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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第3 大蔵省|
  • 貸付金

資金運用部資金の貸付額が過大になっているもの


貸付金

(3)−(7) 資金運用部資金の貸付額が過大になっているもの

資金名及び科目 資金運用部資金 貸付金
部局等の名称 関東財務局新潟財務部、近畿財務局大津財務部、中国財務局岡山財務部、四国財務局徳島財務部、福岡財務支局(「財務部」は昭和59年10月1日以降「財務事務所」)
貸付けの根拠 資金運用部資金法(昭和26年法律第10号)
貸付けの内容 地方公共団体に対する普通地方長期資金の貸付け
貸付先 市1、町4、計5市町
貸付金の合計額 1,022,500,000円

 上記の5市町に対する1,022,500,000円の貸付けにおいて、貸付先の市町が、実施していない事業の事業費を貸付対象事業費に含めていたり、貸付対象事業の財源として受け入れた寄附金等を貸付対象事業費の財源に算入していなかったりなどしていて、貸付額が136,651,226円過大になっていると認められる。これを貸付先別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)

 大蔵省では、資金運用部資金法等の規定に基づき、地方公共団体が公共施設の建設事業費等の財源として自治大臣又は都道府県知事の許可を得て地方債を起こす場合に普通地方長期資金を貸し付けている。この資金の貸付けは、地方公共団体が予算に定める地方債の限度額を限度とし、地方債許可方針等により算出された貸付対象事業費から貸付対象事業の財源として受け入れた補助金、負担金、寄附金等を控除した額に所定の充当率を乗じて得た額を貸付金額として、貸付対象事業が完了した後において行われることになっている。
 しかして、上記の貸付けについて検査したところ、貸付先市町において、予算に定める地方債の限度額を超過して貸付けを受けていたり、事業の全部又は一部を実施していないのに実施したとして事業費を貸付対象事業費に含めたり、貸付けの対象とならない事業費を貸付対象事業費に含めたりなどして貸付対象事業費を過大に算定していたり、貸付対象事業の財源として受け入れた寄附金等を貸付対象事業費の財源に算入していなかったりしていて、貸付額が過大になっていると認められるものが136,651,226円見受けられた。

(別表)

貸付先 貸付対象 貸付
昭和年月
(貸付利率)
貸付対象事業費 左に対する貸付金額 貸付金額のうち不当と認めた額 摘要

(3)

新潟県北魚沼郡堀之内町

辺地対策事業

57.5
(年7.30%)
千円
39,943
千円
17,600
千円
11,997

寄附金の財源不算入
多目的集会施設整備事業等

 この貸付けは、堀之内町が昭和56年度に実施した辺地対策事業に必要な資金39,943,000円の一部として貸し付けたものであるが、同町は、同事業のうちの多目的集会施設整備事業については、借入れに当たり、多目的集会施設が設置される地区の代表から同施設整備事業の財源として受け入れた寄附金12,000,000円を貸付対象事業費の財源に算入していなかった。
 したがって、上記寄附金を貸付対象事業費の財源に算入して適切な貸付金額を計算すると5,612,987円となり、本件貸付金額17,600,000円との差額11,987,013円が過大な貸付けとなっている。
 なお、59年9月末現在の過大な貸付金残高は11,422,196円で、これについては、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。

(4) 滋賀県大津市 義務教育施設整備事業
58.5
(年7.30%)
720,410 256,200 5,033 貸付対象外
南郷小学校校舎増築等9事業

 この貸付けは、大津市が昭和57年度に実施した義務教育施設整備事業に要する資金1,144,757,000円(うち貸付対象事業費分720,410,000円)の一部として貸し付けたものである。
 しかして、同市では、同事業のうち南郷小学校校舎の増築事業については、借入れに当たり、貸付対象事業費を国庫補助対象面積438m2 に国庫補助単価を乗ずるなどして52,907,000円と算定していたが、国庫補助対象面積の算定において集団住宅建設に伴う増加予測児童数の把握に誤りがあったため、上記面積は171m2 過大となっており、これに係る事業費相当額20,655,000円は貸付けの対象とならないのに、これを含めて貸付対象事業費としていた。
 したがって、貸付対象事業費から上記20,655,000円を控除するなどした699,943,000円が適切な貸付対象事業費となり、これに対する適切な貸付金額は、本院指摘(文部省不当事項補助金参照) により修正された国庫補助金を控除するなどした251,166,835円となり、本件貸付金額256,200,000円との差額5,033,165円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件過大な貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。

(5) 岡山県勝田郡勝北町 地区道路事業等114事業 57.5
(年7.30%)
978,420 378,500 24,018 事業の一部不実施、重複貸付け及び貸付対象外

 この貸付けは、勝北町が昭和56年度に実施した地区道路事業等114事業に必要な資金978、420,000円の一部として貸し付けたものである。
 しかして、同町では、借入れに当たり、次のような不適切な方法により貸付対象事業費を算定していた。

(1) 地元関係者との間で工事規模等についての了解が得られないなどにより工事等の全部又は一部を実施していないのに、実施したとして事業費11,743,516円を含め、これを貸付対象事業費としていた。

(2) 55年度の資金運用部資金の貸付対象事業として既に貸付けを受けていた事業費の一部を再び56年度の貸付対象事業費とするなど、重複して計上した事業費28,955,000円を含め、これを貸付対象事業費としていた。
(3) 本件貸付対象事業とは別個の事業で貸付けの対象とならない事業費等6,123,861円を含め、これを貸付対象事業費としていた。

 したがって、貸付対象事業費978,420,000円から(1)、(2)及び(3)の事業費計46,822,377円を控除し、このほか借入関係書類において貸付対象事業費の過少計上分等2,189,093円があるのでこれを加えた933,786,716円が適切な貸付対象事業費となり、これに対する適切な貸付金額は、本件事業の財源の一部である国庫補助金及び県補助金578,950,286円を控除するなどした354,481,593円となり、本件貸付金額378,500,000円との差額24,018,407円が過大な貸付けとなっている。
なお、本件過大な貸付金額については、本院の注意により、59年11月、繰上償還の措置が執られた。

(6) 徳島県板野郡藍住町 農業近代化施設整備事業等5事業 58.3
(年7.30%)
228,286 150,300 12,959 地方債の限度額超過、事業の一部不実施及び貸付対象外

 この貸付けは、藍住町が昭和56年度に実施した農業近代化施設整備事業等5事業に必要な資金228,286,000円の一部として貸し付けたものである。
 しかして、同町では、次のように地方債の限度額を超過して借り入れ、また、借入れに当たり不適切な方法により貸付対象事業費を算定していた。

(1) 農業近代化施設整備事業について、その事業費16,981,000円の一部に充てるために13,200,000円を借り入れているが、地方自治法(昭和22年法律第67号)第230条の規定によれば普通地方公共団体は、予算の定めるところによらなければ地方債を起こすことができないとされているにもかかわらず、借入れに当たり本件事業に係る地方債の限度額としては56年度予算に1,800,000円しか計上されていないのに、13,200,000円が計上されているとして借入関係書類を作成して、適切な貸付金額となる上記1,800,000円を超えて借り入れていた。

(2) 道路改良事業について、その事業費8,934,000円の一部に充てるために2,900,000円を借り入れているが、借入れに当たり、実際には取得していなかった用地255.6m2 の購入費2,826,500円及び54年度に実施し支出済みであるため本件貸付対象とならない測量、設計委託の経費1,377,000円等計4,204,500円を含め、これを貸付対象事業費としていたもので、適切な貸付対象事業費は、前記事業費からこれを控除した4,729,500円であり、これに対する適切な貸付金額は1,340,711円となる。

 したがって、本件農業近代化施設整備事業等5事業に係る適切な貸付金額は、前記(1)の1,800,000円及び(2)の1,340,711円にその他事業分134,200,000円を加えた137,340,711円となり、本件貸付金額150,300,000円との差額12,959,289円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件過大な貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。

(7) 福岡県嘉穂郡碓井町 庁舎建設事業
56.5
(年7.50%)
57.5
196,807
113,143
131,900
88,000
82,653 負担金の財源不算入及び貸付対象事業費の過大算定
(年7.30%)
小計 309,950 219,900 82,653

 この貸付けは、碓井町が昭和55、56両年度に実施した庁舎建設事業に必要な資金343,850,000円(うち貸付対象事業費分309,950,000円)の一部として貸し付けたものである。
 しかして、同町では、借入れに当たり、次のような不適切な方法により貸付対象事業費の財源を算定するなどしていた。

(1) 臨時石炭鉱害復旧法(昭和27年法律第295号)の定めるところにより、石炭鉱害事業団から旧役場庁舎等の鉱害復旧工事を行うための復旧費に充てる負担金として56年3月から57年5月までの間に130,061,000円を受け入れていたが、このうち74,030,548円は本件貸付けの対象となっている庁舎等の建設事業に係るものであるのに、これを貸付対象事業費の財源に算入していなかった。

(2) 貸付対象事業費の算出において建築本体工事等の標準単価の中に既に見込まれている庁舎の給排水設備工事費やコンクリート工事費等の費用を、全額が貸付対象となっている浄化槽設備工事費や特殊基礎工事費等の特殊附帯施設工事費に重ねて計上していたりなどして、貸付対象事業費を42,341,668円過大に算出していた。

 したがって、上記(1)及び(2)により適切な貸付金額を計算すると137,246,648円となり、本件貸付金額219,900,000円との差額82,653,352円が過大な貸付けとなっている。
 なお、59年9月末現在の過大な貸付金残高は81,888,450円で、これについては、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。

2,277,009 1,022,500 136,651