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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第9 運輸省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業に対する国庫負担金の経理当を得ないもの


(1898)−(1995) 公共事業に対する国庫負担金の経理当を得ないもの

 (組織)運輸本省 (項)港湾災害復旧事業費ほか3科目

 地方公共団体が施行した港湾工事費8,757,052,751円に対する国庫負担金(国庫補助金を含む。以下同じ。)5,338,823,841円の経理および工事施行状況について、本院において全国の工事現場2,068箇所のうち青森県ほか29都府県その工事現場1,212箇所を実地に検査したところ、防波堤の被覆石、捨石またはしゅんせつ等の出来高が不足しているもの、設計にあたって現地の実情を考慮しなかったためしゅんせつ単価等が過大となっていたもの、災害復旧とは認められない改良工事または国庫負担の対象としてはならないものなどが多く、国庫負担金を除外すべきことの判明したものが、青森県ほか27都府県において除外すべき額1工事10万円以上のものをあげると157工事5千1百余万円に上る状況で、これを事項別に分類して示すと次表のとおりである。

類別
都道府県名
改良その他国庫負担の対象としてはならない工事 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの 事業主体が正当な自己負担をしていないもの
類別
都道府県名
工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額

青森県



2

352,799







2

352,799

青森県
岩手〃

1 135,507





1 135,507 岩手〃
千葉〃



1 198,754



1 198,754 千葉〃
東京都 1 451,500

1 979,823



2 1,431,323 東京都
新潟県

4 949,321





4 949,321 新潟県
石川〃

2 911,900





2 911,900 石川〃
福井〃





1 129,960

1 129,960 福井〃
静岡〃

3 740,564

1 473,565

4 1,214,129 静岡〃
愛知〃

4 966,688

2 608,473 2 459,181 8 2,034,342 愛知〃
三重〃

2 699,022





2 699,022 三重〃
京都府

4 1,117,936





4 1,117,936 京都府
大阪〃

1 431,407 1 213,707



2 645,114 大阪〃
兵庫県

1 167,318





1 167,318 兵庫県
和歌山〃 1 2,122,050 2 318,809





3 2,440,859 和歌山〃
鳥取〃

4 1,003,977

3 1,034,144 1 290,110 8 2,328,231 鳥取〃
島根〃

4 1,093,085

8 3,756,811 5 1,289,273 17 6,139,169 島根〃
岡山〃

1 142,643

1 139,553 1 317,654 3 599,850 岡山〃
広島〃

5 801,029 1 703,462 3 1,688,645

9 3,193,136 広島〃
山口〃

3 740,562

4 1,549,065 1 249,004 8 2,538,631 山口〃
徳島〃

2 334,667 1 143,376



3 478,043 徳島〃
香川〃

1 110,406

4 614,789

5 725,195 香川〃
愛媛〃

2 331,714 1 223,885 8 2,977,211 2 803,344 13 4,336,154 愛媛〃
高知〃 3 1,494,941 3 1,330,155 1 211,975



7 3,037,071 高知〃
福岡〃

1 399,000 1 387,928



2 786,928 福岡〃
長崎〃

2 388,471 1 1,555,000



3 1,943,471 長崎〃
熊本〃

1 244,140

12 4,500,689

13 4,744,829 熊本〃
大分〃

4 1,024,765

19 5,423,103

23 6,447,868 大分〃
宮崎〃

1 413,985

5 986,414

6 1,400,399 宮崎〃
合計 5 4,068,491 60 15,149,870 9 4,617,910 71 23,882,422 12 3,408,566 157 51,127,259 合計

 この種不当事項については、既に昭和26、27年度決算検査報告において多数指摘したところであるが、本年度は、市町村が施行した工事について、全面的にその工事の実施状況と工事費精算額の当否をあわせ重点的に検査した結果、事業主体として法令上当然負担すべきものを負担しないで国庫負担金相当額あるいはこれを下回る金額で工事を施行し国庫負担金に剰余を生じたこととなっているものもあり、これらはおおむね工事の施行が粗雑でその出来高が不足しており、なかには前年度検査において既に指摘したにもかかわらずその後に施行した工事について同様な事態を繰り返したもの、その負担分を長期債として借入済でありながらこれを負担していないものなどが見受けられた。特に28年発生災害については災害復旧特別措置により高率の国庫負担率が適用され、これにより事業主体の負担を軽減する処置が講ぜられたにもかかわらず、前記のようになお事業主体が正当な自己負担をせず、かえって国庫負担金に剰余を生じているものがあり、また、工事施行の面においても相当のかしが見受けられているのはまことに遺憾である。

 また、県等が事業主体となって直営施行した工事のうちには、港湾工事の国庫負担金をほしいままに国庫負担対象外の県道補修工事等に流用したため港湾工事の出来高に不足をきたしていたものがあり、その処置当を得ない。

 しかして、検査の結果明らかになった不当事項157工事のうち国庫負担金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第4のとおり98件43,365,972円ある。

 これら不当事項の防止対策については、別項農林省所管(参照) に記述したと同様に、運輸省についても昭和27年度決算検査報告に記述したとおりであるが、従来、災害復旧費査定上の欠陥により本院において事後に発見する不当事項が多数に上っていた実情にかんがみ、査定の内容を早期に是正して不当事項の発生を防止するため、別項記載(参照) のとおり28年発生災害に対し従来どおりの事後検査にあわせて早期に調査を行なったところ、二重査定、災害便乗、設計過大等の事態となっているものが多数発見され、運輸省においては本院の注意により工事費において2億8千3百余万円を減額是正することとなった。

 しかして、前記不当事項157工事のうち代表的な事例を説明すると次のとおりである。

(1) 名古屋港管理組合が8,519,435円(国庫負担金5,742,066円)で施行した名古屋港災害復旧は、直営により堤防護岸に割石コンクリート278立米、防波堤基礎根固341メートルの捨石4,930立米を施行したこととしているが、実際は割石コンクリート185立米、捨石4,641立米を施行したにすぎず、事業主体はこれによって生じた剰余782,163円を査定外の道路舗装工事費等に充当している。(出来高不足)

(2) 島根県簸川郡岐久村が3,720,000円(国庫負担金3,236,400円)で施行した小田東港災害復旧は、防波堤40メートルの中詰石1,366立米、被覆石1,922立米、同ならし1,342平米を施行したこととしているが、実際は中詰石732立米、被覆石1,244立米、同ならし909平米を施行したにすぎず、また、中詰石227立米、被覆石198立米は在石を使用することができたため工事費は国庫負担金を下回る2,290,000円で足り、同村はその負担したとしている483,600円を全く負担していないばかりでなく946,400円の剰余を生ずることとなっている。(出来高不足、設計過大、事業主体負担不足)

(3) 広島県賀茂郡安登村が2,736,000円(国庫負担金2,476,080円)で施行した小用港災害復旧は、物揚護岸1,404平米を控40センチメートルの築石を使用し、胴込コンクリート182立米施行したこととしているが、実際は1,110平米を控35センチメートルの築石を使用し、胴込は5分の1程度施行したにすぎないため工事費は国庫負担金を下回る1,700,000円で足り、同村はその負担したとしている259,920円を全く負担していないばかりでなく776,080円の剰余を生じたこととなっている。(出来高不足、事業主体負担不足)

(4) 高知県が5,470,894円(国庫補助金3,376,428円)で直営施行した幡多郡清水町以布利港地盤変動対策は、内港および港口が隆起したのでこれを掘さくしゅんせつし当初の水深を維持しようとするもので、29年3月硬岩破砕575立米、同取除き863立米および土砂しゅんせつ2,676立米を施行し打切りしゅん功したこととしているが、実際は硬岩破砕443立米、同取除き462立米などを施行しただけで出来高が不足しており、同県は工事費のうち1,377,384円を本件工事と関係のない県道補修工事費として758,332円、燃料および写真機の購入代、自動車修理代等として390,666円計1,148,998円を使用し、残額228,386円は手元に保有していた状況である。
 また、同県が施行した佐喜浜港地盤変動対策9,107,656円(国庫補助金3,643,062円)においても、防波堤捨石の整置を施行していないため814,278円(国庫補助金325,711円)が出来高不足となっている。(出来高不足)

(5) 長崎県北松浦郡福島町が2,233,000円(全額国庫負担)で施行した福島港28年災害復旧は、港内のたい積土砂7,700立米を立米当り290円総額2,233,000円でしゅんせつしたこととしているが、実際は別に町が単独で施行する142,300立米のしゅんせつ工事とあわせ総額15,000,000円で施行したもので、実際の工事費は立米当り100円総額において国庫負担金を下回る770,000円を要したにすきず1,463,000円の剰余を生ずることとなっている。(設計過大)

(6) 大分県北海部郡坂ノ市町が6,000,000円(国庫負担金4,266,640円)で施行した坂ノ市港災害復旧は、防波堤81メートルの捨石2,553立米、同ならし1,434平米を施行したこととしているが、実際は捨石1,963立米、同ならし926平米を施行したにすぎないため工事費は4,500,000円で足り、同町はその負担したとしている1,733,360円のうち1,500,000円を負担していない。なお、事業主体負担分の財源として大蔵省資金運用部から貸し付けた1,800,000円の大部分を目的どおりに使用していない。(出来高不足、事業主体負担不足)