総務省は、無線通信の利用可能な地域の拡大等を図ることなどを目的として無線システム普及支援事業費等補助金を交付している。同補助金の交付対象事業には、無線局(注1)の開設に必要な伝送用専用線設備(注2)を整備することを目的とする高度無線環境整備推進事業(以下「高度無線事業」という。)がある。高度無線事業の補助の対象となる経費は、伝送用専用線設備の整備に要する経費に限られ、無線設備は、補助事業者の責任において設置することとされている。また、補助事業者は、事業終了後、交付申請時に設定した目標の達成状況等について評価(以下「事後評価」という。)を行うこととされている。しかし、事後評価の内容をみると、補助事業者がそれぞれの考え方に基づき目標値として設定した無線局の数に対する達成状況の評価が行われていたものの、高度無線事業により整備された伝送用専用線設備そのものの利用状況の評価が行われるものとなっておらず、伝送用専用線設備が十分に活用されているか把握できない状況となっており、また、整備された伝送用専用線設備が十分に活用されていないものがあるにもかかわらず、これらの伝送用専用線設備を更に活用する方策を十分に検討するなどしていない事態が見受けられた。
したがって、総務大臣に対して令和5年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり意見を表示した。
ア 整備された伝送用専用線設備について、利用状況の評価を行う方法について検討した上で、利用状況の評価により十分に活用されているか把握できるようにすること
イ 十分に活用されていない伝送用専用線設備について、必要に応じて補助事業者に助言等を行うことができるように、更に活用する方策を検討すること
本院は、総務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、総務省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 整備された伝送用専用線設備について、利用状況の評価を行う方法について検討した上で、5年10月に「無線システム普及支援事業費等補助金高度無線環境整備推進事業実施マニュアル」を改正して、事後評価の際に伝送用専用線設備の利用状況の評価も併せて行うことにより、その活用状況を把握できるようにした。
イ 十分に活用されていない伝送用専用線設備について、補助事業者が行っている取組の優良事例を分析するなどして、更に活用する方策を検討した。そして、6年7月に検討結果を取りまとめた提案書を作成し、これを活用して必要に応じて補助事業者に助言等を行うことができるようにした。