、住民拠点SSの運営を中止したり、補助事業を承継したりするなどの場合であっても、自家発電設備の処分制限期間を経過するまでは財産処分手続の必要がある場合に該当することについて、改めて石油協会を通じて通知するなどして周知徹底を図ること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
  • ウ 住民拠点SSに関する情報について、適時にマスタデータを更新して速やかに住民拠点SS一覧に反映することとするとともに、台風等の災害の場合に災害情報システムを活用して情報収集や公表を行うための判断基準を設けるなどして、住民拠点SSの営業状況等を効果的に公表できる体制を整備すること(同法第36条の規定により意見を表示したもの)

2 当局が講じた処置

本院は、資源エネルギー庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、資源エネルギー庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 4年3月にガイドラインを改訂し、これを全住民拠点SSに通知することにより、事業主体に対して、給油所設備の損傷、従業員の負傷等がなく給油できる環境が整った場合には、速やかに自家発電設備を活用して営業を再開等することの重要性について周知徹底を図った。

イ 石油協会に対して、3年10月に事務連絡を発出するなどして、25事業主体の自家発電設備について、速やかに所要の財産処分手続をとらせるとともに、このうち9事業主体については財産処分時点の残存簿価相当額の石油協会を通じての国庫への納付を行わせるよう求めた。そして、石油協会は、既に財産処分手続が完了していた1事業主体を除く24事業主体に対して、速やかに所要の財産処分手続をとるなどするよう求めた。

また、揮発油販売業者から品確法に基づく届出がされた情報について、毎月石油協会と情報共有を行うこととし、必要に応じて財産処分手続を行わせることとした。そして、住民拠点SSの運営を中止したり、補助事業を承継したりするなどの場合であっても、自家発電設備の処分制限期間を経過するまでは、財産処分手続の必要がある場合に該当することについて、4年3月に全住民拠点SSに文書により通知するなどして、事業主体に対して周知徹底を図った。

ウ イで共有した情報について、適時にマスタデータを更新して速やかに住民拠点SS一覧に反映することとするとともに、台風等の災害の場合に災害情報システムを活用して情報収集や公表を行うための判断基準を4年5月に設けるなどして、住民拠点SSの営業状況等を効果的に公表できる体制を整備した。