ページトップ
  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 令和5年1月

新型コロナウイルス感染症患者受入れのための病床確保事業等の実施状況等について


3 検査の状況

(1) 病床確保事業等の予算及び決算の状況

病床確保事業等に係る2、3両年度の予算については、一般会計において、図表1-1のとおり、病床確保事業を含む包括支援交付金事業として、2年度に3兆8700億9609万余円、3年度に2兆1132億5784万円、計5兆9833億5393万余円が、緊急支援事業として、2年度に2692億9850万円、3年度に672億5311万余円、計3365億5161万余円が、それぞれ計上されていた。

図表1-1 病床確保事業等の予算額

(単位:千円)
事業名 令和2年度
第1次補正予算 第2次補正予算 予備費補正予算 第3次補正予算 小計
病床確保事業を含む
包括支援交付金事業 注(1)
149,030,377 1,627,859,410 916,882,800 1,176,323,510 3,870,096,097
緊急支援事業 注(2) - - 269,298,500 - 269,298,500
事業名 令和3年度
予備費使用額 補正予算 小計
病床確保事業を含む
包括支援交付金事業 注(1)
81,834,717 2,031,423,123 2,113,257,840 5,983,353,937
緊急支援事業 注(2) - 67,253,112 67,253,112 336,551,612
注(1) 包括支援交付金事業の予算は、病床確保事業、新型コロナウイルス感染症に関する相談窓口設置事業等の事業別に編成されていないため、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)全体の予算額を示している(図表1-2において同じ。)。
注(2) 緊急支援事業の予算には、受入補助金のほか健康対策関係業務庁費が含まれている(同)。

そして、病床確保事業等の決算については、図表1-2のとおり、病床確保事業を含む包括支援交付金事業として、支出済額が2年度に2兆4680億8943万余円(予算現額に対する割合62.1%)、3年度に2兆8998億0385万余円(同80.2%)となっていた。また、緊急支援事業として、支出済額が2年度に1389億9494万余円(同51.6%)、3年度に1433億5447万余円(同72.5%)となっていた。

図表1-2 病床確保事業等の決算の状況

(単位:千円)
事業名 令和2年度
予算現額
(A)
支出済額
(B)
繰越額 不用額 予算現額に対する
支出済額の割合
(B)/(A)
病床確保事業を含む
包括支援交付金事業
3,973,044,674 2,468,089,439 1,500,562,639 4,392,595 62.1%
緊急支援事業 269,298,500 138,994,949 130,303,551 - 51.6%
事業名 3年度
予算現額
(A)
支出済額
(B)
繰越額 不用額 予算現額に対する
支出済額の割合
(B)/(A)
病床確保事業を含む
包括支援交付金事業
3,613,820,479 2,899,803,854 700,221,952 13,794,672 80.2%
緊急支援事業 197,556,663 143,354,478 54,190,095 12,090 72.5%

(2) 交付金及び受入補助金の交付状況

2、3両年度における交付金及び受入補助金の交付状況(注19)をみると、交付金は、2年度は2,290医療機関に対して1兆1403億4947万円、3年度は3,320医療機関に対して1兆9626億2872万円、計3,477医療機関(純計)に対して3兆1029億7819万円となっていた。

また、受入補助金は、2年度は1,732医療機関に対して1606億4650万余円(3年度に繰り越して交付された分を含む。)、3年度は1,694医療機関に対して1212億0442万余円、計2,248医療機関(純計。このうち2,242医療機関は上記の3,477医療機関と重複している。)に対して2818億5092万余円となっていた。

そして、検査の対象とした496医療機関に係る交付金及び受入補助金の交付状況等についてみると、図表2-1のとおり、交付金は、2年度は468医療機関に対して5356億7374万余円(交付額全体に占める割合46.9%)、3年度は496医療機関に対して7477億3600万余円(同38.0%)、計496医療機関に対して1兆2834億0974万余円(同41.3%)となっており、1医療機関当たりの平均交付額は、2年度は11億4460万余円、3年度は15億0753万余円となっていた。

また、受入補助金は、2年度は430医療機関に対して777億2403万余円(交付額全体に占める割合48.3%。3年度に繰り越して交付された分を含む。)、3年度は349医療機関に対して446億4785万余円(同36.8%)、計471医療機関(純計。全て上記の496医療機関と重複している。)に対して1223億7188万余円(同43.4%)となっており、1医療機関当たりの平均交付額は、2年度は1億8075万余円、3年度は1億2793万余円となっていた。

(注19)
交付金及び受入補助金の交付状況について、令和2年度の交付金については確定額で、3年度の交付金及び2、3両年度の受入補助金については、厚生労働省の額の確定が行われていないことから、4年9月時点の交付決定額を用いるなどして、それぞれ整理している。

図表2-1 検査の対象とした496医療機関に係る交付金及び受入補助金の交付状況等

開設主体の種別等 交付金、
受入補助金
の別
令和2年度 3年度
医療機関数 注(2)
確保病床数(床)
金額
(千円)
1医療機関当たりの交付額
医療機関数 注(2)
確保病床数(床)
金額
(千円)
1医療機関当たりの交付額
実医療機関数 金額
(千円)
独立行政法人
独立行政法人労働者健康安全機構 交付金 26 386 20,971,545 806,597 27 731 29,260,039 1,083,705 27 50,231,584
受入補助金 23 402 2,150,861 93,515 21 221 1,794,433 85,449 27 3,945,294
独立行政法人国立病院機構 交付金 96 1,827 73,226,308 762,774 102 2,475 108,379,509 1,062,544 102 181,605,817
受入補助金 88 1,993 11,132,925 126,510 66 766 6,598,288 99,974 93 17,731,213
独立行政法人地域医療機能推進機構 交付金 45 770 22,359,123 496,869 53 1,196 50,209,730 947,353 53 72,568,853
受入補助金 40 775 3,837,039 95,925 38 425 3,223,921 84,840 47 7,060,960
国立高度専門医療研究センター 交付金 6 168 3,083,582 513,930 8 200 6,760,927 845,115 8 9,844,509
受入補助金 5 130 805,547 161,109 5 53 310,500 62,100 6 1,116,047
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 交付金 - - - - 1 4 126,522 126,522 1 126,522
受入補助金 - - - - 1 2 5,035 5,035 1 5,035
国立大学法人 交付金 43 667 57,985,775 1,348,506 44 975 77,547,805 1,762,450 44 135,533,580
受入補助金 40 810 6,232,150 155,803 30 504 4,931,350 164,378 44 11,163,500
公的医療機関(独立行政法人・国立大学法人を除く。) 交付金 138 5,367 239,786,905 1,737,586 139 6,506 306,844,974 2,207,517 139 546,631,879
受入補助金 126 5,497 29,681,785 235,569 96 1,969 14,773,900 153,894 137 44,455,685
社会保険関係団体 交付金 27 546 18,034,546 667,946 31 770 27,725,638 894,375 31 45,760,184
受入補助金 26 569 2,778,175 106,852 24 215 1,996,076 83,169 29 4,774,251
医療法人 交付金 39 979 25,403,754 651,378 43 1,647 48,752,237 1,133,772 43 74,155,991
受入補助金 38 1,081 7,086,808 186,494 37 748 6,682,822 180,616 41 13,769,630
その他 交付金 48 2,035 74,822,203 1,558,795 48 2,334 92,128,625 1,919,346 48 166,950,828
受入補助金 44 2,253 14,018,743 318,607 31 429 4,331,530 139,726 46 18,350,273
交付金 468 12,745 535,673,741 1,144,602 496 16,838 747,736,006 1,507,532 496 1,283,409,747
受入補助金 430 13,510 77,724,033 180,753 349 5,332 44,647,855 127,930 471 122,371,888
注(1) 開設主体の種別等については、厚生労働省の医療関係の統計資料における開設者の分類を参考に会計検査院において分類している。
注(2) 「確保病床数」欄の数値のうち、交付金に係るものについては各年度末時点における確保病床数を、受入補助金に係るものについては受入補助金算定の基礎とされた確保病床の最大数を、それぞれ計上している。
注(3) 令和2年度の受入補助金の交付額には、3年度に繰り越して交付された分が含まれている。

(3) コロナ病床の確保等の状況

ア 全国の医療機関におけるコロナ病床の確保等の状況

厚生労働省は、全国のコロナ患者の療養状況等を把握するため、2年4月から毎週調査を実施して、その結果を公表している。そこで、当該調査結果を用いて同年4月から4年3月までの間の各月最終週時点の国内における入院コロナ患者数と、コロナ患者の入院受入要請があれば受け入れることとして医療機関が都道府県と調整済みの最大の確保病床の数(以下「最大確保病床数」という。)の推移をみたところ、図表3-1のとおり、入院コロナ患者数には何回かのピークがあり、大きく増減を繰り返していたが、この間、最大確保病床数は、3年9月から同年10月にかけて及び4年2月から同年3月にかけて入院コロナ患者数が急激に減少した時期に一時減少したものの、その他の時期においてはほぼ一貫して増加しており、2年5月1日には16,081床であったものが、4年3月30日には43,671床となっていた。

また、2年4月から4年3月までの各月最終週時点における最大確保病床数に対する入院コロナ患者数の割合についてみると、上記のように入院コロナ患者数には何回かのピークがある一方で最大確保病床数はほぼ一貫して増加していたことから、入院コロナ患者数に応じて、各月の数値は大きく異なっていた。そして、この期間内で入院コロナ患者数が29,233人と最も多かった4年2月(同月の最大確保病床数44,685床)における最大確保病床数に対する入院コロナ患者数の割合は65.4%となっており、529人と最も少なかった3年11月(同39,960床)における同割合は1.3%となっていた。

図表3-1 入院コロナ患者数、最大確保病床数等の推移

図表3-1 入院コロナ患者数、最大確保病床数等の推移 画像

イ 都道府県におけるフェーズの設定、これに応じたコロナ病床の確保等の状況

前記のとおり、病床確保計画は通常医療とコロナ患者のための医療とを両立する医療提供体制を整備することを前提としており、都道府県が病床確保計画を策定するに当たっては、地域の実情に応じたフェーズを設定するとともに、フェーズの切替えのタイミングを定めることとされている。また、2年事務連絡によれば、都道府県は、感染拡大の兆候を捉えるなど、あらかじめ設定したフェーズの移行時期に至った場合には、次のフェーズで準備病床を即応病床に転換させることを予定している医療機関に連絡し、準備病床から即応病床への転換を進めることとされている。そして、入院患者数がピークを越え、明らかに減少してきた場合には、新規感染者数の動向等を注視しながら、順次、即応病床を通常医療に活用できる準備病床に戻すなど、通常医療の確保に十分に配慮しながら病床確保を適宜行う必要があるとされている。

そこで、検査の対象とした47都道府県において、2年4月から4年3月までの期間のうち、入院コロナ患者が急激に減少した3年9月から入院コロナ患者が最も多かった4年2月までの期間における各都道府県のコロナ病床の確保等の状況をみると、入院患者数が急激に増加していた4年1月から同年2月までにおいては、いずれの都道府県においても、病床確保計画において定めているフェーズを上げるタイミング等に応じて即応病床数を増加させていた。

また、入院患者数が急激に減少した3年9月から同年11月までにおいては、42都道府県は、入院患者数等の状況に応じて、段階的にフェーズを下げることにより即応病床数を減少させていた。一方、残りの5県は、入院患者数が減少する前の時期とほぼ同数の即応病床数を確保していた。これについて5県は、即応病床数を減少させた後、再び即応病床数を増加させるためには医療機関における体制構築に時間を要すること、人の移動が増加し感染が短期間で再拡大する可能性があることなどから、入院患者数の動向のみでなく、医療機関の体制構築に要する時間等を考慮する必要があることなどを踏まえた結果であるとしていた。

(4) 医療機関における確保病床の状況等

ア 医療機関における確保病床の病床利用率の状況

全国の医療機関における最大確保病床数は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い都道府県の要請等に応ずるなどして増床されてきており、厚生労働省が調査を開始した2年5月1日時点の16,081床から4年3月30日時点には43,671床まで増床されている。

一方、政府は、新型コロナウイルス感染症について、感染経路が特定できない症例が多数に上り、かつ、急速な増加が確認されており、医療提供体制がひっ迫してきているなどとして、これまで3回の緊急事態宣言を発出するなどしている。

そこで、医療提供体制のひっ迫時におけるコロナ病床の使用状況をみるために、2回目の緊急事態宣言の期間中で入院患者数が14,417人と最も多かった3年1月、3回目の緊急事態宣言の期間中で入院患者数が24,126人と最も多かった同年8月、3回目の緊急事態宣言の解除以後4年3月までの期間中で入院患者数が29,233人と最も多かった4年2月について、全国における確保病床の平均病床使用率(注20)をみると3年1月が51.2%、同年8月が56.1%、4年2月が58.1%となっていた。

一方、検査の対象とした496医療機関(注21)について、各医療機関から都道府県に提出された病床確保補助金の事業実績報告書等を基に算出した各月の確保病床の病床利用率(注22)を確認したところ、496医療機関全体の平均で3年1月54.5%、同年8月61.2%、4年2月61.2%となっていた。

(注20)
全国における確保病床の平均病床使用率  厚生労働省が毎週公表している都道府県ごとの入院コロナ患者数、都道府県ごとの確保病床数等を基に、次の算式により算出される病床使用率の月ごとの平均

病床使用率(%) = 毎週の公表日における47都道府県の入院コロナ患者数の合計 / 毎週の公表日における47都道府県の確保病床数等の病床数の合計 × 100

(注21)
調査対象期間中に新規にコロナ病床を確保するなどした医療機関があることから、各月の調査対象医療機関数は令和3年1月457医療機関、同年8月476医療機関、4年2月493医療機関となる。
(注22)
確保病床の病床利用率  病床使用率は、一般的には、延べ病床数に対する延べ入院患者数の割合をいうが、ここでは、次の算式により算出しており、区別のため、病床利用率と称している。

病床利用率(%) = ( 1か月間の延べ確保病床数 - 1か月間の延べ空床数 ) / 1か月間の延べ確保病床数 × 100

そして、各月の医療機関ごとの確保病床の病床利用率の分布状況をみると、3年1月は40%以上50%未満の区分(68医療機関)が、同年8月は70%以上80%未満の区分(103医療機関)が、4年2月は60%以上70%未満及び70%以上80%未満の両区分(それぞれ87医療機関)が、それぞれ最も多い区分となっていた。一方で、いずれの調査対象年月においても、10%未満の区分が最も少ない区分となっていた(図表4-1参照)。

図表4-1 検査の対象とした496医療機関ごとの確保病床の病床利用率の分布状況(令和3年1月、同年8月及び4年2月の各月平均)

図表4-1 検査の対象とした496医療機関ごとの確保病床の病床利用率の分布状況(令和3年1月、同年8月及び4年2月の各月平均)< 画像

イ 確保病床の病床利用率が50%を下回っていた医療機関の状況

前記のとおり、病床確保事業等については、コロナ病床が空いているのにコロナ患者が入院できなかったり、コロナ病床を確保したとして病床確保補助金等や受入補助金の交付を受けながらコロナ患者を受け入れない医療機関が見受けられたりするなどの報道がなされている。

そして、全国における確保病床の平均病床使用率は各月とも50%台となっており、また、検査の対象とした496医療機関における確保病床の病床利用率も平均では各月とも50%以上となっていたが、医療機関によって大きな差がある状況となっていた。

そこで、496医療機関のうち、各月の確保病床の病床利用率が50%を下回っていた医療機関(3年1月で197医療機関(同月の調査対象457医療機関全体に占める割合43.1%)、同年8月で136医療機関(同月の調査対象476医療機関全体に占める割合28.5%)、4年2月で136医療機関(同月の調査対象493医療機関全体に占める割合27.5%)。計269医療機関(注23)(純計))に対して、確保病床の病床利用率が50%を下回った理由についてアンケート調査を実施した。

アンケート調査の結果を集計したところ、図表4-2のとおり、「調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部、保健所、救急隊等(以下、これらを合わせて「都道府県調整本部等」という。)からのコロナ患者等の入院受入要請自体が少なかったため」と回答した医療機関が、3年1月で178医療機関(回答数全体に占める割合90.3%)、同年8月で125医療機関(同91.9%)、4年2月で121医療機関(同88.9%)あり、回答数の大多数を占めていた。

さらに、これらの「調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請自体が少なかったため」と回答した医療機関のうち、上記の各月中で「調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請を断ったことがない」と回答した医療機関は、3年1月で142医療機関(回答数全体に占める割合72.0%)、同年8月で94医療機関(同69.1%)、4年2月で83医療機関(同61.0%)あった。

そこで、当該医療機関に対して、入院受入要請自体が少なかった理由として考えられる事由を尋ねた(複数回答可)ところ、図表4-3のとおり、「入院受入要請の対象患者が、当該医療機関が主として受入れを担うコロナ患者等ではなかったため」と考えられるとしたものが3年1月で回答数全体の55.4%、同年8月で回答数全体の57.8%、4年2月で回答数全体の52.6%を占めるなど、当該医療機関の受入対象コロナ患者等の特性により、入院受入要請が少なかったと考えるとした医療機関が多い状況となっていた。

(注23)
アンケート調査の対象とした269医療機関のうち独立行政法人、国立大学法人、都道府県等が開設主体となっている公的医療機関が221医療機関(269医療機関に占める割合82.1%)となっており、検査の対象とした496医療機関のうち公的医療機関が374医療機関(496医療機関に占める割合75.4%)であることと同様に、公的医療機関が多くなっている。

図表4-2 令和3年1月、同年8月及び4年2月の各月において、確保病床の病床利用率が50%を下回った理由についての該当医療機関に対するアンケート結果

回答の種別 調査対象年月
令和3年1月 3年8月 4年2月
回答数
(割合)
回答数
(割合)
回答数
(割合)
ア 調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請自体が少なかったため 178
(90.3%)
125
(91.9%)
121
(88.9%)
(ア) 調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請を断ったことがない。 142
(72.0%)
94
(69.1%)
83
(61.0%)
(イ) 調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請を断ったことがある。 36
(18.2%)
31
(22.7%)
38
(27.9%)
イ 調査対象年月の1か月間で、確保病床に空床はあったが、受け入れられない事情等があり、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請の全部又は一部を断っていたため 19
(9.6%)
11
(8.0%)
15
(11.0%)
計(医療機関数) 197
(100%)
136
(100%)
136
(100%)

図表4-3 「調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請自体が少なかったため」と回答した医療機関のうち、要請を断ったことがないと回答した医療機関に対する要請が少なかった理由として考えられる事由についてのアンケート結果

入院受入要請が少なかったと考えられる理由 調査対象年月
令和3年1月 3年8月 4年2月
回答数
(割合)
回答数
(割合)
回答数
(割合)
ア 入院受入要請の対象患者が、当該医療機関が主として受入れを担うコロナ患者等ではなかったため 91
(55.4%)
66
(57.8%)
49
(52.6%)
(ア) 主に重症患者の受入れを担う医療機関であったため 50
(30.4%)
38
(33.3%)
30
(32.2%)
(イ) 主に妊婦、小児、人工腎臓、精神疾患等のコロナ患者等の受入れを担う医療機関であったため 30
(18.2%)
26
(22.8%)
18
(19.3%)
(ウ) 主に疑い患者の受入れを担う協力医療機関であったため 11
(6.7%)
2
(1.7%)
1
(1.0%)
イ 医療機関が所在する地域のコロナ患者等が少ないなどの理由により、単に入院受入要請が少なかったため 70
(42.6%)
41
(35.9%)
42
(45.1%)
ウ その他 3
(1.8%)
7
(6.1%)
2
(2.1%)
計(回答数) 164
(100%)
114
(100%)
93
(100%)
注(1) 複数回答を可としているため、「調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請自体が少なかったため」と回答した医療機関のうち、要請を断ったことがないと回答した医療機関(令和3年1月142医療機関、同年8月94医療機関、4年2月83医療機関)と「計(回答数)」欄の回答数は一致しない。
注(2) 医療機関の回答内容を会計検査院において分類している。

ウ コロナ患者等の入院受入要請を断った理由

図表4-2で、確保病床の病床利用率が50%を下回った理由として、「調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請自体が少なかったため」と回答した医療機関のうち、3年1月で36医療機関(回答数全体に占める割合18.2%)、同年8月で31医療機関(同22.7%)、4年2月で38医療機関(同27.9%)が、それぞれ「調査対象年月の1か月間で、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請を断ったことがある」と回答している。また、確保病床の病床利用率が50%を下回った理由として、「調査対象年月の1か月間で、確保病床に空床はあったが、受け入れられない事情等があり、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請の全部又は一部を断っていたため」と回答した医療機関が3年1月で19医療機関(回答数全体に占める割合9.6%)、同年8月で11医療機関(同8.0%)、4年2月で15医療機関(同11.0%)ある。

そこで、これらの医療機関(3年1月で55医療機関、同年8月で42医療機関、4年2月で53医療機関)に対して、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請を断った理由について、アンケート調査(複数回答可)を実施したところ、図表4-4のとおり、各月とも、「入院受入要請のあったコロナ患者の症状が、重症患者用、中等症患者用といった確保した病床の想定していた症状と合致していなかったため」としたり(図表4-4のア。回答数全体に占める割合:3年1月16.6%、同年8月13.1%、4年2月21.7%)、「既に入院しているコロナ患者等の中に、トイレや食事の介助等の日常生活援助の必要度が高い者が多く、対応する看護師等の人数が足りなくなったため」としたり(図表4-4のイ。同:3年1月14.1%、同年8月13.1%、4年2月15.9%)、「当該医療機関では入院受入要請のあったコロナ患者等の基礎疾患等(人工腎臓、精神疾患、認知症等)の対応が困難であったため」としたり(図表4-4のウ。同:3年1月10.2%、同年8月11.4%、4年2月18.8%)、「重度のコロナ患者を当初想定していたよりも多く受け入れることにより、対応する医師、看護師等の人数が足りなくなったため」としたり(図表4-4のエ。同:3年1月11.5%、同年8月13.1%、4年2月4.3%)しているものが相対的に多く、これらの回答が回答全体に占める割合は、3年1月で52.5%、同年8月で50.8%、4年2月で60.8%となっていた。

図表4-4 都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請を断ったことがあると回答した医療機関に対する要請を断った理由についてのアンケート結果

都道府県調整本部等からの入院受入要請を断った理由 調査対象年月
令和3年1月 3年8月 4年2月
回答数
(割合)
回答数
(割合)
回答数
(割合)
ア 入院受入要請のあったコロナ患者の症状が、重症患者用、中等症患者用といった確保した病床の想定していた症状と合致していなかったため 13
(16.6%)
8
(13.1%)
15
(21.7%)
イ 既に入院しているコロナ患者等の中に、トイレや食事の介助等の日常生活援助の必要度が高い者が多く、対応する看護師等の人数が足りなくなったため 11
(14.1%)
8
(13.1%)
11
(15.9%)
ウ 当該医療機関では入院受入要請のあったコロナ患者等の基礎疾患等(人工腎臓、精神疾患、認知症等)の対応が困難であったため 8
(10.2%)
7
(11.4%)
13
(18.8%)
エ 重度のコロナ患者を当初想定していたよりも多く受け入れることにより、対応する医師、看護師等の人数が足りなくなったため 9
(11.5%)
8
(13.1%)
3
(4.3%)
小計 41
(52.5%)
31
(50.8%)
42
(60.8%)
オ 都道府県調整本部や保健所を通していない救急隊からの直接の入院受入要請であったり、管轄外の救急隊からの入院受入要請であったりしたため 10
(12.8%)
5
(8.1%)
4
(5.7%)
カ 同時に複数の入院受入要請があったため 6
(7.6%)
5
(8.1%)
4
(5.7%)
キ 確保病床数には、コロナ患者等を担当する医師、看護師等の人数を増員できた場合に受入可能となる病床が含まれていたが、実際は想定していた人数を確保できなかったため 3
(3.8%)
6
(9.8%)
1
(1.4%)
ク 当時、医療機関内においてクラスター(新型コロナウイルス感染症の感染者間の関連が認められた集団)が発生して、入院受入要請を受けられなかったため 3
(3.8%)
0
( - )
6
(8.6%)
ケ 入院受入要請があった時点において、担当医師や担当看護師が入院中の患者や救急搬送された患者の対応中であったため 2
(2.5%)
5
(8.1%)
0
( - )
コ その他 13
(16.6%)
9
(14.7%)
12
(17.3%)
計(回答数) 78
(100%)
61
(100%)
69
(100%)
注(1) 複数回答を可としているため、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請を断ったことがあると回答した医療機関数(令和3年1月で55医療機関、同年8月で42医療機関、4年2月で53医療機関)と「計(回答数)」欄の回答数は一致しない。
注(2) 医療機関の回答内容を会計検査院において分類している。

そして、これらの回答のうち、相対的に回答数が多かった図表4-4のア及びウについては、コロナ患者の受入れに当たる現場の医師の医学的判断等により、入院受入要請があったコロナ患者の症状が、重症患者用、中等症患者用といった確保した病床の想定していた症状と合致していないとしたり、当該医療機関では、入院受入要請があったコロナ患者等の基礎疾患等の対応が困難であるとしたりしていたと思料された。

次いで回答数が多かった図表4-4のイ及びエについては、各医療機関において、当該医療機関が当初受け入れることを想定したコロナ患者等の看護必要度等に見合った入院受入体制は確保されていたものの、実際は、既に入院しているコロナ患者等の対応に看護師等の稼働が割かれるなどして人数が不足し、入院受入要請のあったコロナ患者等の受入れが困難になっていた状況となっていたと思料された。

また、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請を断った理由を、「確保病床数には、コロナ患者等を担当する医師、看護師等の人数を増員できた場合に受入可能となる病床が含まれていたが、実際は想定していた人数を確保できなかったため」(図表4-4のキ)と回答した医療機関(3年1月3医療機関、同年8月6医療機関、4年2月1医療機関)における当該各月の確保病床の病床利用率、確保病床数及び実際に入院受入可能であった確保病床数を示すと、図表4-5のとおりとなっていた。

図表4-5 入院受入要請を断った理由として、「確保病床数には、コロナ患者等を担当する医師、看護師等の人数を増員できた場合に受入可能となる病床が含まれていたが、実際は想定していた人数を確保できなかったため」と回答した医療機関の状況

(単位:床)
調査対象
年月等
調査対象
令和3年1月 3年8月 4年2月
確保病床の病床利用率 注(2)
確保
病床数
注(3)
左のうち実際に入院受入れが可能であった確保病床数
確保病床の病床利用率 注(2)
確保病床数
注(3)
左のうち実際に入院受入れが可能であった確保病床数
確保病床の病床利用率 注(2)
確保
病床数
注(3)
左のうち実際に入院受入れが可能であった確保病床数
A 46.4% 69~71 37 45.2% 71 36 45.7% 71 40
B 37.7% 67~77 31~34
C 43.5% 19~30 17
D 24.4% 73 32
E 45.9% 51~69 46~59
F 41.1% 78 41
G 40.4% 36 19
H 37.0% 4~14 1~9
注(1) 同一の医療機関で、令和3年1月、同年8月及び4年2月の各月とも本件事由に該当するとの回答を行っている医療機関が1医療機関ある。また、各医療機関において、本件事由に該当するとの回答を行っていない月がある場合は、当該月の各欄に斜線を付している。
注(2) 調査対象年月中に確保病床数に変動がある医療機関は、「確保病床数」欄において、「調査対象年月中の確保病床の最小数~調査対象年月中の確保病床の最大数」を記載している。
注(3) 調査対象年月中に確保病床数に変動がある医療機関のうち入院受入れが可能であった確保病床数にも変動がある医療機関は、「左のうち実際に入院受入れが可能であった確保病床数」欄において、「調査対象年月中の確保病床数の最小数に対応する実際に入院受入れが可能であった確保病床数~調査対象年月中の確保病床数の最大数に対応する実際に入院受入れが可能であった確保病床数」を記載している。

上記に該当する医療機関に関する事例を示すと次のとおりである。

<事例> 医療機関において、確保病床数には、コロナ患者等を担当する医師、看護師等の人数を増員できた場合に受入可能となる病床が含まれていたが、実際は想定していた人数を確保できなかったため、都道府県調整本部等からのコロナ患者等の入院受入要請を断っていたもの

医療機関Fは、令和3年度に病床確保補助金16億0957万円の交付を受けており、3年8月において、重点医療機関である一般病院のICU・HCU以外の病床区分の確保病床78床を確保したとしていた。

しかし、当該78床は、医療機関Fの開設主体を通じて、当該開設主体が開設する他の医療機関から看護師を増員できた場合に受入可能となる病床数であり、同年同月においては、全国的に新型コロナウイルス感染症の感染が拡大したことから他の医療機関から医療機関Fへの看護師の増員は困難となり、結果的に、当初想定していた看護師の増員を受けることができなかった。

このため、同年同月において、医療機関Fで実際に入院受入れが可能であった確保病床数は、上記の確保病床数78床を下回る1日当たりの最大で41床となっていた。そして、入院受入要請を受けることにより入院コロナ患者を受け入れる病床数が41床を超えると見込まれる場合は、確保病床に空床がある場合であっても、都道府県調整本部等からの入院受入要請を断っていた。

このことなどから、医療機関Fでは、同年同月の延べ確保病床数2,418床のうちコロナ患者が入院した病床は延べ994床となっており、確保病床の病床利用率は41.1%となっていた。

以上のとおり、図表4-4のイ、エ及びキについては、いずれも、様々な理由により看護師等が不足していることが医療機関がコロナ患者等の入院受入要請を断っている大きな原因となっていると認められ、個々の医療機関についてみれば、コロナ患者等の入院受入要請があった時点において当該要請を断ったことについてはやむを得なかった事情があったと思料された。

一方、病床確保補助金等についてみると、コロナ病床として確保していたものの、看護師等の不足により実際にはコロナ患者等を入院させることができなかった病床に対しても病床確保補助金等が交付されていることになる。

このため、交付金がコロナ患者等の入院受入体制が整い即応病床として確保されているコロナ病床に対して交付されるという制度の趣旨に照らして、厚生労働省は、交付金交付要綱等において、交付金は、当該確保病床の運用に必要な看護師等の人員が確保できているなど実際に入院受入体制が整っている確保病床を交付対象とするものであることを明確に定めるとともに、各医療機関の入院受入体制は看護師等の人員の確保の状況、受け入れている患者の状況等に応じて変動し得るものであることを踏まえて、医療機関において、確保病床の運用に必要な看護師等の確保が困難になった場合には、都道府県と当該医療機関との間で病床確保補助金等の交付対象となる確保病床数を適宜調整するよう、都道府県に対して指導する必要がある。

エ 休止病床を設定している医療機関における休止病床を設定する前の病床使用率の状況

前記のとおり、交付金の交付対象となる病床は、確保病床のうち空床となっている病床及び休止病床となっている。そして、休止病床については、当該病床を休止する前の診療報酬の区分に応じた病床確保料を適用することとされているが、当該病床の休止病床として設定する前の病床使用率は考慮されていないことから、医療機関において、休止病床として設定する前の病床使用率が低い病床を休止とした場合であっても、医療機関は、当該病床が100%稼働しているものとして病床確保補助金等の交付を受けることになる。

そして、検査の対象とした496医療機関のうち、休止病床を設定している医療機関は382医療機関(注24)あった。

そこで、この382医療機関において、病床の一部又は全部が休止病床となっている病棟を対象に、休止病床として設定する前の元年度の病床使用率をみると、図表4-6のとおり、80%以上90%未満となっていた医療機関が123医療機関(上記の382医療機関に占める割合32.1%)と最も多くなっていた一方で、50%を下回っていた医療機関も17医療機関(同4.4%)と一定数見受けられた。

そして、病床使用率が50%を下回っていた17医療機関の休止病床が設置されている病棟についてみたところ、それらの多くは休止病床として設定される前は結核等の感染症専用の病棟であった。

結核等の感染症専用の病棟については、ウイルスや細菌が外部に流出しないように室内の気圧を低くする陰圧装置が設けられているなど、コロナ病床を確保するのに適した設備が整備されるなどしていることを勘案すると、従来病床使用率の低い感染症専用の病棟内に確保病床を確保するとともに、感染症専用の病棟に配置されていた看護職員等を確保病床に重点的に配置するために、当該病棟内に一定数の休止病床を設定することには一定の合理性があると思料された。

一方、病床使用率が50%を下回っていた医療機関のうち、従前、感染症専用ではなかった病棟に休止病床を設置しているものについてみると、当該病棟は元年度末に新たに設置され、元年度中は本格的に稼働していなかったり、当該病棟を担当する医師が休職したため当該病棟への患者の受入れを制限せざるを得なかったりするなどしていたものであった。

以上のように、検査の対象とした医療機関による休止病床の設定自体には一定の合理性があるものが多かったが、病床確保補助金等の額が当該病床が100%稼働しているものとして算定されることとなっていることなどのため、結果として、休止前の稼働状況に基づく診療報酬を上回る額の病床確保補助金等の交付を受けている医療機関も生じているものと思料された。

(注24)
休止病床を設定している382医療機関のうち独立行政法人、国立大学法人、都道府県等が開設主体となっている公的医療機関が293医療機関(382医療機関に占める割合76.7%)となっており、検査の対象とした496医療機関のうち公的医療機関が374医療機関(496医療機関に占める割合75.4%)であることと同様に、公的医療機関が多くなっている。

図表4-6 休止病床を設定している382医療機関ごとの令和元年度の病床使用率の分布状況

図表4-6 休止病床を設定している382医療機関ごとの令和元年度の病床使用率の分布状況 画像

(5) コロナ関連補助金の交付を受けた医療機関の医業収支の状況

前記のとおり、3年10月に開催された財政制度等審議会財政制度分科会の審議において、厚生労働省が2年度に受入補助金の交付を受けた医療機関を対象として実施したアンケート調査の結果として、コロナ関連補助金が数多く設けられた2年度の医療機関の平均医業収支は、コロナ関連補助金を除くと赤字となるものの、コロナ関連補助金を含めると元年度と比較して大幅に改善していることなどが明らかにされている。

そして、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の前後では、医療機関を取り巻く環境は大きく変化しており、そのことが医療機関の経営にも大きく影響を及ぼしているものと思料される。

そこで、検査の対象とした496医療機関のうち、国が出資等を行っている独立行政法人等が設置する270医療機関から医業費用の算出ができない1医療機関を除いた269医療機関(注25)について、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する時期を含まないと思料される元年度から新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した2、3両年度までの医業収支の状況を1医療機関当たりの平均額を基にしてみたところ、次のとおりとなっていた(図表5-1参照)。

(注25)
269医療機関  独立行政法人労働者健康安全機構が開設する27病院、独立行政法人国立病院機構が開設する102病院、独立行政法人地域医療機能推進機構が開設する53病院、国立高度専門医療研究センターが開設する8病院、国立大学法人が開設する44病院、社会保険関係団体が開設する31病院、その他の医療機関4病院

図表5-1 検査の対象とした国が出資等を行っている独立行政法人等が設置する269医療機関に係る1医療機関当たりの平均医業収支の状況

(単位:千円)
年度等
項目
令和元年度 2年度 3年度
金額
(A)
金額
(B)
元年度からの増減 金額
(C)
元年度からの増減
(B-A) 対元年度比
(B-A)/A
(C-A) 対元年度比
(C-A)/A
①コロナ関連補助金を除く医業収益 11,865,552 11,486,666 △ 378,886 △ 3.1% 12,121,107 255,554 2.1%
外来に係る診療収益 3,272,516 3,233,507 △ 39,008 △ 1.1% 3,492,931 220,415 6.7%
入院に係る診療収益 8,109,244 7,794,421 △ 314,822 △ 3.8% 8,105,771 △ 3,472 △ 0.0%
コロナ関連以外の補助金 100,126 90,706 △ 9,420 △ 9.4% 116,462 16,335 16.3%
その他 383,665 368,031 △ 15,634 △ 4.0% 405,942 22,276 5.8%
②医業費用 12,261,913 12,317,983 56,069 0.4% 12,826,678 564,765 4.6%
材料費 3,907,217 3,862,770 △ 44,447 △ 1.1% 4,106,462 199,244 5.0%
人件費 5,571,905 5,627,895 55,990 1.0% 5,753,925 182,019 3.2%
その他 2,782,790 2,827,317 44,526 1.6% 2,966,291 183,500 6.5%
③コロナ関連補助金を除く医業収支(①-②) △ 396,360 △ 831,316 △ 434,955 △ 705,571 △ 309,210
④コロナ関連補助金を除く医業収支率(①/②) 96.7% 93.2% 94.4%
⑤コロナ関連補助金 10,072 1,121,471 1,111,398 1,410,870 1,400,797
交付金 743,582 1,141,254
受入補助金 100,965 70,671
上記以外 10,072 276,924 266,851 198,944 188,871
⑥医業収支(③+⑤) △ 386,287 290,155 676,442 705,299 1,091,587
⑦医業収支率((①+⑤)/②) 96.8% 102.3% 105.4%
(注) 同一法人が開設する2病院の医業収支を分けて算出することができないものが1件あり、これらの2病院は合わせて1病院とみなして1医療機関当たりの医業収支を算出している。

コロナ関連補助金を除き、1医療機関当たりの平均医業収益について、2、3両年度を元年度と比較してみると、コロナ関連補助金を除く医業収益は、元年度に比べて2年度は3億7888万余円(対元年度比△3.1%)の減少及び3年度は2億5555万余円(同2.1%)の増加となっていた。そして、その内訳をみると、外来に係る診療収益が、元年度に比べて2年度は3900万余円(同△1.1%)の減少及び3年度は2億2041万余円(同6.7%)の増加となっているのに対して、入院に係る診療収益が、元年度に比べて2年度は3億1482万余円(同△3.8%)の減少及び3年度は347万余円(同△0.0%)の減少となっていた。

1医療機関当たりの平均医業費用について、2、3両年度を元年度と比較してみると、元年度に比べて2年度は5606万余円(同0.4%)の増加及び3年度は5億6476万余円(同4.6%)の増加となっていた。そして、その内訳をみると、材料費が元年度に比べて2年度4444万余円(同△1.1%)の減少及び3年度1億9924万余円(同5.0%)の増加となっているのに対して、人件費は、元年度に比べて2年度は5599万余円(同1.0%)の増加及び3年度は1億8201万余円(同3.2%)の増加となっていた。

そして、コロナ関連補助金を除く医業収支の1医療機関当たりの平均額は、元年度が3億9636万余円の赤字に対して、2年度が8億3131万余円及び3年度が7億0557万余円の赤字と、2、3両年度とも赤字額が大幅に拡大しており、2、3両年度のコロナ関連補助金を除く医業収支率(医業費用に占める医業収益の割合)をみると、2年度は93.2%、3年度は94.4%となっており、いずれも元年度より悪化していた。

一方、2、3両年度には医療機関に対して多額のコロナ関連補助金が交付されていることから、この交付額についてみると、1医療機関当たりの平均で、2年度11億2147万余円、3年度14億1087万余円、計25億3234万余円が交付されており、このうち交付金の交付額は2年度7億4358万余円、3年度11億4125万余円の計18億8483万余円、受入補助金の交付額は2年度1億0096万余円、3年度7067万余円の計1億7163万余円となっていて、これらがコロナ関連補助金全体の81.2%を占めていた。

コロナ関連補助金を含めた医業収支の1医療機関当たりの平均額は、元年度の3億8628万余円の赤字に対して、2年度は2億9015万余円及び3年度は7億0529万余円の大幅な黒字となっており、2、3両年度の医業収支率をみると、2年度は102.3%、3年度は105.4%となっていた。

以上のように、独立行政法人等が設置する270医療機関のうち医業費用の算出ができない1医療機関を除いた269医療機関についてみると、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した2、3両年度は、コロナ関連補助金を除く医業収支の赤字が増大するなどの状況がみられた一方、コロナ関連補助金を含めると、全体の医業収支が黒字に転換し又は赤字幅を縮小していたり、黒字が更に増大していたりしている状況が見受けられた(開設主体の種別等別にみた1医療機関当たりの医業収支の状況は別図表2参照)。

そして、269医療機関から提出を受けた資料等により医業収支の状況と、確保病床数、休止病床数、入院コロナ患者数等との関係について相関係数(注26)を算出するなどして確認したところ、元年度から2、3両年度までの医業収支の増減率(注27)と、医療機関の許可病床数に占める確保病床数及び休止病床数の合計の割合との相関係数は0.66となっており、両者の間には中程度以上の正の相関関係がみられた(図表5-2参照)。

図表5-2 「元年度から2、3両年度までの医業収支の増減率」と「医療機関の許可病床数に占める確保病床数及び休止病床数の合計の割合」との関係

図表5-2 「元年度から2、3両年度までの医業収支の増減率」と「医療機関の許可病床数に占める確保病床数及び休止病床数の合計の割合」との関係 画像

なお、上記の結果については、元年度から2、3両年度までの医業収支の増減率と、医療機関の許可病床数に占める確保病床数及び休止病床数の合計の割合の、両方に影響を与える他の要因によるいわゆる見せかけの相関を示すなどしている可能性もあることから、これらの要因による影響を極力取り除いて分析するため、入院コロナ患者数、医療機関の規模等を考慮するなどして重回帰分析(注28)を行ったが、同分析においても、元年度から2、3両年度までの医業収支の増減率と、医療機関の許可病床数に占める確保病床数及び休止病床数の合計の割合との間には、上記と同様、正の相関関係がみられた。

これらのことから、医療機関の許可病床数に占める確保病床数及び休止病床数の合計の割合は、その大小が元年度から2、3両年度までの医業収支の増減率に関連すると認められ、確保病床又は休止病床とすることによりコロナ関連補助金の交付を受けることは、従前の病床のままとしている場合に比べて医業収支の改善に寄与する傾向があると思料された。

(注26)
相関係数  二つのデータの相関関係の強弱をマイナス1からプラス1までの間の数値で示すものであり、正の相関が強いと二つのデータが同じ方向に向かいプラス1に近づき、負の相関が強いと二つのデータが反対の方向に向かいマイナス1に近づくという傾向がある。
(注27)
元年度から2、3両年度までの医業収支の増減率  新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する時期を含まないと思料される令和元年度から新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した2、3両年度までの医業収支の増減を把握するための指標として、会計検査院が次の算式により算出したもの

元年度から2、3両年度までの医業収支の増減率(%) = (2、3両年度の平均医業収支 - 元年度の医業収支) / 元年度の医業収益 × 100

(注28)
重回帰分析  二つ以上の変数を数式化して、原因となる変数が、結果となる変数をどの程度説明できるかについて分析する統計手法(回帰分析)のうち、原因となる変数を二つ以上用いて分析する統計手法

(6) 病床確保事業における病床確保料等の状況

ア 厚生労働省における病床確保料上限額の設定

交付金の基準額の算定に当たっては、前記のとおり、重点医療機関等事務連絡等に定められた病床確保料上限額を使用することとなっている。

一方、交付金交付要綱等には、病床確保料がどのような趣旨のものであるか示されていないことから、厚生労働省に確認したところ、病床確保料はコロナ患者等を入院させるために医療従事者の体制を整えたコロナ病床が空床となった場合に、当該病床から得られるべき診療報酬が得られなくなったという機会損失に対する補塡であり、コロナ病床を確保するための経費であるとしていた。

そして、病床確保料については、前記のとおり、1日1床当たりの上限額が定められており、厚生労働省によれば、上限額を設けた趣旨については次の①のとおり、上限額の設定根拠については②のとおりであるとしている。

① 確保病床については、確保病床にコロナ患者等が入院しているときは診療報酬を得られるものの、空床時には診療報酬を得られないことから、コロナ患者等を円滑に受け入れられる体制を確保するためには、基本的に診療報酬と同水準の病床確保料を医療機関に支払って機会損失を補塡する必要がある。また、休止病床については、当該病床を休床にすることにより、従来、当該病床から得られていた診療報酬が得られなくなったという機会損失を補塡する必要がある。
② 確保病床及び休止病床のいずれについても、重点医療機関及び協力医療機関に係るICU及びHCUの病床区分については、それぞれ「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その19)」(令和2年5月26日厚生労働省保険局医療課事務連絡)等(以下「コロナ診療報酬臨時取扱等」という。)に定められた重症のコロナ患者等の入院料等に係る診療報酬(注29)の点数を、重点医療機関及び協力医療機関に係るICU及びHCU以外の病床区分並びにその他医療機関に係る全病床区分については「診療報酬の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第59号。以下「診療報酬算定基準」という。)に定められた一般患者の入院料等に係る診療報酬の点数等を、それぞれ積算して、これらに単価(10円)を乗じた額を設定した。

なお、重点医療機関、協力医療機関及びその他医療機関の各病床区分(確保病床において設定のない療養病床区分を除く。)における病床確保料上限額が確保病床と休止病床とで同額となっている理由について、厚生労働省によれば、多床室に収容するコロナ患者等を1名のみとし、多床室の残りの病床を休止病床とした場合等は、確保病床と休止前の休止病床とでは、看護師の配置数等の医療従事者の体制がほぼ同じであることが多いからなどとしている。この点、個室を休止病床とするなどした場合は、看護師の配置数等に影響する可能性もあるが、上記のとおり、病床確保料上限額は一律となっている。

(注29)
診療報酬として医療に要する費用については、原則として診療報酬算定基準等による所定の診療点数に単価(10円)を乗ずるなどして算定することになっているが、コロナ患者等の医療に要する費用については、コロナ診療報酬臨時取扱等により、診療点数の特例的な取扱いが定められている。

イ 医療機関における入院患者に係る診療報酬額と厚生労働省が定めた病床確保料上限額との比較

厚生労働省は、前記のとおり、病床確保料上限額を設けた趣旨について、得られなくなった診療報酬に係る機会損失を補塡する必要があるとしており、また、その設定についても、重症のコロナ患者等又は一般患者の入院料等に係る診療報酬の点数を積算するなどしている。

そして、前記のとおり、独立行政法人等が設置する270医療機関のうち医業費用の算出ができない1医療機関を除いた269医療機関の医業収支の状況についてみると、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した2、3両年度は、コロナ関連補助金を除く医業収支の赤字が増大するなどしている一方、コロナ関連補助金を含めると、全体の医業収支が黒字に転換するなどしている状況が見受けられた。

さらに、後述のとおり、都道府県の多くは、病床確保料上限額をそのまま使用して病床確保補助金の交付額を算定している状況であった。

そこで、厚生労働省が定めた病床確保料上限額の設定が実態に沿ったものとなっているかについて、検査の対象とした496医療機関のうち重点医療機関となっている426医療機関について、各医療機関における実際の入院患者に係る診療報酬額と病床確保料上限額とを比較したところ、次のとおりとなっていた。

(ア) 確保病床に係る病床確保料

確保病床に係る機会損失として、重点医療機関となっている426医療機関について、2、3両年度分の入院コロナ患者に係る診療報酬のうち、2回目の緊急事態宣言中に全国で最も入院コロナ患者が多かった3年1月分及び3回目の緊急事態宣言中に全国で最も入院コロナ患者が多かった同年8月分の2か月分を抽出して、ICU、HCU及びICU・HCU以外の病床の病床区分ごとの入院コロナ患者の診療報酬額を入院コロナ患者の診療実日数で除すなどして算定した診療報酬額(以下、(ア)において「入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額」という。)を用いることとした。

入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額とを比較したところ、426医療機関全体でみると、図表6-1のとおり、特定機能病院等のICU区分、HCU区分及び一般病院のHCU区分では、入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額が病床確保料上限額を63,444円から73,789円下回っている一方、残りの特定機能病院等のICU・HCU以外の病床区分、一般病院のICU区分及びICU・HCU以外の病床区分では、入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額が病床確保料上限額を1,778円から62,821円上回っていた。

図表6-1 重点医療機関となっている426医療機関における入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額との比較(令和3年1月分及び同年8月分)

区分 医療機関数 病棟数

(棟)
コロナ患者の診療実績 病床確保料上限額(b)

(円/日)
差額
(c)=(a)-(b)

(円/日)
入院したコロナ患者の実人数

(人)
入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額(a)

(円/日)
重点医療機関 特定機能病院等 ICU 124 170 3,075 369,130 436,000 △ 66,870
HCU 68 82 1,915 147,556 211,000 △ 63,444
ICU・HCU以外の病床 137 210 7,561 85,862 74,000 11,862
一般病院 ICU 33 36 265 363,821 301,000 62,821
HCU 48 64 1,971 137,211 211,000 △ 73,789
ICU・HCU以外の病床 216 283 12,359 72,778 71,000 1,778
(注) 複数の病床区分の病床を有する医療機関があることから「医療機関数」欄を合計しても検査対象の426医療機関とはならない。

さらに、医療機関ごとの状況について、特定機能病院等のICU区分(同区分に該当する124医療機関)を例として、入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額との差の状況をみたところ、図表6-2のとおり、同区分の入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額が病床確保料上限額436,000円を下回っていた医療機関が124医療機関中74医療機関(124医療機関に占める割合59.6%)、上回っていた医療機関が50医療機関(同40.3%)あり、最も差の大きい医療機関をみると、病床確保料上限額を294,028円下回っているものから、252,980円上回っているものまであるなど、病床確保料上限額との差は、医療機関によって大きく異なる状況となっていた。

そこで、上記の差の原因についてみたところ、次のとおりとなっていた。

同区分の病床確保料上限額は、前記のとおり、コロナ診療報酬臨時取扱等に定められた重症のコロナ患者等の入院料等に係る診療報酬の点数を積算して、これに単価(10円)を乗じた額を設定しており、具体的には、特定集中治療室管理料1の点数42,633点(7日以内の期間)に10円/点を乗ずるなどして436,000円と設定している。

一方、実際の入院コロナ患者の診療報酬額については、診療報酬算定基準、コロナ診療報酬臨時取扱等により、次のとおり算定することなどとされている。

① 入院料については、当該医療機関が満たす施設基準の区分に従って、特定集中治療室管理料1(重症のコロナ患者の場合1日につき42,633点(7日以内の期間)、重症でないコロナ患者の場合同14,211点(同))から特定集中治療室管理料4(重症のコロナ患者の場合1日につき29,091点(同)、重症でないコロナ患者の場合同9,697点(同))までの4区分ごとに定められた所定の点数を算定する。
② これらの点数には、検査料、注射料、処置料等の診療点数のうち一部の点数が含まれているが、特定集中治療室管理料1から同4までには含まれていない診療点数は別途算定することができる。

そして、実際の入院コロナ患者の診療報酬額の内容について、協力が得られた範囲で医療機関から入手した診療報酬明細書の写しにより確認したところ、入院したコロナ患者が重症でなかったことから、点数の低い特定集中治療室管理料を算定していたり、重症のコロナ患者を入院させていたが、当該医療機関が満たす施設基準の区分に従って、特定集中治療室管理料1より点数の低い特定集中治療室管理料4等を算定していたりしたため、当該入院コロナ患者の1日当たりの診療報酬額が病床確保料上限額を下回っているものがあった。

一方、重症のコロナ患者を入院させていて、かつ、特定集中治療室管理料1を算定している場合で、特定集中治療室管理料1には含まれない検査料、注射料、処置料等の診療点数を別途算定している場合、当該入院コロナ患者の1日当たりの診療報酬額が病床確保料上限額を上回っていた。

以上のとおり、実際に入院コロナ患者の診療に当たる医療機関が満たす施設基準(医療提供体制)、入院コロナ患者の重症度、治療内容の違いなどによって、実際の入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額には大きな差が生じていた。

図表6-2 特定機能病院等のICU区分に該当する124医療機関における入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額との差の状況

図表6-2 特定機能病院等のICU区分に該当する124医療機関における入院コロナ患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額との差の状況 画像

(イ) 休止病床に係る病床確保料

休止病床に係る機会損失として、重点医療機関となっている426医療機関のうち、医事システム(注30)上データの算出が可能であった211医療機関について、休止病床を設定する以前の年度である元年度1か年分を対象に病棟の一部又は全部が休止病床となっている病棟において、休止前に入院していた患者(以下「休止前入院患者」という。)の診療報酬額を休止前入院患者の診療実日数で除すなどして算定した診療報酬額(以下、(イ)において「入院患者1人1日当たりの診療報酬額」という。)を用いることとした。

入院患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額とを比較したところ、211医療機関全体でみると、図表6-3のとおり、特定機能病院等及び一般病院のいずれについても、療養病床区分以外の区分では、入院患者1人1日当たりの診療報酬額が病床確保料上限額を6,361円から84,591円下回っている一方、療養病床区分では、入院患者1人1日当たりの診療報酬額が病床確保料上限額を特定機能病院等で33,258円、一般病院で32,039円上回っていた。

(注30)
医事システム  医療機関において診療報酬請求事務を処理するためのコンピュータシステム

図表6-3 211医療機関における入院患者1人1日当たりの診療報酬額と休止病床に係る病床

区分 医療機関数 病棟数

(棟)
令和元年度の入院患者1人1日当たりの診療報酬額(a)

(円/日)
病床確保料上限額(b)

(円/日)
差額
(c)=(a)-(b)

(円/日)
重点医療機関 特定機能病院等 ICU 68 100 351,409 436,000 △ 84,591
HCU 27 37 198,443 211,000 △ 12,557
療養病床 3 3 49,258 16,000 33,258
ICU・HCU・療養病床以外の病床 115 426 63,174 74,000 △ 10,826
一般病院 ICU 13 13 293,162 301,000 △ 7,838
HCU 12 13 204,639 211,000 △ 6,361
療養病床 4 4 48,039 16,000 32,039
ICU・HCU・療養病床以外の病床 105 197 47,728 71,000 △ 23,272
(注) 複数の病床区分の病床を有する医療機関があることから「医療機関数」欄を合計しても検査対象の211医療機関とはならない。

さらに、医療機関ごとの状況について、特定機能病院等のICU区分(同区分に該当する68医療機関)を例として、入院患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額との差の状況をみたところ、図表6-4のとおり、同区分の入院患者1人1日当たりの診療報酬額が病床確保料上限額436,000円を下回っていた医療機関が68医療機関中41医療機関(68医療機関に占める割合60.2%)、上回っていた医療機関が27医療機関(同39.7%)あり、最も差の大きい医療機関をみると、病床確保料上限額を367,988円下回っているものから、331,679円上回っているものまであるなど、病床確保料上限額との差は、医療機関によって大きく異なる状況となっていた。

図表6-4 特定機能病院等のICU区分に該当する68医療機関における入院患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額との差の状況

図表6-4 特定機能病院等のICU区分に該当する68医療機関における入院患者1人1日当たりの診療報酬額と病床確保料上限額との差の状況 画像

前記のとおり、病床確保料は機会損失の補塡という趣旨で交付されるものであるが、以上のように、医療機関における入院コロナ患者(確保病床の場合)や休止前入院患者(休止病床の場合)に係る1人1日当たりの診療報酬額と厚生労働省が定めた病床確保料上限額とを比較すると、医療機関によって大きな差が生じており、医療機関によって、機会損失を上回る額の交付を受けることとなったり、十分な補塡となっていなかったりする結果になっていると思料された。

病床確保事業を創始するに当たっては、緊急性に鑑み、一定の平均的な想定に基づき対応せざるを得ない面があったと考えられる。しかし、以上のような実態に鑑み、厚生労働省は、今後、病床確保料上限額の設定等が適切であるか改めて検証し、その検証結果を踏まえて、確保病床に係る病床確保料については入院コロナ患者等の診療報酬額を、休止病床に係る病床確保料については休止前入院患者の診療報酬額を、それぞれ参考にするなどして、病床確保料上限額の設定を見直したり、医療機関の医療提供体制等の実態を踏まえた交付金の交付額の算定方法を検討したりして、交付金の交付額の算定の在り方を検討する必要がある。

なお、交付金交付要綱等においては、交付金の交付額の算定に当たっては、病床確保料上限額等に基づいて算定される基準額と、対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定することなどと定められている。しかし、機会損失を補塡するという趣旨の下で、「対象経費の実支出額」をどのように算定するかは示されておらず、都道府県の多くは、医療機関における対象経費の実支出額を算出することが困難であるなどとして、対象経費の実支出額を算出することなく、病床確保料上限額をそのまま使用して病床確保補助金の交付額を算定していた。