• 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 令和7年12月|

国庫補助金等により独立行政法人、基金法人及び都道府県に設置造成された基金の状況に関する会計検査の結果について


第1 検査の背景及び実施状況

1 検査の要請の内容

会計検査院は、令和6年6月10日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月11日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一) 検査の対象

内閣、内閣府、復興庁、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、独立行政法人、基金法人(独立行政法人、特殊法人、認可法人及び共済組合を除く)及び都道府県

(二) 検査の内容

国庫補助金等により独立行政法人、基金法人及び都道府県に設置造成された基金のうち令和5年度末に基金保有額があるものに関する次の各事項

① 基金の設置造成等の状況

② 基金事業の実施や基金の管理費の状況

③ 基金に対する点検等の取組状況

2 基金の概要、予算額の推移等

(1) 基金の概要

国は、独立行政法人、公益社団法人、公益財団法人、地方公共団体等が、基金(注1)の設置又は積増し(以下「設置造成」という。)を行い、単年度では完結しない特定の目的を持つ事務又は事業(以下「基金事業」という。)を実施する場合に、その基金の設置造成に必要な資金を対象として、国庫補助金等(注2)を交付している。そして、国庫補助金等の交付を受けて基金を設置造成した独立行政法人、公益社団法人、公益財団法人、地方公共団体等(以下「基金設置団体」という。)は、国の交付要綱等に基づき、設置造成した基金を他の事業の財源と区分して経理するなどして、基金事業を実施している。

(注1)
「行政事業レビュー実施要領」(平成25年4月行政改革推進会議)によると、保有される資金の名称は問わず、積立金、勘定、資金等の名称であっても、国から資金の交付を受けた年度内に当該資金の全額を支出せず、次年度以降にかけて支出することを目的として保有されているなどの条件を満たす場合に基金として扱われることとなっている。
(注2)
国庫補助金等  本報告書では、資金の名称や交付方法の別を問わず、その全部又は一部を原資として基金を設置造成するために国から交付される資金をいう。

一般的な基金に係る資金の流れを示すと図表0-1のとおりであり、国が基金設置団体に国庫補助金等を交付する際には、あらかじめ国の歳出予算に計上され、交付後には支出済歳出額として歳出決算に計上される。一方、基金設置団体が事業費や管理費(基金事業を管理するために毎年度恒常的に要する支出をいう。以下同じ。)を支払う際には、国の支出ではないことから国の歳出予算及び歳出決算には計上されず、これらによって基金からの支出額を確認することはできない。

図表0-1 基金に係る資金の流れ

図表0-1 基金に係る資金の流れ画像

また、基金を運営形態別に分類すると、おおむね図表0-2のとおりとなる。

図表0-2 運営形態の分類

分類 内容
取崩し型 基金を各事業の財源に充てることによって費消していくもの
回転型 貸付けの返済金等を再び貸し付けるなど基金を繰り返し回転させて使用するもの
保有型 基金を債務保証等の信用力の基盤となる財源として保有するもの
運用型 基金を運用元本として、その運用益を事業の財源に充てていくもの

さらに、基金事業は、その事業内容によって、補助事業、補塡事業(注3)、利子助成事業、調査等事業、貸付事業、出資事業、債務保証事業及びその他事業に分類することができる。

(注3)
補塡事業  損失補償の事業のように、事業者において生じた損失等を補塡する事業

(2) 基金に係る予算額の推移等

平成27年度から令和6年度までの10年間の基金に係る予算額の推移をみると、図表0-3のとおり、平成27年度から令和元年度までの間と比較して、2年度から6年度までの間は、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月閣議決定)、「コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」」(令和4年4月原油価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議決定)、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(令和4年10月閣議決定)等に対応した事業を実施するために、補正予算による予算額が大幅に増加している。

図表0-3 基金に係る予算額の推移

図表0-3 基金に係る予算額の推移画像

3 基金に係る基準の整備、見直しなどの経緯及び概要

(1) 基金に係る基準の整備、見直しなどの経緯

政府は、国会における議論等を踏まえて、図表0-4のとおり、累次にわたり、基金に係る基準の整備、見直しなどを行っており、その主なものは、次のとおりである。

図表0-4 基金に係る基準の整備、見直しなどの経緯

年度 基金に係る基準、見直しなど 方針の決定を行った主体等 主な内容
平成16 今後の行政改革の方針 閣議決定 平成18年度末までに、基金等を保有する法人について、基金事業に係る見直しの時期の設定に係る基準等を策定すること
18 補助金等の交付により造成した基金等に関する基準 閣議決定 使用見込みの低い基金については、国庫補助金等の国庫への返納等を検討することなどを交付要綱等に明記すること((2)ア参照)
21 事務事業の横断的見直しについて 行政刷新会議 基金の形態で事業を行う必要性や事業実施期間のうち当面の所要額等を厳しく見直し、必要性が十分に見込めないものや当面の所要額を超えるものなどについては、国への返納等を行うなどの見直しを行うこと
25 行政事業レビュー実施要領 行政改革推進会議 各府省庁が、基金法人等に設置造成された基金及び地方公共団体に設置造成された基金について執行状況等の点検を行うこと((2)ウ及び参照)
26 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令の一部を改正する政令 閣議決定 法令上明確でなかった基金事業の性質等について規定((2)イ参照)
26 基金造成費補助金等の活用に関する指針について 財務省 各省各庁の長は、基金事業の目標に対する達成度等の情報を交付要綱等に基づき毎年度報告させるとともに、基金の廃止時期が到来する前の時点においても、基金の額が過大であるか否かを不断に確認すること((2)イ参照)
令和4 行政事業レビューの抜本見直しについて 行政改革推進会議 基金事業について、執行状況の点検を強化して、効率的な資金利用、余剰資金の国庫返納等を進めること((2)エ参照)
5 基金の点検・見直しの横断的な方針について 行政改革推進会議 基金の終了期限については、当面具体的に見通せる成果目標を早期に検証する観点も含めて、具体的な期限設定を行うこと((2)オ参照)
6 基金全体の点検・見直し結果について 行政改革推進会議 点検・見直しの結果、点検・見直し対象事業全てについて、定量的な成果目標が設定されるとともに、原則として一定の範囲内で終了予定時期が設定された((2)オ参照)

(2) 基金に係る基準の整備、見直しなどの概要

ア 補助金等の交付により造成した基金等に関する基準の閣議決定

政府は、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(平成18年8月閣議決定。以下「基金基準」という。)を閣議決定して、国庫補助金等の交付を受けて設置造成した基金を保有する法人(独立行政法人、特殊法人、認可法人及び共済組合を除く。以下、基金基準の対象となる法人を「基金法人」という。)が当該基金により実施している事業に関して、各府省庁が国庫補助金等の交付要綱等に基づく指導監督を行う場合の基準を定めている。

基金基準において、各府省庁は、新たに設置する基金については原則として10年を超えない範囲で基金事業を終了する時期(新規申請の受付を終了した後も既採択分の支払等の後年度負担が発生する事業においては、新規申請の受付を終了する時期。以下「終了予定時期」という。)を設定することとなっており、国庫補助金等を交付する際に、これを交付要綱等に明記することとなっている。

また、各府省庁は、上記のほか、基金法人が行う次の事項等を交付要綱等に明記することとなっている。

① 少なくとも5年に1回は定期的に見直しを行うこと

② 定期的な見直しの際に、あらかじめ事業の効果に着目して定めた目標の達成度を評価して、当該結果を公表すること

③ 基金規模が過大となっていないかなどの状況を客観的に把握するために、基金事業に要する費用に対する保有金額等の割合(以下「保有割合」という。)を合理的な事業見通し又は実績を用いて算出すること

④ 直近3年以上事業実績がない基金、保有割合が1を大幅に上回っている基金等の使用見込みの低い基金については、国庫補助金等の国庫への返納等を検討すること

そして、基金基準において保有割合の算定式が例示されており、図表0-2の運営形態別に、その一部を示すと、次のとおりである。

○補助・補塡事業(取崩し型)

直近年度末の基金額÷(事業が完了するまでに必要となる補助・補塡額及び管理費)

○貸付事業(回転型)

直近年度末の基金額÷(貸付残高+貸付見込額-回収見込額+管理費)

○債務保証事業(保有型)

直近年度末の基金額×基金保有額に対する債務保証限度額の倍率÷(債務保証残高+債務保証見込額+損失引当金等+管理費)

○補助・補塡事業(運用型)

基金の運用益見込額÷(補助・補塡見込額+管理費)

さらに、各府省庁及び基金法人は、基金の名称、基金額、終了予定時期、定期的な見直しの時期、基金事業の目標等を公表することとなっている。

イ 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令の改正等

各省各庁の長が基金造成費補助金等(注4)を交付する場合に補助事業者等に対して付すべき条件の明確化を図るために、平成26年10月に「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令の一部を改正する政令」(平成26年政令第341号。以下「改正政令」という。)が施行され、これにより、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和30年政令第255号)が改正された(以下、改正後の施行令を「改正適正化令」という。)。そして、改正適正化令において、基金事業は、「複数年度にわたる事務又は事業であって、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であることその他の特段の事情があり、あらかじめ当該複数年度にわたる財源を確保しておくことがその安定的かつ効率的な実施に必要であると認められるものをいう」と規定された。

また、改正適正化令によれば、各省各庁の長は、国庫補助金等の交付の目的を達成するために必要がある場合には、その交付の条件として、補助事業等の完了後においても補助事業者等が従うべき事項等を定めることとされており、国庫補助金等が基金造成費補助金等に該当する場合には、次の事項を定めることとされている。

① 基金事業に係る運営及び管理に関する基本的事項として各省各庁の長が定めるものを公表すべきこと

② 基金を廃止するまでの間、毎年度、当該基金の額及び基金事業の実施状況を各省各庁の長に報告すべきこと

③ 基金の額が基金事業の実施状況その他の事情に照らして過大であると各省各庁の長が認めた場合、又は各省各庁の長が定めた基金の廃止の時期が到来したことその他の事情により基金を廃止した場合は、速やかに、交付を受けた基金造成費補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべきこと

(注4)
基金造成費補助金等  補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金適正化法」という。)第2条第1項に定める補助金等で、補助事業者等が基金事業の財源として設置造成する基金に充てる資金として各省各庁の長が交付する国庫補助金等

そして、改正政令の施行に関して必要な事項を示すために、財務大臣は各省各庁の長宛てに「基金造成費補助金等の活用に関する指針について」(平成26年10月財計第2534号。以下「指針」という。)を発出した。

指針によれば、具体の事務又は事業が、改正適正化令において定められた基金事業の性質に該当するか否かについては、個々に判断することとなるが、①不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する事業、②資金の回収を見込んで貸付けなどを行う事業、③事業の実施が他の事業の進捗に依存するものについては、基金事業の性質に該当し得ると考えられるとされている。他方、これら以外の事務又は事業については、基金造成費補助金等によることなく対応することが可能か不断に検討すべきであるとされている。

また、指針によれば、各省各庁の長は、保有割合、保有割合の算定根拠、基金事業の目標に対する達成度等の情報を交付要綱等に基づき毎年度報告させて、これらの情報に基づき毎年度基金の見直しを行うとともに、これらの情報を公表することとされている。そして、基金法人に設置造成された基金については基金基準に従って、独立行政法人、地方公共団体等に設置造成された基金については基金基準を参考として、それぞれ、あらかじめ基金の廃止時期を設定するとともに、当該廃止時期が到来する前の時点においても、基金の額が過大であるか否かを不断に確認することとされている。

さらに、一般的に、法的安定性及び信頼保護の原則から、不利益効果をもつ法律の遡及適用は許されないものと考えられていることなどから、改正適正化令は、改正政令の施行後に、新たに基金を設置するために交付する基金造成費補助金等及び既存の基金に積増しを行うために交付する基金造成費補助金等が対象となるが、指針によれば、積増しを行わない基金についても、補助事業者等と協議して、できる限り、交付要綱等に改正適正化令と同旨の内容を盛り込むように努めることとされている。

ウ 行政事業レビュー実施要領の策定

行政改革推進会議は、「今後の行政事業レビューの実施等について」(平成25年4月行政改革推進会議)及び行政事業レビュー実施要領を策定しており、この中で、各府省庁は基金法人等(注5)に設置造成された基金及び地方公共団体に設置造成された基金について執行状況等の点検を行うことが示されている。

そして、各府省庁は、基金法人等に設置造成された基金については基金シートにより、地方公共団体に設置造成された基金については地方公共団体等保有基金執行状況表(以下「執行状況表」という。)により、基金名、基金保有額、基金事業の概要、成果目標、成果実績、収支の状況、国庫補助金等により基金を設置造成して事業を実施する必要性等を、それぞれ公表することとなっている。

また、基金法人等に設置造成された基金については、各府省庁において、基金事業の厳格な点検を行い、その結果を基金シートにより公表すること、執行の改善や余剰資金の国庫返納を行うことなどとなっている。地方公共団体に設置造成された基金については、各府省庁において、地方公共団体の事務負担に留意しつつ、基金法人等に設置造成された基金に対して行われる点検内容を踏まえて精査を行い、余剰資金があれば、地方公共団体に国庫返納を促すとともに、地方公共団体に対する指導及び監督の内容を執行状況表により公表することとなっている。

(注5)
基金法人等  基金法人、独立行政法人、特殊法人、認可法人、法人格のない組合等
エ 行政事業レビューによる点検等

行政事業レビュー実施要領によれば、各府省庁は基金について執行状況等の点検を行うこととされている。また、国の行政の透明性を高め、国民への説明責任を果たすために、毎年6月を目途に、各府省庁が外部有識者とともに公開の場で自らの事業の点検を行うこととされている。さらに、行政改革推進会議は、各府省庁の点検が十分なものとなっているか、点検結果が的確に予算の概算要求に反映されているか、公表内容が十分なものとなっているかなどについて検証を行うこととされており、また、同会議の下、「秋の年次公開検証」が実施されることとなっている。

そして、改正政令が施行された26年度以降、毎年、行政改革推進会議は各府省庁に対して、秋の年次公開検証における指摘事項等を踏まえて改めて基金の点検を行うこと、余剰資金について国庫返納を行うとともに引き続き不断の見直しを行うこと、基金の積増しなどを行う場合においては過去の執行実績や具体的な需要等を基に算定された精度の高い事業見込みに基づく適切な保有資金規模とするよう留意すべきことなどを通知している。

また、「行政事業レビューの抜本見直しについて」(令和5年3月行政改革推進会議)においては、令和5年度から、近年活用が拡大している基金事業の執行状況の点検を強化して、効率的な資金の利用や余剰資金の国庫返納等を進めていくこととなっている。具体的には、短期、中期及び長期の段階的成果目標及び目標年度を設定すること、目標年度において政策効果を確認して見直しを行うことなどによって基金シートにもEBPM(注6)の手法を取り入れて、基金事業の効果の見える化及び最大化を進めるとともに、保有資金規模、事業の終期設定及び管理費について記載を充実して、基金法人等に設置造成された基金について外部有識者による点検を導入することとなっている。

(注6)
EBPM  Evidence-Based Policy Makingの略。合理的な根拠に基づく政策立案
オ 「基金の点検・見直しの横断的な方針について」による点検・見直し

デジタル行財政改革会議(令和5年11月開催)において、内閣総理大臣は、基金については期間設定や予算措置に合わせて長期・短期の成果目標を検証することでPDCAサイクルを機能させる必要があるとして、5年秋の年次公開検証における指摘に基づいて、具体的な基金の見直しの横断的な方針をまとめるよう指示を行った。この指示を踏まえて定められた「基金の点検・見直しの横断的な方針について」(令和5年12月行政改革推進会議。以下「点検・見直しの横断的な方針」という。)において、次の各項目が定められており、行政事業レビュー実施要領に掲げられた事項を含めて点検を行い、それぞれの基金事業の在り方について厳格に見直しを行うこととなっている。

1 基金への新たな予算措置を検討する際には、各年度の所要額がおおむね予測可能なものについては、基金によらない通常の予算措置によるものとする。

2 予算決定と同時に、短期(3年程度)のものも含めて、定量的な成果目標を策定・公表する。

3 基金への新たな予算措置は3年程度として、成果目標の達成状況を見て、次の措置を検討する。(毎年度予算措置を行うもので、災害等の不測の変動要因に備えて、基金形態を使って一定の保有残高が必要なものについては、成果目標も踏まえて、適切な保有残高となっているか点検を行う。)

4 足下の執行状況を踏まえた合理的な事業見込みを算定し、保有資金規模が適正なものとなるよう点検を行う。

5 基金の終了期限については、基金基準とともに、当面具体的に見通せる成果目標を早期に検証する観点も含めて、具体的な期限設定を行う。(基金基準や行政事業レビュー実施要領を踏まえ、支出が管理費のみとなっている基金事業については廃止を検討する。)

6 担当府省庁及び基金を設置する法人において、補助金交付の基準策定や個々の補助金の審査がしっかりできる体制を構築し、こうした根幹的な業務を民間企業に実質的に外注することは避ける。

そして、点検・見直しの横断的な方針にのっとり、基金法人等に設置造成された基金を対象として基金の点検や見直しが行われて、「基金全体の点検・見直し結果について」(令和6年4月行政改革推進会議。以下「点検・見直し結果」という。)において、定量的な成果目標、基金への予算措置、終了予定時期等の項目ごとに点検・見直し結果に係る概要が示されるなどしている(点検・見直し結果の概要については別図表1参照)。

その後、6年秋の年次公開検証が実施されて、基金を所管する全ての府省庁においては、①事業の効果検証に必要な成果目標・指標が具体的に設定されているか、②基金に関する業務を民間企業に外注する場合は適切なルールの厳格な運用を通じて各府省庁による責任を持った事業の管理が徹底されているか、③管理費の水準は適切かなどの観点から、早急に基金の再点検を実施すべきであり、基金の適切な管理に不断に取り組むべきであるなどの指摘がなされている。

4 これまでの検査の実施状況

会計検査院は、これまで、国庫補助金等により設置造成された基金について検査を行っており、会計検査院法第30条の2の規定に基づき、平成23年10月に「国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について」、25年10月に「国庫補助金等により基金法人に設置造成された基金の状況について」及び30年12月に「国庫補助金等により地方公共団体等に設置造成された基金について」を報告するなどしている(これらの報告における所見の概要については別図表2参照)。また、個別の基金について同法第34条又は第36条の規定に基づき意見を表示し又は処置を要求するなどしている(個別の基金の規模等に関する主な検査報告掲記事項については別図表3参照)。

5 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

会計検査院は、前記要請の国庫補助金等により基金法人等及び都道府県に設置造成された基金に関する各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性、透明性の確保(注7)、国民への説明責任の向上(注7)等の観点から、次の点に着眼して検査した。

(注7)
会計検査院法における「その他会計検査上必要な観点」に位置付けられるものである。
ア 基金の設置造成等の状況
  • (ア) 基金数及び基金保有額の推移等はどのようになっているか。
  • (イ) 国庫補助金等により基金を設置造成して事業を実施する方式(以下「基金方式」という。)により事業を実施する必要性について、どのように整理されているか。
  • (ウ) 基金設置団体はどのように選定されているか。
  • (エ) 基金の積増しを行う額は適切に算定されているか。
  • (オ) 基金の保有形態はどのようになっているか。また、運用収入及び運用損失はどのようになっているか。
イ 基金事業の実施や基金の管理費の状況
  • (ア) 基金事業の進捗状況はどのようになっているか。
  • (イ) 事務局が実施する業務(以下「事務局業務」という。)の内容及び実施体制はどのようになっているか。また、各府省庁は、事務局業務の実施体制を適切に把握しているか。
  • (ウ) 基金事業における管理費はどのようになっているか。支出が管理費のみとなっている基金はどのような状況となっているか。事務局への委託を行っている場合、事務局に対する支出はどのようになっているか。また、各府省庁は、管理費の確認を適切に行っているか。
ウ 基金に対する点検等の取組状況
  • (ア) 定量的な成果目標及び具体的な終了予定時期は設定されているか。
  • (イ) 基金規模の把握は適切に行われているか。
  • (ウ) 使用見込みのない資金等を保有している場合に適切に国庫返納が行われているか。

(2) 検査の対象及び方法

国庫補助金等により基金法人等に設置造成されている基金及び都道府県に設置造成されている基金(注8)のうち令和5年度末時点で基金保有額がある基金(基金保有額のうち国庫補助金等相当額がある基金に限る。以下同じ。)を対象とする(図表0-5参照)とともに、基金を設置造成するための国庫補助金等の交付状況、基金数及び基金保有額の状況、国庫返納の状況等については、元年度から4年度までの各年度末時点で基金保有額がある基金も対象として検査した。

検査に当たっては、13府省庁等(注9)の本省等及び外局、10府県(注10)並びに22基金法人等(注11)において、637人日を要して会計実地検査を行い、基金保有額が記載された報告書等の関係資料を確認するとともに、担当者等から説明を聴取するなどした。また、14府省庁(注12)及び令和6年能登半島地震により甚大な被害を受けるなどした新潟、富山、石川各県を除く44都道府県から調書、関係資料等の提出を受けて、その内容を確認するなどして検査した。

図表0-5 検査の対象とした基金の基金設置団体

図表0-5 検査の対象とした基金の基金設置団体画像

(注8)
地方公共団体を経由して間接的に国庫補助金等が交付されることにより法人等に設置造成されている基金については、検査の対象としていない。
(注9)
13府省庁等  内閣官房、内閣府本府、こども家庭庁、復興庁、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省
(注10)
10府県  大阪府、山形、福島、埼玉、静岡、奈良、山口、高知、長崎、熊本各県
(注11)
22基金法人等  独立行政法人農畜産業振興機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、国立研究開発法人情報通信研究機構、国立研究開発法人科学技術振興機構、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会、一般社団法人新薬・未承認薬等研究開発支援センター、一般社団法人日本養鶏協会、一般社団法人漁業経営安定化推進協会、一般社団法人全国信用保証協会連合会、一般社団法人環境パートナーシップ会議、一般財団法人住宅金融普及協会、公益社団法人福島相双復興推進機構、公益財団法人福島県産業振興センター、公益財団法人日本特産農産物協会、公益財団法人農林水産長期金融協会、公益財団法人原子力安全技術センター、公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団、特定非営利活動法人水産業・漁村活性化推進機構、地方公共団体情報システム機構、社会保険診療報酬支払基金
(注12)
14府省庁  内閣府本府、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省