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  • 令和3年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況

第2 東京電力ホールディングス株式会社が実施する原子力損害の賠償及び廃炉・汚染水・処理水対策並びにこれらに対する国の支援等の状況について


検査対象
内閣府、文部科学省、経済産業省、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(平成26年8月17日以前は原子力損害賠償支援機構)、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、東京電力ホールディングス株式会社(28年3月31日以前は東京電力株式会社)
東京電力ホールディングス株式会社が実施する原子力損害の賠償の概要
福島第一原子力発電所の事故により原子力損害を受けた者に対して賠償基準に基づき賠償するもの及び環境省等から求償を受けた除染等の費用について賠償するもの
東京電力ホールディングス株式会社が実施する福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策の概要
福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けて東京電力ホールディングス株式会社が実施する汚染水・処理水対策、使用済燃料プールからの燃料取り出し、燃料デブリ取り出し、廃棄物対策等の取組
国による廃炉・汚染水・処理水対策に係る研究開発等に対する財政措置の概要
廃炉・汚染水・処理水対策に係る研究開発や人材育成の取組、放射性物質の分析・研究等を行う研究施設の整備等に要する費用について国が行う財政措置
賠償の支払額
10兆4110億円(平成23年度~令和3年度)
上記賠償の支払に充てるために交付国債の償還により国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構に交付した資金の額
10兆2351億円(平成23年度~令和3年度)
上記交付国債の償還における国の借入れ等に係る支払利息
154億円(平成24年度~29年度)
原子力損害賠償・廃炉等支援機構法第68条の規定に基づき国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構に交付した資金の額
3400億円(平成26年度~令和3年度)
原子力損害賠償・廃炉等支援機構による国庫納付額
2兆2881億円(平成24年度~令和3年度)
廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用の額(概算額)
1兆7019億円(平成22年度~令和3年度)
廃炉等積立金の残高
5855億円(令和3年度末)
廃炉・汚染水・処理水対策に係る研究開発等に対する国の財政措置額
3178億円(平成23年度~令和3年度)

<構成>

1 検査の背景(a01リンク参照

(1) 福島第一原子力発電所の事故に伴う原子力損害の賠償の概要(a01_1リンク参照

ア 福島第一原子力発電所事故及び原子力損害の賠償の概要(a01_1_1リンク参照

イ 原子力損害の賠償に係る国の支援等の枠組み(a01_1_2リンク参照

ウ 交付国債の発行限度額の概要(a01_1_3リンク参照

エ 賠償負担金の概要(a01_1_4リンク参照

(2) 福島第一原発の廃炉に向けた取組等の概要(a01_2リンク参照

ア 中長期ロードマップの概要(a01_2_1リンク参照

イ 国による廃炉・汚染水・処理水対策に対する財政措置の概要(a01_2_2リンク参照

ウ 東京電力における廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用等の概要(a01_2_3リンク参照

(3) 近年の東京電力をめぐる状況(a01_3リンク参照

ア ALPS処理水の処分に関する基本方針の決定(a01_3_1リンク参照

イ 第四次総合特別事業計画の認定(a01_3_2リンク参照

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法(a02リンク参照

3 検査の状況(a03リンク参照

(1) 原子力損害の賠償及びこれに対する国の支援の状況(a03_1リンク参照

ア 原子力損害の賠償の実施状況及び東京電力に対する資金交付の状況(a03_1_1リンク参照

イ 原子力損害の賠償に必要な費用の見込み(a03_1_2リンク参照

ウ 機構からの国庫納付等の状況(a03_1_3リンク参照

エ 交付した資金の回収に係る試算(a03_1_4リンク参照

(2) 福島第一原発の廃炉・汚染水・処理水対策及びこれに対する国の支援の状況(a03_2リンク参照

ア 廃炉・汚染水・処理水対策の実施状況(a03_2_1リンク参照

イ 廃炉・汚染水・処理水対策に係る東京電力の負担等(a03_2_2リンク参照

ウ 廃炉・汚染水・処理水対策に対する国の支援の状況(a03_2_3リンク参照

(3) 東京電力における資金確保等の状況(a03_3リンク参照

ア 東京電力の利益目標と収支見通し(a03_3_1リンク参照

イ 収支見通しと決算との比較(a03_3_2リンク参照

ウ 東京電力の資金確保の状況(a03_3_3リンク参照

4 本院の所見(a04リンク参照

別図表1 廃炉・汚染水・処理水対策に対する財政措置(a05リンク参照

別図表2 四次総特の基本方針の概要(a06リンク参照

1 検査の背景

(1) 福島第一原子力発電所の事故に伴う原子力損害の賠償の概要

ア 福島第一原子力発電所事故及び原子力損害の賠償の概要

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、東京電力ホールディングス株式会社(28年3月31日以前は東京電力株式会社。以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)においては、全ての交流電源が失われ、冷却機能を喪失するという重大な事故(以下「福島第一原発事故」という。)が発生して、大量の放射性物質が放出される事態に至った。

東京電力は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下「原賠法」という。)に基づき、福島第一原発事故により原子力損害を受けた者に対する賠償を実施することとなった。そして、原子力損害賠償紛争審査会(以下「原賠審」という。)が公表した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)で示された損害項目の一部について、中間指針を踏まえるなどして賠償基準を策定して、同基準に基づいて賠償金の支払を行っている(以下、賠償基準に基づく賠償を「被災者賠償」という。)。また、東京電力は、除染(汚染廃棄物処理を含む。以下同じ。)及び中間貯蔵施設(以下、これらを合わせて「除染等」という。)の費用について環境省等から求償を受け賠償金の支払を行っている(以下、環境省等から求償を受けた除染等の費用の賠償を「除染等に係る賠償」という。)。

イ 原子力損害の賠償に係る国の支援等の枠組み

政府は、23年5月の関係閣僚会合において、原賠法の枠組みの下で、国民負担の極小化を図ることを基本として東京電力に対する支援を行うことを決定した。

そして、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年法律第94号。26年8月17日以前は原子力損害賠償支援機構法。以下「機構法」という。)に基づき、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施等の確保を図ることなどを目的として、23年9月に原子力損害賠償・廃炉等支援機構(26年8月17日以前は原子力損害賠償支援機構。以下「機構」という。)が設立された。

原子力損害の賠償に係る機構の業務のうち、資金援助は、損害賠償の履行に充てるための資金(以下「賠償資金」という。)の交付(以下「資金交付」という。)、原子力事業者が発行する株式の引受け等である。機構は、資金援助に係る資金交付に要する費用に充てるために、国から国債の交付を受ける必要があるなどのときは、資金援助の申込みを行った原子力事業者と共同して、当該原子力事業者による損害賠償の実施等に関する計画(以下「特別事業計画」という。)を作成して、主務大臣の認定を受けなければならないこととなっている。

そして、国から機構に交付した原子力損害賠償・廃炉等支援機構国庫債券(26年8月17日以前は原子力損害賠償支援機構国庫債券。以下「交付国債」という。)の償還を行うことにより、機構が東京電力に交付する資金について国が財政上の負担をする一方で、各原子力事業者から負担金の納付を受けた機構が、損益計算の結果生じた利益を交付国債の償還を受けた額の合計額に至るまで国庫に納付することにより、国の負担した資金が実質的に回収されることになっている。また、政府が25年12月に閣議決定した「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」では、賠償資金のうち中間貯蔵施設費用相当分については、国が機構に対して機構法第68条に基づく資金(以下「68条資金」という。)の交付を行うこととなっている(国の機構に対する財政上の措置、東京電力に交付した資金の回収等の仕組みについては図表1参照)。

図表1 国の機構に対する財政上の措置、東京電力に交付した資金の回収等の仕組み

国の機構に対する財政上の措置、東京電力に交付した資金の回収等の仕組みについて

ウ 交付国債の発行限度額の概要

政府が28年12月に閣議決定した「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(以下「28年閣議決定」という。)では、①被災者等への賠償は、引き続き東京電力の責任において適切に行うこと、②除染・中間貯蔵施設事業の費用は、復興予算として計上した上で、事業実施後に環境省等から東京電力に求償すること、③交付国債の償還費用のうち除染費用相当分は、機構が保有する東京電力株式の売却益の国庫納付により回収を図ることなどの基本的枠組みが維持された。そして、交付国債の発行により対応すべき費用として、図表2のとおり、被災者等への賠償の費用が約7.9兆円、除染費用が約4.0兆円、中間貯蔵施設費用が約1.6兆円と見込まれることを踏まえて、交付国債の発行限度額がそれまでの9兆円から13.5兆円に引き上げられた。なお、上記費用の見込みは、交付国債発行限度額の算定のためのものであり、被災者等への賠償及び除染・中間貯蔵施設事業の進捗等を踏まえて、適時に見直しを行うこととなっている。

また、上記のとおり、交付国債の償還費用のうち除染費用相当分は、機構が保有する東京電力株式の売却益の国庫納付により回収を図ることとなっているが、売却益に余剰が生じた場合は中間貯蔵施設費用相当分の回収に用い、不足が生じた場合は国が原子力事業者に納付させる負担金の円滑な返済の在り方について検討することとなっている。

図表2 交付国債の発行により対応すべき費用の見込み等

項目
被災者賠償費用 除染費用 中間貯蔵施設費用
交付国債の発行により対応すべき費用の見込み 7.9兆円 4.0兆円
注(3)
1.6兆円 13.5兆円
負担者別の内訳 東京電力 3.9兆円 4.0兆円 7.9兆円
他の原子力事業者 3.7兆円 3.7兆円
新電力注(4) 0.24兆円 0.24兆円
(株式売却益) 1.6兆円 1.6兆円
  • 注(1) 東京電力改革・1F問題委員会の配布資料等を基に本院が作成した。
  • 注(2) 図表中の金額は、28年閣議決定の金額である。
  • 注(3) 除染費用の見込額約4.2兆円から、福島第一原発事故前に国と締結していた損害賠償補償契約に基づき東京電力に支払われた補償金約0.2兆円(補償金計1889億余円に相当)による充当分を除いた金額である。
  • 注(4) 平成28年4月1日からの電力小売全面自由化により新規参入した小売電気事業者

エ 賠償負担金の概要

28年閣議決定において、福島第一原発事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについて広く電気の使用者全体の負担とするために、託送料金の見直し等の必要な制度整備を行うこととされ、これにより回収する金額の規模は、確保されていなかった賠償の備えの額(約3.8兆円)から、令和元年度までに納付した又は納付することとなる一般負担金の合計額を控除した金額である約2.4兆円として、これを上限とするとされた。そして、この決定を踏まえた平成29年の電気事業法施行規則(平成7年通商産業省令第77号。以下「施行規則」という。)の改正により、福島第一原発事故前に原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金を電気の使用者から回収するための制度が整備された。これにより、令和2年度から、原子力発電事業者は、託送料金の仕組みを利用して一般送配電事業者が行う接続供給によって回収した資金(以下「賠償負担金」という。)に相当する額を一般負担金に上乗せして機構に納付している。

2年7月に東京電力を含む原子力発電事業者10社が施行規則に基づき経済産業大臣の承認を受けた賠償負担金の総額は計2兆4398億余円、これを回収の期間40年で除した場合の1年当たりの回収額は609億余円となっている。

(2) 福島第一原発の廃炉に向けた取組等の概要

ア 中長期ロードマップの概要

政府により「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」が平成23年12月に決定されて、継続的な見直しを行いつつ、廃止措置等に向けた取組が進められている(以下、初版及び24年7月から令和元年12月までの間に改訂された五つの版を総称して「中長期ロードマップ」という。)。そして、中長期ロードマップ(改訂第5版)では、13年末までの期間中の進捗管理を明確化するとの観点から、廃炉工程の進捗状況を分かりやすく示す主要な目標工程が定められている。

イ 国による廃炉・汚染水・処理水対策に対する財政措置の概要

28年閣議決定において、廃炉・汚染水対策については、東京電力グループ全体での総力を挙げた合理化等で必要な資金を確保することとされ、国は廃炉に向けて工程を適切に管理し、技術的難易度が高く国が前面に立つことが必要な研究開発を支援すること、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「JAEA」という。)による楢葉遠隔技術開発センター、大熊分析・研究センター等の整備・運営及び廃炉を担う人材の育成を進めることとする方針が示されている。

これらを踏まえるなどして、国は、廃炉・汚染水・処理水対策(注1)(3年4月12日以前は廃炉・汚染水対策。以下同じ。)に係る研究開発や人材育成の取組、放射性物質の分析・研究等を行う研究施設の整備等に要する費用について、財政措置を講じている(別図表1参照)。

(注1)
廃炉・汚染水・処理水対策  令和3年4月13日に、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」が政府において決定され、同日以降は、汚染水対策と処理水対策が明確に区別されている。

ウ 東京電力における廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用等の概要

平成28年9月に経済産業省に設置された東京電力改革・1F問題委員会(以下「東電委員会」という。)が同年12月に取りまとめ、同省が公表した「東電改革提言」において、福島第一原発の廃炉に要する資金については、東京電力が見込んだ2兆円に、燃料デブリの取り出し工程を実行する過程で見込まれる6兆円程度を追加した最大8兆円程度が必要になるとされている。

また、28年閣議決定において、廃炉に係る資金を管理する積立金制度を創設するなど、今後長期にわたる巨額の資金需要に対応できる体制を整備し、廃炉の実施をより確実なものとすることとされた。そして、29年5月に、特別事業計画の認定を受けた原子力事業者が事故炉の廃炉等を実施する場合(以下、この事業者を「廃炉等実施認定事業者」という。)、廃炉等に必要な資金を機構に積み立てることを義務付けることなどを内容とする機構法の改正が行われて、同年10月1日から施行された。

この機構法の改正により、機構は毎事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)の積立金の額を機構の運営委員会の議決を経て定めて、経済産業大臣の認可を受けた後に廃炉等実施認定事業者に通知し、廃炉等実施認定事業者は同額を機構に積み立てなければならないとされた(以下、この積立金を「廃炉等積立金」という。)。そして、廃炉等実施認定事業者は、廃炉等の実施に必要な資金として機構から廃炉等積立金を取り戻すときは、機構と共同して取戻しに関する計画(以下「取戻し計画」という。)を作成し、経済産業大臣の承認を受けなければならないこととされた。なお、廃炉等実施認定事業者である東京電力において、廃炉等積立金は資産として計上されていて、その積立て及び取戻しは損益に直接影響しないものとなっている。

(3) 近年の東京電力をめぐる状況

ア ALPS処理水の処分に関する基本方針の決定

令和3年4月に、政府において「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」(以下「処理水基本方針」という。)が決定された。処理水基本方針によると、福島第一原発において安全かつ着実に廃炉・汚染水・処理水対策を進めていくため、トリチウム以外の放射性物質を多核種除去設備(以下「ALPS」という。)等により安全に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化した水(以下「ALPS処理水」という。)について、各種法令等を厳格に遵守するとともに、風評影響を最大限抑制する対応を徹底することを前提に海洋放出を行うこと、最大限の対策を講じてもなお風評被害が生じた場合には東京電力が賠償により機動的に対応することなどとなっている。そして、東京電力は、ALPS処理水の処分開始までの期間を2年程度と見込んでいる。

また、ALPS処理水の海洋放出に伴い、仮に風評影響が生じた場合でも、漁業者が安心して漁業を続けていくことができるようにするとともに、風評影響を最大限抑制し、漁業者の風評への懸念を払拭することを目的として、水産物の販路拡大や、冷凍可能な水産物の一時的買取り・保管への支援等を対象とする多核種除去設備等処理水風評影響対策事業(以下「風評影響対策事業」という。)を実施するために、令和3年度補正予算により300億円の基金が造成されることとなった。

イ 第四次総合特別事業計画の認定

機構は、機構法に基づき、東京電力と共同して特別事業計画を作成し、又は変更して、主務大臣である内閣総理大臣及び経済産業大臣の認定を受けることとなっている。そして、機構及び東京電力は、平成29年5月に認定された新々・総合特別事業計画(以下「新々・総特」という。)を改訂して、令和3年8月に第四次総合特別事業計画(以下「四次総特」という。)の認定を受けている(四次総特の基本方針の概要については、別図表2参照)。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、平成24年8月、参議院から、国会法(昭和22年法律第79号)第105条の規定に基づき、東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支援等の実施状況について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けて、25年10月、27年3月及び30年3月の3回、会計検査院長から参議院議長に対して報告している(以下、30年3月の報告を「30年報告」という。)。

その後、30年度から、29年5月に改正された機構法に基づき東京電力による廃炉等積立金の積立て等が開始されるなどしていて、今後長期にわたる巨額の資金需要に対応するために整備された体制の下、廃炉・汚染水・処理水対策が実施されている。また、前記のとおり、令和3年4月に処理水基本方針が決定され、同年8月には四次総特が認定された。そして、東京電力は、取り巻く事業環境の変化に対応していく必要がある中、賠償及び廃炉を着実に進めつつ、必要な資金を安定的・計画的に拠出し続けるための利益創出の実現に向けて、企業価値の向上を図ることなどが求められている。

そこで、本院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査を実施した。

ア 原子力損害の賠償に関して、賠償金の支払状況や賠償に必要な費用の見込み及び機構を通じて東京電力に交付された資金の回収の見通しはどのようになっているか。

イ 廃炉・汚染水・処理水対策の実施状況やこれらの対策に係る東京電力の負担等及び国の支援の状況はどのようになっているか。

ウ 特別事業計画に示されている東京電力の収支見通しに対する決算の状況及び東京電力における資金確保の状況はどのようになっているか。

検査に当たっては、東京電力が平成29年度以降に実施した原子力損害の賠償及び廃炉・汚染水・処理水対策並びにこれらに対する国の支援等を対象として、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき提出された計算証明書類、各機関から徴した関係資料等により、在庁してこれらの分析等を行うとともに、内閣府、文部科学省、経済産業省、機構及び東京電力において、関係書類を基に説明を受け、また、JAEAの福島県内の研究開発拠点、福島第一原発等に赴くなどして、会計実地検査を行った。

3 検査の状況

(1) 原子力損害の賠償及びこれに対する国の支援の状況

ア 原子力損害の賠償の実施状況及び東京電力に対する資金交付の状況

(ア) 原子力損害の賠償の実施状況

令和3年度までの賠償の支払額は、図表3のとおり、被災者賠償が7兆1472億余円、除染等に係る賠償のうち、除染費用が2兆9954億余円、中間貯蔵施設費用が2682億余円、計10兆4110億余円となっていた。年度別の推移をみると、被災者賠償及び除染費用に係る賠償については、被災地域における避難指示解除の進捗や求償の対象となる除染事業の進捗等に伴い、それぞれ支払額が減少傾向にある。一方、中間貯蔵施設費用に係る賠償については、施設の整備や汚染土壌等の輸送の実施時期による請求金額の多寡等により、支払額に増減が見受けられる状況となっている。

図表3 被災者賠償及び除染等に係る賠償の支払額の推移(単位:億円)

区分
平成28年度までの累計 29年度 30年度 令和
元年度
2年度 3年度 3年度までの累計
被災者賠償 6兆1338 3844 2027 1611 1462 1187 7兆1472
除染等に係る賠償 1兆0712 5736 5959 3604 3747 2877 3兆2637
  除染費用 1兆0550 5302 5404 3409 3530 1756 2兆9954
中間貯蔵施設費用 162 433 555 194 216 1120 2682
7兆2051 9581 7987 5216 5210 4064 10兆4110
(イ) 東京電力に対する資金交付の状況

上記賠償の支払に充てるために、機構は、原子力損害賠償補償契約に基づき東京電力が既に国から支払を受けた補償金1889億余円の分を除き、交付国債の償還により国から資金の交付を受けて、東京電力に資金交付することとなっている。そして、機構は、3年度までに国から計10兆2351億円の交付を受けて、4年4月1日までに同額を東京電力に交付していた。

イ 原子力損害の賠償に必要な費用の見込み

前記のとおり、28年閣議決定において、賠償に係る費用のうち交付国債の発行により対応すべき費用の見込みは約13.5兆円(被災者賠償費用約7.9兆円、除染費用約4.0兆円、中間貯蔵施設費用約1.6兆円)となっている。一方、東京電力は、原賠法の規定により東京電力が損害を賠償する責任を負うべき額(以下「要賠償額」という。)の見通しとして、その時点において合理性をもって確実に見込まれる額(以下「賠償見積額」という。)を算定していて、賠償見積額を見直す都度、機構とともに特別事業計画の変更の認定を主務大臣に申請して認定を受けている。賠償見積額は、これまでの変更の都度、増加していて、4年4月に2回目の変更認定を受けた四次総特における賠償見積額は12兆5865億余円(被災者賠償費用7兆6376億余円、除染費用3兆5146億余円、中間貯蔵施設費用1兆4341億余円)となっていた。

賠償見積額は、新たな賠償の請求や除染等の事業の実施に伴い、時間の経過とともに増加しており、今後も増加していくことが想定されるが、加えて、次の事由により賠償見積額が増加する可能性もある。

(ア) ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害

前記のとおり、処理水基本方針において、ALPS処理水を海洋放出により処分すること、これにより風評被害が生じた場合には東京電力が賠償により機動的に対応することなどが決定されているが、風評被害がどの程度発生するかが見通せないことから、前記の賠償見積額12兆5865億余円には、ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害に係る賠償額は見積もられていない。

(イ) 集団訴訟を踏まえた中間指針の見直し等

4年3月末までに、福島第一原発事故で避難した住民等が東京電力に賠償を求めて提起した集団訴訟計40件のうち、東京電力が中間指針を踏まえるなどして策定した賠償基準に基づいて支払った賠償額を上回る額の賠償の支払を東京電力に命じた判決7件が確定している。そして、判決の確定を受けて4年4月に開催された原賠審において、各判決等の詳細な調査・分析を行い、中間指針の見直しを含めた対応の要否を検討することとされた。

東京電力は原賠審の検討や国の指導を踏まえて対応するとしており、原賠審の検討の結果、中間指針が見直された場合は、東京電力の賠償基準が見直されて、賠償見積額が増加する可能性がある。

経済産業省は、4年8月末時点では交付国債の発行限度額(13.5兆円)の見直しが必要かは明らかではないとしているが、(ア)及び(イ)の今後の状況等によっては要賠償額の増加につながる可能性がある。そして、要賠償額の増加により交付国債の発行限度額が見直されると国民負担の規模に影響を与えることとなる。このため、経済産業省において、今後、ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害がどの程度発生するかについて見通せるようになったり、中間指針が見直されたりなどして、交付国債の発行限度額を見直す必要があるかを判断すべき状況となった場合には、関係省庁と協力して交付国債の発行により対応すべき費用の見込みの妥当性を検証し、国民に対して、その検証の内容や結果について丁寧に説明するとともに、検証の結果交付国債の発行限度額を見直す場合には、負担の在り方や必要性についても十分に説明する必要がある。

ウ 機構からの国庫納付等の状況

前記のとおり、機構は、機構の損益計算の結果生じた利益を交付国債の償還を受けた額の合計額に至るまで国庫に納付することとなっている。このため、交付国債の償還により国が交付した資金については、機構が各原子力事業者から収納した負担金(一般負担金及び特別負担金。(ア)参照)や、国から交付された68条資金((イ)参照)等により、実質的に回収されることになっている。

機構は、毎年度の損益計算の結果生じた利益を、翌年度に国庫に納付していて、3年度末までの国庫納付額の累計は、図表4のとおり2兆2881億余円となっている。そして、3年度末時点において、4年度以降に機構が国庫納付する必要がある金額は、同時点における交付国債の償還額の累計10兆2351億円との差額である7兆9469億余円となっている。

図表4 機構からの国庫納付の状況(単位:億円)

区分
平成28年度分までの累計 29年度分 30年度分 令和
元年度分
2年度分 3年度末まで(2年度分まで)の累計 3年度分
国庫納付額 1兆2093 2765 2572 2572 2877 2兆2881 2787

機構が国庫納付を行うための原資となる一般負担金及び特別負担金の状況並びに国から交付された68条資金の交付額についてみたところ、次のような状況となっていた。

(ア) 一般負担金及び特別負担金の状況
a 一般負担金

機構は、機構法の規定に基づき、年度ごとに、運営委員会の議決を経て原子力事業者から納付を受けるべき負担金の総額となる一般負担金年度総額を定めている。一般負担金年度総額は、福島第一原発事故前の原子力事業者の収支の状況等を踏まえて、平成23年度に機構の運営委員会において1630億円(うち東京電力分567億余円)と定められ、29年度分から令和元年度分までの一般負担金年度総額は毎年度これと同額となっていた(以下、一般負担金年度総額のうち、原子力事業者の収支の状況等を踏まえて定められた額の分を「従前分」という。)。そして、賠償負担金の回収が2年10月から開始されて一般負担金年度総額に上乗せして納付されることとなったため、2年度分の一般負担金年度総額は、従前分の1630億円に、賠償負担金の1年当たりの回収額である609億余円の半期分に当たる304億余円を加えた1934億余円(同678億余円)となっていた。

一般負担金は、算定された年度の翌年度に機構に納付されることとなっていて、図表5のとおり、3年度末までの納付額の累計は1兆5168億余円(うち東京電力分5322億余円)となっていた。

その後、機構は、3年度分の一般負担金年度総額について、従前分の額を前記の1630億円から293億円(同113億余円)減額して1337億円(同453億余円)とし、これに賠償負担金の1年当たりの回収額609億余円を加えた1946億余円(同675億余円)と定めていた。機構によれば、上記従前分の額の減額は、福島第一原発事故から10年が経過したことや電力小売全面自由化等の事業環境の変化があったことから、福島第一原発事故後の原子力事業者の収支の状況等も考慮したためであるとしている。

図表5 一般負担金の額の推移(単位:億円)

項目
平成28年度分までの累計 29年度から令和元年度までの各年度分 2年度分 3年度末まで(2年度分まで)の納付額の累計 3年度分
一般負担金年度総額 従前分 8343 1630 1630 1兆4863 1337
賠償負担金分 304 304 609
8343 1630 1934 1兆5168 1946
うち
東京電力分
従前分 2941 567 567 5211 453
賠償負担金分 110 110 221
2941 567 678 5322 675
b 特別負担金

機構法の規定に基づき、特別事業計画について主務大臣の認定を受けた原子力事業者が納付すべき負担金の額には、一般負担金の額に追加的に負担させることが相当な額として機構が年度ごとに運営委員会の議決を経て定める特別負担金額が加算されることとなっている。そして、その額は、上記主務大臣の認定を受けた原子力事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給等に係る事業の円滑な運営の確保に支障を生じない限度において、できるだけ高額の負担を求めるものとして主務省令で定める基準に従って定められなければならないこととなっている。具体的には、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構の業務運営に関する命令」(平成23年内閣府・経済産業省令第1号。平成26年8月17日以前は、原子力損害賠償支援機構の業務運営に関する命令)において、「電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に必要な事業資金を確保できるものであること」及び「収支の状況に照らして経理的基礎を毀損しない範囲でできるだけ高額の負担をするものであること」という基準が示されている。

機構は、特別負担金の額について、交付国債の元本分を早期に回収する必要性と、廃炉の実施、中長期的な企業価値の向上等を含めた円滑な事業運営のための原資の確保の必要性のバランスを取る観点から、年度末時点における東京電力の当該年度の経常利益や当期純利益等の見通し、特別事業計画における収支計画、廃炉等積立金等を踏まえて定めたとしている。その結果、東京電力が負担することとなる特別負担金の額は、図表6のとおり、29年度分は700億円、30年度分から令和2年度分までの各年度分は500億円となっていた。

特別負担金も一般負担金と同様に、算定された年度の翌年度に機構に納付されることとなっていて、3年度末までの納付額の累計は5100億円となっていた。

その後、3年度分の特別負担金の額は400億円と定められており、特別負担金を収納することとした平成25年度以降、最も低い金額となっていた。

図表6 特別負担金の額の推移(単位:億円)

区分
平成28年度分までの累計 29年度分 30年度分 令和
元年度分
2年度分 3年度末まで(2年度分まで)の納付額の累計 3年度分
特別負担金 2900 700 500 500 500 5100 400

そして、これらにより、令和3年度末までの両負担金の納付額の累計は2兆0268億余円(うち東京電力分1兆0422億余円)となっていた。

機構は、毎年度分の各原子力事業者の一般負担金及び特別負担金の額を公表しているが、2年度分以降の一般負担金に関しては、負担の趣旨や算定の根拠が従前分とは異なる賠償負担金分が上乗せされているのに、原子力事業者ごとの金額を公表するのみで、その内訳である従前分と賠償負担金分それぞれの額が示されておらず、3年度分において従前分が減少していることについては明らかにされていなかった。

また、特別負担金に関して、本院は、30年報告の機構に対する所見として、「特別負担金の額が東京電力に対して「経理的基礎を毀損しない範囲でできるだけ高額の負担」を求めたものであるかについて、特別負担金の額の検討に際して考慮した東京電力の現在の経営状況や今後の事業運営に要する資金の規模その他の経理上の諸要素を用いるなどして、国民に対して丁寧に説明する」ことに留意して資金援助業務等を実施していく必要があると記述している。機構は、これを踏まえて、平成29年度分以降の特別負担金の額について、東京電力の経常利益や当期純利益等の見通し等を踏まえて定めた旨を公表しているが、経理上の諸要素を踏まえてどのように特別負担金の額を算定しているかについては示していない。そのため、特別負担金の額が、電気の安定供給等に係る事業の円滑な運営に必要な資金を確保しながらも、収支の状況に照らして経理的基礎を毀損しない範囲でできるだけ高額の負担を求めるという法令の基準を満たしたものであるかについては、必ずしも明らかではなかった。

負担金の額は、国が交付国債の償還により機構に交付した資金の回収が終了するまでの期間等に影響を与えるものであることから、一般負担金に関しては、一般負担金年度総額やその内訳を変更した場合にはその理由等について、特別負担金に関しては、東京電力の経常利益や当期純利益等の見通し等を踏まえて定めているとの説明に加えて、電気の安定供給等に係る事業の円滑な運営に必要な資金を確保しながらも、収支の状況に照らして経理的基礎を毀損しない範囲でできるだけ高額の負担を求めたものとなっているかについて、それぞれ国民に対して丁寧に説明することが望まれる。

(イ) 68条資金の交付額

東京電力に対する資金交付の実質的な回収を原子力事業者の負担金のみで行うこととした場合には、負担金を納付する期間が著しく長期化する見通しとなったことから、機構法第68条に規定する要件に該当するとして、国は、26年度から、機構に対して68条資金を交付している。そして、28年閣議決定では、中間貯蔵施設費用相当分(見込額約1.6兆円)について、事業期間(30年以内)終了後5年以内までにわたり、機構に68条資金を交付することとなっていて、中間貯蔵施設費用相当分については環境省から東京電力に求償するという枠組みを基本としつつ、国がその全額(東京電力株式の売却益に余剰が生じた場合はその分を除く。)を負担することとなっている。

前記のとおり、機構は、機構の損益計算の結果生じた利益を交付国債の償還を受けた額の合計額に至るまで国庫に納付することとなっており、68条資金の交付は、機構の収益を上積みして、専ら機構の損益計算を通じた国庫納付額を増加させる効果をもたらす仕組みとなっている。これにより、68条資金の交付がない場合と比較して、東京電力を含む原子力事業者に課される負担金の総額が減少することになる。

これまでに国から機構に交付された68条資金の交付額は、26年度から28年度までの各年度は350億円、29年度から令和3年度までの各年度は470億円、計3400億円となっていた。

3年度分までの一般負担金、特別負担金及び68条資金の額を合わせてみると、図表7のとおり、平成25年度分及び26年度分からそれぞれ特別負担金の納付及び68条資金の交付が開始されたことや、特別負担金の額が28年度分までは増加傾向にあったことなどにより、これらの合計額は、23年度分以降、28年度分まで毎年度増加していた。その後は、29年度分から68条資金が増額されたり、令和2年度分から一般負担金に賠償負担金が上乗せされたりしているものの、平成29年度分以降の特別負担金の額が減少傾向にあることや、令和3年度分から一般負担金のうち従前分の額が減額されたことにより、平成29年度分以降の各年度における合計額は28年度分よりも少ない額で推移している。

図表7 一般負担金、特別負担金及び68条資金の額の推移

平成29年度分以降の各年度における合計額は28年度分よりも少ない額で推移している。

エ 交付した資金の回収に係る試算

(ア) 試算の条件

30年報告(30年報告の第2 2(3)ウ参照)と同様に、国が機構を通じて東京電力に交付した資金が、今後どのように実質的に国に回収されるかなどについて、一定の条件を仮定して機械的に試算した。試算に当たり、特別負担金については、令和4年度分から7年度分までは各年度分500億円、8年度分以降は各年度分1000億円になると仮定した場合(ケースa)と、4年度分以降も3年度分に引き続き400億円になると仮定した場合(ケースb)の二つのケースを設定した。また、東京電力株式の売却益については、4兆円を確保できた場合(ケース①)、2兆5000億円となった場合(ケース②)、1100億円となった場合(ケース③)の三つのケースを設定した(試算条件については図表8参照)。

なお、ケース②及び③に関して、28年閣議決定においては、機構が保有する東京電力株式の売却益について、除染費用相当分(約4.0兆円)の回収を図るとされているが、売却益に「不足が生じた場合」には、「東京電力等が、除染費用の負担によって電力の安定供給に支障が生じることがないよう、負担金の円滑な返済の在り方について検討する」とされている。この場合、株式の売却益で回収できなかった除染費用相当分について、負担金でどのように回収するのかなどは必ずしも明らかではない。本試算においては、仮に不足が生じたことが確定した後も、引き続き、同程度の負担金を原資とした国庫への納付が継続するものとして試算している。

図表8 試算条件

項目
今回の試算条件 〈参考〉30年報告の試算条件
回収する資金交付の額 13.5兆円 13.5兆円
一般負担金年度総額 1946億余円(令和3年度分の一般負担金年度総額(従前分の額1337億円に賠償負担金分の額609億余円を加えた額)) 令和元年度分まで1630億円、2年度分以降2230億円(当時の従前分の額1630億円に賠償負担金分の見込額600億円を加えた額)
特別負担金 ケースa 令和7年度分まで500億円、8年度分以降1000億円(四次総特における収支見通し上の仮置きの額。注(1)) ケースa 令和3年度分まで500億円、4年度分以降1000億円(新々・総特における収支見通し上の仮置きの額)
ケースb 400億円(令和4年度分以降も引き続き3年度分と同額になると仮定)
  ケースb 各年度分1062億円~1541億円(新々・総特における収支見通し上の経常利益の2分の1)
68条資金 年度当たり470億円 年度当たり470億円
機構の業務運営に要する費用 年度当たり30億円(近年の実績を踏まえて設定) 年度当たり40億円
機構が保有する東京電力株式を売却した際に得られると見込まれる利益 注(2)   ケース① 6兆円(1株当たりの平均売却価額は2,100円)
ケース① 4兆円(28年閣議決定において、機構が保有する株式の売却益により回収を図るとされている除染費用相当額。1株当たりの平均売却価額は1,500円) ケース② 4兆円(28年閣議決定において、機構が保有する株式の売却益により回収を図るとされている除染費用相当額。同1,500円)
ケース② 2兆5000億円(28年閣議決定において、売却益に不足が生じた場合も考慮していることを踏まえて、①の条件よりも保守的に設定した額。同1,050円) ケース③ 2兆5000億円(28年閣議決定において、売却益に不足が生じた場合も考慮していることを踏まえて、②の条件よりも保守的に設定した額。同1,050円)
ケース③ 1100億円(令和3年度における東京電力の株価(終値)の平均から設定した額。同333円) ケース④ 5000億円(平成28年度における東京電力の株価(終値)の平均から設定した額。同450円)
東京電力株式の売却時期 令和10~24年度(3年8月の四次総特において、おおむね3年後を目途に東京電力の経営に対する国の関与の在り方について検討していくとされたことを踏まえて、前回の試算から5年後ろ倒ししたもの) 令和5~19年度(東京電力の経営に対する国の関与の在り方について元年度末を目途に検討するとされていたことなどを踏まえたもの)
交付国債の償還に係る国の借入金の借入(借換)利率 0.1%(平成28年2月の日本銀行によるマイナス金利導入までは0.1%前後で推移していたことを踏まえたもの) 0.1%(平成28年2月の日本銀行によるマイナス金利導入までは0.1%前後で推移していたことを踏まえたもの)
  • 注(1) 四次総特においては、柏崎刈羽原子力発電所が令和4年度から順次再稼働した場合と5年度から順次再稼働した場合の二つの収支見通しを算定しているが、再稼働の見通しが不透明であることから、5年度から順次再稼働した場合の収支見通し上における仮置きの額を用いている。なお、仮に5年度から順次再稼働しなかった場合には、今回の試算条件による試算の結果と比べて、13兆5000億円の回収に要する期間が長期化するなどのおそれがある。
  • 注(2) 30年報告における「機構が保有する東京電力株式を売却した際に得られると見込まれる利益」の試算条件のケース①については、28年閣議決定において、機構が保有する東京電力の株式の売却益について「売却益に余剰が生じた場合」には「中間貯蔵施設費用相当分の回収に用いる」とされていることなどを踏まえて設定したものであるが、近年の東京電力の株価の推移に鑑みれば、6兆円(1株当たりの平均売却価額2,100円)の売却益を早期に実現することは困難であると思料されることから、今回の試算においては同様のケースでの条件設定を行っていない。
(イ) 試算の結果
a 特別負担金の額を四次総特における収支見通し上の仮置きの額とした場合

四次総特において、収支見通し上の特別負担金の額が仮置きされていることから、これを踏まえて、13兆5000億円を回収するのにどの程度の期間を要するかについて試算した。その結果、図表9のとおり、回収が終わるのは、ケース①の場合で26年度、ケース②の場合で30年度、ケース③の場合で38年度となった。また、機構を通じて交付した資金の回収額のうち、東京電力が機構に納付する負担金に係る分(新電力から回収する賠償負担金分を除く。)は、ケース①の場合で約4兆3731億円、ケース②の場合で約5兆0693億円、ケース③の場合で約6兆3736億円となった。

そして、これらを30年報告の試算結果と比較すると、回収に要する期間はいずれのケースも1割程度長期化することとなり、回収額のうち上記の東京電力が機構に納付する負担金に係る分は、ケース①及び②の場合はそれぞれ約256億円、約646億円減少することとなり、ケース③の場合は約2725億円増加することとなった。

図表9 試算結果(ケースaの場合)
(回収が終わる年度と13.5兆円の負担の内訳)

回収が終わるのは、ケース①の場合で26年度、ケース②の場合で30年度、ケース③の場合で38年度となった。

(試算結果の30年報告との比較)

売却益の設定条件
項目
  30年報告の試算
(ケースa)
開差
今回の
試算結果
(A) 売却益の設定条件 試算結果
(B)
(A-B)
ケース①
(4兆円)
回収が終わる年度
(回収に要する期間)
令和26年度
(33年)
ケース②
(4兆円)
平成53年度
(令和23年度)
(30年)
(3年)
回収額のうち負担金に係る分
(回収額に対する割合)
東京電力 4兆3731億円
(32.3%)
4兆3987億円
(32.5%)
256億円
(0.1%)
東京電力以外の原子力事業者 3兆7982億円
(28.1%)
3兆8682億円
(28.6%)
700億円
(0.5%)
国の支払利息 1519億円 1652億円 133億円
ケース②
(2.5兆円)
回収が終わる年度
(回収に要する期間)
令和30年度
(37年)
ケース③
(2.5兆円)
平成57年度
(令和27年度)
(34年)
(3年)
回収額のうち負担金に係る分
(回収額に対する割合)
東京電力 5兆0693億円
(37.5%)
5兆1339億円
(38.0%)
646億円
(0.4%)
東京電力以外の原子力事業者 4兆3926億円
(32.5%)
4兆4450億円
(32.9%)
524億円
(0.3%)
国の支払利息 1665億円 1837億円 172億円
ケース③
(1100億円)
回収が終わる年度
(回収に要する期間)
令和38年度
(45年)
ケース④
(5000億円)
平成63年度
(令和33年度)
(40年)
(5年)
回収額のうち負担金に係る分
(回収額に対する割合)
東京電力 6兆3736億円
(47.2%)
6兆1011億円
(45.1%)
2725億円
(2.0%)
東京電力以外の原子力事業者 5兆4073億円
(40.0%)
5兆2898億円
(39.1%)
1175億円
(0.8%)
国の支払利息 2045億円 2182億円 137億円

上記の試算結果において、30年報告の試算結果と比較して回収が終わる年度が後ろ倒しになるなどしているが、これは、一般負担金のうちの従前分の額が3年度分から減額されたことや、特別負担金について、四次総特における収支見通しで仮置きした特別負担金の額が500億円から1000億円に増額となる時期を新々・総特で見込んでいた4年度から8年度に後ろ倒ししたことなどが要因となっている。

なお、4年8月末時点においては借入れ(借換え)に係る金利は無利息となっているが、今後、長期間に及ぶ回収の中で金利が0.1%を超えて上昇した場合には国の支払利息が増加して、原子力損害賠償支援資金への追加的な資金投入等の財政負担が更に必要となるおそれがある。

b 特別負担金の額が4年度分以降も3年度分に引き続き400億円になると仮定した場合

ケースaとは別に、電力小売全面自由化後の競争の激化、燃料価格の高騰等による東京電力の収支の状況に鑑みて、特別負担金の額が4年度分以降も3年度分に引き続き400億円になると仮定して、13兆5000億円を回収するのにどの程度の期間を要するかについて試算したところ、図表10のとおり、回収が終わるのは、ケース①の場合で29年度、ケース②の場合で35年度、ケース③の場合で46年度となった。

今回の試算で仮定した特別負担金の額が4年度分以降も3年度分に引き続き400億円になる場合について、30年報告の試算結果と比較可能なケースはないが、前記ケースaの場合と比較すると、回収に要する期間は更に1割程度長期化することとなった。

そして、機構を通じて交付した資金の回収額のうち、東京電力が機構に納付する負担金に係る分(新電力から回収する賠償負担金分を除く。)は、ケース①の場合で約3兆6947億円、ケース②の場合で約4兆3343億円、ケース③の場合で約5兆4108億円となった。これらをケースaの場合と比較すると、①から③までの場合で、それぞれ約6784億円、約7350億円、約9628億円減少することとなった。

一方、東京電力以外の原子力事業者が機構に納付する負担金に係る分(新電力から回収する賠償負担金分を含む。)は、ケース①の場合で約4兆2902億円、ケース②の場合で約5兆0566億円、ケース③の場合で約6兆3701億円となり、これらをケースaの場合と比較すると、①から③までの場合で、それぞれ約4920億円、約6640億円、約9628億円増加することとなった。

ケース②及び③のように、機構が保有する東京電力株式の売却益が4兆円に達しなかった場合、前記のとおり、国は原子力事業者が納付する負担金の円滑な返済の在り方について検討することとなっているものの、今回の機械的な試算の結果において、東京電力が機構に納付する特別負担金の額が少なくなった場合、資金交付額13兆5000億円に対する東京電力の負担割合が減る一方で、東京電力以外の原子力事業者の負担割合が増える結果となった。

なお、東京電力以外の原子力事業者においても事業環境の悪化については同様の状況であると考えられ、一般負担金について試算で仮定した額を維持できるかは不透明であることから、その状況によっては、資金の回収に要する期間は更に長くなり、国が負担することとなる借入れ(借換え)等に係る支払利息が増加するおそれがある。

図表10 試算結果(ケースbの場合)
(回収が終わる年度と13.5兆円の負担の内訳)

回収が終わるのは、ケース①の場合で29年度、ケース②の場合で35年度、ケース③の場合で46年度となった。

(試算結果のケースaとの比較)

設定条件等
項目
売却益 特別負担金 開差
ケースa ケースb
(A) (B) (B-A)
回収が終わる年度
(回収に要する期間)
ケース①
(4兆円)
令和26年度
(33年)
29年度
(36年)
(3年)
回収額のうち負担金に係る分
(回収額に対する割合)
東京電力 4兆3731億円
(32.3%)
3兆6947億円
(27.3%)
6784億円
(5.0%)
東京電力以外の原子力事業者 3兆7982億円
(28.1%)
4兆2902億円
(31.7%)
4920億円
(3.6%)
国の支払利息 1519億円 1633億円 114億円
回収が終わる年度
(回収に要する期間)
ケース②
(2.5兆円)
令和30年度
(37年)
35年度
(42年)
(5年)
回収額のうち負担金に係る分
(回収額に対する割合)
東京電力 5兆0693億円
(37.5%)
4兆3343億円
(32.1%)
7350億円
(5.4%)
東京電力以外の原子力事業者 4兆3926億円
(32.5%)
5兆0566億円
(37.4%)
6640億円
(4.9%)
国の支払利息 1665億円 1847億円 182億円
回収が終わる年度
(回収に要する期間)
ケース③
(1100億円)
令和38年度
(45年)
46年度
(53年)
(8年)
回収額のうち負担金に係る分
(回収額に対する割合)
東京電力 6兆3736億円
(47.2%)
5兆4108億円
(40.0%)
9628億円
(7.1%)
東京電力以外の原子力事業者 5兆4073億円
(40.0%)
6兆3701億円
(47.1%)
9628億円
(7.1%)
国の支払利息 2045億円 2388億円 343億円

(2) 福島第一原発の廃炉・汚染水・処理水対策及びこれに対する国の支援の状況

ア 廃炉・汚染水・処理水対策の実施状況

東京電力は、前記の中長期ロードマップ等に掲げられた時期を目標として廃炉・汚染水・処理水対策を実施している。中長期ロードマップは直近では元年12月に、廃炉・汚染水対策の進捗や、それに伴い明らかになった現場の状況等を踏まえて5回目の改訂が行われている。中長期ロードマップ(改訂第5版)における主要な目標工程は、図表11に示すとおりとなっており、新たな目標が設定されたり、改訂前における目標の達成時期が見直されたりしている。

このうち、1、2号機の使用済燃料プールからの燃料取り出しの開始時期については、平成23年12月の初版では29年度頃とされていたものが、29年9月の改訂第4版では35年度(令和5年度)めどとなった。さらに、元年12月の改訂第5版では、1号機で「9年度~10年度」に、2号機で「6年度~8年度」に、それぞれ目標工程が見直されている。これについて、改訂第5版によると、現場の状況に加えて、周辺地域で住民の帰還と復興の取組が徐々に進みつつある状況を踏まえ、放射性物質の大気への放出を抑制するために、より信頼性の高いダスト飛散対策や慎重な作業が必要なことなどから、新たな工法を採用するなどしたことに伴うものとされている。

図表11 中長期ロードマップ(改訂第5版)における主要な目標工程

分野
内容
時期
改訂第5版 (参考)
改訂第4版
1 汚染水対策
汚染水発生量 汚染水発生量を150m³/日程度に抑制 令和2年内 2年内
汚染水発生量を100m³/日以下に抑制 7年内
滞留水処理完了 建屋内滞留水処理完了
(1~3号機原子炉建屋、プロセス主建屋及び高温焼却炉建屋を除く。)
2年内 2年内
原子炉建屋滞留水を令和2年末の半分程度に低減 4年度~6年度
2 使用済燃料プールからの燃料取り出し
1~6号機燃料取り出しの完了
13年内
1号機大型カバーの設置完了
5年度頃
1号機燃料取り出しの開始
9年度~10年度 5年度目処
2号機燃料取り出しの開始
6年度~8年度 5年度目処
3 燃料デブリ取り出し
初号機の燃料デブリ取り出しの開始
(2号機から着手。段階的に取り出し規模を拡大)
3年内 3年内
4 廃棄物対策
処理・処分の方策とその安全性に関する技術的な見通し
3年度頃 3年度頃
ガレキ等の屋外一時保管解消
(水処理二次廃棄物及び再利用・再使用対象を除く。)
10年度内

(注) 中長期ロードマップ(改訂第5版)及び中長期ロードマップ(改訂第4版)を基に本院が作成した。

廃炉・汚染水・処理水対策に関しては、政府の廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議の下に様々な会議体が設置されており、中長期ロードマップについては、月に1回、定期的に開催される廃炉・汚染水・処理水対策チーム会合/事務局会議において、東京電力からの報告を受けて、その進捗管理が行われるなどしている。

東京電力によると、4年8月末時点における廃炉・汚染水・処理水対策の主な実施状況は、図表12に示すとおりとなっている。そして、中長期ロードマップ(改訂第5版)の主要な目標工程において、燃料デブリ取り出しについては、3年内に2号機から着手する予定としていたが、東京電力は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、英国で開発が進められていた燃料デブリを取り出すためのロボットアームの開発に遅れが生じたため、燃料デブリ取り出し開始の時期は1年程度遅延する見込みとなったとしていた。その後、4年8月には、燃料デブリ取り出し作業の安全性と確実性を高めるために更に1年から1年半程度の準備期間が必要として、5年度後半を目途に開始する工程に見直されている。

図表12 東京電力による廃炉・汚染水・処理水対策の主な実施状況(令和4年8月末時点)

分野 廃炉・汚染水・処理水対策の主な実施状況
汚染水対策・処理水対策
<汚染水発生量の抑制>
地下水バイパス、サブドレン、凍土方式遮水壁等の建屋に地下水を近づけない重層的な取組により、建屋周辺の地下水位を低位で安定的に管理している。
加えて、雨水浸透防止対策として、構内の地表面をアスファルト等で覆うフェーシング(広域的な敷地舗装)を実施しており、計画エリア145万m²のうち約138万m²(約95%)が完了している。
これらの取組により、汚染水発生量は、令和2年内に約140㎥/日となり、目標の150㎥/日程度を達成しており、3年度は約130㎥/日となっている。
<建屋内滞留水の処理>
2年12月に、1~3号機原子炉建屋、プロセス主建屋及び高温焼却炉建屋を除く建屋の最下階床面の露出状態の維持を確認して、建屋内滞留水処理の目標を達成している。
<ALPS処理水の処分>
3年4月に政府において決定された処理水基本方針を踏まえて、ALPS処理水については、トリチウムを大量の海水(100倍以上)で1,500ベクレル/リットル未満に希釈した上で海洋放出を実施する予定
トリチウムの年間放出量については、当面、福島第一原発事故前の放出管理目標値である年間22兆ベクレルを上限とし、これを下回る水準として、廃炉の進捗等に応じて適宜見直す。また、ALPS処理水中のトリチウム等の濃度の測定・評価結果は随時公開し、希釈放出前に第三者による測定や公開等も実施する。
3年12月に原子力規制委員会に対して、ALPS処理水希釈放出設備及び関連施設設置並びにALPS処理水の海洋放出に関して、「福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画」の変更認可申請を行い、4年7月に同委員会の認可を受けており、同年8月から設備等の設置に着手し、5年春頃の設置完了を目指している。
ALPS処理水の海洋放出に関して、関係者への説明や理解醸成に向けた情報の発信に取り組んでいる。
使用済燃料プールからの燃料取り出し
<1号機>
令和9年度から10年度までの間に燃料392体の取り出しを開始する予定
ダスト飛散対策の信頼性向上等の観点から、原子炉建屋内のガレキ撤去に先行して、5年度頃までに大型カバーを設置するために、3年8月から大型カバー設置準備工事に着手するなどの燃料取り出しに向けた作業を進めている。
<2号機>
6年度から8年度までの間に燃料615体の取り出しを開始する予定
3年10月から原子炉建屋南側に燃料取り出し用構台の設置に向けた地盤改良工事を開始して、4年4月に完了し、燃料取り出し用構台基礎の設置作業を進めている。
<3、4号機>
4号機については平成26年12月に、3号機については令和3年2月に、それぞれ燃料1,535体及び566体の取り出しを完了している。
<5、6号機>
1、2号機の燃料取り出し作業に影響を与えない範囲で、燃料取り出し作業に着手する予定。6号機については、4年8月から燃料1,456体の取り出しを開始している。
燃料デブリ取り出し
<全体>
燃料デブリ取り出しの初号機を2号機とし、試験的取り出しから開始して、原子炉格納容器内の状況や作業経験等から得られる新たな知見を踏まえ、作業を柔軟に見直しつつ、段階的に取り出し規模を拡大していく予定
その後、1、3号機における取り出し規模の更なる拡大に向けて、2号機での取り出しを通じて得られる知見等も踏まえ取り出し方法を決定し、燃料デブリ取出設備等の設計・製作・設置を進める予定
<1号機>
令和4年2月から、燃料デブリ取り出しに向けて原子炉格納容器内の堆積物の回収等の検討を行うために、遠隔操作ロボットによる格納容器内部調査を開始している。
<2号機>
3年内に燃料デブリの試験的取り出しを開始する予定としていたが、4年8月に、5年度後半を目途に開始する予定に変更している。
3年7月に日本に到着したロボットアームの性能確認試験等を国内の工場で行った後、4年2月からはJAEAの楢葉遠隔技術開発センターにおいて、ロボットアームを含めた試験的取り出し装置の性能確認試験及び操作訓練を行っている。
廃棄物対策
<固体廃棄物の処理・処分方策等>
機構を中心に関係機関が固体廃棄物の性状把握から処理・処分に至るまで一体となった対策の専門的検討を進めている。
令和3年度に機構が策定した「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃炉のための技術戦略プラン2021」において、固体廃棄物の処理・処分方策とその安全性に関する技術的な見通しを示している。
<固体廃棄物の屋外一時保管の解消>
3年7月に、当面10年程度の固体廃棄物の発生量予測とそれを踏まえた廃棄物関連施設等の建設計画等を固体廃棄物の保管管理計画としてまとめ、1年に一度見直しを行っている。
これに基づき、水処理二次廃棄物及び再使用・リサイクル対象を除く全ての固体廃棄物の屋外での一時保管を10年度内までに解消するために、それに必要な増設雑固体廃棄物焼却設備、大型廃棄物保管庫、減容処理設備等の設備の整備を進めている。

イ 廃炉・汚染水・処理水対策に係る東京電力の負担等

前記のとおり、平成28年12月に公表された東電改革提言によれば、福島第一原発の廃炉に要する資金については、燃料デブリの取り出し工程を実行する過程で見込まれる6兆円程度を含む最大8兆円程度が必要になるとされている。そして、廃炉の実施をより確実なものとするために、29年5月の機構法の改正により積立金制度が創設された。東京電力は、令和3年度に認定された四次総特において、年平均約2600億円程度の廃炉等積立金を捻出していくとしている。

東京電力が3年度までに要した廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用及び今後見込まれる費用の見積額並びに廃炉等積立金の積立て等の状況は、次のとおりである。

(ア) 東京電力が3年度までに要した廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用

廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用については、国が財政措置を講じて支援するものを除き、東京電力が負担することになっている。東京電力は、平成28年10月に、「廃炉に係る費用(概算額)」(23年度から27年度までの計8200億円)を東電委員会に報告している。これと同様に集計した令和3年度までの廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用(概算額)は、図表13に示すとおりであり、累計で1兆7019億余円となっていた。

図表13 廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用(概算額)の内訳及びその推移(単位:億円)

項目
平成28年度までの累計 29年度 30年度 令和
元年度
2年度 3年度 3年度までの累計
対価を支払うなどした額 4880 345 208 244 242 195 6118
  平成23年12月のステップ2完了までに要した費用 1822 1822
中長期ロードマップ対応費用 3058 345 208 244 242 195 4295
  汚染水対策・処理水対策 1615 58 20 43 57 26 1821
使用済燃料プールからの燃料取り出し 1242 208 163 178 125 39 1957
燃料デブリ取り出し 60 79 22 22 56 130 371
廃棄物対策 139 2 0 1 143
安定化維持費用 2672 680 583 465 484 454 5341
人件費 675 150 142 153 152 150 1422
減価償却費 1452 451 520 562 584 568 4137
9680 1627 1454 1424 1462 1368 1兆7019
  • 注(1) 「対価を支払うなどした額」は、廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用として災害損失引当金等に計上したもののうちこれを取り崩して対価を支払うなどした額である。
  • 注(2) 「安定化維持費用」は、東京電力が負担する廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用のうち、毎年度経常的に発生し、修繕費、委託費、消耗品費等に計上されたものである。
  • 注(3) 「人件費」は、廃炉等作業に係る社員の人件費の概算額であり、「減価償却費」は、「原子炉の廃止に必要な固定資産及び原子炉の運転を廃止した後も維持管理することが必要な固定資産」の減価償却費の概算額である。
(イ) 今後見込まれる廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用の見積額

東京電力は、中長期ロードマップ等に掲げられた目標を達成するための廃炉全体の主要な作業プロセスを示すものとして「廃炉中長期実行プラン2020」を作成しており、これに基づき、元年度末に、13年までの燃料デブリ取り出しに係る支出として約1兆3700億円を想定し、このうち、燃料デブリ取り出し準備等の作業費用として見積もった3501億余円を災害損失引当金等に計上するとともに、同額を災害特別損失に計上している。

災害損失引当金等は、将来の廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用のうち、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができるものについて計上しているものである。そして、図表14のとおり、3年度末までに計上した「災害損失引当金等のうち、福島第一原発の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失に係る引当金」の累計額1兆2586億余円に「原子力発電施設解体引当金」の累計額2011億余円を合わせた計1兆4597億余円のうち、同年度末までにこれを取り崩して対価を支払うなどした額は計6118億余円となっていて、3年度末残高は計8478億余円となっている。この額は、同年度末時点における今後見込まれる廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用の見積額とみることができ、このうち燃料デブリ取り出しに係る費用の見積額は5974億余円となっている。

図表14 今後見込まれる廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用の見積額の内訳

(単位:億円)
項目
令和3年度末までに災害損失引当金等として計上した累計額(A) 左のうち、3年度末までに対価を支払うなどした額(累計)(B) 3年度末残高
(A)-(B)
災害損失引当金等のうち、福島第一原発の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失に係る引当金 1兆2586 6118 6467
  平成23年12月のステップ2完了までに要した費用 1822 1822
中長期ロードマップ対応費用 1兆0763 4295 6467
  汚染水対策・処理水対策 1913 1821 91
使用済燃料プールからの燃料取り出し 2358 1957 400
燃料デブリ取り出し 6346 371 5974
廃棄物対策 143 143
原子力発電施設解体引当金 2011 2011
1兆4597 6118 8478

(注) 燃料デブリ取り出しに係る令和3年度末残高5974億余円のうち1639億余円は、電気事業会計規則(昭和40年通商産業省令第57号)第34条の3に基づき特定原子力施設炉心等除去引当金として計上されているものである。

一方、東京電力は、前記の約1兆3700億円と災害損失引当金等に計上した3501億余円との差額約1兆0200億円については、燃料デブリ取り出しのための設備取得に係る支出として想定したものであるとしており、これらの設備取得の度に「原子炉の廃止に必要な固定資産及び原子炉の運転を廃止した後も維持管理することが必要な固定資産」として資産計上を行い(注2)、資産計上後は、毎年度これに係る減価償却費が計上されることとなる。

(注2)
廃炉に係る会計制度の見直しに伴い、平成25年10月1日に電気事業会計規則が改正され、従来は災害損失引当金に計上して一括費用処理することとされていた廃止措置中も引き続き役割を果たす設備について、同日以降計画したものについては原子力発電設備に含めて整理し、他の電気事業固定資産と同様に減価償却することとなり、東京電力では、「原子炉の廃止に必要な固定資産及び原子炉の運転を廃止した後も維持管理することが必要な固定資産」として資産計上を行っている。
(ウ) 廃炉等積立金の積立て等の状況

28年閣議決定において、廃炉に係る資金を管理する積立金制度を創設して、機構が、東京電力による廃炉の実施の管理・監督を行う主体として、廃炉に係る資金についての適切な管理、適切な廃炉の実施体制の管理、積立金制度に基づく着実な作業管理等を行うことにより、今後、長期にわたる巨額の資金需要に対応できる体制を整備し、廃炉の実施をより確実なものとすることとされた。

東京電力は、平成30年度から毎年度、機構が定めた額を廃炉等積立金として機構に積み立てるとともに、災害損失引当金等に計上された廃炉・汚染水・処理水対策に係る費用、安定化維持費用及び人件費の支出並びに原子炉の廃止等に必要な固定資産の設備取得等に係る支出に充てるために、機構と共同して取戻し計画を作成して、廃炉等積立金を取り戻している。また、機構によれば、四次総特において東京電力が捻出していくとしている年平均約2600億円程度の額については、東電改革提言において廃炉に要する資金が最大8兆円程度必要になると示されたことや、既に30年度から令和2年度までの間に約1兆円が積み立てられたことを踏まえて、平成30年度からの30年間で8兆円を積み立てるのに必要な令和3年度以降の年平均額を算出したとしている。

そして、平成30年度から令和3年度までの廃炉等積立金の積立額及び取戻し額の推移並びに3年度の取戻し計画における4年度から6年度までの取戻し額は、図表15に示すとおりとなっており、各年度の積立額が取戻し額を上回っていることから、毎年度、その差額が積み増されていて、3年度末における積立金の残高は5855億余円となっている。このように毎年度積立金の額を積み増していることについて、機構は、今後長期にわたり多額の支出が見込まれる燃料デブリ取り出し等に備えるためであるとしている。

図表15 廃炉等積立金の積立額及び取戻し額の推移並びに令和3年度の取戻し計画における取戻し額(単位:億円)

項目
令和3年度までの廃炉等積立金の積立額及び取戻し額
令和3年度の取戻し計画
平成
30年度
平成
30年度
2年度 3年度 3年度までの累計 4年度 5年度 6年度 累計
(4~6年度)
前年度末残高① 2000 3901 4850    
廃炉等積立金積立額② 3913 3611 2804 2600 1兆2928
東京電力による取戻し額③ 1913 1709 1855 1627 7105 2086 2449 1981 6516
(うち燃料デブリ取り出し) (43) (98) (51) (115)
(308) (88) (265) (206) (560)
当年度末残高(①+②-③) 2000 3901 4850 5855    
  • 注(1) 令和元年度の燃料デブリ取り出しに係る取戻し額98億余円のうち32億余円は同年度中に使用されなかったことから、機構は、これを3年度の取戻し額と相殺して処理している。このため、3年度の当年度末残高は、算式(①+②-③)により算出される額5822億余円より32億余円多くなっている。
  • 注(2) 「令和3年度の取戻し計画」の「東京電力による取戻し額③」欄の金額は、取戻し計画に計上された金額を記載しているが、予備費分(4年度:290億円、5年度:340億円、6年度:270億円)は除いている。

また、3年度の取戻し計画に示されている4年度から6年度までの間の燃料デブリ取り出しに係る取戻し額は、図表15のとおり、計560億余円と見積もられていて、廃炉等積立金の3年度末の残高5855億余円に対して少額となっている。

他方、前記のとおり、東京電力は、3年度末時点における災害損失引当金等のうち燃料デブリ取り出しに係る分として5974億余円を計上しているほか、元年度末に13年までの燃料デブリ取り出しのための設備取得に係る支出として約1兆0200億円を想定している。

このように、燃料デブリ取り出しに係る支出については、上記の5974億余円のほかに約1兆0200億円が見込まれていて、これらは、廃炉等積立金の3年度末の残高5855億余円を上回る状況となっている。このため、今後は、燃料デブリの取り出し規模の拡大に応じて多額の資金需要が生じ、それに対応するために廃炉等積立金からの取戻し額も多額となることが見込まれる。

したがって、機構は、今後長期にわたる廃炉に係る巨額の資金需要に対応するために廃炉等積立金の管理等を行い、東京電力による廃炉等の適正かつ着実な実施の確保を図るという廃炉等積立金制度の趣旨を踏まえて、東京電力の収支の状況に留意しながら、引き続き廃炉等の進捗状況や東京電力における廃炉費用の見積り状況、廃炉等積立金の取戻しの状況等を適切に把握した上で、廃炉等の実施に関する長期的な見通しに照らして十分な積立額を適切に決定していくことが重要である。

ウ 廃炉・汚染水・処理水対策に対する国の支援の状況

(ア) 研究開発等に対する財政措置等の状況

福島第一原発の廃炉・汚染水・処理水対策については、前記のとおり、技術的難易度が高く国が前面に立つことが必要な研究開発等を支援することとしており、平成23年度から令和3年度までの間に計3178億余円の財政措置を講じている(別図表1参照)。

これらの廃炉・汚染水・処理水対策に係る研究開発等のうち、主な事業の実施状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

a 廃炉・汚染水対策事業による研究開発等の状況

廃炉・汚染水対策(注3)事業は、経済産業省が廃炉・汚染水対策事業費補助金により補助事業者に廃炉・汚染水対策基金を造成させて、同基金から廃炉・汚染水対策に資する技術の開発等(以下「基金補助事業」という。)を行う事業者に対して補助金を交付するものであり、平成25年度から令和3年度までの間の基金造成額は計1468億余円となっている。

同基金の4年3月末時点の状況は、図表16に示すとおりとなっており、平成25年度から29年度までに造成された基金を活用した基金補助事業については全ての事業が終了し、使用の見込みの低い基金の額計167億余円が国庫に返納されていた。

また、30年度以降に造成された基金を活用した基金補助事業については、令和3年度までに公募により採択された42件の基金補助事業(交付決定額計376億余円)が行われているが、このうち28件は事業又は精算が完了していないため、基金補助事業費158億余円にその分は含まれていない。さらに、4年度以降も基金補助事業の公募を予定しており、これに係る基金補助事業費も必要となる。これらのことから、4年3月末時点の基金残高は430億余円と多額になっている。

(注3)
令和4年度からの事業名、補助金名及び基金名では「廃炉・汚染水・処理水対策」となっているが、本項においては、3年度までの事業名、補助金名及び基金名に合わせて「廃炉・汚染水対策」としている。

図表16 廃炉・汚染水対策基金の執行状況等(単位:百万円)

年度 基金
造成額
基金設置法人 事務局法人事務費 基金補助事業費 基金返金額 運用収入 国庫返納 基金残高 基金補助事業終了年度
事務費
平成
25年度
21,494 特定非営利活動法人地球と未来の環境基金 70 1,368 15,439 96 3 4,709 5 平成
27年度
26年度 19,850 公益財団法人原子力安全研究協会 27 1,055 14,212 135 0 4,687 4 28年度
27年度 14,580 18 734 10,970 1 0 2,854 3 29年度
28年度 14,998 13 892 12,124 0 1,965 2 30年度
29年度 15,852 10 769 12,486 2,582 3 令和
元年度
30年度 15,310 公益財団法人原子力安全技術センター 10 1,164 15,817 43,073 5年度(予定)
令和
元年度
15,500
2年度 16,740
3年度 12,516
146,841   151 5,985 81,049 233 1 16,798 43,093  
  • 注(1) 本図表は令和4年3月末時点の各基金設置法人が作成した基金出入表の数値を基に本院が作成した。
  • 注(2) 図表中の「基金設置法人」は、廃炉・汚染水対策事業費補助金の補助事業者をいう。また、「事務局法人」は、基金補助事業を行う事業者に対する補助金の交付等の業務を基金設置法人から受託した事業者をいう。
  • 注(3) 令和元年度以降に交付された廃炉・汚染水対策事業費補助金は、平成30年度補正予算により造成された基金に毎年度積み増しされている。

上記の基金補助事業42件は、2号機における燃料デブリの段階的な取り出し規模の拡大や、1、3号機の燃料デブリ取り出しに向けた技術の開発、固体廃棄物の処理・処分に関する研究開発等に関するものとなっていて、このうち21件は4年3月末時点において事業実施中となっている。そして、基金補助事業が終了した残りの21件については、将来における研究開発成果の活用を目指して、その後も関連性のある研究開発等にその成果が利用されるなどしている状況となっていた。

b 研究施設の整備等の状況

国は、平成24年度補正予算において、放射性物質研究拠点施設等整備事業のための資金として、JAEAに対する政府出資金850億円を措置している(別図表1参照)。そして、JAEAにおける研究施設の整備等に係る支出の状況は、図表17のとおり、令和3年度までの累計で461億余円となっていた。

JAEAは、放射性物質の分析・研究施設として、施設管理棟、第1棟、第2棟等で構成される大熊分析・研究センターを整備することとしており、このうち第2棟(燃料デブリ等の分析を行う施設)については、6年から運用を開始する予定としていたが、2年8月及び3年2月に実施した建設工事の入札が不調となったことや、3年2月の福島県沖の地震を踏まえて耐震評価を見直す必要が生じたことにより、建設工事の着工が遅れているため、運用開始時期を見直すこととしている。

図表17 放射性物質研究拠点施設等整備事業の支出状況(単位:百万円)

施設名 平成28年度までの累計 29年度 30年度 令和
元年度
2年度 3年度 3年度までの累計
楢葉遠隔技術開発センター 9,817 9,817
大熊分析・研究センター 5,805 12,162 3,077 2,428 7,118 5,751 36,345
15,623 12,162 3,077 2,428 7,118 5,751 46,162

また、3年8月に政府が取りまとめた「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分に伴う当面の対策の取りまとめ」において、ALPS処理水については、その海洋放出に先立ち、東京電力のみならずJAEA等の第三者による放射性物質の測定を行うこととされた。これを受けて、国は、令和3年度補正予算において、ALPS処理水の分析に必要な装置や設備等を整備するための資金として、JAEAに対する政府出資金22億余円を措置している(別図表1参照)。

本院は、これまでに国が財政措置を講じた廃炉・汚染水・処理水対策のうち、平成25、26両年度に137億余円の補助金を交付して実証事業として整備された高性能多核種除去設備(以下「高性能ALPS」という。)については、30年報告において「研究が終了した28年2月以降長期停止していることから、活用に向けた検討を継続し、今後有効に活用するよう努める必要がある」としている。そこで、30年報告以降の高性能ALPSの活用に向けた検討状況等を確認したところ、ALPS等による処理が必要となる汚染水の発生量が減少しており、高性能ALPS以外の二つのALPSが各3系列(1系列当たりの定格処理量:250m³/日)であるのに比べて高性能ALPSは1系列(定格処理量:500m³/日)となっていて処理量を調整しにくいなどの運用面等を考慮した総合的な判断として、高性能ALPSについては他のALPSの設備トラブル等に備えて待機させる運用となっていた。このように、令和4年8月末時点において、いまだ本格的に活用されていないものの、東京電力は、今後、ALPS処理水の海洋放出に当たり、処理途上水(トリチウム以外の放射性物質の告示濃度比総和が1以上のもの)の二次処理を行う際に高性能ALPSを含めた設備運用を行うとしており、高性能ALPSの稼働の準備を進めているとしている。

(イ) ALPS処理水の海洋放出に係る風評影響対策事業の実施状況

前記の風評影響対策事業を実施するため、経済産業省は、4年2月に、公募により、基金を設置する補助事業者として公益財団法人水産物安定供給推進機構を選定して、同年3月に補助金300億円の交付決定を行うなどしており、同法人は、このうち、同年5月に補助金43億5000万円の交付を受けて基金を設置している。

補助事業者は、①水産物の販路拡大等の取組、②冷凍可能な水産物の一時的買取り・保管又は③福島第一原発のALPS処理水に関する広報事業を実施する事業者に対して、基金を取り崩すことにより補助金の交付又は委託費の支払を行うこととされている。そして、4年8月末時点において、③に係る5件の事業(契約金額計15億9631万余円)について、委託先事業者が公募により選定され、事業実施中となっている。なお、①及び②に係る事業については、同時点までに実施に至っているものはない。

(3) 東京電力における資金確保等の状況

ア 東京電力の利益目標と収支見通し

新々・総特において、東京電力は、賠償及び廃炉のために年間約5000億円程度の資金(注4)を確保していくとしている。また、機構が引き受けた東京電力の株式1兆円を売却することで除染費用に相当する売却益4.0兆円を捻出するために必要な株式価値(時価総額)の目標は7.5兆円(注5)になるとして、年間4500億円規模の当期純利益(注6)を創出する必要があるとしている。そして、新々・総特では、平成29年度から令和8年度までの収支見通しを示している。

(注4)
年間約5000億円程度の資金  東電改革提言において、東京電力は、賠償及び廃炉を自らの経営改革によりやり遂げるため、それぞれ年間平均2000億円程度及び3000億円程度の資金を準備することが求められており、これを受けて四次総特では年間約5000億円程度の資金を確保していくとしている。
(注5)
7.5兆円  機構が引き受けた東京電力の種類株式を全て普通株式に転換して売却等する場合、転換により交付される普通株式の数は、少なくとも約33.3億株となり、これに既に発行されている株式数約16億株を加えると、約49.3億株となる。除染費用に相当する売却益4.0兆円を捻出するために5兆円の売却収入を得るには1株当たりの平均売却価額が1,500円(5兆円÷33.3億株)になる必要があり、東京電力の株式価値(時価総額)の目標は7.5兆円(1,500円×49.3億株)となる。
(注6)
年間4500億円規模の当期純利益  新々・総特では、株式価値(時価総額)7.5兆円を平均的な株価収益率である17で除して当期純利益4500億円を算出している。

イ 収支見通しと決算との比較

今回、新々・総特における収支見通しと平成29年度から令和3年度までの決算を比較した。なお、新々・総特における収支見通しの数値は、東京電力及び4基幹事業会社(注7)を合算して算定されていることから、本項の分析においては、特に断りのない限り、決算の数値についても東京電力と4基幹事業会社の財務諸表を合算した数値(内部取引相殺消去後)を用いている。

収支見通しと決算を比較したところ、図表18のとおり、営業利益については、平成28年度からの電力小売全面自由化による競争の激化等により電灯電力料を含む営業収益が大きく減少したことなどから、29年度の2600億余円から令和3年度の215億余円まで減少傾向にあり、元年度以降は、実績が収支見通しを下回る状況となっていた。特に、3年度の実績が収支見通しを大きく下回っているのは、収支見通しでは柏崎刈羽原子力発電所の6、7号機が3年度から再稼働すると仮定していたのに対して実際は再稼働していないことから代替火力発電による燃料消費量が増加したこと、燃料価格が高騰(注8)したことなどによると考えられる。また、経常利益については、営業利益と同様に、平成29年度の1984億余円から令和3年度の510億余円まで減少傾向にあり、2年度以降は、実績が収支見通しを下回っていた。

そして、当期純利益についてみると、いずれの年度も実績が収支見通しを下回っていて、特に元年度は、3(2)イ(イ)のとおり、燃料デブリの取り出し準備等の作業費用を3501億余円と見積もり、同額を災害特別損失に一括計上したことなどから、収支見通しでは当期純利益を546億余円としていたのに対して、実績は2608億余円の当期純損失となっていた。

また、4基幹事業会社以外の子会社及び関連会社も含めたグループ全体の経常利益及び当期純利益(以下、それぞれ「連結経常利益」「連結当期純利益」という。)は、4基幹事業会社以外の子会社の利益の影響等により、グループ全体で業績が悪化した3年度を除き、前記の経常利益や当期純利益の実績より連結経常利益及び連結当期純利益の実績の方が大きくなっている。しかし、新々・総特では平成29年度から10年以内に3000億円超の連結経常利益、10年後以降には4500億円規模の連結当期純利益の達成を目指すとしていたのに対して、令和3年度末におけるそれぞれの実績は449億余円及び65億余円にとどまっていた。

決算の状況については上記のとおりであるが、四次総特では、事業環境や社会的要請が大きく変化する中、従来の取組の延長線上だけでは更なる利益拡大や企業価値の向上は不可能であるとしており、これらを実現するためには、原子力事業だけに依存することなくカーボンニュートラルへの挑戦等により新たな価値を提供していくとしている。

(注7)
4基幹事業会社  東京電力フュエル&パワー株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社、東京電力リニューアブルパワー株式会社
(注8)
燃料価格の変動に応じて電気料金を調整する燃料費調整制度により、燃料価格の変動については、2か月後の電気料金から反映され、契約者の負担につながることになっている。ただし、上限が設けられている場合、上限を超える部分は契約者の負担とはされない。

図表18 新々・総特における収支見通しと決算との比較(単位:億円)

項目 平成29年度 30年度 令和元年度 2年度 3年度
見通し
(a)
実績
(b)
差額
(b-a)
見通し
(a)
実績
(b)
差額
(b-a)
見通し
(a)
実績
(b)
差額
(b-a)
見通し
(a)
実績
(b)
差額
(b-a)
見通し
(a)
実績
(b)
差額
(b-a)
営業収益 5兆5540 5兆6092 552 5兆7371 5兆9491 2120 5兆9012 5兆7659 1352 5兆9123 5兆3901 5221 5兆9418 4兆8878 1兆0539
営業費用 5兆3276 5兆3492 216 5兆4815 5兆6704 1889 5兆5475 5兆5965 490 5兆5037 5兆2715 2321 5兆5084 4兆8663 6420
営業利益 2263 2600 337 2555 2786 231 3537 1693 1843 4086 1186 2899 4334 215 4118
経常利益 1662 1984 322 2131 2263 132 664 1371 707 1244 991 252 1468 510 957
当期純利益 2605 2512 92 2139 1933 △205 546 2608 3154 1229 1032 196 1200 249 950
4基幹事業会社以外の子会社及び関連会社も含めた全社連結の実績
連結経常利益 2548 2765 2640 1898 449
連結当期純利益 3182 2325 515 1817 65
  • 注(1) 新々・総特における収支見通しは、柏崎刈羽原子力発電所が令和3年度から順次再稼働し、2~4号機の再稼働を織り込まない場合の収支見通しを用いている。
  • 注(2) 令和3年度から、「収益認識に関する会計基準」が適用され、従前は収益(売上)及び費用として計上していた再生可能エネルギー発電促進賦課金及び納付金について、第三者のために回収する額に相当するため、負債である預り金の増減として処理するなど計上科目の変更が行われているが、損益への影響はないとしている。
  • 注(3) 令和元年度における当期純利益の実績△2608億余円に対して、同年度における連結当期純利益の実績が515億余円となっているのは、東京電力フュエル&パワー株式会社が50%の株式を保有する株式会社JERAへの既存火力発電事業等の承継に伴う持分変動利益1997億余円や、持分法による投資利益997億余円が計上されたことなどによるものである。

ウ 東京電力の資金確保の状況

前記のとおり、新々・総特において、東京電力は、賠償及び廃炉のために年間約5000億円程度の資金を確保していくとしている。この点について、四次総特では、一般負担金及び特別負担金の納付額を賠償のための支出とし、廃炉等積立金への積立額を廃炉のための支出として(以下、これらの支出を合わせて「賠償・廃炉に係る支出」という。)、新々・総特策定以降の4年間(平成29年度から令和2年度までの間)において「賠償・廃炉のために、年約4000億円から5000億円程度の資金を捻出してきた。」としている。

そこで、東京電力における資金確保の状況を分析するために、連結キャッシュ・フロー計算書の各項目について、平成29年度から令和3年度までの状況を比較した。なお、東京電力では、グループ全体での効率的な資金運用を図る観点から、グループ金融制度を採用していることに鑑み、本項の分析においては、4基幹事業会社以外の子会社も含めた連結キャッシュ・フロー計算書を用いている。

連結キャッシュ・フロー計算書の各項目についてみると、図表19のとおり、営業活動によるキャッシュ・フローについては、賠償・廃炉に係る支出を行いながらも2398億余円から7521億余円までのプラスとなっているが、平成29年度の7521億余円をピークにおおむね減少傾向となっていた。また、投資活動によるキャッシュ・フローについては、固定資産の取得による支出が大半を占めており、5082億余円から5772億余円のマイナスとなっていた。そして、これらの営業活動によるキャッシュ・フロー及び投資活動によるキャッシュ・フローからフリー・キャッシュ・フロー(以下「FCF(注9)」という。)を算出すると、29年度はプラスであったが、30年度以降はマイナスとなっていた。

すなわち、賠償・廃炉に係る支出を行いつつ、電力の安定供給維持等に必要な投資を行うためには、保有する資金を取り崩したり、追加の資金調達を行ったりする必要がある状況となっている。

また、財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物(以下「現金等」という。)の期末残高をみると、29年度から令和2年度までの間においては、資金調達による収入と債務返済による支出が平成30年度を除きほぼ均衡し、現金等の期末残高は減少しており、営業活動によるキャッシュ・フローで賄えない投資等に必要な支出については、保有する資金を取り崩すことで対応していた。他方、令和3年度においては、FCFはマイナスであるものの、追加の資金調達等により財務活動によるキャッシュ・フローが大きくプラスとなり、現金等の期末残高が増加していた。

(注9)
FCF  Free Cash Flowの略称。企業の営業活動により獲得した資金からその活動を維持するために必要な投資等の支出を控除した値であり、事業活動を通じて得た資金の中で自由に使うことのできる額はいくらあるかを示す財務指標。営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加減して算定する。

図表19 東京電力の連結キャッシュ・フロー計算書におけるキャッシュ・フローの推移

営業活動によるキャッシュ・フローについては、賠償・廃炉に係る支出を行いながらも2398億余円から7521億余円までのプラスとなっているが、平成29年度の7521億余円をピークにおおむね減少傾向となっていた。

(単位:億円)
項目 平成29年度 30年度 令和元年度 2年度 3年度
営業活動によるキャッシュ・フロー(A) 7521 5037 3234 2398 4064
  うち賠償に係る支出(①) 1667 1267 1067 1067 1178
  うち一般負担金 567 567 567 567 678
うち特別負担金 1100 700 500 500 500
うち廃炉等積立金の積立て(②) 1627 3913 3611 2804 2600
賠償・廃炉に係る支出(③=①+②) 3295 5180 4678 3871 3778
投資活動によるキャッシュ・フロー(B) 5205 5708 5082 5772 5597
  うち固定資産の取得による支出 5620 6195 5548 5998 5519
FCF(A+B) 2315 671 1847 3373 1532
財務活動によるキャッシュ・フロー(C) 125 1176 135 203 5605
  うち資金調達による収入 4兆9609 7兆0879 4兆9677 4兆9787 5兆1478
  うち短期借入れによる収入 3兆9390 6兆1288 4兆0881 4兆0212 4兆4028
うち債務返済による支出 4兆9440 7兆2214 4兆9497 5兆0063 4兆5983
  うち短期借入金の返済による支出 3兆2179 4兆9375 3兆8923 4兆0260 4兆2003
現金等の期首残高 9402 1兆1843 9993 8121 4543
現金等の期末残高 1兆1843 9993 8121 4543 8618
  • 注(1) 一般負担金及び特別負担金並びに廃炉等積立金は、その額について通知を受けた翌年度に、機構に納付又は積立てがされていることから、本図表では納付又は積立てがされた年度に表示し整理している。
  • 注(2) 廃炉等積立金は、平成30年度から運用が開始されているため、29年度の金額は積立額ではなく東京電力における廃炉等に係る費用を記載している。
  • 注(3) 財務活動によるキャッシュ・フローのうち、資金調達による収入及び債務返済による支出は、それぞれ有利子負債(社債、長期借入金及び短期借入金)を利用した収入及び有利子負債の返済による支出を記載している。
  • 注(4) 為替換算や連結の範囲の変更による現金等の増減があるため、各キャッシュ・フローの合計を期首残高に加えても期末残高に一致しない。

上記のとおり、東京電力では、FCFが平成30年度以降マイナスとなる状況が続いており、保有する資金を取り崩したり、追加の資金調達を行ったりして、賠償・廃炉に係る支出を行いつつ、電力の安定供給維持等に必要な投資を行っていた。そして、資金調達の方法については、グループ全体の自律的な資金調達力の回復を図っていくとしていて、令和3年度に基幹事業会社である東京電力パワーグリッド株式会社において4500億円の公募社債を発行するなどしているものの、引き続き資金調達の多くが短期借入金によるものとなっている。

一方、東京電力の経営環境は、世界的な燃料価格の高騰、小売事業における競争の激化等により大きく変化しているが、東京電力では、カーボンニュートラル等を軸とした新たな価値を提供するビジネスモデルへの転換を図り、更なる収益力の拡大と企業価値の向上を実現していくとしている。そして、四次総特において、12年度までに最大で3兆円規模のカーボンニュートラル関連の投資を実施していくとしており、さらに、東京電力の4年4月の発表によれば、アライアンス(注10)による事業見直し・拡大及び自律的な資金調達を確保し、四次総特で示した最大3兆円の3倍以上の投資を目指すこととしている。

このため、東京電力は、電力の安定供給を実現しながら、賠償・廃炉に係る支出と、将来の収益基盤となる投資等に必要な支出を長期にわたって行うために、より一層の収益力の改善や財務体質の強化に取り組む必要がある。

(注10)
アライアンス  他企業との業務提携・資本提携、共同出資等により、企業同士が資金、技術、人材等の資源を提供し合うことで競争力を確保する経営手法

4 本院の所見

東京電力が実施する原子力損害の賠償に必要な費用の見込みをみると、賠償見積額については、新たな賠償の請求や除染等の事業の実施に伴い、時間の経過とともに増加しており、今後も増加していくことが想定されるが、加えて、ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害や集団訴訟を踏まえた中間指針の見直し等により賠償見積額が増加する可能性もある。

機構が国庫納付を行うための原資となる一般負担金及び特別負担金の状況をみると、機構は、毎年度分の各原子力事業者の負担額について公表しているが、2年度分以降の一般負担金に関しては、負担の趣旨や算定の根拠が従前分とは異なる賠償負担金分が上乗せされているのに、原子力事業者ごとの金額を公表するのみで、その内訳である従前分と賠償負担金分それぞれの額が示されておらず、3年度分において従前分が減少していることについては明らかにされていない。特別負担金の額に関しては、経理上の諸要素を踏まえてどのように特別負担金の額を算定しているかについては示されておらず、電気の安定供給等に係る事業の円滑な運営に必要な資金を確保しながらも、収支の状況に照らして経理的基礎を毀損しない範囲でできるだけ高額の負担を求めたものであるかについては、必ずしも明らかではない。

機構が管理している廃炉等積立金の状況をみると、3年度末の残高は5855億余円となっていて、機構は、これにより燃料デブリ取り出し等に係る支出に備えるとしている。そして、3年度の取戻し計画において、4年度から6年度までの間の燃料デブリ取り出しに係る取戻し額は計560億余円と見積もられている。他方、東京電力においては、同年度末時点における災害損失引当金等のうち燃料デブリ取り出しに係る分として5974億余円を計上しているほか、元年度末に13年までの燃料デブリ取り出しのための設備取得に係る支出として約1兆0200億円を想定していることから、今後は、燃料デブリの取り出し規模の拡大に応じて多額の資金需要が生じ、それに対応するために廃炉等積立金からの取戻し額も多額となることが見込まれる。

東京電力における資金確保の状況をみると、連結キャッシュ・フロー計算書から算出されるFCFが平成30年度以降マイナスとなる状況が続いており、保有する資金を取り崩したり、追加の資金調達を行ったりして、賠償・廃炉に係る支出を行いつつ、電力の安定供給維持等に必要な投資を行っている。そして、東京電力は、グループ全体の自律的な資金調達力の回復を図っていくとしているものの、引き続き資金調達の多くが短期借入金によるものとなっている。一方、東京電力は、更なる収益力の拡大と企業価値の向上を実現していくとしており、多額の投資を目指すこととしている。

したがって、上記のような状況を踏まえた上で、今後、経済産業省は次のアの点に留意して原子力損害の賠償に関する支援等を実施し、機構は次のイの点に留意して資金援助業務を実施するとともに廃炉等積立金を管理し、東京電力は次のウの点に留意して原子力損害の賠償、廃炉等を実施していく必要がある。

  • ア 経済産業省において、今後、ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害がどの程度発生するかについて見通せるようになったり、中間指針が見直されたりなどして、交付国債の発行限度額を見直す必要があるかを判断すべき状況となった場合には、関係省庁と協力して交付国債の発行により対応すべき費用の見込みの妥当性を検証し、国民に対して、その検証の内容や結果について丁寧に説明するとともに、検証の結果交付国債の発行限度額を見直す場合には、負担の在り方や必要性についても十分に説明すること
  • イ 機構において、
    • (ア) 一般負担金に関しては、一般負担金年度総額やその内訳を変更した場合にはその理由等について、特別負担金に関しては、東京電力の経常利益や当期純利益等の見通し等を踏まえて定めているとの説明に加えて、電気の安定供給等に係る事業の円滑な運営に必要な資金を確保しながらも、収支の状況に照らして経理的基礎を毀損しない範囲でできるだけ高額の負担を求めたものとなっているかについて、それぞれ国民に対して丁寧に説明すること
    • (イ) 今後長期にわたる廃炉に係る巨額の資金需要に対応するために廃炉等積立金の管理等を行い、東京電力による廃炉等の適正かつ着実な実施の確保を図るという廃炉等積立金制度の趣旨を踏まえて、東京電力の収支の状況に留意しながら、引き続き廃炉等の進捗状況や東京電力における廃炉費用の見積り状況、廃炉等積立金の取戻しの状況等を適切に把握した上で、廃炉等の実施に関する長期的な見通しに照らして十分な積立額を適切に決定していくこと
  • ウ 東京電力において、電力の安定供給を実現しながら、賠償・廃炉に係る支出と、将来の収益基盤となる投資等に必要な支出を長期にわたって行うために、より一層の収益力の改善や財務体質の強化に取り組むこと

本院としては、今後の賠償及び廃炉に向けた取組等の進捗状況を踏まえつつ、今後とも東京電力が実施する原子力損害の賠償及び廃炉・汚染水・処理水対策並びにこれらに対する国の支援等の状況について引き続き検査していくこととする。

別図表1 廃炉・汚染水・処理水対策に対する財政措置(単位:百万円)

所管 区分 会計名等 事業名等 平成28年度までの累計 29年度 30年度 令和元年度 2年度 3年度 3年度までの累計 備考
経済産業省
研究開発等
委託費
一般会計補正予算(平成23年度)及び東日本大震災復興特別会計(平成24年度) 電力基盤高度化等対策委託費 発電用原子炉等事故対応関連技術基盤整備委託費 2,484 2,484  
エネルギー対策特別会計(平成25年度) 軽水炉等改良技術確証試験等委託費 発電用原子炉等廃炉・安全技術基盤整備委託費 4,500 4,500  
補助金
一般会計補正予算(平成23年度)及び東日本大震災復興特別会計(平成24年度) 電力基盤高度化等対策事業費補助金 発電用原子炉等事故対応関連技術開発費補助金 1,495 1,495  
エネルギー対策特別会計(平成25年度) 原子力発電関連技術開発費等補助金 発電用原子炉等廃炉・安全技術開発費補助金 4,177 4,177  
基金
一般会計補正予算(平成25年度~令和3年度) 産業技術実用化開発事業費補助金 廃炉・汚染水対策事業 70,923 15,852 15,310 15,500 16,740 12,516 146,841 本文3(2)ウ(ア)a
研究施設の整備等 一般会計補正予算(平成24年度、令和3年度) 独立行政法人日本原子力研究開発機構出資金注(2) 放射性物質研究拠点施設等整備事業 85,000 2,260 87,260 本文3(2)ウ(ア)b
一般会計補正予算(平成26年度~令和3年度) 産業技術実用化開発事業費補助金 放射性物質研究拠点施設等運営事業 2,835 1,708 1,209 1,360 2,472 2,843 12,430  
実証事業 一般会計予備費(平成25年度)及び補正予算(平成25年度、26年度) 産業技術実用化開発事業費補助金 汚染水処理対策事業 49,550 49,550  
220,965 17,561 16,519 16,860 19,212 17,619 308,738  
文部科学省
研究開発等
委託費
エネルギー対策特別会計(平成26年度) 軽水炉等改良技術確証試験等委託費 廃止措置等基礎基盤研究・人材育成プログラム委託費 253 253  
一般会計(平成27年度~令和2年度) 科学技術試験研究委託費 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業 1,785 490 263 127 13 2,680  
一般会計(平成29年度~令和元年度) 原子力施設廃止措置研究等委託費 525 530 214 1,270  
一般会計(平成30年度~令和3年度) 廃炉研究等推進事業費補助金 320 761 1,007 1,099 3,188  
研究施設の整備等 一般会計(平成27年度~29年度) 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構施設整備費補助金 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構施設整備費補助金 1,200 249 1,449  
一般会計(平成29年度) 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構設備整備費補助金 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構設備整備費補助金 300 300  
3,238 1,565 1,114 1,103 1,021 1,099 9,142  
合計 224,203 19,126 17,633 17,964 20,234 18,719 317,881  
  • 注(1) 本別図表は、国が財政措置を講じた年度に基づいて本院が整理したものである。これらの財政措置に基づく事業の中には、予算の繰越しや基金の取崩しにより、翌年度以降に実施されているものがある。
  • 注(2) 令和3年度は、(目)国立研究開発法人日本原子力研究開発機構出資金である。

別図表2 四次総特の基本方針の概要

事項 主な記載内容
①福島への責任の貫徹
・東京電力は、改めて「3つの誓い(注1)」の徹底や燃料デブリの取り出しを始めとした廃炉の本格化などに主体的に取り組むことを、国民から強く期待されている。
(注1)
3つの誓い…最後の一人まで賠償貫徹、迅速かつきめ細やかな賠償の徹底、和解仲介案の尊重
・東京電力は、引き続き、賠償・廃炉に関して年間約5000億円を確保した上で、除染費用相当の機構出資に伴う利益の実現に向け、更に年間4500億円規模(注2)の利益創出も不可能ではない企業体力を確保する。
(注2)
4500億円規模…除染費用に相当する売却益4兆円を捻出するために必要な株式価値(時価総額)目標7.5兆円を、平均的な株価収益率である17で除して算出
・年間4500億円規模の利益創出の実現に向けては、既存事業の深化・構造改革に加えて、新たな価値を提供できる分野に事業領域を拡大することにより、グループ全体の事業ポートフォリオを再構築する。
②最優先事項としての社会からの信頼の回復
・東京電力は、柏崎刈羽原子力発電所と福島第一原子力発電所で発生した一連の不適切な事案を重く受け止め、信頼回復の取組を最優先事項として位置付け、原子力事業の存続に向けて抜本的な改革を断行するとともに、生まれ変わった姿を行動と実績で示していく。
③福島事業
・東京電力は、「3つの誓い」を改めて徹底し、個々の被害者の方々にこれまで以上に丁寧に対応するとともに、公共賠償等の残る課題に迅速かつ適切に対応していく。
・福島第一原子力発電所の廃炉については、今後は、燃料デブリ取り出しの本格化という、福島責任の貫徹において重要な局面を迎えることとなる。
・「廃炉中長期実行プラン」に基づいて、リスク低減重視の姿勢の下、安全確保を大前提に、全体最適の観点から個別作業の工程の具体化を図る。
・ALPS処理水については、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」において求められている事項を確実に遵守するとともに、自ら主体的に安全性の確保と風評対策の徹底に取り組んでいく。
④経済事業
・東京電力は、更なる利益拡大や企業価値向上を実現していくためには、原子力事業だけに依存することなく、その他の経済事業を深化させて、新たなビジネスモデルを構築していかなければならない。とりわけ、お客さまや社会からの期待が大きい「カーボンニュートラル」や「防災」を軸とした新たな価値を提供していく。
⑤再編・統合を含めた連携等の推進・事業基盤の強化
・東京電力は、あらゆる事業分野での再編・統合を含めた連携等を積極的に実行することで、企業価値の向上を図り、賠償・廃炉を含めた福島事業の必要資金を確保し、福島への責任を果たすとともに、国民負担の抑制に資するよう取り組んでいくことが重要である。
・お客さまや社会が期待する価値の提供やDX推進のため、商材や販路、オペレーション等に関して、自社が持たない組織能力を早期に獲得する必要がある。
⑥国の関与の在り方と公的資本回収
・機構は、引き続き、2分の1超の議決権の保有及び機構役職員の派遣の双方について、現行のとおり継続する。
・東京電力が自律的運営体制に復帰するためには、賠償・廃炉を完遂できる能力を身に着けること、そのために確保すべき資金の長期的な見通しの蓋然性を高めること、そして、その原資を捻出するための安定的かつ十分な財務基盤を確保することで、福島責任の貫徹への道筋を示す必要がある。機構は、こうした観点から東京電力の経営改革の進捗を引き続きモニタリングし、その結果に基づき、おおむね3年後を目途に、国と連携して、国の関与の在り方等について検討していく。
・機構は、できるだけ早期の公的資本の回収を図っていくが、その手法について、上記と併せて検討していく。機構が保有する東京電力株式の売却のみに手法を限定せず、東京電力が共同事業体に対して保有する持分の取扱いも含め、幅広く検討する。
⑦必要な環境整備
・東京電力として自らの改革を確実に実行していくとともに、福島第一原子力発電所の廃炉のための確実な資金捻出、電力の安定供給のための発電・送配電事業への適切な投資、各事業における公平かつ適正な競争・リスク管理等が可能となるような国による環境整備が引き続き必要である。