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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 令和4年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(2) 森林環境保全整備事業で整備された防護柵の維持管理について


(令和4年度決算検査報告参照)

1 本院が要求した改善の処置

林野庁は、森林環境保全整備事業実施要領等に基づき、人工造林等を行う森林環境保全整備事業(以下「整備事業」という。)を実施する都道府県に対して、森林環境保全整備事業費補助金を交付している。当該補助金の交付を受けた都道府県は、整備事業を自ら実施するほか、市町村、森林組合等が事業主体となって実施する整備事業に対して、補助金を交付するなどしている。同要領等によれば、整備事業において、野生鳥獣による森林被害の防止等を図るために、防護柵等の鳥獣害防止施設等の整備を、人工造林等の施業と一体的に行うことができることとされている。そして、整備事業により整備された鳥獣害防止施設等の維持管理を行う者は、原則として事業主体とされている。また、都道府県知事は、その維持管理の実施状況について監督することとされており、特に、当該施設が被害を受けたことが想定される場合は、事業主体に対して、速やかに現地を確認し、必要な補修等を行うよう指導することとされている(以下、監督と指導とを合わせて「指導監督」という。)。そして、令和4年度版の森林・林業白書によれば、3年度の野生鳥獣による森林被害面積のうちシカによる被害が約7割を占めているとされており、林野庁は、防護柵の点検の実施については、シカの生息密度等といった設置箇所の諸条件(以下「現地の諸条件」という。)を勘案することが重要であるとしている。しかし、防護柵に破損が生ずるなどして防護柵で囲まれている造林地にシカが入り込める状態になるなどして森林被害が生じており、点検の実施に当たって現地の諸条件が勘案されておらず事業主体による防護柵の維持管理が十分でない事態、及び道県が防護柵の点検結果等の維持管理の実施状況を事業主体に記録させることや必要に応じて報告を求めることなどをしておらず事業主体による防護柵の維持管理の実施状況を把握して指導監督を十分に行うことのできる体制を整備していない事態が見受けられた。

したがって、林野庁長官に対して5年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。

ア 都道府県及び事業主体に対して、現地の諸条件を勘案した上で防護柵の維持管理を行うことの重要性を周知するとともに、都道府県を通じるなどして事業主体に現地の諸条件に応じた防護柵の維持管理の方法を検討するよう助言すること

イ 都道府県に対して、防護柵の維持管理の実施状況を事業主体に記録させることや、必要に応じて報告を求めるなどして、事業主体による防護柵の維持管理の実施状況を把握して指導監督を十分に行うことのできる体制を整備するよう助言すること

2 当局が講じた処置

本院は、林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、林野庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 毎年度開催する都道府県担当課長等会議等の会議を5年10月、6年1月及び同年5月に開催するなどして、都道府県及び都道府県を通じて事業主体に対して、現地の諸条件を勘案した上で防護柵の維持管理を行うことの重要性を周知するとともに、維持管理に当たり活用すべき具体的な資料を示して、都道府県を通じて事業主体に対して、現地の諸条件に応じた防護柵の維持管理の方法を検討するよう助言した。

イ アの会議において、都道府県に対して、防護柵の維持管理の実施状況を事業主体に記録させることや、必要に応じて報告を求めるなどして、事業主体による防護柵の維持管理の実施状況を把握して指導監督を十分に行うことのできる体制を整備するよう助言した。