(福島再生加速化交付金の概要等については後掲「福島再生加速化交付金を原資として地方公共団体が設置造成するなどした基金の執行管理に当たり、基金を取り崩して実施する個々の事業の執行状況や基金残額の把握に資する情報を共有するなどした上で、基金の保有額が過大となっていないか確認することなどの必要性等について周知するとともに、使用見込みのない基金残額を国庫へ返還するように指示するなどすることにより、基金の規模が適切なものとなるよう改善の処置を要求したもの」参照)
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
厚生労働省(注1)(令和5年4月1日以降はこども家庭庁。以下同じ。)が所管する基金型事業は、4年度末までに、5市町村(注2)において9事業が実施されている。そして、これらの基金型事業に係る加速化交付金の交付額は計8億1962万余円、4年度末現在の加速化交付金基金の保有額は、4町村(注3)の6事業に係る計2300万余円となっている。
本院は、有効性等の観点から、加速化交付金基金について、基金型事業の実施状況等に照らして加速化交付金基金の保有額が過大となっていないかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、前記の6事業に係る基金の保有額2300万余円を対象として、こども家庭庁、復興庁本庁、厚生労働本省、福島県及び3町村(注4)において、基金型事業の執行状況や加速化交付金基金の使用見込み等について事業計画等の関係書類を徴するなどして会計実地検査を行うとともに、双葉郡川内村については、こども家庭庁、復興庁本庁、厚生労働本省から関係書類を徴するなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、6事業全てが平成29年度から令和2年度末までに完了しており、事業費に係る加速化交付金基金の取崩しが終了していた。そして、これらの6事業に係る4年度末時点の基金残額計2295万余円の使用見込み等についてみたところ、表のとおり、2町村の3事業に係る基金残額計793万余円については、4年度末時点で事業完了から1年以上が経過しており、流用できる継続事業がないなど使用する見込みがないのに、国庫への返還が検討されておらず、事務連絡に基づいた取扱いが行われていなかった。
また、厚生労働省は、基金の執行管理に当たって、福島県等から毎年度提出を受ける状況報告書等により加速化交付金基金の保有額等を把握していたものの、復興庁から進捗状況報告の提供を受けるなど適宜の方法により福島県等における基金の保有額が過大となっていないか十分に確認しておらず、2町村に対して使用する見込みがない基金残額を国庫へ返還するように指示していなかった。
これらのため、2町村は、使用する見込みのない基金残額を保有していて、加速化交付金基金の保有額が過大となっていた。
表 完了から1年以上が経過していた事業のうち使用見込みのない基金残額
事業実施主体 | 事業数 | 基金残額 (令和4年度末時点) |
事業 |
---|---|---|---|
浪江町 | 2 | 3,664 | 浪江町認定こども園整備事業(保育所の複合化・多機能化)(基金型)等 |
飯舘村 | 1 | 4,271 | 認定こども園園庭(保育園機能部分)整備事業(保育所の複合化・多機能化) |
計 | 3 | 7,935 |
このように、厚生労働省において、加速化交付金基金の保有額が過大となっていないか十分に確認しておらず、2町村において使用する見込みのない基金残額を保有していて、加速化交付金基金の保有額が過大となっていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 厚生労働省において、復興庁から進捗状況報告の提供を受けるなど適宜の方法により個々の基金型事業の執行状況や基金残額を適時適切に把握するなどして基金の執行管理を行い、基金の保有額が過大となっていないか確認することの必要性についての理解が十分でなかったこと
イ 2町村において、基金残額を流用できる継続事業がないなど使用する見込みがない場合には、厚生労働省との間で使用見込みのない基金残額の国庫への返還手続を進めるなどすることについての理解が十分でなかったこと
本院の指摘に基づき、こども家庭庁は、6年3月から4月までの間に2町村から使用見込みのない基金残額793万余円を国庫に返還させることにより、基金の規模を適切なものとする処置を講じた。