科目 | (款)貸付事業費 (項)貸付金 |
部局等の名称 | 年金福祉事業団 |
貸付けの根拠 | 年金福祉事業団法(昭和36年法律第180号) |
貸付金の内容 | 厚生年金保険、船員保険又は国民年金の被保険者で自ら居住するための住宅を必要とする者に対して貸し付ける資金 |
貸付件数 | 85件 |
貸付金の合計額 | 422,400,000円 |
上記85件の貸付けにおいて、貸付けを受けた者が、自ら居住するための住宅という貸付要件に違反して、購入した住宅を第三者に賃貸したり、自ら会社事務所等の非住宅用途に利用したりなどしていて、不適切な貸付金額は合計4億2240万円となっていた。
このような事態は、貸付けを受けた者等の不誠実にもよるが、年金福祉事業団及びその委託を受けた金融機関において、貸付けの審査及び貸付後の管理に当たって、自ら居住するための住宅を必要としているか否かについて格別の配慮が払われていなかったことなどによるもので、速やかに審査体制及び管理体制の整備を図って第三者賃貸等の防止に努める要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
年金福祉事業団(以下「事業団」という。)では、厚生年金保険、船員保険又は国民年金の被保険者で自ら居住するための住宅を必要とする者に対して、住宅の建設、購入等に必要な資金の一部を貸し付けており、その件数及び金額は、昭和57、58両事業年度でそれぞれ197,375件8609億8100万円及び199,072件9070億7160万円に上っている。そして、事業団では、この貸付けを行うについては、上記の保険又は年金に係る3特別会計から交付金等を受けて低利(通常の場合年6%)、かつ長期(最長35年)に貸し付けている。
その貸付方法としては、〔1〕 事業団が住宅金融公庫(以下「公庫」という。)に貸付事務をすべて委託して、公庫がその個人住宅貸付けと併せて直接又は他の金融機関に委託(貸付決定事務を除く。)して貸し付けるもの(以下「併せ貸し」という。)、〔2〕 事業団が金融機関(以下「受託金融機関」という。)に貸付事務の一部を委託して、厚生年金保険若しくは船員保険の被保険者を使用する事業主等又は民法第34条の規定に基づき設立した法人で特に厚生大臣の承認を受けたもの(以下「公益法人」という。)を通じて貸し付けるもの(以下「転貸貸付け」という。)、〔3〕 事業団が資本の額又は出資の総額が30億円以上の事業主等を通じて貸し付けるもの(以下「直貸し」という。)などのものがある。
しかして、本院が住宅金融公庫の貸付けについて指摘した405件
の貸付対象のうち、事業団においても57事業年度以降にマンションの購入資金を貸し付けている85件貸付金額4億2240万円について59年中にその貸付状況を調査したところ、次表のとおり、いずれも自ら居住するための住宅という貸付要件に違反していて、貸付けが不適切と認められる事態が見受けられた。
(1) 購入した住宅を、住宅用又は会社事務所等非住宅用として当初から第三者に賃貸していたと認められるもの
82件 | 399,400,000円 | ||||
うち | 併せ貸し 転貸貸付け 直貸し |
24件 56件 2件 |
90,200,000円 300,200,000円 9,000,000円 |
(2) 購入した住宅を、自ら会社事務所等非住宅用途に利用していたものなど
3件 | 23,000,000円 | ||||
うち | 併せ貸し 転貸貸付け |
1件 2件 |
3,000,000円 20,000,000円 |
||
計85件 | 422,400,000円 |
うち | 併せ貸し 転貸貸付け 直貸し |
25件 58件 2件 |
93,200,000円 320,200,000円 9,000,000円 |
そして、(1)のうちには、貸付対象マンションの分譲業者又は関連業者の社員等が購入して賃貸したり、貸付対象マンションの分譲業者が賃貸をあっせんしたりしているものが見受けられた。
このような事態を生じたのは、自ら居住するとして貸付けを受けた者等の不誠実にもよるが、近年投資需要を見込んだマンションの建設、販売が増加してきており、これらのマンションが貸付けの対象として借入申込みが行われることが予想されるところであるのに、〔1〕 併せ貸しについては、公庫(公庫の委託先金融機関を含む。)において、審査及び貸付後の管理に当たって自ら居住するために住宅を必要としているか否かについての格別の配慮が払われていなかったことなどによるものと認められ、〔2〕 転貸貸付け及び直貸しについては、受託金融機関及び事業団において、審査に当たって自ら居住するための住宅を必要としているか否かについて格別の配慮が払もれていなかったこと、また、管理に当たって住宅の現状や貸付後の入居状況について留意していないことなどによるものと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、年金福祉事業団では、昭和59年11月までに、公庫に対して、公庫取扱いの借入者について繰上償還の処置を講ずるよう指示するとともに、公庫が実効ある審査及び調査を行うことができるよう委託事務の取扱要領を整備するなどし、事業団及び受託金融機関取扱いの借入者について繰上償還等の処置を執るとともに、同月、事業団の審査部局、管理部局並びに受託金融機関、事業主等及び公益法人に対し、通知を発して第三者賃貸等の防止を図るよう審査及び管理の体制を整備する処置を講じた。