厚生省が都道府県等に補助金を交付している生活保護事業において、扶養義務者の世帯に相当額の所得があって被保護世帯に仕送りなどの援助が期待されたり、扶養義務者が被保護者を扶養しているとして税法上の扶養控除を受けているなど扶養義務を履行すべき個別の事由があったりしているのに、これら扶養義務者に対する扶養の要請が十分でなく、扶養の履行が全く又は十分になされていないなどの事態が多数見受けられたので、同省において、税法上の扶養控除及び扶養手当の受給の有無を扶養能力の調査項目に加えるとともに、抽象的な取扱いとなっている扶養の程度の標準や社会保険の活用等についての取扱要領を設けるなどして、扶養能力の調査が実効の上がるものとなるように体制を整備すること、実施機関において、関係機関等との協調を図るなどして扶養能力の調査を徹底するよう指導すること、十分な扶養能力があるにもかかわらず、正当な理由がなく扶養の履行をしていないものについては、生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第77条の規定に基づく費用徴収権を発動できる体制を整備することなどにより、生活保護事業の実施の適正を期する要があると認め、昭和62年12月に改善の処置を要求した。
これに対し、厚生省では、本院指摘の趣旨に沿い、63年3月に都道府県等に対して通達を発し、税法上の扶養控除などの有無を扶養能力の調査項目に加えたり、具体的に生別母子世帯等に対する扶養の程度の標準や社会保険の活用等について社会保険の被扶養者になり得る標準などを示してこれを指導したり、扶養についての照会書の書式を定型化するなどして扶養能力の調査が実効の上がるものとなるようにしたり、実施機関において扶養義務者の居所確認について市町村の公簿確認等関係機関との連携協調のもとに扶養能力調査の徹底を図るよう指導したり、実施機関における法第77条の規定に基づく費用徴収権を発動するに当たっての具体的な手続及び要領を示すなどの体制を整備したりして事業実施の適正を図る処置を講じた。