マイナンバー制度は、国民の利便性の向上と行政の効率化を併せて進め、より公平・公正な社会を実現するためのデジタル社会における社会基盤であり、社会保障制度、税制、災害対策の各分野で効率的に情報を管理し、複数の機関が保有する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために、個人番号(注1)(以下「マイナンバー」という。)が活用されている。
また、マイナンバー制度に関する必要な事項は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号。以下「マイナンバー法」という。)等に定められている。
マイナンバー法において、基本理念として、マイナンバーの利用は、次の①から④までに掲げる事項を旨として行わなければならないこととなっている。
また、マイナンバーの利用に関する施策の推進は、情報提供NWSが上記の②及び③に掲げる事項を実現するために必要であることに鑑み、個人情報の保護に十分配慮しつつ、社会保障制度、税制、災害対策その他の行政分野において、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が迅速に特定個人情報(注2)の授受を行うための手段としての情報提供NWSの利用の促進を図るなどして行わなければならないこととなっている。
そして、国の責務として、上記の基本理念にのっとり、国は、マイナンバーその他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、マイナンバーの利用を促進するための施策を実施すること、及び教育活動、広報活動その他の活動を通じて、マイナンバーの利用に関する国民の理解を深めるよう努めることとなっている。また、地方公共団体の責務として、上記の基本理念にのっとり、地方公共団体は、マイナンバーその他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、マイナンバーの利用に関して、国との連携を図りながら、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を実施することとなっている。
令和2年12月に「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が閣議決定され、デジタル社会の将来像等に関する政府の方針が示された。この基本方針では、デジタル社会の形成に向けた取組事項として、デジタル社会の形成に当たっては、行政の簡素化、効率化及び透明性の向上を図ること、また、社会全体でのデジタル化を円滑に進めていくことが求められるため、行政のデジタル化が緊要であるとして、行政のデジタル化に重要な役割を果たすマイナンバー関連制度について、国民にとっての使い勝手の向上及び同制度の活用を図ることなどが示されている。
そして、デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)等に基づき、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月閣議決定)が作成された。この計画によれば、デジタル化による成長戦略として、「官民でデジタルファーストの原則を業務の進め方も含めて徹底することにより、社会全体の生産性の向上を図るとともに、デジタル化により蓄積されたデータを活用した政策決定や、官民のデータの流通・活用を通じて社会の効率性や創造性を高め、結果として、国民一人ひとりのニーズやライフスタイルに合ったサービスが提供される豊かな社会、継続的に力強く成長する社会の実現を目指す」とされている。また、デジタル庁は、デジタル社会の実現に関する司令塔として、マイナンバー制度全般の企画立案を一元的に行うことなどの施策について主導的な役割を担い、関係者によるデジタル化の取組を牽(けん)引していくこととされている。そして、同計画において、目指すべきデジタル社会の実現に向けて、政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策として、「マイナンバー制度における情報連携の拡大」について、同庁を中心に、行政手続等の横串での精査を行い、関係府省庁において、情報連携等を前提とした個々の制度等の業務の見直しなどを実施すること、「各種免許・国家資格等のデジタル化の推進」について、資格取得・更新等の手続時の添付書類の省略を目指すことなどが掲げられている。
また、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和5年6月閣議決定)においても、「マイナンバーの利用及び情報連携の推進」「特定公的給付制度の活用及び公金受取口座の登録・利用の推進」等の施策が掲げられている。
情報連携については、3年9月の同庁設置前は、内閣官房番号制度推進室において、情報連携に向けた制度面の総合調整が行われ、また、総務省大臣官房個人番号企画室において、情報提供NWSの設置及び管理や地方公共団体における情報連携についてシステム面の進捗管理等が行われていた。そして、同庁の設置に伴い、デジタル庁設置法(令和3年法律第36号)に基づき、同庁において、マイナンバーに関する総合的かつ基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関する事務、マイナンバー等の利用並びに情報提供NWSの設置及び管理に関する事務等が行われている。
新型コロナウイルス感染症対策を実施する過程において、社会における抜本的なデジタル化の必要性が顕在化したことを受けて、デジタル社会の基盤であるマイナンバー及びマイナンバーカード(注3)についての国民の利便性を向上させるなどの観点から、「マイナンバーの利用範囲の拡大」「マイナンバーの利用及び情報連携に係る規定の見直し」などのために、5年3月にマイナンバー法等の一部を改正する法律案が国会に提出された。同法律案は同年6月に可決され、成立し、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和5年法律第48号。以下「改正法」という。)が同月に公布された。
これにより、具体的には、「マイナンバーの利用範囲の拡大」については、社会保障制度、税制及び災害対策以外の行政事務においてもマイナンバーの利用の推進を図ることとして、理容師・美容師、小型船舶操縦士、建築士等の国家資格等、自動車登録、在留資格に係る許可等に関する事務において、マイナンバーの利用を可能とすることとなった。また、「マイナンバーの利用及び情報連携に係る規定の見直し」については、法律でマイナンバーの利用が認められている事務について、主務省令に規定することにより情報連携を可能とすることとなり、新たに必要となった機関間の情報連携がより速やかに開始されることとなった。なお、上記の事務に関して規定しているマイナンバー法別表第二(後述(2)ア参照)は、改正法の施行により削除されることとなっている(注4)。
情報連携については、現行のマイナンバー法別表第二において、①情報連携の対象となる社会保障、税及び災害対策の各分野における各種の事務(以下「情報連携事務」という。)、②情報連携事務を処理する国の行政機関、地方公共団体等の情報照会者、③情報連携事務を処理するために必要な特定個人情報及び④当該特定個人情報を保有する国の行政機関、地方公共団体等の情報提供者が定められている。
マイナンバー法においては、何人も、情報照会者が情報提供者に対して情報連携事務を処理するために必要な特定個人情報の提供を求め、当該情報提供者が情報提供NWSを使用して当該特定個人情報を提供する場合等を除き、特定個人情報の提供をしてはならないこととなっている(以下、情報照会者が、情報提供者に対して情報提供NWSを使用して情報連携事務を処理するために必要な特定個人情報の提供を求めることを「マイナンバー情報照会」という。)。
そして、情報照会者がマイナンバー情報照会を実施したときは、情報提供NWSから情報提供者に対してその旨が通知され、情報提供者は、当該通知を受けたときは、情報照会者に対して、当該特定個人情報を提供しなければならないこととなっている。また、情報照会者がマイナンバー情報照会を実施することにより当該特定個人情報の提供があった場合において、他の法令の規定により当該特定個人情報と同一の内容の情報を含む書面の提出が義務付けられているときは、当該書面の提出があったとみなすこととなっている。
国の行政機関や地方公共団体等の間でマイナンバー情報照会が実施されることにより、申請者にとっては、申請の際に従来の行政手続で必要とされていた課税証明書や住民票の写しなどの添付書類の提出を省略できて利便性の向上が図られるとともに、情報照会者にとっては、様々な情報の照合、転記、入力等に要していた時間や労力が削減されて行政運営の効率化が図られることになる(図表0-1参照)。
図表0-1 マイナンバー情報照会による国民の利便性の向上及び行政運営の効率化
情報連携事務及び特定個人情報については、マイナンバー法別表第二のほか、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律別表第二の主務省令で定める事務及び情報を定める命令」(平成26年内閣府・総務省令第7号。以下「別表第二主務省令」という。)において具体的な内容が定められている。そして、情報連携を行うことができる事務手続については管理番号(マイナンバーを利用することができる機関及び事務を定めたマイナンバー法別表第一の項番を基に、事務手続ごとにデジタル庁が付した番号をいう。以下同じ。)が付されており、当該事務手続で情報連携が行われる特定個人情報については、マイナンバー法別表第二及び別表第二主務省令の規定に基づき、情報提供NWSにおいてあらかじめ設定されている。また、個々の情報連携事務については、それぞれの事務手続の所管府省庁が指定されている。
一例として、児童手当法(昭和46年法律第73号)による児童手当等の支給に関する情報連携事務、特定個人情報及び事務手続の対応関係を示すと、図表0-2のとおりである。
図表0-2 児童手当等の支給に関する情報連携事務、特定個人情報及び事務手続の対応関係
情報照会者は、社会保障、税及び災害対策の各分野における情報連携事務の処理に当たり、事務手続を指定してマイナンバー情報照会を実施することにより、情報提供NWSを通じて情報提供者から当該事務手続に係る特定個人情報の提供を受けることができることとなっている。
マイナンバー情報照会は、平成29年7月に試行運用が開始され、同年11月に本格運用が開始された。そして、「情報連携の本格運用開始に関するQ&A」(平成29年11月内閣官房番号制度推進室及び総務省大臣官房個人番号企画室事務連絡)によれば、情報連携の対象となっている事務手続に関して、情報連携を行わず、各行政機関の裁量で申請者に添付書類の提出を求めることについては、国及び地方公共団体は、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化というマイナンバー法の基本理念に鑑みれば、①全て情報連携を活用して事務処理を行うことが基本であり、個別の行政機関の判断で、特定の事務手続について情報連携によって省略可能な添付書類の提出を求め続けることは不適切であって、②システムの準備が整わないなど、各行政機関の個別の事情により情報連携を行うことができない事務手続がある場合には、速やかに問題を解決するとともに、国民・住民に必要な説明を行うこととされている。
情報照会者がマイナンバー情報照会を実施することができる事務手続は、上記本格運用の開始時において1,872手続であったのに対し、令和4年度には2,944手続に増加している。そして、国の行政機関や地方公共団体等が実施したマイナンバー情報照会の照会件数は、平成29年度に164万余件であったのに対し、令和4年度には1億9754万余件に増加している。
情報照会者については、4年4月時点において、国の機関では、文部科学省及び厚生労働省、地方公共団体では、都道府県、都道府県教育委員会、市区町村、市区町村教育委員会、一部事務組合及び広域連合、その他機関では、日本年金機構等となっていて、情報照会者計5,375機関のうちの3,610機関(67.1%)は地方公共団体となっている。
デジタル庁は、マイナンバー情報照会を実施することができる事務手続について、事務手続名やその概要、各事務手続に係る情報照会者や情報提供者、特定個人情報等をまとめた資料(以下「事務手続一覧」という。)を作成して公表しており、地方公共団体を情報照会者とする事務手続は、図表0-3のとおり、5年3月時点において1,429手続となっている。
図表0-3 事務手続一覧に基づく地方公共団体を情報照会者とする事務手続数の推移(平成29年11月~令和5年3月)
デジタル庁は、情報連携を支える基盤となる情報提供NWSの設置及び管理に関する事務を行っている。そして、国の行政機関や地方公共団体等は、情報連携を行うために、図表0-4のとおり、それぞれが運用等を行っている社会保障、税等に係る情報システム(以下、地方公共団体におけるマイナンバー情報照会等の実施のための情報システムを「個別事務システム」という。)等を情報提供NWSに接続している(以下、情報提供NWS及び情報提供NWSと接続した個別事務システム等を合わせて「マイナンバー制度関連システム」という。)。
情報提供NWSと個別事務システムとの間には中間サーバー(注5)が設置され、個別事務システムに保存されている特定個人情報の副本データをこの中間サーバーに保存している。このように、中間サーバーは情報連携を仲介する役割を担うことになっている。また、情報連携においては、個人情報の保護のためにマイナンバーを用いないこととなっており、中間サーバーと情報提供NWSとの間では、マイナンバーに代えて住民票コードを基に生成された個人を特定する符号を用いることとなっている。
地方公共団体は、団体内統合宛名システム(注6)等において、地方公共団体内で個人を一意に特定できる番号として団体内統合宛名番号等(以下「宛名番号」という。)を付番している。そして、宛名番号とマイナンバーを紐(ひも)付けた上で、中間サーバーにおいて宛名番号と上記の符号を紐付けることにより、符号と個別事務システムが保有する情報を紐付けている。
図表0-4 マイナンバー制度関連システム等の概要
また、地方公共団体は、団体内統合宛名システム等を使用して、個別事務システムのデータベースに保存されている特定個人情報の副本データを中間サーバーに登録するとともに、マイナンバー情報照会を実施し、符号を用いて情報提供者の中間サーバーに登録されている副本データを取得している。
情報連携を支える基盤となる情報提供NWSについては、3年9月のデジタル庁設置前は総務省大臣官房個人番号企画室において、同庁設置後は同庁において、設置及び管理に関する事務が行われている。情報提供NWSの整備及び運用のために平成26年度から令和4年度までの9年間に要した経費は、図表0-5のとおり、計749億余円となっている。
図表0-5 情報提供NWSの整備及び運用に要した経費(平成26年度~令和4年度)
経費区分 | 平成
26年度 |
27年度 | 28年度 | 29年度 | 30年度 | 令和
元年度 |
2年度 | 3年度 | 4年度 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
整備経費注(1) | 51 | 43 | 41 | 4 | 0 | 1 | 44 | 45 | 4 | 237 |
運用経費注(2) | - | 20 | 50 | 76 | 70 | 65 | 80 | 97 | 52 | 512 |
計 | 51 | 63 | 92 | 81 | 71 | 67 | 124 | 142 | 56 | 749 |
平成26年度以降、地方公共団体におけるマイナンバー制度関連システムの整備等に係る各種の補助事業が実施されており、その主なものは次のとおりである。
総務省及び厚生労働省は、マイナンバー制度の導入に合わせて、情報連携に必要となる地方公共団体における情報システムの整備を行うために、26年度から29年度までの間に、マイナンバー制度の導入に必要な個別事務システム、団体内統合宛名システム、中間サーバー等の各種の情報システムの整備に要する経費を対象として、社会保障・税番号制度システム整備費補助金(以下「整備費補助金」という。)を地方公共団体に交付している。
また、アのとおり、各事務手続で情報連携が行われる特定個人情報は情報提供NWSにおいてあらかじめ設定されている。そして、事務手続の所管府省庁は、事務手続ごとに設定された特定個人情報のデータ項目等を規定した文書(以下「データ標準レイアウト」という。)を作成し、デジタル庁がそれらを取りまとめて公表している。データ標準レイアウトは、法令の改正や情報連携を行う機関からの運用改善要望等により、マイナンバー制度開始後、定期的に改版等が行われている。マイナンバー情報照会を実施することができる事務手続は、29年11月の本格運用開始以降追加されており、それに合わせて情報連携の対象となる特定個人情報が追加して設定されている。
内閣府及び厚生労働省は、その所管する事務手続に係るデータ標準レイアウトの改版を行う場合や、新たに情報連携の対象となる特定個人情報を追加して設定する場合等に、これらの事務手続や特定個人情報に関係する個別事務システムの改修等に係る経費を対象として、地方公共団体に各種の補助金を交付している。
さらに、総務省は、情報連携の運用に当たって必要となる地方公共団体の中間サーバーの安定稼働等を目的として、地方公共団体の中間サーバーを更改するために、これに要する経費を対象として、令和元年度から3年度までの間に、整備費補助金を地方公共団体に交付している。
これらの補助金の平成26年度から令和4年度までの交付額については、図表0-6のとおり、内閣府所管分7億余円、総務省所管分888億余円、厚生労働省所管分504億余円となっていて、計1400億余円が交付されている。
図表0-6 マイナンバー制度関連システムの整備等に係る主な補助金の交付額(平成26年度~令和4年度)
No. | 所管府省名 | 国庫補助金等名 | 平成
26年度 |
27年度 | 28年度 | 29年度 | 30年度 | 令和
元年度 |
2年度 | 3年度 | 4年度 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 内閣府 | 子ども・子育て支援事業費補助金 | - | - | - | - | - | 0 | 7 | - | - | 7 |
2 | 総務省 | 整備費補助金 (注) | 250 | 452 | 45 | 9 | - | 46 | 62 | 20 | - | 888 |
3 | 厚生労働省 | 整備費補助金 (注) | 21 | 227 | 95 | 30 | - | 1 | 1 | - | - | 378 |
4 | 厚生労働省 | 母子保健衛生費国庫補助金 | - | - | - | - | - | 10 | 0 | - | - | 11 |
5 | 厚生労働省 | 母子家庭等対策総合支援事業費国庫補助金 | - | - | - | - | - | - | 1 | 0 | 0 | 3 |
6 | 厚生労働省 | 障害者総合支援事業費補助金 | - | - | - | - | - | - | 15 | 0 | 37 | 54 |
7 | 厚生労働省 | 介護保険事業費補助金 | - | - | - | - | 0 | 12 | 13 | 1 | - | 28 |
8 | 厚生労働省 | 感染症予防事業費等国庫負担(補助)金 (予防接種法(昭和23年法律第68号)に基づく定期接種(ロタウイルスワクチン)に係るマイナンバー情報連携体制整備事業) |
- | - | - | - | - | - | - | 1 | - | 1 |
9 | 厚生労働省 | 感染症予防事業費等国庫負担(補助)金 (新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)に基づく住民接種に係る自治体予防接種台帳システム改修事業) |
- | - | - | - | - | - | - | 5 | - | 5 |
10 | 厚生労働省 | 感染症予防事業費等国庫負担(補助)金 (健(検)診結果の利活用に向けた情報標準化整備事業(健(検)診情報連携システム整備事業)) |
- | - | - | - | - | - | - | 22 | - | 22 |
厚生労働省所管8補助金計 | 21 | 227 | 95 | 30 | 0 | 25 | 32 | 32 | 38 | 504 | ||
3府省10補助金合計 | 272 | 680 | 141 | 39 | 0 | 71 | 103 | 52 | 38 | 1400 |
(注) 整備費補助金のうち、総務省の令和元年度から3年度までの交付分については、地方公共団体の中間サーバーの更改に要する経費を対象としたものであり、厚生労働省の元、2両年度の交付分については、所管する事務手続に係るデータ標準レイアウトの改版に係る経費を対象としたものである。
総務省大臣官房個人番号企画室及び内閣官房番号制度推進室は、2年12月に、都道府県に対して事務連絡「令和2年6月改版後のデータ標準レイアウトに基づく情報連携本格運用開始後の状況等について(照会)」を発出し、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施状況等を調査している。
この調査は、同月時点のマイナンバー情報照会による添付書類の省略状況等について、47都道府県又は1,741市区町村を情報照会者とする23手続(うち都道府県に係る調査の対象手続は14手続、市区町村に係る調査の対象手続は17手続)を対象として実施されたものである。
調査の結果、図表0-7のとおり、都道府県に係る事務手続の64.1%及び市区町村に係る事務手続の86.3%についてはマイナンバー情報照会の実施により添付書類の大部分を省略できている一方、都道府県に係る事務手続の20.0%及び市区町村に係る事務手続の7.0%については省略の見込みがないなどとされている。
図表0-7 都道府県及び市区町村に係る事務手続における添付書類の省略状況(令和2年12月時点)
添付書類を省略できていない主な理由として、都道府県及び市区町村ともに、運用手順等が調整中であることやシステム対応ができていないことが挙げられている。そして、今後の取組として、都道府県及び市区町村に対して、地方公共団体個別の事情によりマイナンバー情報照会が実施できていない場合はマイナンバー法の趣旨にのっとり早急にマイナンバー情報照会を実施できるように対応することが示されている。
このほか、市区町村に係る調査の対象手続のうちの「国民健康保険税の賦課」に関する事務手続(管理番号16-13)について、マイナンバー情報照会の実施により、他の機関に対する文書照会に係る通信費及び消耗品費が削減されるなどの効果があったことが示されている。
そして、総務省自治行政局住民制度課マイナンバー制度支援室及びデジタル庁デジタル社会共通機能グループ基準・標準担当は、3年10月に、調査の対象手続の所管府省庁である内閣府、総務省、文部科学省及び厚生労働省に対して、事務連絡「全地方公共団体を対象に実施した情報連携の実施状況調査における「情報連携の効果として、特に顕著な事例」の共有等について」を発出し、情報連携が開始されている事務におけるマイナンバー情報照会の実施の徹底に向けて、上記の調査結果及びマイナンバー情報照会の実施により効果を上げている事例を活用することを依頼している。
5年5月以降、健康保険証、共済年金、障害者手帳等に関する各制度において、制度側で管理する制度固有の番号とマイナンバーの間に紐付け誤りがあったことが、国により公表された。
これを受けて、国は、デジタル庁を中心に、総務省、厚生労働省等の制度所管省庁と連携して政府全体でマイナンバーによる情報連携の正確性確保に向けた総点検(以下「総点検」という。)と再発防止を強力に推進するために、同年6月に同庁にマイナンバー情報総点検本部(以下「総点検本部」という。)を設置して、マイナポータル(注7)で閲覧可能な情報を有する全ての制度について紐付けが正確に行われているか、総点検を開始することとした。「マイナンバー制度及びマイナンバーカードに関する政策パッケージ」(令和5年8月8日付け総点検本部会議資料)によれば、各制度における自分の情報が誤って他人のマイナンバーに紐付けられている場合、各制度の事務に支障が生じ、マイナポータルで自己情報を確認しようとする際に、自分の情報ではなく、当該制度に関する他人の情報が閲覧可能となり、情報の漏えいにつながるおそれがあるとされている。また、マイナンバー情報照会においても、制度固有の番号とマイナンバーが誤って紐付けられた状態で中間サーバーに副本データが登録されることになるため、情報照会者がマイナンバー情報照会を実施した際に、必要としていた者ではない者の特定個人情報が提供されるおそれがある。
総点検の実施に当たっては、まず、各制度の現場において、地方公共団体等のマイナンバーの紐付けを実施する機関(以下「紐付け実施機関」という。)がどのような方法で紐付けを行っているかについて調査が行われた。この調査では、①マイナンバーを確認書類とともに取得しているか、②J-LIS照会(注8)の際に基本4情報(氏名、生年月日、性別及び住所をいう。以下同じ。)の全部によりマイナンバーを照会しているか、③基本4情報のうち一部の情報によりマイナンバーを照会している場合は妥当な方法により本人として特定しているかなどを確認して、これらの方法によらない不適切な方法で紐付けられた個別データを総点検の対象とすることとされた。そして、総点検の対象となった個別データの点検を実施して、その結果を取りまとめることとされた。
6年1月16日の総点検本部会議での報告によれば、総点検の対象となった個別データは8208万件であり、これらの全てについて本人確認までの点検が完了し、図表0-8のとおり、8,395件(8208万件の0.01%)の紐付け誤りが確認されたとされている。
図表0-8 マイナンバーの紐付け誤り事案の概要等
事案 | 事案の概要 | 発生件数 |
---|---|---|
健康保険証情報の紐付け誤り | 保険資格情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 1,142件 注(2) |
共済年金情報の紐付け誤り | 年金情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 地方公務員共済組合及び国家公務員共済組合連合会において計119件 |
公金受取口座情報の誤登録 | 他人の口座情報が登録された。 | 1,186件 注(3) |
所得・個人住民税情報の紐付け誤り | 所得・個人住民税情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 4地方公共団体において計4件 |
障害支援区分認定情報の紐付け誤り | 認定情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 1地方公共団体において1件 |
障害者自立支援に関する給付情報(精神通院医療)の紐付け誤り | 給付情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 4地方公共団体において計152件 |
障害福祉サービス受給者証情報の紐付け誤り | 受給者証情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 3地方公共団体において計6件 |
生活保護情報の紐付け誤り | 生活保護情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 5地方公共団体において計22件 |
障害者手帳情報の紐付け誤り | 手帳情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 43地方公共団体において計5,689件 |
小児慢性特定疾病医療費助成の支給情報の紐付け誤り | 支給情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 1地方公共団体において7件 |
難病患者に対する特定医療費の支給情報の紐付け誤り | 支給情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 1地方公共団体において66件 |
労働者災害補償給付情報の紐付け誤り | 労働者災害補償給付情報に他人のマイナンバーが紐付けられた。 | 1労働基準監督署において1件 注(4) |
計 | 8,395件 |
これらの事案の主な発生原因は、申請時に、申請者本人からマイナンバーの提供がなかった結果、紐付け実施機関が、J-LIS照会により申請者のマイナンバーを取得することになり、その際、誤って他人のマイナンバーと紐付けてしまったことなどによるものであった。
このような発生原因を踏まえて、国は、次のような再発防止対策を講じている。
① 5年9月末までに、各制度の申請時にマイナンバーの記載を求める旨を明確化する省令改正等を行った。
② 同年10月に、マイナンバーの登録に係る横断的なガイドラインを紐付け実施機関向けに策定して、各制度の申請時にマイナンバーの取得を原則とすることや、J-LIS照会を行う際には原則として基本4情報で照会を行うことなどを明記した。
③ 同年12月に、J-LIS照会を行うに当たっては基本4情報又は氏名、生年月日及び住所の3情報による照会となるよう、J-LISにおいて照会システムの改修を行った。
このほか、総点検終了後も、再発防止のために、申請時や更新時といった本人確認の際に、定期的なマイナンバーの確認を徹底することや、マイナンバー登録事務について人手を介さないようデジタル化を行うこととしている。
会計検査院は、これまでに、マイナンバー制度関連システムやマイナンバー情報照会の実施状況等について検査し、その結果を検査報告に掲記するなどしている(別図表1参照)。
令和3年度決算検査報告に掲記した事項は、生活保護業務におけるマイナンバー情報照会の実施状況について、地方公共団体において、マイナンバー情報照会が全く実施されておらず、生活保護システム等の改修の効果が十分に発現されていない事態が見受けられ、厚生労働省において、アンケート調査により情報連携を活用していない地方公共団体があることを把握していたにもかかわらず、地方公共団体に対して、同省が情報連携に関して発出した通知等の内容を整理した上で改めて周知していないなどしていたことから、厚生労働大臣に対して、4年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求したものである。
そして、厚生労働省におけるその後の処置状況を検査したところ、同省において、上記通知等の内容を理解しやすく整理した上で、地方公共団体に対して改めて周知するなどの処置が講じられており、その旨を令和4年度決算検査報告に掲記している。