8件 不当と認める国庫補助金 34,402,684円
義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、国が都道府県又は政令指定都市(以下「都道府県等」という。)に対して交付するものである(負担金の概要については、後掲「義務教育費国庫負担金の算定基礎定数のうち、加配定数に相当する教職員として短時間教職員を配置した場合に常勤の教職員の数に換算する算定方法を、配置実績を確認する様式等に記載するなどして、都道府県等に対して周知することにより、同負担金の交付が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの」参照)。
そして、算定基礎定数の算定に必要な標準学級数等は、次のように算定することとなっている。
① 学校教育法(昭和22年法律第26号)第81条に規定する小中学校の特別支援学級の標準学級数は、二つ以上の学年の児童生徒数の合計数が8人以下である場合は、当該複数学年の児童生徒を1学級に編制して算定する。
② 小中学校の事務職員の基礎定数は、4学級以上の小中学校の数の合計数に1を乗じて得た数等を合計した数となっているが、同一の設置者が設置する小学校及び中学校で4学級から6学級までの小学校及び4学級又は5学級の中学校が500ⅿの範囲内に存する場合には1校とみなして算定する。
③ 特別支援学校については、義務教育である小学部及び中学部(以下「小中学部」という。)のほかに幼稚部及び高等部を置く学校があるため、当該年度の5月1日現在における標準定数と、休職者等の実数とにそれぞれ義務制率(注)を乗ずるなどして小中学部に係る算定基礎定数を算定する。
本院が、22都道府県及び9市において会計実地検査を行ったところ、6県2市において、算定総額の算定に当たり、算定基礎定数の算定が過大となっていた。この結果、負担金計34,402,684円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、6県2市において、算定基礎定数の算定方法についての理解及び算定基礎定数の確認が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。なお、同一の県が複数の事態に該当している場合がある。
ア 標準定数を過大に算定していた事態
(ア) 小中学校の教職員の基礎定数の算定の基礎となる標準学級数の算定において、特別支援学級に編制する二つ以上の学年の児童数の合計数が8人以下であるのに当該複数学年の児童を1学級に編制しておらず、標準学級数を1学級とすべきところを2学級に編制して算定していた事態 1県
(イ) 小中学校の教員の加配定数において、当初配置を予定していたが、配置できていなかった者を含めて配置実績を算定していた事態 1県
(ウ) 小中学校の事務職員の基礎定数の算定において、同一の設置者が設置する5学級又は6学級の小学校と5学級の中学校とが500ⅿの範囲内に存するのに1校とみなさずに2校として算定していた事態 1市
イ 小中学校及び特別支援学校の休職者、無給休職者等の実数の算定において、当該年度の5月1日現在で休職者に該当しない者を含めていたほか、当該日現在で無給休職者に該当する者を含めずに算定するなどして対象者の計上を誤っていた事態 3県1市
ウ 特別支援学校の義務制率の算定において、高等部の実学級数に当該年度の5月1日現在に生徒が在籍していた学級を一部含めていなかったことから義務制率が過大となっていた事態 3県
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例(イ及びウの事態)>
福岡県は、平成30年度において、小中学校の教職員の算定基礎定数を15,731人とし、また、特別支援学校の小中学部の教職員の算定基礎定数について、小中学部の標準学級数の合計を491学級、小中学部の標準学級数並びに幼稚部及び高等部の実学級数の合計を711学級として算定した義務制率を用いて、1,106人としていた。そして、これらに基礎給料月額等を乗ずるなどして算定した算定総額が実支出額を下回ったことから、算定総額を基に34,996,455,021円の負担金の交付を受けていた。
しかし、同県は、小中学校の教職員の算定基礎定数の算定に当たり、小中学校の教員について、無給休職者を11人とすべきところ、誤って8人と算定するなどしていた。また、特別支援学校の小中学部の教職員の算定基礎定数の算定に当たり、無給休職者を3人とすべきところ、誤って1人と算定していた。
さらに、同県は、特別支援学校の義務制率の算定に当たり、小中学部の標準学級数並びに幼稚部及び高等部の実学級数の合計を712学級とすべきところ、誤って711学級として義務制率を過大に算定していた。
したがって、適正な無給休職者の実数及び義務制率により適正な算定基礎定数を算定すると、小中学校の教職員の算定基礎定数は15,728人、特別支援学校の小中学部の教職員の算定基礎定数は1,104人となり、これらに基づき適正な負担金の額を算定すると34,986,463,669円となることから、9,991,352円が過大に交付されていた。
以上を部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等
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補助事業者
(事業主体) |
年度
|
算定総額 |
左に対する負担金交付額
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不当と認める算定総額
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不当と認める負担金交付額
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摘要
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(53) |
文部科学本省
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仙台市
|
2、3 | 64,640,944 | 21,546,981 | 11,622 | 3,874 |
算定基礎定数の算定が過大となっていたもの(ア(ウ)の事態)
|
(54) | 同 |
静岡市
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2 | 19,741,687 | 6,580,562 | 4,850 | 1,616 |
同(イの事態)
|
(55) |
宮城県
|
宮城県
|
2、3 | 111,345,948 | 37,115,316 | 13,974 | 4,658 |
同(イ及びウの事態)
|
(56) |
埼玉県
|
埼玉県
|
元 | 182,651,252 | 60,883,750 | 6,067 | 2,022 |
同(ア(イ)の事態)
|
(57) |
山梨県
|
山梨県
|
3 | 34,321,643 | 11,440,367 | 18,894 | 6,298 |
同(ア(ア)の事態)
|
(58) |
静岡県
|
静岡県
|
元 | 81,792,073 | 27,264,024 | 12,631 | 4,210 |
同(ウの事態)
|
(59) |
広島県
|
広島県
|
3 | 65,683,775 | 21,894,591 | 5,193 | 1,731 |
同(イの事態)
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(60) |
福岡県
|
福岡県
|
30 | 104,989,365 | 34,996,455 | 29,974 | 9,991 |
同(イ及びウの事態)
|
(53)―(60)の計 | 665,166,690 | 221,722,050 | 103,208 | 34,402 |