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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
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  • 保険給付

健康保険及び船員保険の傷病手当金等の支給が適正でなかったもの


(15) 健康保険及び船員保険の傷病手当金等の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 (1) 厚生保険特別会計(健康勘定) (項)保険給付費
(2) 船員保険特別会計 (項)保険給付費
部局等の名称 (1) 北海道ほか16都府県(45社会保険事務所)
(2) 宮城県ほか4県(3保険課及び2社会保険事務所)
支給の相手方 (1) 健康保険 512人
(2) 船員保険 18人
傷病手当金等の支給額の合計 (1) 健康保険 76,313,806円
(2) 船員保険 21,401,878円

 健康保険では、上記の512人に傷病手当金等76,313,806円を支給しているが、支給に当たって、請求に対する指導及び調査確認が十分でなかったため、18,488,178円(傷病手当金16,537,560円、出産手当金1,950,618円)が不適正に支給されていた。また、船員保険では、上記の18人に傷病手当金21,401,878円を支給しているが、支給等に当たって、請求に対する調査確認が十分でなかったため、6,119,684円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の注意により、すべて返還の処置が執られた。 これを都道府県ごとに集計して健康保険及び船員保険の別に掲げると別表1 及び別表2 のとおりである。
 これは、健康保険については北海道ほか27都府県の69社会保険事務所において傷病手当金等の支給を受けた12,449人について、また、船員保険については北海道ほか17県の12保険課及び8社会保険事務所において傷病手当金の支給を受けた2,732人について本院が調査した結果である。

(説明)

1 健康保険の傷病手当金等について

 健康保険(前掲の「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」の説明参照 )において行う給付のうち、傷病手当金は、療養のため労務に服することができなくなった日から起算して4日目から1日につき標準報酬日額の100分の60(被扶養者のいない被保険者が入院した場合は100分の40)に相当する額を1年6箇月を限度として支給することとなっており、また、出産手当金は、分娩のため労務に服さなくなった日から1日につき標準報酬日額の100分の60(被扶養者のいない被保険者が入院した場合は100分の40)に相当する額を分娩した日前42日、分娩した日以後42日を限度として支給することとなっているが、労務に服さなかった期間について事業主から報酬が支給された者については、その報酬の額が傷病手当金又は出産手当金の額以上のときは支給せず、報酬の額が傷病手当金又は出産手当金の額より少ないときにはその差額を支給することとなっている。
 傷病手当金及び出産手当金の支給に当たっては、都道府県は、被保険者から労務に服さなかった期間及びその期間の報酬の額等並びにこれについての事業主の証明及び医師の意見を記載した傷病手当金請求書又は出産手当金請求書の提出を受け、その記載内容を調査確認することとなっている。

 しかして、傷病手当金及び出産手当金の支給の適否について検査したところ、前記の28都道府県のうち北海道ほか16都府県では、被保険者及び事業主が制度の理解が十分でなかったり、誠実でなかったりなどして、被保険者が労務に服さなかった期間について事業主から報酬を受けているのに受けていないとしていたもの、労務に服している期間について労務に服さなかったとしていたものなど上記傷病手当金請求書及び出産手当金請求書の記載内容が事実と相違しているものがあったにもかかわらず、これに対する指導及び調査確認が十分でないまま支給の決定を行ったため、本院が調査した受給者8,224人分の支給のうち512人分76,313,806円について18,488,178円(傷病手当金16,537,560円、出産手当金1,950,618円)が不適正に支給されていた。

2 船員保険の傷病手当金について

 船員保険(前掲の「船員保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」の説明参照 )において行う給付のうち、傷病手当金は、被保険者又は被保険者であった者が被保険者期間中に療養のため職務に服することができなくなった日から、職務上の事由による疾病又は負傷の場合には、1日につき標準報酬日額(4箇月を超える場合はその100分の80)相当する額を職務に服することができるようになるまで、職務外の事由による場合には、標準報酬日額の100分の60(被扶養者のいない受給者が入院した場合は100分の50)に相当する額を3年を限度として支給することとなっている。また、職務上及び職務外の疾病等により生じた障害に対する障害年金の支給対象とされた期間中は、これと同一の事由による傷病手当金は、昭和59年9月までは支給しないこととなっており、同年10月からは傷病手当金の日額が障害年金の額を360で除した額を上回るときは、その差額を支給することとなっている。

 傷病手当金の支給に当たっては、都道府県は、被保険者からは職務に服することがきなかった期同等並びにこれについての船舶所有者の証明及び医師の意見を記載した傷病手当金請求書を、また、被保険者であった者からは職務に服することができなかっ期間等及びこれについての医師の意見を記載した傷病手当金請求書の提出を受け、その記載内容を調査確認することとなっている。また、障害年金の裁定請求書の提出を受ける際は、裁定請求にかかる期間中に同一事由による傷病手当金の受給があるかどうかを申告させ、これを調査確認のうえ、既に支給した傷病手当金については障害年金の裁定後に過払分を返納させることとなっている。
 しかして、傷病手当金の支給の適否について検査したところ、前記の18道県のうち宮城県ほか4県では、被保険者又は被保険者であった者が、傷病手当金の支給を請求するに当たり制度の理解が十分でなかったなどして標準報酬日額を誤っていたもの、また、障害年金の受給の裁定を請求するに当たり傷病手当金を既に受給しているのに受給していないとしていたものなど、傷病手当金請求書又は障害年金裁定請求書の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でないまま、支給の決定を行ったこと又は返還の処置を執らなかったことのため、本院が調査した受給者1,013人分の支給のうち18人分21,401,878円について6,119,684円が不適正に支給されていた。

(別表1)  健康保険

都道府県名 社会保険事務所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数  左の受給者に支給した傷病手当金等 左のうち不適正傷病手当金等

北海道

札幌東ほか3社会保険事務所

(11)
317

(2)
44
千円
(438)
5,215
千円
(50)
973
青森県 青森ほか1社会保険事務所 (35)
238
(1)
14
(272)
1,624
(202)
649
宮城県 仙台北ほか1社会保険事務所 (113)
352
(2)
14
(370)
2,645
(14)
529
茨城県 水戸南ほか2社会保険事務所 (93)
557
(3)
22
(829)
3,831
(57)
815
埼玉県 川越ほか1社会保険事務所 379 15 3,644 644
千葉県 船橋ほか1社会保険事務所 390 36 4,703 977
東京都 麹町ほか7社会保険事務所 (52)
978
(2)
64
(561)
10,923
(254)
4,110
神奈川県 神奈川ほか1社会保険事務所 (8)
351
(1)
27
(187)
4,836
(30)
527
富山県 富山ほか1社会保険事務所 (95)
497
(8)
48
(1,621)
6,487
(165)
1,125
石川県 金沢ほか1社会保険事務所 (83)
382
(10)
38
(1,187)
4,964
(133)
637
山梨県 甲府社会保険事務所 217 24 3,104 718
愛知県 名古屋西ほか2社会保険事務所 753 40 5,135 916
大阪府 福島ほか3社会保険事務所 (7)
681
(1)
38
(301)
5,772
(21)
2,612
徳島県 徳島南ほか1社会保険事務所 (15)
286
(3)
15
(350)
2,484
(8)
546
福岡県 南福岡ほか1社会保険事務所 (26)
996
(2)
33
(465)
5,342
(15)
784
熊本県 熊本東ほか1社会保険事務所 (22)
617
(2)
17
(328)
2,135
(51)
643
沖縄県 コザほか1社会保険事務所 (64)
233
(7)
23
(1,977)
3,460
(946)
1,273
 計 45箇所 (624)
8,224
(44)
512
(8,892)
76,313
(1,950)
18,488

 (注) ( )書きは出産手当金の分で内数である。

(別表2)  船員保険

県名 課・社会保険事務所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した傷病手当金 左のうち不適正傷病手当金

宮城県

保険課

272

6
千円
10,939
千円
1,889
福島県 平社会保険事務所 1 1 5,339 519
三重県 尾鷲社会保険事務所 191 2 977 842
福岡県 保険課 247 6 1,876 1,365
鹿児島県 保険課 302 3 2,268 1,503
 計 5箇所 1,013 18 21,401 6,119