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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(1) 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の交付対象事業費を過大に精算するなどしていたもの[総務本省、8都道府県](16)―(29)


14件 不当と認める国庫補助金 243,714,911円

新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(以下「交付金」という。)は、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金制度要綱(令和2年府地創第127号等。以下「制度要綱」という。)等に基づき、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月閣議決定)、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」(令和2年12月閣議決定)、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月閣議決定)、「コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」」(令和4年4月原油価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議決定)等に掲げる新型コロナウイルスの感染拡大防止策等についての対応として、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに効果的・効率的で必要な事業を実施できるよう、地方公共団体が作成し、内閣府に提出して確認を受けた新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金実施計画(以下「実施計画」という。)に基づく事業に要する費用のうち地方公共団体が負担する費用に充てるために、国が交付するものである。

制度要綱等によれば、交付金の交付対象事業は、制度要綱に掲げる基準に適合する事業であって、実施計画を作成する地方公共団体が新型コロナウイルスの感染拡大の防止及び感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活の支援等を通じた地方創生に資する事業(経済対策に対応した事業)の実施に要する費用の全部又は一部を負担する事業等とすることとされている。そして、当該地方公共団体が作成した実施計画に記載された交付金の交付対象事業が複数の府省で所管する国庫補助事業や地方単独事業で構成されている場合は総務省が交付行政庁となることとなっており、実際には、実施計画にいずれも地方単独事業が含まれるなどしているため、全て同省が交付行政庁となっている。

また、市町村(特別区を含む。)は、実績報告書等を都道府県に提出し、都道府県は、その内容を審査することとなっている。

本院が44都道府県及び263市区町村において、会計実地検査を行ったところ、北海道及び13市区町、計14事業主体において、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

① 交付対象事業費を過大に精算していたもの

 
部局等
交付金事業者等
(事業主体)
交付金事業
年度
交付対象事業費
左に対する交付金交付額
不当と認める交付対象事業費
不当と認める交付金相当額
          千円 千円 千円 千円  
(16)
総務本省
北海道
新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金
3、4 1,971,160 1,971,160 78,249 78,249
(17)
北海道
札幌市
2、3 86,252 34,542 5,549 5,549
(18)
岩手県
遠野市
4 19,761 13,327 6,891 6,891
(19)
千葉県
習志野市
2 883,376 490,809 5,000 5,000
(20)
流山市
2 286,608 109,183 164,307 66,336
(21)
我孫子市
2 16,539 8,213 1,520 1,520
(22)
東京都
新宿区
4 79,797 79,797 16,962 16,962
(23)
新潟県
三条市
3 16,220 5,408 8,882 2,960
(24)
京都府
相楽郡
精華町
2 20,330 11,140 1,137 1,137
(25)
大阪府
大東市
2 16,169 5,391 3,475 1,159
(16)―(25)の計         3,396,215 2,728,973 291,977 185,768

10事業主体は、国の補助事業等(内閣府、文部科学省又は厚生労働省が所管する事業)において地方公共団体が一部を負担することとされている費用等に交付金を充当しており、交付金事業の交付対象事業費を計3,396,215,737円であるとして、総務本省又は7都道府県に実績報告書を提出し、総務本省又は7都道府県による審査を経て、交付金の額の確定を受け、総務省から計2,728,973,243円の交付金の交付を受けていた。

しかし、交付金事業の事業費について、人件費の算出基礎となる従事時間数に業務に従事した実態のない時間数が上乗せされるなどしていたこと、国の補助事業等の実績報告書に基づく実際に要した額を交付金の実績報告書に計上すべきところ、誤って所要見込額を計上するなどしていたこと、前金払していた事業費の一部が返還されたのに返還額を事業費から減額していなかったことなどにより、交付金計185,768,890円が過大に精算されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、9事業主体(注1)において交付金事業の事業費等の確認が十分でなかったこと、1事業主体(注2)において交付金の制度に対する理解が十分でなかったこと、7都道府県において交付金の額の確定時の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
9事業主体  北海道、札幌、遠野、習志野、流山、我孫子、三条、大東各市、相楽郡精華町
(注2)
1事業主体  新宿区

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

北海道は、令和3、4両年度に、飲食店を対象に新型コロナウイルス感染症の感染防止対策に必要な事項の取組状況を確認して認証を行うなどの飲食店感染防止対策認証制度推進事業等5事業を事業費3年度1,428,541,198円(交付金充当経費同額)、4年度542,619,795円(交付金充当経費同額)、計1,971,160,993円(交付金充当経費同額)でそれぞれ実施したとして、総務本省に実績報告書を提出し、総務省から交付金の交付を受けていた。また、北海道は、5事業の実施に当たり、飲食店感染防止対策認証制度委託業務事業受託コンソーシアム等5コンソーシアムと五つの委託契約を締結しており、いずれの契約にも、道民や事業者等からの問合せに対応するコールセンター業務が含まれていた。

しかし、北海道を通じて5コンソーシアムから提出されたコールセンター業務の従事者に係る勤務記録等の関係書類を確認したところ、①従事者の人件費について、従事時間数に業務に従事した実態のない時間数が上乗せされていたことや人件費単価に根拠のない金額が上乗せされていたこと、②通信機器等の使用料や通信費等について、実費相当額に根拠のない金額が上乗せされていたことなどにより、事業費が過大に計上されていた。そこで、人件費や使用料等を実績に基づき修正するなどして、適正な事業費を算定すると3年度1,358,782,458円、4年度534,128,589円、計1,892,911,047円となる。

したがって、前記の事業費3年度1,428,541,198円、4年度542,619,795円、計1,971,160,993円との差額3年度69,758,740円、4年度8,491,206円、計78,249,946円(交付金充当経費同額)が過大に精算されていた。

(事例1に関連する事態については、後掲厚生労働省の項「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルスワクチン接種体制支援事業に係る分)が過大に交付されていたもの」に掲記)

<事例2>

流山市は、令和2年度に、内閣府所管の補助事業である子ども・子育て支援交付金事業を事業費204,736,000円(交付金充当経費68,246,000円)で実施したとして、千葉県に実績報告書を提出し、総務省から交付金の交付を受けていた。

しかし、同市は、実績報告書における子ども・子育て支援交付金事業の事業費について、実際に要した費用を計上すべきところ、誤って2年度の所要見込額を計上しており、事業費を94,904,315円過大に計上していた。そこで、子ども・子育て支援交付金事業の実績に基づく適正な事業費109,831,685円により、同市の負担する適正な交付金充当経費を算定すると36,611,685円となる。

したがって、前記の交付金充当経費68,246,000円との差額31,634,315円が過大に精算されていた。

また、同市では、2年度に、前記と同様に交付金の実績報告書における事業費に誤って所要見込額を計上していた事態が2事業においても見受けられ、それぞれ交付金25,749,000円、8,953,078円が過大に精算されており、3事業で交付金計66,336,393円が過大に精算されていた。

② 交付対象事業費に対象とならない費用を含めていたもの

 
部局等
交付金事業者等
(事業主体)
交付金事業
年度
交付対象事業費
左に対する交付金交付額
不当と認める交付対象事業費
不当と認める交付金相当額
          千円 千円 千円 千円  
(26)
北海道
釧路市
新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金
4、5 43,987 43,987 3,898 3,898
(27)
稚内市
5 24,140 24,140 2,763 2,763
(28)
岩手県
久慈市
5 141,744 9,886 1,541 1,275
(29)
山梨県
甲府市
2 110,091 50,008 110,091 50,008
(26)―(29)の計         319,965 128,023 118,295 57,946

4事業主体は、実施計画に記載された地方単独事業の実施に要する費用等の全部又は一部に交付金を充当しており、交付金事業の交付対象事業費を計319,965,321円であるとして、3道県に実績報告書を提出し、3道県による審査を経て、交付金の額の確定を受け、総務省から計128,023,701円の交付金の交付を受けていた。

しかし、交付金の交付対象とされたもののうち、実施計画において対象外とするなどとされている費用及び実施計画に基づく事業に要する費用に該当しない費用は、交付金の交付対象とは認められず、これらに係る交付金計57,946,021円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、3事業主体(注3)において交付対象事業費等の確認が十分でなかったこと、1事業主体(注4)において制度要綱等に示された交付対象事業費についての理解が十分でなかったこと、3道県において交付金の額の確定時の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注3)
3事業主体  釧路、稚内、久慈各市
(注4)
1事業主体  甲府市

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3>

釧路市は、令和4、5両年度に、給食食材高騰対策事業を事業費4年度15,496,663円(交付金充当経費同額)、5年度28,491,280円(交付金充当経費同額)、計43,987,943円(交付金充当経費同額)でそれぞれ実施したとして、北海道に実績報告書を提出し、総務省から交付金の交付を受けていた。

同市は、本件事業の実施に当たり、4、5両年度の実施計画において、コロナ禍における原油価格・物価高騰により影響を受けている子育て世帯に対し支援を行うことを目的とし、保護者負担の増加を防ぐために、釧路市学校給食会等に対する補助金の支給に要する費用(保護者負担分)を交付対象とし、教職員等分を対象外とすることとしていた。

しかし、同市は、実績報告書における事業費に、実施計画において対象外としていた教職員等分に係る費用、4年度1,214,282円、5年度2,683,770円を含めて計上していた。

したがって、教職員等分に係る費用、4年度1,214,282円、5年度2,683,770円、計3,898,052円は交付金の交付対象とは認められず、これに係る交付金同額が過大に交付されていた。

<事例4>

甲府市は、令和2年度に、学校保健特別対策事業費補助金等6事業を事業費計110,091,627円(交付金充当経費計50,008,784円)で実施したとして、山梨県に実績報告書を提出し、総務省から交付金の交付を受けていた。

しかし、同市は、6事業を2年度実施計画に記載していないことから、6事業に係る事業費110,091,627円は2年度実施計画に基づく事業に要する費用に該当しないものであった。

したがって、6事業に係る事業費110,091,627円は交付金の交付対象とは認められず、これに係る交付金50,008,784円が過大に交付されていた。

 
部局等
交付金事業者等
(事業主体)
交付金事業
年度
交付対象事業費
左に対する交付金交付額
不当と認める交付対象事業費
不当と認める交付金相当額
          千円 千円 千円 千円  
(16)―(29)の計         3,716,181 2,856,996 410,273 243,714