新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(以下「交付金」という。)は、令和2年4月に閣議決定された緊急経済対策の一環として、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに必要な事業を実施することを目的として創設されたものである。内閣府が定めた「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金制度要綱」等によれば、国は、地方公共団体が作成した新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金実施計画(以下「実施計画」という。)に基づく交付対象事業に要する費用に対して交付金を交付することとされている。そして、交付行政庁となっている総務省が交付金の交付に関して定めた「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金交付要綱(総務省)」(以下「交付要綱」という。)によれば、同省は、実施計画に記載された全ての交付対象事業の完了後に地方公共団体が提出した実績報告書等の審査を行うなどして交付すべき額を確定することなどとされている。また、内閣府が作成したQ&Aによれば、交付対象事業については、新型コロナウイルス感染症への対応として効果的な対策であり、地域の実情に合わせて必要な事業であれば、原則として使途に制限はないとされている。地方公共団体が交付金を活用して実施している事業の中には、マスク、パソコン等の物品を購入して、これを住民等に配布し、貸与し又は販売することを内容とするもの(以下、このような内容の事業を「物品配布等事業」と総称する。)や、小学校、中学校等における情報通信技術の環境整備、地方公共団体におけるリモート等による業務の実施のために、パソコン等の端末の購入や借入れを行うことを内容とするもの(以下、このような内容の事業を「端末購入等事業」と総称する。)など様々なものがある。しかし、物品配布等事業において購入数量の半分以上が一度も使用されていない事態及び端末購入等事業において実施計画に記載された事業実施期間を超える期間(以下「超過期間」という。)に係る端末の保守やソフトウェアライセンスに係る費用(以下「保守費用等」という。)が交付対象経費に含まれている事態が見受けられた。
したがって、内閣総理大臣及び総務大臣に対して令和5年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。
ア 内閣府において、地方公共団体に対して、物品配布等事業で購入した物品の使用状況を確認させた上で、使用されていない物品については、実施計画に記載した内容の範囲内で物品の配布、貸与又は販売の対象者(以下「物品の配布等対象者」という。)の要件を見直すこと、改めて配布等の希望を確認することなどにより、実施計画に記載された内容に沿って活用を促進する方策を検討するよう周知すること。また、これによっても活用することが困難な場合は、財産処分等について規定した交付要綱等に基づき、その取扱いを検討するよう周知すること
イ 内閣府において、物品配布等事業を実施する場合には、事業の目的を踏まえた上で必要に応じて物品の配布等対象者に対して当該物品を使用するかどうかの意向確認を実施するなどして、所要量の妥当性の確保に努めた上で購入数量を決定するよう地方公共団体に対して周知すること
ウ 内閣府において、端末購入等事業における超過期間に係る保守費用等について交付対象経費となる範囲の取扱いを明確に定めるなどした上で、実施計画上で交付の対象となる範囲を明らかにすることなどを地方公共団体に対して周知すること
エ 総務省において、交付金の額の確定時の審査等に当たり、超過期間に係る保守費用等について、内閣府が定めた交付対象経費となる範囲の取扱いに沿ったものとなっているかなどの確認を行うこととすること
本院は、内閣府本府及び総務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、内閣府及び総務省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 内閣府は、5年11月に地方公共団体に対して事務連絡を発し、地方公共団体において、これまで実施された物品配布等事業について、購入した物品の使用状況を確認するとともに、使用されていない物品については、実施計画に記載した内容の範囲内で物品の配布等対象者の要件を見直し、改めて配布等の希望を確認することなどにより、実施計画に記載された内容に沿って活用を促進する方策を検討するよう周知した。また、これによっても活用することが困難な場合は、交付要綱等の財産処分の規定に基づき、適宜総務省と相談の上、その取扱いについて検討するよう周知した。
イ 内閣府は、アの事務連絡により、物品配布等事業を実施する場合、事業の目的を踏まえた上で必要に応じて物品の配布等対象者に対して当該物品を使用するかどうかの意向確認を実施するなどして、所要量の妥当性の確保に努めた上で購入数量を決定するよう地方公共団体に対して周知した。
ウ 内閣府は、アの事務連絡により、端末購入等事業について、交付金は実施計画に記載された事業の単年度に限って支援するものであり、超過期間に係る保守費用等は、原則として地方公共団体自身で負担することを明確に定めるとともに、実施計画上で交付の対象となる範囲を明らかにすることなどを地方公共団体に対して周知した。
エ 総務省は、5年11月及び6年3月に地方公共団体に対して事務連絡を発し、実績報告書を提出する際には、超過期間に係る保守費用等について確認した結果を併せて提出するよう周知し、交付金の額の確定時の審査等に当たり、これを用いて内閣府が定めた交付対象経費となる範囲の取扱いに沿ったものとなっているかなどを確認することとした。