7件 不当と認める国庫補助金 68,884,000円
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関設備整備事業に係る分)は、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付について」(令和2年厚生労働省発医政0430第1号・厚生労働省発健0430第5号。以下「交付要綱」という。)等により、国の依頼に基づき都道府県が確保した新型コロナウイルス感染症患者等の入院医療を提供する医療機関において、入院患者に対する医療を提供する中で病床及び医療資器材の不足が生じ、迅速かつ適切な医療の提供ができなくならないようにするために、必要な病床及び医療資器材等についてあらかじめ整備し、医療体制の強化を図ることを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。
交付要綱等によれば、この交付金の交付の対象は、都道府県が行う事業及び民間団体等で都道府県が適切と認める者が行う事業に対して都道府県が補助する事業に要する経費とされている。このうち、都道府県が補助する事業に係る交付金の交付額は、次のとおり算定することとされている。
① 所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。
② ①により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に交付金の交付率(10分の10)を乗じて得た額と、都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額を交付額とする。
また、本件事業の整備対象設備等は、新設・増設に伴う初度設備を購入するために必要な需要品(消耗品)及び備品購入費、人工呼吸器及び附帯する備品、個人防護具(マスク等)、簡易陰圧装置(注1)、簡易ベッド、体外式膜型人工肺及び附帯する備品並びに簡易病室及び附帯する備品とされており、整備対象設備等の種類ごとに、補助上限額(人工呼吸器及び附帯する備品については1台当たり5,000,000円など)が定められている。
本院が、11都府県(注2)及び106事業主体において会計実地検査を行ったところ、福岡県の1事業主体において、整備対象設備の代金を支払っていないにもかかわらず、これを支払ったものとして対象経費の実支出額に計上し、事業実績報告書を提出して事業が完了したとしていた。また、3府県の5事業主体において、交付の対象とならない設備に係る費用を対象経費の実支出額に含めるなどしていた。さらに、神奈川県の1事業主体において、整備した簡易陰圧装置が装置の目的である病室を陰圧化することができない状況となっていた。これらのため、交付金計48,919,000円が過大に交付されており、また、交付金相当額19,965,000円が補助の目的を達しておらず、計68,884,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、1事業主体において事業の適正な実施に対する認識が著しく欠けていたこと、福岡県において事業主体に対する指導及び事業実績報告書等の審査が十分でなかったことによると認められる。また、6事業主体において制度の理解が十分でなかったこと、3府県において事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
神奈川県小田原市は、令和2年度に、簡易陰圧装置38台等を計98,063,999円で小田原市立病院に整備した上で、神奈川県から交付金を原資とする同県の補助金98,063,000円(交付金交付額同額)の交付を受けていた。
しかし、上記簡易陰圧装置38台のうち15台(購入費用計19,965,000円)は、ダクト工事を実施することで室内の空気を室外に排気して室内を陰圧化することができる機種であったにもかかわらず、同市がダクト工事を実施していなかったため、病室を陰圧化することができない状況となっていて、これに係る交付金相当額19,965,000円は補助の目的を達していなかった。
以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。
部局等
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補助事業者
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間接補助事業者
(事業主体) |
年度
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交付金交付額
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不当と認める
交付金交付額 |
摘要
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千円 | 千円 | ||||||
(88) |
神奈川県
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神奈川県
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横浜市(横浜市立市民病院)
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2、4 | 174,314 | 1,812 |
交付の対象とならない設備等に係る費用を交付金の対象経費の実支出額に含めていたもの
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(89) | 同 | 同 |
小田原市(小田原市立病院)
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2 | 98,063 | 19,965 |
整備した簡易陰圧装置が補助の目的を達していなかったもの
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(90) |
大阪府
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大阪府
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地方独立行政法人大阪府立病院機構(大阪急性期・総合医療センター)
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2 | 228,687 | 6,520 |
1台当たりの補助上限額を超えて交付金が交付されていたもの
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(91) | 同 | 同 |
八尾市(八尾市立病院)
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2 | 27,781 | 1,323 | 同 |
(92) |
福岡県
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福岡県
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独立行政法人国立病院機構福岡病院
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3 | 19,547 | 1,276 |
交付の対象とならない設備に係る費用を交付金の対象経費の実支出額に含めていたもの
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(93) | 同 | 同 |
医療法人医心会(飯塚みつき病院)(注3)
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4 | 32,020 | 30,674 |
代金を支払っていないのに、支払ったものとして対象経費の実支出額に計上し、事業実績報告書を提出して事業が完了したとしていたもの
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(94) | 同 | 同 |
地方独立行政法人筑後市立病院
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2 | 21,494 | 7,314 |
交付の対象とならない設備に係る費用を交付金の対象経費の実支出額に含めていたもの
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(88)―(94)の計 | 601,906 | 68,884 |
(医療法人医心会飯塚みつき病院の事態については、前掲「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症対策事業及び新型コロナウイルス感染症重点医療機関体制整備事業に係る分)」参照)