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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生労働省|
  • 令和4年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(2) 労災診療費の請求の電子化促進に係る導入支援金の支払について


(令和4年度決算検査報告参照)

1 本院が要求した適宜の処置及び求めた是正改善の処置

厚生労働省は、都道府県労働局長の指定する医療機関又は労災病院、指定薬局等(以下、これらを合わせて「指定医療機関等」という。)が労働者災害補償保険診療費請求書及び診療費請求内訳書等(以下「労災レセプト」という。)のデータをオンライン等で送付して診察等に要した費用を請求すること(以下「電子レセプト請求」という。)を普及促進するために、電子レセプト請求用のソフトウェア(以下「労災ソフトウェア」という。)の導入に係る経費の一部について、導入支援金として指定医療機関等に支払っている。同省は、平成28年度から令和4年度までの毎年度、労災レセプトのオンライン化に向けた普及促進事業に係る委託契約を締結し、導入支援金に係る指定医療機関等からの申請の受付、その内容の確認、支払の業務等を委託業者に行わせている。そして、労災ソフトウェアの導入に当たっては、リース等による方法も認められており、その場合、導入支援金の申請時までにリース料等として支払われた金額を導入支援金の対象経費とすることとなっている。また、労災ソフトウェアと健康保険等に係る診療報酬明細書等(レセプト)を作成するシステム(以下「健康保険システム」という。)とを一体的に導入する場合には、労災ソフトウェアの導入経費と当該導入に伴って指定医療機関等のコンピュータ等の諸設定に要した費用とを合算した実支出額(以下「労災導入経費等」という。)のみを導入支援金の対象経費とすることとなっている。しかし、導入支援金について、契約の相手方等の事実が異なる申請内容によって導入支援金が支払われている事態、及び、労災ソフトウェアと健康保険システムとを一体的に導入する契約が締結されていたのに申請書には労災ソフトウェアのみを導入する契約書等が添付されていたことから労災導入経費等が適正なものか客観的に確認できない事態が見受けられた。また、このような事態が生じているのに、同省が導入支援金支払要領(以下「支払要領」という。)等で定めた委託業者による審査方法が適切なものとなっていないため、申請どおりに導入支援金が支払われている事態が見受けられた。

したがって、厚生労働大臣に対して5年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。

ア 事実と異なる申請を行っていた70指定医療機関等について、事実関係を確認するなどした上で、不適正と認められる導入支援金を返還させる措置を講ずること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求したもの)

イ 委託業者が導入支援金の審査を十分に行えるよう、導入支援金の申請時に、労災ソフトウェアの導入に係る領収書等だけではなく、支払額を裏付ける書面を添付させるなど、支払要領や審査方法を見直すこと(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)

ウ 導入支援金の審査の一層の充実が図られるよう、導入支援金の申請に当たり、リース等の場合においては、申請時までにリース料等として支払われた金額やその根拠となったリース契約等の金額、また、労災ソフトウェアと健康保険システムとを一体的に導入した場合においては、システム全体に要した経費の内訳としての労災導入経費等を明確にするために、その金額を申請書に明記させるように導入支援金の申請様式を改めるとともに、これらを確認することができる契約書等を添付させるように支払要領を見直すこと(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)

2 当局が講じた処置

本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 事実と異なる申請を行っていた70指定医療機関等について、事実関係を確認するなどした結果、廃業していて返還させる措置を講ずることが困難な1指定医療機関等を除いた69指定医療機関等に支払われた導入支援金の全額を不適正と認め、6年7月までに、同額を返還させる措置を講じた。

イ 6年5月に支払要領を改正して、導入支援金の申請時に労災ソフトウェアの導入に係る支払額を裏付ける書面を添付させることとし、委託業者の導入支援金の審査に当たっては、当該書面も踏まえて支払の事実を確認させるようにした。

ウ イの改正により、導入支援金の申請に当たり、リース等の場合においては、申請時までにリース料等として支払われた金額やその根拠となったリース契約等の金額、また、労災ソフトウェアと健康保険システムとを一体的に導入した場合においては、システム全体に要した経費の内訳としての労災導入経費等を明確にするために、その金額を申請書に明記させるように導入支援金の申請様式を改めるとともに、これらを確認することができる契約書等を添付させるようにした。