日本年金機構(以下「機構」という。)は、国民年金法(昭和34年法律第141号)等に基づき、被保険者等からの年金記録に関する相談等に対応する業務等を実施している。また、市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、国民年金に係る被保険者資格の取得等に関する届出の受理等の事務等を実施している。そして、機構は、これらの業務等を実施するために、社会保険オンラインシステムに接続して年金個人情報を閲覧できるノート型のパソコン等(以下「可搬型端末」という。)を、リース、保守等に係る委託契約を締結して調達しており、機構で使用したり、市町村に無償で貸与したりしている。しかし、機構において、可搬型端末の調達数量の算定が適切に行われていない事態、可搬型端末が貸与を希望している市町村に貸与されていない事態、及び市町村で長期間にわたって使用されていないのに、その理由を把握した上で、貸与を継続する必要性を検討していない事態が見受けられた。
したがって、日本年金機構理事長に対して令和3年10月に、次のとおり是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求した。
本院は、機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 相談件数等の変化を想定して更改の要否等を十分に検討したり、他の契約において調達される可搬型端末との関係について十分に確認したり、市町村における需要の状況を考慮したりして調達数量を算定することについて、機構本部で定期的に開催している研修で使用する資料に明記した上で、3年11月から当該資料を用いて関係部署の職員に対して研修を行ったり、4年8月に関係部署の職員が用いる調達事務に係る手引に明記する改定を行ったりして周知徹底した。
イ 貸与先の決定に当たり、貸与を希望している市町村に可搬型端末が適切に貸与されるよう対象範囲を検討した結果、全市町村に対して希望調査を毎年度実施することとし、4年2月に4年度の可搬型端末の貸与に向けた希望調査を実施した。そして、同年8月に関係部署に対して通知を発出して、5年以降も引き続き希望調査を実施するよう周知徹底した。また、元年5月に実施した希望調査の対象外となっていた420市町村(うち同調査に先立ち厚生労働省が平成30年2月に実施した意向調査で貸与を希望していた市町村は106市町村)について、令和3年11月までに希望調査を行い、このうち貸与を希望した82市町村(同31市町村)に対して3年度末までにその結果に基づいて可搬型端末の貸与を完了した。
ウ 市町村に貸与している可搬型端末について、4年3月に可搬型端末の貸与に係る事務の手引を作成して、3か月連続して使用実績がない場合には、その理由や使用見込みを確認した上で、使用見込みのないものについては返却を求めたり、当該理由に応じた対策を講じて可搬型端末の利用を促したりする体制を整備した。そして、同年8月に、貸与を継続する必要がない可搬型端末が生じた場合に利活用について検討する手続を定め、他用途も含めた利活用について関係部署間で検討するようにした。