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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 日本私学振興財団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

私立大学における臨床研修医に係る支出の補助金算定上の取扱いを明確にするよう改善させたもの


私立大学における臨床研修医に係る支出の補助金算定上の取扱いを明確にするよう改善させたもの

科目 (補助金勘定) (款)補助金 (項)補助金
部局等の名称 日本私学振興財団
補助の対象 私立大学等における専任教職員等の給与その他教育又は研究に要する経常的経費
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 学校法人大阪医科大学
上記に対する財団の補助金交付額の合計

昭和61年度
昭和62年度

1,266,595,000円
1,251,013,000円

2,517,608,000円

 上記の補助金額の算定に当たっては、教育研究条件の良否による調整を行っているが、臨床研修医に係る支出を教育研究経費支出に含めて調整係数を算出したため、補助金1億1181万余円が過大に交付されていたと認められる。
  このような事態を生じたのは、日本私学振興財団において臨床研修医に係る支出の補助金算定上の取扱いを明確にしていなかったことによるもので、その取扱いを明確にする要があると認められた。

上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

  日本私学振興財団(以下「財団」という。)では、前項に掲記した「私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの」 の説明記載のとおり、私立大学等を設置する学校法人に対し補助金を交付しているが、この補助金額の算定に当たっては、各私立大学等の教育研究条件の良否によって補助金額に差異を設けるため、前年度の決算に基づく学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額の割合等に基づいて算出された調整係数を補助金の基準額に乗ずるなどして補助金額を算定することとなっている。

  しかして、今回、医学部を有する大学を設置する学校法人のうち、岩手医科大学ほか9学校法人における教育研究経費支出について調査したところ、学校法人大阪医科大学(補助金交付額昭和61年度12億6659万余円、62年度12億5101万余円)が財団に提出した補助金額算定のための資料に記入している教育研究経費支出の費目の中の奨学費支出の額に大阪医科大学に在学する学生を対象として支給されている奨学金のほかに、その附属病院で実施される医師法(昭和23年法律第201号)に基づく臨床研修を受ける医師(以下「臨床研修医」という。)を対象として支給されているもの(60年度8112万円、61年度7316万円)が含まれていたのに、財団ではこれを基に調整係数を算出し補助金額を算定していた。

  しかしながら、臨床研修医は、医師法に基づく臨床研修を受けている者であり、医師としての資格で診療に従事している者であって、学校教育を受けるために大学に在学する学生ではないこと、また、他の学校法人においては臨床研修医に係る支出を附属病院の職員人件費等の科目で処理していて大学の教育研究経費支出には含めていないことなどにかんがみ、医師である臨床研修医に係る支出を大学の教育研究経費支出に含めているのは適切でないと認められる。
  いま、仮に、同学校法人について、臨床研修医に係る支出を教育研究経費支出から除外すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額の割合が下がるため調整係数が下がることとなり、これにより補助金額を修正計算すると、61年度は12億1031万余円、62年度は11億9548万円となり、各年度の交付額12億6659万余円及び12億5101万余円は、それぞれ5628万余円、5553万余円、計1億1181万余円が過大になっていると認められた。

  このような事態を生じたのは、同学校法人において、臨床研修は医師法上の医師に対する研修であるのに、これを大学学部生の卒後教育と位置付けて経理上の処理を行っていたことにもよるが、財団において、臨床研修医に係る支出の取扱いの実態を十分に把握していなかったため、当該支出に係る補助金算定上の取扱いを明確に示していなかったことによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本私学振興財団では、63年11月、学校法人大阪医科大学に対し臨床研修医に係る支出を教育研究経費支出としている取扱いを改めるよう指導し、また、医学部を有する大学を設置する学校法人に対し通知を発して臨床研修医に係る支出を教育研究経費支出に含めないよう周知徹底を図るとともに、補助金交付申請の際に提出させる資料の記入要領にその旨を明記することとするなどの処置を講じた。