海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊、統合幕僚監部等は、我が国とアメリカ合衆国、英国、オーストラリア連邦、フランス共和国、カナダ及びインド共和国の各国とがそれぞれ締結している物品役務相互提供協定(Acquisition and Cross Servicing Agreement。以下「ACSA」という。)に基づき、各国の軍隊への物品又は役務の提供の取引及び各国の軍隊からの物品又は役務の受領の取引(以下、この提供の取引を「ACSAに基づく提供」という。)を行っている。そして、ACSAに関する基本的な条件、手続及びその細目を定めた手続取極によれば、物品又は役務に係る決済は、物品又は役務の引渡しの日から12か月以内に完了することとされている。しかし、海上自衛隊において、ACSAに基づく提供について、決済の手続を進めることができない状況となっていたこと、及び債権発生通知書が歳入徴収官に送付されていなかったことにより、令和5年6月現在で、物品又は役務の引渡しの日から12か月以上経過しているのに、決済が完了していないものが110件(取引金額計1億3507万余円)生じている事態が見受けられた。
したがって、防衛省海上幕僚長に対して5年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。
ア ACSAに基づく提供に係る決済が決済期限内に完了していない110件について、相殺又は指定の口座に入金させることにより、速やかに決済を完了させること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求したもの)
イ 決済期限内に決済が行えない取引が長期間にわたり継続的に生じている状況を解消するために必要な取組の方針等について検討を行い、必要な措置を講ずるとともに、ACSAに基づく提供を実施した分任物品管理官及び役務提供部隊等の長に対して、歳入徴収官に債権発生通知書を送付することについて周知徹底を行うこと(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
本院は、海上幕僚監部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、海上幕僚監部は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア ACSAに基づく提供に係る決済が決済期限内に完了していなかった110件のうち99件について、6年7月までに決済を完了させた。また、残り11件のアメリカ合衆国へ提供した物品又は役務に係るものについて、アメリカ合衆国から支払の承諾を得て、同国において支払の手続中であることを確認した。
イ 決済期限内に決済が行えない取引が長期間にわたり継続的に生じている状況を解消するために必要な取組の方針等について検討を行った結果、5年12月までに、6か国全てのACSAに基づく取引を適正に実施する責務を有する実施権者又はACSAの担当者を特定し、これらの者を通じて納入告知書の送付先について確認が可能となるよう調整した。
また、6年6月に、各部隊等の長に通知を発出し、各部隊等内に当該通知の写しを送付させることにより、分任物品管理官及び役務提供部隊等の長に対して、ACSAに基づく提供に係る決済の方法として通貨による償還を受ける場合には、歳入徴収官に債権発生通知書を送付することについて周知徹底した。